更なる競争激化か、仁川国際空港とその周辺国の空港・・・・・・あの関空も貨物で”参戦”!?【韓国SBS報道】
以前、『日経スペシャル・ガイアの夜明け』で中部国際空港(セントレア)と関西国際空港のドキュメントを放送したことがありましたが、その番組の終末に近いところで、兵庫県宝塚市仁川の・・・・・・じゃなかった、韓国ソウル近郊(仁川広域市)の仁川国際空港に地方からの国際線の客が奪われている現状が紹介されている場面がありました。
その場面では広島空港の国際線のりばが映し出され、ここからソウル、或いはソウル経由で中国に出かける人のインタビュー映像も盛り込まれていたわけですが、その後に映し出された広島空港の関係者とのインタビューの中で広島空港関係者は「断然ソウル。関空や中部空港に行くまでの間にソウルに着いてしまうから」等と語っていました《成田の名前は出なかったな・・・尤も成田へはソウルに向かうのとほぼ同じ時間で飛べて、ソウル便と同じく1日1便だし、成田からでも世界各国への乗り継ぎは可能なのだが(運賃面は別にして)》。
その後、仁川国際空港が映し出され、空港を運営している仁川国際空港公社の関係者とのインタビューで「関空・成田はこれ以上の拡張は難しく、我々が有利」とのコメントを発した後に周辺のハブ空港となり得る各国際空港の滑走路の長さが示され、この中で仁川の「3750m・3200m各1本」を初め、上海浦東の「4000m・3800m各1本」、香港の「3800m×2」、クアラルンプールの「4000m×2」等と示され、このままでは日本の国際空港は世界の中で取り残される、と警告しています。
実際、旅行作家で自らも”バックパッカー”としてアジアを中心に世界中を歩き回った経験を持つ下川裕治は、自身の著書『アジア達人紀行』(徳間文庫)の中で、ソウル発の航空券が格安で売られていることを踏まえ、地方在住の格安航空券派旅行者にとってソウルはまさにハブ空港だ、と語っています。
ただこの下川祐治著『アジア達人紀行』自体、初刷発行年月が「1995年6月」と12年以上前のものであるため、運賃データ等、今となっては使い物にならないデータも出てきているでしょう。
実際、韓国の旅行会社・世一旅行社の日本語Webサイト等を眺めていますと、ソウル発の日本往復航空券の運賃は、『アジア達人紀行』が出版された当時と比べてやはり全体的に高くなっている印象を受けます。
しかし『アジア達人紀行』の中でも書かれている、ソウル発日本往復航空券の「有効期間1年オープン」については、今もしっかりと生き続けています。
尤も日本の旅行代理店(「○イチ・○イ・○ス」とか)で扱っている、日本国内の地方都市発のソウル経由・世界各国方面行きの往復航空券にしても結構安くなってきているような印象を持っていますが《もし間違っていたら遠慮無くご指摘下さい!;私の感覚は世間一般とどこかズレていそうなので》・・・
ところで、そんな仁川国際空港でありますが、最近になって、逆にその仁川のほうが焦りだしているようです。
『動画で見られる!韓国鉄道&交通ニュース』に今月掲載された以下列挙の2記事・・・
「関西空港、仁川空港に「ハブ競争」宣言 空港規模を大幅拡張・・・8月より日本初の24時間運航」
「「北東アジア中心空港」立地、4~5年が勝負」
何れも韓国の民間放送局SBSによる報道でありますが、これら2記事によると、仁川空港にとってこれまで競争相手として見なしていなかった関空から、2本目の滑走路の運用開始を前に、挑戦状をたたきつけられると共に、中国からは北京の北京首都国際空港も拡張されているとの話も伝わり、おいそれ仁川も安泰とは言えなくなってきている状況にあるとのこと。
このうち、関空では8月2日に念願の2本目の滑走路の運用が開始されるのに伴い、真の「24時間運用」が実現するわけですが、これを機にアジア地域の貨物ハブ空港を目指している、と報じ、関空の運営会社である関西国際空港会社の村山敦社長は「仁川空港は中国へ輸出される全世界の貨物の中継地の役割を担っていますが、この役割をこれから関西空港が行うようにします」と宣言してみせたとのこと。
村山社長といえば、これも前置きで紹介した『日経スペシャル・ガイアの夜明け』の中で紹介されたことですが、関空社長就任(2003年6月)前に副社長として在籍していた松下電器産業にて、当時の中村邦夫社長が”破壊と創造”を掲げて推し進めてきた「中村改革」を陰で支える存在として、経営危機に苛まれていた松下の”奇跡のV字回復”に大きく貢献した人物であり、1週間程悩んだ末に社長として赴任した関空に於いては(社長就任時の記者会見では「ドロ海の中を道を見つけていく」と表明していました)、今度は「村山改革」を推し進め、無駄をとことん省いていくと共にトップ・セールスを重ねることで成田を上回る中国路線開設を実現させる等の成果を上げ、その結果開港10年目(2004年)にして初めて単年度黒字を実現、更に今日に至るまで3年連続の黒字を達成するなど、着実に実績を積み上げてきています。
関空は大企業と興業密集地域が背後にあるという長所を備えているにもかかわらず、着陸料や各種施設利用料が割高(仁川の2倍以上とのこと)なこともあってか、昨年の貨物取扱高は80万トンと仁川(230万トン)の3分の1以下と低迷。
この現状を克服すべく、関空では来年にも超大型のエアバスA380も利用可能な貨物駐機場(貨物スポット)を完成させる等により、年間貨物処理能力を30%以上増強すると表明しています。
また、韓国の全国紙・中央日報の日本語版Webに7月2日付けで掲載された「関空、仁川に反撃…「北東アジア物流ハブ」目ざす」という記事によると、関空の構内には昨年からアメリカ宅配業界大手のフェデックス(FedEx)やDHL等が新しい積載場を相次いでオープンさせており、中でもDHLはこれまでの3倍の処理能力を持つ最新鋭の物流施設をオープンさせているとのこと。
更に全日空はこれまで中部国際空港を拠点にしていた物流業務を今秋から関空に移す方針を決めたとも報じています。
関空の貨物取り扱いを巡っては、今年1月に『産経イザ!』に掲載された村山社長とのインタビュー記事(「『ハブとして発着13万回、第2滑走路へ飛翔』関空社長」→現在は掲載終了)の中で、
中国からの貨物便についてはすでに結果が出ている。これまでは、中国系の航空会社の増便だったが今年は、国内の会社も増便に踏み切るでしょう。中国便は全体の発着回数を持ち上げる原動力。しかし、北米線を含め中国以外の路線と国内線の便が減っており、なんとかして、落ち込んだところを引っ張り上げたい。 |
と語った上で、
関空を国際競争力がある水準にもっていくためには、国際貨物ハブ空港という特徴が必要だと思う。そのために、貨物に対する総コストを今後も下げたい。かぎは、都心部から空港までのアクセスの総コストを下げることだ。韓国の仁川空港は関空に比べると、総コストは半分以下。関空の高コスト構造を是正するために、事業者の努力だけでは限界があり、国にも考えてもらいたい。 |
とも語り、世界の中の貨物ハブ空港として歩んでいくことを強調すると共に、施設利用料等の諸々のコスト抑制のためには自身の経営努力と共に政府に対しても協力を要請する考えを明らかにしています。
その一方で、2本目滑走路向けの予算(600億円)獲得の際に条件として突きつけられた「2007年度に於ける発着回数13万回」については、村山社長自身、『イザ!』のインタビューの中で、
世界の航空需要は今後、間違いなく増加し、関空の第2滑走路は、国内の空港能力を高めるために絶対に必要。成田空港の発着枠はいっぱいですから、やっぱり関空が伸びるしかない。一昨年が10万9000回、昨年が11万9000回で今年は、12万数千回いくのはすでに確実。あとは13万回を目指して、人事を尽くして天命を待つのみ。到着外国人の人数は毎月新記録ですから、今後も発着回数が順調に伸びていくことを確信している。 |
と語っていますが、『NIKKEI NET』関西版に4月17日付けで掲載された「関空の発着回数、目標下回る──昨年度11万6500回、米国線の撤退目立つ」という記事によると、昨年(2006年)度は、中国線が大幅に増加する一方で米国線の撤退が相次いだこともあって、速報値で約11万6500回と、前年度と比べて3%増加しているものの年度目標の11万9000回には届かなかったそうで、去る7月13日に国土交通省から発表された羽田~関空間4便分の割り当てを受けて9月に就航を予定しているスターフライヤーの羽田便等に期待を寄せている状況にあります。
関空からの攻勢が強まる一方で、朝鮮半島を挟んで反対側に位置する中国の国際空港でも攻勢の構えを見せています。
中国の首都北京にある「北京首都国際空港」は現在3200mと3800mの滑走路1本ずつが運用されており、空港までは今のところ高速道路が延びているだけで連絡鉄道の類はありませんが、人民日報Web版『人民網』日本語版に2007年02月16日付けで掲載された「首都空港、拡張工事が最終段階に 年内に完成予定」という記事によると、2004年5月頃から新たな拡張工事が始まり、エアバスのオール2階建て「A380」の離着陸も可能な全長3800mの第3滑走路を初め、総床面積98万6千平方メートルの第3旅客ターミナルビル、交通センター機能を備えた総床面積34万平方メートルの駐車場ビル等が建設され、今年12月の完成を目指して現在は全体的な設備取付と内装工事が進行しているものと見られます。そして今回のこの拡張工事で見込まれる総工費は約270億元(約4356億円)に達するとのこと。
そして、これまで無かったこの北京首都国際空港への鉄道系交通アクセスについても、その役割を担うべく市内とを結ぶ地下鉄の建設が昨年8月頃から始まっており、来年の4月1日の試運転開始を目指して工事が進められるとも報じられています(「北京地下鉄の空港線、トンネル工事が開始」)。
この「空港連絡」地下鉄(北京市首都空港快速ライン)は全長28.1キロで4つの駅が設けられ、その4つの駅全てに、松下電工の現地法人の協力を得て、ホームドアが設置されることになっています。
攻勢の構えを見せているのは北京だけではありません。
既に大型滑走路を2本備えている上海浦東空港も、3年後(2010年)に開かれる上海万博を睨んで、再拡張工事が現在進行中の模様なのです。
「上海浦東空港:拡張工事認可で滑走路5本体制へ」及び「上海浦東國際空港第二期拡張プロジェクトの総投資197億元」の両記事によると、上海浦東空港の第2期拡張工事が、中国国務院(日本の”内閣”或いは”内閣府”に相当)の認可を受け、間もなく着工する見通しとのこと《しかし2本の記事とも掲載から1年半以上経過しているから、今頃は拡張工事の真っ最中なのかな・・・》。
この上海浦東空港・第2期拡張工事では、総工費197億元(約3180億円)を投じて、新たに「長さ3400m×幅60m」の第3滑走路の建設と「長さ3000mと幅60m」の第4滑走路の土地整備と基礎工事、及び第2旅客ターミナルビルの建設が行われることになっており、2008年を目途に第3滑走路と第2旅客ターミナルビルを完成させる予定にしています。
更に、米国の大手貨物運送会社ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)は、同社のプレスリリース「UPS、米国航空会社として中国初のハブ空港構築を発表」の中で、上海浦東空港をUPSの中国国内に於ける貨物拠点(ハブ)と定め、そのために必要な拠点施設を来年を目途に空港内にオープンさせることで合意に達し、UPSと上海浦東空港の運営母体である上海空港グループ有限会社(上海机場集団有限公司)との間で、メアリー・ピータース米国運輸省長官と楊雄上海副市長の立会いの下、契約調印が行われました。
今回の契約は貨物拠点設置に係る業務契約およびリース契約からなり、その貨物拠点が設置されるのは上海浦東空港の南端に建設中の西貨物ターミナル区域内で、総面積は96,000平方メートル(100万平方フィート)に及ぶのだそうです。
このUPS貨物拠点設置により、中国全土が上海浦東空港を通じてUPSの持つ世界航空貨物ネットワークと繋がることになり、中国の貨物航空会社・揚子江快速航空有限公司との独占的提携と併せて、UPSネットワークを利用した中国から海外への荷物の発送や海外からの中国宛の荷物の受け取りが出来るようになる模様です《ちなみに、これは余談ですが、UPSは日本国内に於いてはヤマト運輸(クロネコ)と提携関係を結んでいます》。
以上挙げた周辺国の空港の再拡張の動きに対し、仁川国際空港でも拡張整備を着々と進めています。
SBSの報道とウィキペディア解説によると、仁川国際空港は、北東アジアの中心空港として生まれ変わるべく、既に運用されている東側2本の滑走路に加えて西側にも4000m級の滑走路を建設、更にメインビルディングの北側にもサテライトビルディング(ボーディングブリッジ)の建設が進められている模様で、現在、メインビルディングの北側にはそのサテライトビルディングの姿が次第に形となって現しているそうです。
手狭となった金浦空港の代替として建設された仁川国際空港・・・その全体計画などについて記した社団法人日本海洋開発建設協会のWebサイト内にて公開中の『韓国港湾空港調査報告書』の中の「3.仁川港、仁川国際空港および周辺整備→3-2の(2)仁川国際空港」というPDF文書を使ってもう少し詳しく見ていきますと、仁川国際空港の全体計画が完了するのは2020年の予定となっていますが、今回建設が進められているのは2002年から始まった第2期工事と思われ、ここでは4000mの第3滑走路建設と旅客ターミナル(サテライトビルディング)4棟の増設、それに各旅客ターミナル間を結ぶ移動用地下モノレールの建設が行われることになっています。
仁川空港は開港5年目を迎えた昨年に貨物輸送量で世界2位に浮上、北東アジアの中心空港としての地位を確立したところ。
仁川空港を運営する仁川国際空港公社では、来年開催の北京オリンピックに合わせて、完成予定時期を来年6月に前倒しすると表明しており、完成すると航空機運航回数は年間24万回から41万回に増加するのを初め、旅客4400万人、貨物450万tを処理できる見込みで、今後急ピッチで工事が進むものとみられます。
仁川国際空港公社のイ・ジェヒ社長は「2012年ごろには勝負手の分かれ道になるでしょう、そのように考えています。今準備している段階で、我々がサービス面で中国よりおそらく5年は先にいるものと・・・」と楽観的な考えを示していますが、一方で仁川空港の土地使用料が海外のライバル空港より高いこと(公示地価と連動しているため)、旅客乗り換え率が12%にとどまっていること等、北東アジアのハブ空港となるために避けて通れない課題も抱えていることも事実のようで、これらの課題の解決と、空港のバックグラウンドとして機能する仁川国際自由区域の1日でも早い開発が、今後、仁川国際空港が生き残れるかどうかのカギを握ることになりそうですネ。
東アジア地域の国際空港間の競争は、今後、益々ヒートアップしていきそうな予感ですネ。
P.S.
本ブログにて、以前、仁川国際空港とソウル市内とを結ぶ地下鉄の話をしているのですが(記事タイトル「そこそこ乗る日本、悲惨なぐらいにガラガラな韓国・・・・・・空港連絡線(鉄道)の実態について」)、お時間よろしければ今回の記事本文と併せてお読み頂ければ幸いに存じます《セットで考えてみると面白いかも…》。
【関連記事(追記)】
「本当に「24時間空港」の道へ。貨物で生き残れるのか、はたまた・・・・・・関空第2滑走路運用開始」
「”軍民共用化”途上の「茨城空港」、そして羽田とセントレアの間に建設中の「静岡空港」の抱える現実・・・」
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