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なが~い「第九」、所要時間2時間近く!・・・・・・コブラが指揮する「第九」演奏動画

 一昨日、大阪の「1万人の第九」に合唱参加を申し込んだ人に対する抽選結果発表が行われました。

 と同時に、一昨日は英国にて夏の風物詩「BBCプロムス(PROMS)」が開幕となっています。

 

 今夏のプロムスオープニング公演(Prom1、第1公演)ではいきなりベートーヴェンの「第九」が盛り込まれたプログラムにて行われていたようです《私もネットラジオを通じて「エアチェック」したつもりですが、まだファイルをチェックせぬままデス》。

 プロムスのオープニング公演では、伝統的に、プロムスを主催している公共放送局BBCの自前のオーケストラ・BBC交響楽団が出演してきており、「第九」を擁する今回のオープニング公演の指揮を務めたのは昨年からBBC交響楽団の首席指揮者を務めているチェコ出身のイルジー・ビェロフラーヴェクでした。

 

 「第九」の他、エルガーの『チェロ協奏曲』等が演奏されたそうで、どんな演奏だったのか、楽しみデス…

 

 

 さて、今回は久々にネット上で公開されているベートーヴェン「第九」演奏動画から1つ紹介したいと思います。

 といっても今回は『YouTube』ではなく『Google Video』に独自に寄せられている「第九」演奏動画となりますが・・・

 

 

 今回ご紹介する「第九」演奏動画はブラジル出身の指揮者、マキシミアンノ・コブラ(MAXIMIANNO COBRA)の指揮によるものです。

 タイトルのところで”なが~い”とか”コブラが指揮する”と出ているものだから「え、毒ヘビが指揮!?」なんて思われる方、もしおられたとしてもご安心を、”コブラ”は人名なんです《まあ、おられないでしょうが…》。

 

 『Google Video』にて公表されている演奏者データは以下の通りとなっています。

 

Erika Miklósa, Soprano
Bernadette Wiedemann, Alto
András Molnár, Tenor
István Rácz, Bass
EUROPA PHILHARMONIA ORCHESTRA & CHOIR
MAXIMIANNO COBRA, Chef d'orchestre - Conductor - Dirigent

 

 

 で、演奏動画を紹介する前に「第九」の演奏時間についてここで少しお話しします。

 

 「第九」に限ったことではありませんが、同じ曲であっても指揮者や演奏者が違えば音楽は変わるものであるし、当然演奏時間も違ってくるものです。

  『The Web KANZAKI』という名のWebサイトの中に「ベートーベン交響曲第9番の概要と演奏」というページがあるのですが、このページの後半に23もの「第九」演奏の各演奏時間データが公開されています。
 データでは、60分台の所要時間を示すものが過半数を占めているのですが、中には60分に満たない演奏が2つと70分以上かかった演奏が4つも含まれています。
 ちなみにこのサイトに於ける公開データの中で最長なのは1955年のヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管による演奏で74分32秒、反対に最短なのは1998年12月のデーヴィッド・ジンマン指揮チューリッヒ・トーンハレ管による演奏で58分57秒、となっています。

 

 私の知る範囲で言うならば、演奏時間の長い「第九」といえば何といっても1989年のクリスマス(12月25日)にレナード・バーンスタインが指揮した「第九」を挙げますね。
 実はこの1989年という年は旧東ドイツの一都市だったベルリンを東西に隔てていた”ベルリンの壁”の崩壊という歴史的出来事が起こった年でもあり、このバーンスタインの「第九」はその”ベルリンの壁”崩壊を記念するために旧東ベルリン地区に位置するシャウシュピール・ハウスにて開かれたもの。私もこの演奏のCDを持っているのですが、演奏時間はなんと78分39秒! そのうち合唱が入る終楽章だけでも28分57秒(拍手部分を含む)と、30分近く要しています。
 なお、この”ベルリンの壁”崩壊を記念したバーンスタインの「第九」では、通常”Freude”(歓喜)と歌うべきところを、「”ベルリンの壁”崩壊」に対するバーンスタインの思い入れ等から、”Freiheit”(自由)に読み替えて歌わせていることはよく知られているところとなっています。

 反対に演奏時間の短い「第九」といえば、残念ながら私自身まだ聴いたことがありませんが、ベートーヴェンによるメトロノーム指定どおりのテンポで演奏したという、ベンジャミン・ザンダー指揮ボストン・フィルハーモニックによる「第九」演奏で、かかった演奏時間は約58分。
 『ピースうさぎの散歩道』内にある「ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付」を聴く」というページの終わり近くにある「借り物 ベンジャミン・ザンダー指揮ボストン・フィルハーモニック管弦楽団」という項目のところにレビューが掲載されています。
 このレビューによると、ボストン・フィル自体は共同体が運営するアマチュア・オーケストラで、しかしながらその演奏レベルは「日本の地方オケよりずうっと上手で文句をつけるところがない」とのこと。
 しかしながらこのザンダー指揮による「第九」の演奏についてはテンポ面を除いては可もなく不可もなしといった印象を抱いている模様。
 これとは別に、テンポは作曲者の指示に従っていても音の長さや符点のリズムは書かれているとおりに演奏されていないのでウサン臭さが漂う、と少々辛口調のレビューもありました。

 なお、この演奏時間約58分の「第九」を指揮したベンジャミン・ザンダーはオーケストラの指揮という仕事を通じて人の可能性を引き出す術を会得し、その会得した術をビジネス向けセミナーの場で伝えていくという活動も行っているそうで、そのセミナーの模様が「あなたは自分の力を信じていますか?~Vol.54 コーチングで音が変わる!」という記事の中で報告されているのですが、このレポートによると、セミナーの中で居合わせた出席者1300人でベートーヴェン「第九」を歌うことになり、わけわからぬまま配布されたドイツ語歌詞をカタカナ読みし、最後に「それらしく」出席者全員で合唱したとのことで、大勢で合唱することの素晴らしさ、チームワーク、感動を体験出来たということです。

 

 

 少し、といっておきながら「第九」の演奏時間の話が長々と続いてしまいましたが、ではなぜ”演奏時間”なのか。

 というのも、今回紹介するマキシミアンノ・コブラ指揮による「第九」演奏動画は演奏時間がとてつもなく長いためであります。

 平均的な「第九」の演奏時間に合わせて音楽CDの規格が策定されたことはあまりに有名な話なのですが、これから紹介する演奏動画はその音楽CDにして1枚半もの容量を要する長さとなっています。

 何しろ楽章毎の演奏時間が、『Google Video』で表示されている時間表示で・・・

    第1楽章:27分13秒
    第2楽章:23分37秒
    第3楽章:21分33秒
    第4楽章:41分57秒

で、合わせて114分10秒

 第3楽章の「21分33秒」という所要時間については前記のバーンスタイン指揮の「第九」と比べて1分少し長いだけなのですが(ちなみにそのバーンスタイン指揮の「第九」の第3楽章演奏所要時間は”20分14秒”)、あとの3楽章については尋常ではない長さで、特に終楽章で40分台の所要時間というのは特筆に値するものですネ。

 指揮者マキシミアンノ・コブラについてはWebサイト『折原一の沈黙の部屋』の中にある「頭蓋骨の裏側(DIARY)~2004年6月の日記」の後半のところにある”●6月17日(木) 世界最長の交響曲”の項の中で短いレビューを寄せているのですが、この中で、コブラ自身はベートーヴェンやモーツァルトの時代はもっとゆっくり演奏していたはずだと主張し、それを実践している、と記されています。

 そしてこのコブラ指揮の「第九」は実際にCD化もされており(但しソリストは今回と一部異なる;現在は廃盤)、このCDを実際に取り扱っていたCD店による解説によると、「古典派時代の指揮法は現在と違って、タクトの一往復をもって一拍と定義していた」という「テンポ・ジュスト」なる不思議な学説に従った演奏を実践、自らオーケストラを組織し、自分の意思どおりに演奏させているとのこと《余談ですが演奏記号にも「テンポ・ジュスト」(tempo giusto)という語句が存在し、意味は”正確なテンポで, 適正なテンポで”》。

 

 ”タクトの一往復をもって一拍と定義”・・・この言葉から、昔NHKの総合テレビで、深夜帯だったように思うのですが、ベートーヴェンの「第九」について深く掘り下げることをテーマとした番組が放映されたことがあり、その中でベートーヴェンの時代のテンポ設定は現在と異なっていたと唱える音楽学者が紹介され、その際、この音楽学者がまさしくこの”タクトの一往復をもって一拍と定義”という学説について話していたことを思い出しました。
 そしてこの学者はベートーヴェンの第5交響曲「運命」の出だし部分ともう1曲(曲名忘れた…)の特定部分を例にとり、「運命」の出だし部分ではまるで小鳥のさえずるような感じになっている、とピアノでその部分を弾きながら話していたことを覚えています。

 

 

 演奏動画でありますが、各楽章毎に分けられている形となっています。

 

 ◎ 第1楽章

 ◎ 第2楽章

 ◎ 第3楽章

 ◎ 第4楽章

 

 私もつまみ食い的にちょっとずつ聴いているのですが、極端なまでにゆっくりとしたテンポにはなっているものの、演奏自体はきちんとした印象を持ちました。

 

 

 こんな「第九」もあるもんですネ・・・・・・

 

 

【おことわり】
 『Google Video』や『YouTube』等の動画投稿サイトにて公開されている動画については、今後、運営サイドの判断等により削除される可能性があります。その場合、お楽しみいただけなくなりますことを予めご承知おき下さい。

 

 

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コメント

弊サイトへのリンクありがとうございます。

随分前に書いた文章なので、記憶がやや曖昧ですが、ザンダー盤の印象は今もあまり変わっていないんではないかと思います。

コブラの演奏、うわさでは知っていましたが、こんなテンポだとは!アマチュアが練習やっているような速さですね。

 ピースうさぎさん、こんにちは!

 こちらこそお世話になります。

 私もこのコブラ指揮の演奏に巡り会うまで、これほど長い「第九」演奏というのは知りませんでした。

 本文中でも記しました”1往復で一拍”という学説というのは最近の研究によって掘り出されたもののようで、コブラ自身はこの新しい学説に従って、「第九」のみならずモーツァルトの「レクイエム」等を演奏している模様です。

 勿論、平均的な演奏時間を大幅に上回る時間をかけて・・・

 それにしても、従来の概念を覆してくれる「第九」であることは間違いないところですネ。

こんばんは。はじめてコメントします。よろしくお願いします。

さて、この「テンポデュスト」(僕のほうでは「二重振子理論」って呼んでましたが)によるコブラ氏の演奏、ようやく聴くことができました。ありがとうございました。

以前90年代のはじめぐらいに、僕もこの理論にはまっていたことがありました。でもいろいろ無理がある理論だと悟り身を引きました。
ですから自分としては理屈上ではありえない方法だと否定した考え方です。

が、いざ聞いて見ると部分的に妙に説得力があるのでびっくりしました。おりもおり、夏の休暇中に「第9」の演奏理論を自分のブログに書き連ねていたところです。(一度遊びに来てくださいね) そのせいもあってひとつひとつの音がはっきり聞こえるのは面白かったです。とくに最後のマエストーソの前の弦楽器の動きなどオーケストラの音としては初めて聞きました〔笑)。

二重振子理論はタルスマというオランダの学者さんの意見です。日本では「プレステシッシモ」(ヴェーデマイヤー著 音楽之友社刊)という本の中で詳しく紹介されていますよ。

 mineさん、こんにちは。
 こちらこそ初めまして!

 私も改めて聴いてみまして、オーケストラ内に於ける各パートの音がよく聞こえることに驚きと新鮮味を覚えました(自爆)
 ベートーヴェンらが存命だった時代にはメトロノーム(指揮棒)の1往復を1拍として数えて演奏していたという学説、私自身これを支持するかどうか訊かれると、ちょっと微妙なところですね《どちらかというと「支持しない」かな…》。

 「第九」に纏わるレポートをブログにてお書きとの由ですが、この学説を実際の演奏に採り入れたコブラ指揮の「第九」を研究対象の一つとして考えるのも面白いかもしれません。
 近いうちにじっくりレポートを読ませていただきますね。

 今後ともよろしくお願いいたします。

この情報だけはいつも貴重なのでリンクさせてもらっています。最近HPが新しくなったのですね。見栄えが遥かに良くなりました。

 菅野茂さん、こんにちは。
 お世話になっております。
 テンプレートに対するお褒めの言葉、ありがとうございます。

 当ブログでは、少し遅れるところがあるかも知れませんが、季節に合わせてテンプレートを変えたりしています。
 現在のこのテンプレに変えたのは8月30日のことで、ちょうどブドウの収穫時期と重なるとあって、このテンプレにしました《ちなみにこれの前に使っていたのは雨降り(傘)のテンプレで、梅雨時に似合うものでした》。

 また季節が進みましたらテンプレの張り替えをするつもりでいますので〔季節以外のファクターで張り替える可能性もありますが…〕、よろしければいつでもお立ち寄り下さい。

 なお「第九」演奏動画のほうは今もボチボチ紹介(追加)中してきています《尤も全くの不定期ですが…》。

ここは第九の専門のHPなどで頻繁に書くことはできませんが、今P・ヤルヴィとブレーメンのカンマーフィルの第九を聴いているので久しぶりに開けてみました。

やはりコブラの第九貴重ですよ。絶対CD化すべきですね。昔R・シュトライスが45分で第九を指揮したといわれますがどこかに音源がないですかね?ない場合は私達で自分で作りましょう(笑)!

 菅野さん、こんばんは。
 ヤルヴィ=ブレーメン・カンマーフィル・・・先日ドイツのWDR3でも放送されていましたね、それ。
 私もネットエアチェックし、先ほど耳にしたのですが、演奏自体は洗練されていたような印象でしたが、どうやら回線状態に起因した音飛びが発声してしまっていました(涙)
 ま、聴けるだけでも良しとしなければダメなんですけどね・・・

 コブラ指揮の「第九」についてですが、実は一度CD化されています・・・尤も現在では既に廃盤となっていますが。
 よって現状ではネット上で楽しむほか無さそうですね。

 最近当ブログでは中南米地域における「第九」演奏も紹介してきているわけですが、聴いた感じでは、欧米に於ける「第九」演奏と遜色ないくらいの水準だったりもします。
 もしよろしければ、コブラの「第九」と併せて、ご高聴頂ければ幸いです。

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