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南仏の世界遺産・オランジュ古代劇場に於けるマズア指揮の「第九」・・・・・・『YouTube』より

 去る6月28日、現在の島根県大田市の大森の地を中心に採掘されていた「石見銀山」が、世界遺産委員会に於ける満場一致により、世界遺産への登録が決定したことは記憶に新しいところでしょう。

 日本国内では14番目の世界遺産への登録で、かつ11番目の文化遺産としての登録、そして産業遺跡としては国内初登録とのこと。

 「遺跡の普遍的価値の証明が不十分」との理由で登録延期が適当の判断が示される等、紆余曲折があっただけに、いわば逆転での登録決定は地元の人にとってはまさに感激もひとしおだったことかと思います。

 しかし、この”世界遺産への登録”が手放しで喜べるものかというと実はそう甘くないわけで、3年前の2004年7月7日に世界遺産登録がなされた「紀伊山地の霊場と参詣道」では、登録申請の段階で地元の地権者に対する説明が不十分だったことに起因する地権者による抗議活動(参道の樹木等への落書き)が起きる等の弊害が生じており、また1993年12月に世界遺産に登録された屋久島白神山地でも観光客の増加に伴う荒廃(天然記念物に指定されている植物への損壊等)が進んでいるとの指摘もあり、登録前と比べて環境がかえって悪化しているという手放しでは喜べない現実も横たわっているわけです。

 めでたく世界遺産の仲間入りを果たした「石見銀山」が今後とも良好な環境を維持出来るのか、地元の人たちはもとより観光客の協力も欠かせないところと思われます。

 

 

 それで、話は変わりますが、実は今回ご紹介する動画で映している「第九」公演の会場も「世界遺産」に登録された歴史的建造物が使われています。

 

 なお、今回とりあげるのは『YouTube』に寄せられている「第九」演奏動画の中の一つです。

 

 

 今回ご紹介する演奏動画で映し出される「第九」演奏会が行われた会場はフランス南東部・プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏のヴォクリューズ県オランジュ市内にあり、世界遺産に登録されている歴史的建造物、オランジュ古代劇場(ローマ劇場)で、今から約2000年前、ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥス(オクタウィアヌス)の治世下で建造され、収容人数は8000~10000人程度と推測されています。

 国際建設技術協会Webサイトに掲載されている『建設情報短信・2006年8月号』及びオランジュ観光局Webサイト内に用意されている日本語資料(PDF文書)、それにブログ内記事「20b) オランジュ → アヴィニョン」によると、このオランジュ古代劇場には元々木製の屋根があったものの、4世紀に火災のため焼失、その後屋根無しの状態が長らく続いたわけですが、その間に風雨に晒され続けることによる浸食が進んでいることから、フランス文化省の歴史的建造物保護事務局がこの古代劇場の本格的な保護に乗り出すことになったもので、ガラス・鉄等の素材を使って新たに屋根を製作し、風雨に晒され続けた壁面に負担がかからぬ工法で屋根取付を行い、昨年(2006年)の6月21日、この古代遺跡での野外音楽祭に間に合わせる形で、屋根の復元を果たしました。

 

 このオランジュ古代劇場の屋根復元前と復元後のそれぞれの姿を以下のブログ内記事で眺めることも出来ますので、見比べてみるのも一興かと・・・

 

 ◎ 屋根復元前
  「ローマ古代劇場:オランジュ/フランス
  「オランジュの夏

 ◎ 屋根復元後
  「オランジュの古代劇場
  「2007年4月13日

 

 そして、肝心の音響についてですが、「オランジュ音楽祭のカルメン」や「8月4日(オランジュ→アヴィニョン→オランジュ)」でも指摘されているように、現存するローマ時代の古代劇場の中で珍しくステージ後方に残る石の壁のつくりが音響面で良い影響を与えているとのことです。

 

 

 ところで、今回紹介する演奏動画では久しぶりに「第九」全楽章が収められており、全体は以下のように10分割となっています《赤字で示される動画は声楽(ソリスト&混声合唱)も入ります》。

 

 ◎ 動画タイトル『Beethoven 9eme symphonie』
  ● 「Part 1/10」…第1楽章「1~350小節目」
  ● 「Part 2/10」…第1楽章「351小節目~楽章終」
  ● 「Part 3/10」…第2楽章
              「1~530→1~8小節目」
  ● 「Part 4/10」…第2楽章
              「9~395→531小節目~楽章終」
  ● 「Part 5/10」…第3楽章「1~120小節目」
  ● 「Part 6/10」…第3楽章「121小節目~楽章終」
  ● 「Part 7/10」…第4楽章「1~202小節目」
  ● 「Part 8/10」…第4楽章「203~330小節目」
  ● 「Part 9/10」…第4楽章「331~638小節目」
  ● 「Part 10/10」…第4楽章「639小節目~曲終」
《スコア(総譜)上にて確認されたい方は、本ブログの「「第九」の楽譜が無料で手に入る!《オーケストラ用、合唱用とも》」という記事にてスコアの無料配布等の案内を行っていますので、ご利用下さい(なお無料配布物の入手・ご使用はあくまで自己責任の下でお願いします)》

 

 私も今回の動画を視聴したわけですが、映し出された映像から、今回の演奏動画はどうやらフランスの公共放送機関「フランス・テレビジョン」傘下の”France 2”放送局による番組として放映されたもののようですネ。

 

 そして『YouTube』に於いて公開されている出演者データは以下の通り。

 

 ソプラノ:メラニー・ディーナー [Mélanie Diener]
 アルト:マリー=ニコル・ルミュー [Marie-nicole Lemieux]
 テノール:ヨルマ・シルヴァスティ [Jorma Silvasti]
 バス:フランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒ [Franz-josef Selig]
 合唱:フランス国営放送合唱団
     [Choeur de Radio-France]
     Maîtrise des Bouches du Rhône 《◆》
 管弦楽:フランス国立管弦楽団
      [Orchestre National de France]
 指揮:クルト・マズア
     [Kurt Masur]
《◆…「Bouches du Rhône」はフランスの県名(ブーシュ=デュ=ローヌ県→プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏内)。”Maîtrise des Bouches du Rhône”を解説していると思われるのがこちらのページ(但しフランス語…)。悲しいかな、私自身フランス語はわからないのですが、眺めた感じでは、どうもブーシュ=デュ=ローヌ県内に所在する芸術系教育機関が組織する「少年少女合唱隊」又は「室内合唱団」の類と思われますネ》

 

 かつて、旧東ドイツ地域にあるライプツィヒを本拠としているライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の常任指揮者(楽長)を20年以上にわたって務めていたクルト・マズアでありますが《私なんか今でもマズアの名前を聞くと”ゲヴァントハウス管”を連想してしまいマス…》、その後ニューヨーク・フィル音楽監督やロンドン・フィル常任指揮者を歴任、2002年からはフランス国立管弦楽団の首席指揮者に就任している一方、アメリカ、日本等の著名オケを精力的に振って回っているようで、今後も彼の大車輪的な活躍は続くでしょうし、私自身も彼が作り出す音楽を気に入っている一人デス・・・

 

 それで、『YouTube』公開データでは公演年月日を示すものがありませんでしたが、今回の公演会場と指揮者名等で検索エンジンを使って抽出した以下の3記事・・・

 

  「農業国おフランス
  「後からついてきてくれる人
  「ミストラルに吹かれていろいろ考えた

 

以上の3記事から、恐らく約2年前の2005年8月6日(土)に行われたものと思われます《もしかすると間違っているかも…;ご指摘等大歓迎デス!》。

 

 

 それでは、10分割と細切れではありますが、どうぞお楽しみ下さい。

 

◎ Part 01(第1楽章「1~350小節目」)

◎ Part 02(第1楽章「351小節目~楽章終」)

◎ Part 03(第2楽章「1~530→1~8小節目」)

◎ Part 04(第2楽章「9~395→531小節目~楽章終」)

◎ Part 05(第3楽章「1~120小節目」)

◎ Part 06(第3楽章「121小節目~楽章終」)

◎ Part 07(第4楽章「1~202小節目」)

◎ Part 08(第4楽章「203~330小節目」)

◎ Part 09(第4楽章「331~638小節目」)

◎ Part 10(第4楽章「639小節目~曲終」)

 

 このマズア指揮による「第九」については、実は私自身も、かつての手兵ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団を指揮しての演奏が収録されたCD(ドイツ・シャルプラッテン盤)で何度も繰り返し耳にした時期があり、その時にはやたらティンパニを鳴らすところがある感じがする一方で、変な話、いかにも古典的、といいますか、情に流されずきっぱりとした響きを聴かせているような感じでしたが、今回のこのオランジュでの野外演奏では、ティンパニを出しゃばらせず、それでいて昔からの彼の音楽作りの基本であるきっぱりとした響きは踏襲しているような印象を持ちました。

 コーラスも綺麗に響かせていましたし・・・そして会場の響きも、これが2000年前に造られた野外劇場の響きなのか、と感心すると共に、演奏の素晴らしさと相俟って、堪能出来ました。

 

 

 マズアの1日でも長い長寿と更なる活躍を祈念してやみません・・・・・・

 

 

P.S.
 『旅行のクチコミサイト フォートラベル』内に掲載の以下の3記事でも今回の「第九」公演会場として紹介したオランジュ古代劇場を写真付きでふんだんに紹介しています。

 「2007年2月20日 Orange
 「フランスの旅 7/15 オランジュー
 「EUROPE 2007 SPRING☆DAY4 Orange

 

 

【おことわり】
 『Google Video』や『YouTube』等の動画投稿サイトにて公開されている動画については、今後、運営サイドの判断等により削除される可能性があります。その場合、お楽しみいただけなくなりますことを予めご承知おき下さい。

 

 

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コメント

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このyoutubeの演奏を教えてくださり、ほんとにありがたく思います。

一点、きつめのことを言わせていただければ、

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以上の3記事から、恐らく約2年前の2005年8月6日(土)に行われたものと思われます《もしかすると間違っているかも…;ご指摘等大歓迎デス!》。

------------------------------

失礼ながら、

あなた、どこ見てるんですか!(笑い)

と思いました。

演奏終了後、マズアが指揮台から下がっていくとき、

キャプションで、2005年8月6日と、出てます!!

それも、

大きな、太字で!!

出てます(笑い)

この時のBGMは、3楽章のメロディーが使われてます。

このBGMの中を、マズアが指揮台から下がって行きます。

--------------

ということで、コメントさせていただきました。

貴重なyoutube情報、ありがとうございました。

 「■■演奏日時、動画の最後に大きく出てます」さん、こんにちは。
 この度はご指摘ありがとうございます。

 確かに演奏終了後に表示されるクレジット表示の一番最初(扉部分)に見えました《フランス語表記でしたが───でも仰るとおり「2005年8月6日」です》。

 そしてその後、出演者やスタッフたちのクレジット表示が、「第九」第3楽章の音楽をバックに流れ表示されているのも確かに見えました。


 最後まで映像を見ていませんでした───改めて、ご指摘下さり、ありがとうございました。

 今後ともよろしくお願いいたします。

この記事へのコメントは終了しました。

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