東海道・山陽新幹線「N700系」車両の無線LANインターネット・・・接続速度はかつての「ダイヤルアップ接続」並み!?
先日、東海道・山陽新幹線最新型車両「N700系」の報道関係者向け試乗会について『産経イザ!』に掲載された3本の記事を通じて話していたところなのですが、その続きと言うべき記事が、昨日(24日)付で、掲載されていました。
「乗ってみました新型新幹線『N700系』 ビジネス客に照準」
普通車とグリーン車の座席比較などは先日列挙した3本の記事にも記されていることなのですが、この記事ではこの新型車両に新幹線史上初めて搭載される「車体傾斜システム」についての印象が具体的に書かれていますね。
「『車体傾斜システム』で走行しています」との車内アナウンスがあったのは静岡県の掛川駅付近を走行している時のこと。
東海道新幹線区間では、開業時期が古かったこともあり、高速鉄道としてはきついカーブ(最小曲線半径2500m)が存在し、『Yahoo!知恵袋』の「どうして東海道新幹線内では、300km/h運転をしないのですか?」という質問の中の記述によると、実は掛川駅の前後も結構な曲線になっています。
まさしく「N700系」車両の真骨頂が発揮出来るところでもありましょう。
記事では、座っていると(「車体傾斜システム」による)1度の傾斜は感じるのが難しい、とのこと。つまり傾斜を感じさせない快適な乗り心地だったことを言いたかっただろうと思いますが、その僅か1度の傾斜によって通常の曲線区間でもスピードを落とさずに走行出来、その結果東海道新幹線区間(東京~新大阪間)で5分の短縮を実現させたわけですから、思わず頭が下がります・・・
で、今回の本題に入るわけですが、先日の記事の中でも触れましたが、今回導入される「N700系」車両ではパソコン向けコンセントの数が大幅に増え、特に編成中に3両あるグリーン車の座席については全席に配備される形となります。
その上で、これは少し先の話になりますが、2009年春からはこの「N700系」の車内で無線LANによるインターネット接続サービスの提供を開始すると発表されています《「東海道新幹線、2009年春から無線LANサービス提供」》。
このサービスの提供は、運転指令所との連絡等で使われている列車無線について、2009年春を目途に現行のアナログ方式からディジタル方式に切り替えることに伴うものとなっています。
1両あたり2つ、1編成全体で計32個の無線LANアクセスポイントを車内に設置、そこから先頭車両に1~2個設置される移動局に集約させ、更にそこから車外向けアンテナへとつなぎ、そのアンテナから車外に向けてデータの送受信を行う。一方車外では線路に沿って敷設されている漏洩同軸ケーブル(LCX)を利用、この同軸ケーブルと先の車外向けアンテナとのデータのやりとりにより車内に於ける無線LANによるインターネット接続を実現させるというわけですね。
で、肝心の通信速度ですが、下り(車外→PC)は2Mbps、上り(PC→車外)は1Mbpsを見込んでいるとのこと。
この数字だけを見ればそれほど遅いという感じはしないのですが、『IT Pro』に昨年(2006年)の7月6日付けで掲載された「新幹線ついに始まる車内LAN でも2メガではちょっと不満」という記事によると、この速度数字は1編成(16両編成)全体に対するものであり、仮に満員の乗客を乗せた状態で、そのうちの1割がインターネット接続を行うとした場合、接続一人あたりの実効速度は数十kbps~100kbps程度になるだろうと予測しています。
実は先に紹介した「東海道新幹線、2009年春から無線LANサービス提供」という記事の中でも、JR東海広報部が、定員の1割程度の人数が動じ接続した場合などを想定した場合、1人当たり200kbps程度というのが理論上の速度、とコメントしています。そしてこの記事の8日後に「【デスク安井晴海が詠む!】~」記事が掲載されたことを考えると、JR東海はちょっとサバ読みしているのでは、なんて思ってしまったりします。
それはともかくとして、末端での実効速度で数十kbps~100kbps程度ですか・・・・・・これってかつてのISDN等によるダイヤルアップ接続とそれほど変わらんじゃん。
先の「【デスク安井晴海が詠む!】~」記事によると、現状では公称値で2Mbpsという接続速度が技術的な限界とのJR東海からの回答を得ています。
ところが、
「日本テレコム、時速120kmの列車で15Mbpsのインターネット接続に成功」
「走行列車での無線LAN接続に成功、日本テレコム」
という記事の中でも触れられているのですが、実はソフトバンクテレコムが、まだ”日本テレコム”と名乗っていた去る2004年11月に、実験室の中の話になりますが、時速500kmを超える高速移動体に於ける15Mbps以上のインターネット通信に成功させています。この実験のその後については現在のところどこのメディアでも報じられていませんが、技術的には新幹線のような高速鉄道の車両からのインターネット接続であっても、今回発表されている速度値より速くすることは可能と思われます。
尤もこのソフトバンクテレコムが行った実験で採用したやり方と今回の「N700系」インターネット接続サービスが採用する接続のやり方とは果たして同じものなのか、違うものなのか、現時点では知る由もありませんが・・・今後の成り行きが気になりますね。
そしてもう一つ忘れてならないのが、先の紹介記事のタイトルにも現れていますが(引っ張りすぎってか…)、今回発表されている「N700系」車両からのインターネット接続サービスはJR東海が管轄する東海道新幹線区間(東京~新大阪間)のみに於いて提供される点。この東海道新幹線につながるJR西日本管轄の山陽新幹線区間(新大阪~博多間)ではこの接続サービスの提供はありません。
今回のインターネット接続サービス提供の元となる列車無線のディジタル化工事で見込まれる経費は約350億円と伝えられていますが、勿論これは東海道新幹線区間のみでの話。
東海道新幹線につながるJR西日本管轄の山陽新幹線区間はトンネルが多いこと等もあって、この区間のディジタル化に要する経費は東海道新幹線区間の場合と比べて高額になることが予想されているといわれています。
その上、山陽新幹線区間を受け持つJR西日本自体が本州にあるJR旅客3社の中では最も厳しい経営環境下にあることに加え、ご存じのように、107人もの犠牲者を出したJR福知山線脱線事故の事後処理に多額の費用を振り向けざるを得ない事情等も重なり、到底新幹線設備の改良にまで手が回らないというのが現状だとか・・・
このため、山陽新幹線区間については列車無線は当面アナログ方式のままで据え置かれ、無線LANによるインターネット接続サービスは提供されないということとなったわけです。
現在東海道・山陽新幹線には列車無線用のLCXが全線にわたって敷設され、車内備え付けの公衆電話からの通話に関してはトンネル内であっても通話が出来るようになっています。
が、携帯電話については今でもトンネル内区間では通話が途切れる等の声が聞かれ、ネットで調べてみても携帯電話についてはLCXでは面倒を見てくれないようで・・・
そこでふと思うのですが、今回発表された「N700系」インターネット接続サービスの提供開始により、提供区域にあたる東海道新幹線区間では携帯電話による音声通話もトンネル内等に関係なく通話が出来るようになるものなのかと・・・
もし仮に通話可能になるとすれば東海道新幹線区間のみならず山陽新幹線区間も(山陽新幹線区間こそ!)ディジタル化に着手すべきで、経営体力上JR西日本単独で行うのが無理ならば(現状では単独で無理なのは確実ですが…)JR東海やIT・通信業界、場合によっては国・沿線の地方自治体をも巻き込む形をとってでも実現させるべきであるように思いますね《逆に携帯電話の音声通話には関係ないものであっても何れは実現すべきであると考えています》。
ま、山陽新幹線区間に於けるインターネット接続(データ通信)の需要がどの程度になるのかという予測にもよりますが・・・
7月1日のダイヤ改正で正式デビューとなる「N700系」新幹線電車は果たしてモバイラーの期待に応えられるものとなるのやら・・・注目ですね。
P.S.
今回の記事投稿に際してネット上をさまよっていると、「忘れられた? 列車電話」(『RJ ESSENTIAL』より)という記事に巡り会い、この中で、旧国鉄時代から続いてきた新幹線車内公衆電話への取り次ぎサービス(「列車着信通話」サービス或いは”107番通話”)が2004年6月末で終了(廃止)となったことを知りました《提供していたNTTコミュニケーションズの該当ニュースリリースはこちら》。
携帯電話の普及が廃止の主な理由とのことですが、約3年前のこのサービス廃止のことを今日まで全然知りませんでした。
間抜けな私・・・・・・これもまた時代の流れというものでしょうネ。
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