吉と出るか凶と出るか・・・肥薩おれんじ鉄道鹿児島・熊本へ乗り入れ
九州新幹線・新八代~鹿児島中央間先行開業に伴う鹿児島本線の八代~川内間のJRからの経営分離により誕生した肥薩おれんじ鉄道が、来年3月に予定されるJRグループ統一ダイヤ改正に合わせて、JR鹿児島本線の熊本・鹿児島中央両駅への乗り入れが実現する見通しであることが明らかになりました。
以下はそのことを報じている西日本新聞Web版2007年06月26日付け掲載記事・・・
「肥薩おれんじ鉄道 熊本、鹿児島中央駅に乗り入れへ 来年3月にも」
熊本県八代市と鹿児島県薩摩川内市を結ぶ第三セクター「肥薩おれんじ鉄道」(八代市)が来年3月にもJR鹿児島線の熊本駅(熊本市)と鹿児島中央駅(鹿児島市)に乗り入れる見通しになった。快速列車を土、日、祝日に1日2本、試験的に1、2年間乗り入れる計画。同社と熊本・鹿児島両県、JR九州の四者で最終調整に入っており、7月末までに合意する見込み。 肥薩おれんじ鉄道によると、乗り入れは利用者低迷に伴う経営改善策の一環で、おれんじ側からJR側に乗り入れる片側乗り入れ方式。列車は、車両基地がある出水駅(鹿児島県出水市)を起点に出水―熊本、出水―鹿児島中央を往復する。実現すると、現在の運行区間(116.9キロ)は南北に計約100キロ延びる。 同鉄道は九州新幹線鹿児島ルート開通に伴い、2004年3月に両県や沿線自治体が出資し、並行在来線だった鹿児島線をJRから引き継いで開業。JR乗り継ぎの不便もあり、利用客の減少が続いている。 肥薩おれんじ鉄道の嶋津忠裕社長は「乗り入れは利用促進につながる。再建に向けた重要なステップにしたい」と話している。 |
厳密には現在でもJR線区間に乗り入れているのでありますが、乗り入れ区間が両端の各1駅区間のみ(新八代~八代間・川内~隈之城間)にとどまっています。
今回の協議ではこれを、土休日限定ではありますが、鹿児島・熊本両県の各県庁所在地駅にまで乗り入れ区間を延長してしまおうというわけです。
で、実は、上記記事掲載の約1ヶ月半前に鹿児島の地元紙である南日本新聞Web版に掲載された記事(5月15日付)の中で、乗り入れ区間延長のための話し合いが最終調整の段階に入っていることを既に伝えています《以下はその新聞記事》。
鹿児島県は14日、第3セクター肥薩おれんじ鉄道が来年3月のダイヤ改正をめどに、週末の朝夕2往復、JR鹿児島中央駅と熊本駅へ乗り入れる方向で、熊本県、JR九州を含む4者が最終調整していることを明らかにした。鹿児島市であった県肥薩おれんじ鉄道利用促進協議会の2007年度総会で報告した。 県交通政策課は「JR九州からは『来年3月から乗り入れできる方向で協力したい』との回答を得ている。平日は車両調整がつかないため、当面は土・日運行に限定したい」と説明。乗り入れは相互方式ではなく、おれんじ鉄道側の一方的乗り入れになるという。 また、残された協議として、おれんじ鉄道の運転士が乗り入れ先の川内-鹿児島中央、八代-熊本のJR線区も運転するのかなど、技術面や経費負担面での課題を挙げた。 嶋津忠裕社長は「来年3月のダイヤ改正に合わせた乗り入れをぜひ実現させ、おれんじ鉄道の利便性を上げたい」と意欲を述べた。 おれんじ鉄道とJR九州は2月、乗り入れに向けた勉強会を設置。JR側はこれまで採算面から慎重な姿勢を見せていた。 このほか総会では、おれんじ鉄道開業以来、前年同月比約10%減で推移してきた運賃収入が、昨年度下半期から若干改善傾向にあることなども報告された。 |
この記事の中で、今年初めの時点ではJR九州側は慎重な姿勢を見せていたのですが、その後、運賃収入が増加に転じていること等もあってか、来年3月のダイヤ改正に合わせて直通乗り入れを受け入れる方向に態度を変えていることを伝えています。
その”運賃収入が増加に転じている”ことをもう少し具体的に報じているのが、以下に示している、2007年6月7日付けで西日本新聞Web版に掲載された記事・・・
「3セクの肥薩おれんじ鉄道 2カ月連続運賃増収 06年度中間決算は赤字」
熊本、鹿児島両県などが出資する第3セクター肥薩おれんじ鉄道(八代市)の嶋津忠裕社長は6日、沿線自治体などが八代市で開いた会合に出席し、運賃収入が今年4月から2カ月連続で前年同月を上回ったと説明、「鉄道経営を継続したい」と理解を求めた。 嶋津社長によると、2006年度の中間期(4‐9月)決算は、減価償却後の損益が1億1200万円の赤字。嶋津社長は「今月末に公表する通期決算も厳しいが、昨年度下期には下げ止まりがみられる」と説明。4月は運賃収入が前年同月比2.2%増と開業以来初めて前年同月を上回り、5月も同2.7%増と堅調に推移していると報告した。 JR九州との乗り入れ問題については「課題は多いが、早期実現に向けて努力したい」と乗り入れ実現に意欲を表明。沿線市町の首長や団体代表からは「乗り入れが実現すれば利便性が増す」「沿線イベントとの連携を強化してはどうか」など経営強化に向けた声が相次いだ。 |
と、今回の直通乗り入れ実現に際し、更なる経営強化のため、沿線自治体等からの助言等もあったようですが、そのことについて明るい話題を一つ・・・
この肥薩おれんじ鉄道を応援しているブログサイト『がんばれ!肥薩おれんじ鉄道!』に去る6月2日付けで掲載された「今,阿久根の市場食堂が人気です」によると、肥薩おれんじ鉄道の沿線自治体の一つ、阿久根市内にある「ぶえんかん」という食堂が、新聞等で取り上げられたこともあって、賑わいを見せているそうでして、どうやらおれんじ鉄道でこの食堂を訪れる人も少なくないようですネ。
この食堂「ぶえんかん」については、鹿児島の民放局である鹿児島テレビ(KTS)のWebサイトでも紹介されています《以下はその紹介記事》。
阿久根市の港で水揚げされたとりたての魚介類を食べることができる、市場食堂「ぶえんかん」が、オープンしました。 この「ぶえんかん」食堂は、北さつま漁協が国などの補助を受けて、阿久根市港町の魚市場横に、およそ3500万円の費用をかけて建設したものです。 食堂には、一本釣りする阿久根の華アジのイケスを常備している他とりたての新鮮なタイやキビナゴなどの魚をその場で刺身や煮魚に料理してお客さんに低価格で提供できるようになっています。 このほかウニやイリコはじめ海産物など地元の特産品が販売され大勢の人たちが早速、買い求めていました。 |
「ぶえんかん」のある阿久根市港町というのは、地図サイト「マピオン(Mapion)」によると、阿久根駅のほぼ南西の方向に、徒歩にして約10分の距離のところに位置しています(この「マピオン」地図上でいうところの赤丸で示されたところです)。
そして、この「ぶえんかん」に実際に食べに行った人によるレポート記事も公開されています《「「市場食堂 ぶえんかん」レポート!」;ちなみにこの方の場合はマイカーで訪れているのですが、拝見しているうちに、あたかもお店の中にいるような気分にさせられるような美味いレポートですよ》。
おれんじ鉄道側が、利用者のニーズに沿って列車ダイヤをきっちりと編成し、利便性を高めるための独自のトクトクきっぷの販売や開発を今後も継続する等の取り組みを行う一方、おれんじ鉄道沿線自治体等も、賑わいを見せているこの「ぶえんかん」を巡る取り組みのように、鉄道利用者増に繋げられるような地域振興の取り組みを継続的に推進していくことで、初めて肥薩おれんじ鉄道の前途を明るくすることが出来るわけで、今後の動向と取り組みに注目が集まることでしょう。
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ぶえんかんの記事でTBしていただいた姫摩呂です。
どうもありがとうございました。
返事が遅くなってすみません…。
ぶえんかんは本当に美味しかったので 鹿児島市内からはちょっと遠いですが また行きたいと思っています。
その時はまたレポートします!!
「肥薩おれんじ鉄道」は鹿児島のニュースでよく取り上げられています。 乗ってみたいとは思いながらも 実際まだ私達も一度も乗ったことがありません。
今後 一体どうなるのでしょうね…。私も気になるところです。
投稿: 姫摩呂です。 | 2007年6月29日 (金) 18時32分
姫摩呂さん、こちらこそ失礼いたしました。
素晴らしいレポートをありがとうございました。
鹿児島市内にお住まいの方々にとって、現在の肥薩おれんじ鉄道はJRとの接点駅である川内(又は隈之城)にて乗り換える必要があるので、ちょっと億劫に感じるところがあるかもしれないですね。
来年3月のJRグループ統一ダイヤ改正に合わせて、土休日限定ながら、鹿児島中央駅まで直通乗り入れが出来るようJR九州も協力してくれているようなので、実現すれば来年の今頃は鹿児島中央駅から「ぶえんかん」最寄り駅の阿久根まで乗り換え無しで行けるようになっていることでしょう。
ま、利用者に優しいダイヤ編成をしてもらいたい、と思うのみですネ・・・
投稿: 南八尾電車区 | 2007年6月30日 (土) 10時55分