2006年冬の広島「第九」こぼれ話(1)・・・「第九ひろしま2006」にて
こちら大阪の空は曇りがちで推移しています。ただ見た感じではさほど厚くなさそう・・・
広島に於ける「第九ひろしま」も去る12月17日に無事終わり、あとは「1万人の第九」ドキュメンタリーやN響「第九」等の放送を待つ身となった私・・・
このうちの「1万人の第九」ドキュメンタリーが来るクリスマスイヴの前日(12月23日)に放送されますが、会場で予約販売されたDVD等では第1部にゲストとして登場した元ちとせの歌唱曲が収録されないこととなっただけに、このドキュメンタリーで果たして1分でも取り上げてもらえるのか、気になるところです。
でも、公式サイト内に掲載されている番組予告の記載内容から、あまり期待しない方がいいのかもしれませんね・・・・・・
ところで、今回も「第九ひろしま」への参加のため、12月16日から18日までの2泊3日の旅程で広島に滞在していましたが、その広島のこぼれ話というものをこれから3回にわたって記してみようと思います。
1回目は「第九ひろしま」について。これまで2度現地からお伝えしましたが、限られた時間の中で慌ただしく伝えてきた感がありますので、ここではもう少し詳しく話してみたいと思います。
こぼれ話というより”改めてお話しする”と言ったほうがいいのかな・・・
今回で22回目を数えました「第九ひろしま」でしたが、昨年・今年と指揮者を入れ替えてきていまして、今年は地元・広島県出身の指揮者、山下一史が指揮台に立ちました。
知り合いの「第九」仲間からの事前の報告では、山下氏は全般的に速いテンポで飛ばす傾向がある、とのことでしたが、いざ実際の演奏に触れてみると、少し速めの程度で概ね標準的なテンポという感じがしました。特に終楽章最後のプレスティッシモ(Prestissimo)と指示されているフィナーレ部分ではとにかく飛ばすとの話だったが、これも速いと言えば速いのだが、「1万人の第九」に於ける佐渡裕の指揮の時とそんなに変わらないくらいの速さだったような気がします。
テンポはともかくとして、演奏そのものはといいますと、標準的というか、軽すぎず重すぎず、といった感じでした。でもメリハリをきちんとつけていた点は良しとすべきところでしょう。
2年前まで指揮台に立っていた下野竜也の指揮の時には、ヨーロッパでの演奏でよく耳にする、軽やかでどこか理性的な、もっと言うなればヨーロピアン・テイストの効いた(もしかするとベートーヴェンが生きていた時代に普及していた演奏法に近づけた!?)「第九」となっていたのですが、言うまでもないことなのですが指揮者が違えば同じ作品でも違って聞こえるもの、今回の山下氏の「第九」演奏は、どちらかといえば、恐らく日本国内の「第九」コンサートでよく聞かれるであろう、テンポをいくらか抑え、一つ一つ踏みしめがごとくの、”苦悩を乗り越えて歓喜へ”という曲に秘められたテーマを意識させるような「第九」だったように感じます。
ただ、細々としたことをいいますと、第2楽章の中にある繰り返し指示は全てスルーしていたのと、第3楽章から終楽章へは指揮棒を下ろすことなくそのまま入っていましたね。
知り合いの「第九」仲間の話では、山下氏は「第九」の演奏に際してベーレンライターの原典版を信奉しているとのことで、「第九」本来の姿というものを追い求めていると私自身は思っていたのですが、実際の演奏では繰り返し指示を全てスルー・・・正直、ちょっと味気ない感じがしたかな。
ところで、これは余談になりますが、ベーレンライターの原典版といえば、ステージ上の譜面台に置かれたパート譜の表紙を眺めていて、ふと今は亡き朝比奈隆が大阪のフェスティバルホールにて毎年年末に行っていた「第九」演奏のことを思い出しました。私自身もこのフェスティバルホールに於ける「第九」公演に何度か聴きに行ったことがありますが、そのとき使われていたパート譜の表紙もこれと同じものだったように記憶しているからです(表紙の色はどうだったかなぁ…)。ちなみに朝比奈の「第九」は楽譜に忠実という姿勢を貫いていたこともあり、繰り返しも全てきちんとしていました。尤もテンポはゆっくり目でしたが・・・でも私自身にはこの朝比奈指揮の「第九」はお気に入りの「第九」演奏の一つともなっています。
さてもう一つの第3楽章から終楽章への移行についてですが、指揮者によっては第3楽章の演奏のあと一旦手を下ろしてしまうケースもありますが、楽曲自体の持つ流れからすると、ここは間髪入れずにそのまま”突入”するのがふさわしいと考えています。というのも、記譜上は第3楽章の終わりのところで終止線が入っているものの、終楽章では第3楽章までの流れを一旦否定し、その上で歓喜の主題が流れるという、ある意味では先の3つの楽章に依存した書き方となっているため、ここで指揮棒を下ろしてしまうと楽曲解釈上の流れがそこで断ち切られてしまいかねないからです(第1~第3各楽章についてはそれぞれ独立したテーマで書かれているため、楽章毎に手を休めても解釈上の影響は小さいところですが)。
「1万人の第九」の佐渡氏にしても基本的に第3楽章から終楽章へは手を休めることなくそのまま入っていますし、今回の山下氏の「第九」のとった行動も本来の流れに沿ったものと評価出来ますね。
あと細かいことといえば、「第九ひろしま」では、「1万人の第九」と同様、終楽章の”練習番号M”と呼ばれる部分(「歓喜の歌」の部分、とも言われることもある)では聴衆も合唱に参加することになっているのですが、その際、これまでの私の知る限り或いは見聞きする限りでは、指揮者は該当箇所にさしかかると観客席に体ごと振り向くか観客席に向けて手で合図を送るかしています。ところが今回の山下氏は振り向くどころか手で合図を送ることすらせず、そのまま観客席に背を向けて棒を振っていました。これには、せっかく共に合唱に参加してくれている聴衆を置き去りにしてしまっているのでは、と残念に感じたものでした。
まあ、それでも全般的にはメリハリのきいた、濃密な内容だったように感じました。
以上、何だか第2部の「第九」演奏のみの報告となってしまいましたが、最後にデータを改めて…。
今回の合唱団員数は1240人、地元広島県を中心に首都圏(埼玉・千葉・東京他)、東海圏(愛知?…記憶があやふやでスミマセン!!)、関西圏(大阪他)、そして隣接する山口県からの参加者もあったとのこと。ただ前回は最年少と最年長の各参加者の紹介などもあったように記憶しているのですが、今年はその紹介は行われませんでした。
そして関西圏といえば、私も見ました、「1万人の第九」参加者有志を乗せてきたであろう、「千里山バス」と書かれた観光バスを《左の写真》!
今冬の「第九ひろしま」ではは関西圏に向けても募集がかけられていました(今冬の「1万人の第九」のレッスン会場にて募集チラシが配布されていましたので、今冬の「1万人の第九」合唱参加者の方々には既にご存じのことかと思います)。
で、会場の広島サンプラザの敷地内に停まっていた大阪関連のバスはこの1台だけでしたので、恐らく最終的に当初募集枠(500人)の10分の1程度に終わってそう・・・
とはいえ、今冬は「1万人の第九」でも「第九ひろしま」参加者有志が団体で参加していることもあり、今後ともこういった人事交流を途切れさせぬようしていって欲しいものですね・・・
余談になりますが、「第九ひろしま」と東京の「国技館5000人の第九」との交流についてはこの大阪・広島間の交流以前から既に行われており、毎年「第九ひろしま」参加者有志が国技館で歌声を響かせてきており、一方で「5000人の第九」参加者有志も過去に2度広島入りしているという記録も残っています。
大阪と広島、それぞれの都市で今冬も見事な”歓喜の歌声”を響かせることが出来ました。この流れを途切れさせること無く来年以降も続いていって欲しい。共に文化の発信源という役割を今後とも担っていってもらうためにも・・・
P.S.
第1部の感想をすっかり忘れていました・・・
スーザン・オズボーンのゲスト出演で都合4曲披露されました。内訳はピアノ伴奏のみ2曲と「ピアノ+オーケストラ」の伴奏2曲(うち1曲は私たち合唱団もバックコーラスで参加)。
私自身、オズボーンについては名前をどこかで耳にしたことのある程度の知識しか無かったのですが、ピアノ伴奏のみで歌っていた前半2曲で思わずうっとりした気分になりました。昇華するがごとく澄み切ったピアノの音色とオズボーンの歌声・・・ううう何といおうか、ただうっとりでしたね。
これしか書けず、どうもスミマセン!
でも、終演後、知り合いの「第九」仲間との待ち合わせで同じ広島サンプラザの宿泊棟玄関前で待っているときに何とオズボーン本人が私の目の前に・・・思わず後ずさりしてしまい、遠巻きに眺めるのが関の山でしたが、今となっては、握手くらいはしてよかったかな、と後悔する私でもありました~
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