調律器具をピアノ内部に置き忘れた!?・・・・・・イム・ドンヒョク(韓国)、2005年ショパン・コンクール本選にて
先日、今年開催の第13回チャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門でただ1人アジア勢で入賞した韓国のピアニストの話を書いたところ、2年前の2005年前に開催されたショパン国際ピアノコンクールの本選(決勝)に進出した際、演奏したショパンの第2コンチェルトの第1楽章から第2楽章に移るあたりで「事件」に遭遇したとの話をコメント欄にて接しました。
信じられない思いにとらわれてしまった私・・・
この情報を届けて下さったのは、先の記事の追伸(P.S.)のところで紹介させて頂いたブログサイト『PIOの日記~as a piano lover, as a tutor ~』の管理人・PIOさんで、ピアノ・サークルのWebサイトの管理人も務めておられます。
そして、その「韓国のピアニスト」の名は、イム・ドンヒョク。
彼に関することは本ブログの「唯一のアジア勢入賞者・・・・・・第13回チャイコフスキー国際コンクール・ピアノ部門の「話と動画」」という記事の中で、関連する新聞記事(リンク)の紹介をも交えて、書いていますので詳しいことはそちらに譲るとして、2005年開催のショパン国際ピアノ・コンクールの最終結果をおさらいしておきますと・・・
第1位:ラハウ・ブレハッチ
(Rafal BLECHACZ ;ポーランド)
第2位:該当者無し
第3位:イム・ドンヒョク
(Dong Hyek LIM ;韓国)
イム・ドンミン
(Dong Min LIM ;韓国)
第4位:関本昌平(日本)
山本貴志(日本)
第6位:リー・カ・リン・コリン
(Ka Ling Colleen LEE ;香港)
ご存知の方もおられると思いますが、この時にはイム・ドンヒョクは兄のイム・ドンミンと共に第3位入賞を果たしています。兄弟揃っての同一順位入賞はショパコン史上初めて、また韓国人のショパコン上位入賞も初めてだった模様です。
このショパコン本選の時のイム・ドンヒョクに関しては、兄のイム・ドンミンより良かったとの簡潔なレポートや(→「ショパンコンクール ファイナル最終日」)、この本選の模様を収録したライヴCD評の形で「朝日をいっぱいに浴びて輝く丘に立つ一頭の美しい駿馬。そんな爽やかな演奏」と好意的に評している(→「ショパン:ピアノ協奏曲第2番聞き比べ(1)」)一方で、『2ちゃんねる』ユーザの間からは、兄弟同一順位入賞としたのは弟のイム・ドンヒョクが再び受賞拒否をすることの無いようクギを刺す狙いがあったためだとか、コンクールの模様を逐次ネットで中継放映していた地元ポーランドのテレビ局宛に、第2次予選通過者発表後、視聴者からの怒りの電話が殺到したがその大半は日本の根津理恵子(本選では入賞ならず)と韓国のイム・ドンミンの本選選出に対する批判だったとの話も飛び出す等、なかなか一筋縄ではいきませんネ。
で、今回の記事を書くきっかけとなった、イム・ドンヒョクが2005年ショパコン本選で遭遇したという事件ですが、先日掲載の記事の中では、ショパンの協奏曲の第1楽章の演奏中におかしいと感づいたイムが第1楽章の終了後に舞台袖に引っ込んで調律師を呼び出し、中を開けさせたところ調律器具が入ったままだった、と書きましたが、「ショパン・コンクール速報2」によると具体的に何がピアノ内部に入っていたか等の発表が会場内で無かったために様々な憶測が飛び交っていたとのことで、『2ちゃんねる』内では、鍵盤蓋のフェルトがめくれてただけだった、との噂が駆けめぐっていた模様です《それにしても”鍵盤蓋のフェルトがめくれてただけ”というのもおかしな気がする…もしかすると調律師が忘れていったという調律器具とはその”鍵盤蓋のフェルト”なのだろうか、わからんけれども》。
その、騒動を起こしたイム・ドンヒョクのショパコン本選に於ける演奏の動画が『YouTube』に寄せられ、今も健在ですので、以下にてご覧頂くことにしました。
なお、ご存知の方も多いと思いますが、ショパコン本選ではショパンが生前残している2曲のピアノ協奏曲のうちのどちらかを選んで、地元オーケストラをバックに、演奏することになっているのですが、イム・ドンヒョクは「第2番(作品21)」を選んでいました。
◎ 第1楽章
DongHyek Lim
Chopin Piano Concerto No.2 - 1st mov.[1 of 2]
DongHyek Lim
Chopin Piano Concerto No.2 - 1st mov.[2 of 2]
◎ 第2楽章
DongHyek Lim
Chopin Piano Concerto No.2 2nd mov. Larghetto
◎ 第3楽章
Dong-Hyek Lim
Chopin Piano Concerto No.2 3rd mov.
余談になりますが、このイム・ドンヒョクが出場した本選2日目全体の模様をリアルなタッチでまとめたレポート記事もリリースされているのですが(→「本選2日目のトラブル鑑賞」)、ショパコン本選に入ってからストリーミング中継のほうは絶不調だったそうで、イム・ドンヒョクの演奏順に入ってもネットラジオの配信不調は続き、第1楽章演奏の終わりくらいになってようやく回復したとのことで、第1楽章終了後のトラブル発生時にはネットラジオの配信のほうは正常だった模様。
イム・ドンヒョクの演奏が終わって小休止に入ったところで実行したアクセス解析の結果を見たレポート記事の記者は、そこで多くの人が自分と同じくネットラジオの配信不調で苦しんでいる事実を思い知らされたのだそうです。
さて、イム・ドンヒョクのショパコン本選に於ける演奏の動画を紹介しましたが、ドンヒョクと同じ第3位に入賞した兄のイム・ドンミンによる本選に於ける演奏の動画も『YouTube』に寄せられていますので、ついでに紹介しておきます。
参考までに、イム・ドンミンのプロフィールをここで簡単に紹介しますと(コンサートイマジンWebサイトより)、1980年ソウル生まれの彼は、1992年、サミクピアノコンクールを初めとする韓国国内に於ける三つの名高いコンクールにて優勝。その後韓国ソンワ音楽芸術学校、大韓民国国立音楽院を経て、1994年にはモスクワに移住してモスクワ国立音楽院付属中央音楽学校を経てモスクワ国立音楽院に進学、そこで、弟のドンヒョクと同様、レフ・ナウモフに師事。更にハノーファー音楽大学に進学してV.クライネフに師事しています。
1996年9月にモスクワで開催された第2回青少年のためのショパン国際コンクールで優勝したのを初めとして、イタリア・ヴィルセリで開催のヴィオッティ国際コンクール(2000年)で1位無しの第3位、同じくイタリアのヴォルツァーノで開催のブゾーニ国際コンクール(2001年)で第3位、2004年5月開催の第56回プラハの春国際音楽コンクールで第2位・・・と実績を重ねてきています。
チャイコフスキー国際コンクールにも参加経験があり、1998年の第11回大会では第2次予選で惜しくも姿を消しましたが(但し審査員特別賞を受賞)、2002年開催の第12回大会では本選にまで進み、結果は第5位入賞を果たしていますが、これは韓国人では初めての上位入賞だったそうです。
兄のイム・ドンミン、本選では弟とは反対に「第1番(作品11)」を選択していました。
◎ 第1楽章
DongMin Lim
Chopin Piano Concerto No.1 1st mov. [1of 2]
DongMin Lim
Chopin Piano Concerto No.1 1st mov. [2of 2]
◎ 第2楽章
DongMin Lim
Chopin Piano Concerto No.1 2nd mov.
◎ 第3楽章
DongMin Lim
Chopin Piano Concerto No.1 3rd mov.
以上でイム兄弟のショパコン本選に於ける演奏動画の紹介は終わりとなりますが、このショパコン本選を後にクラシック音楽専門のCS放送チャンネルであるクラシカ・ジャパンで視聴した方がまとめ上げたレポート記事「韓国のイム兄弟」によると、兄のドンミンについては力強くてボリューム感があってフレーズを大づかみに作っていく反面、ちょっと粘着性というか脂肪分過多の感じが否めない印象とのことで、一方弟のドンヒョクはシャープで現代的な印象だったそうです。
その上でこのレポート記事は、日本人は感情表現が抑制的なのに対し、韓国人は外に向かってストレートに感情表現をするので、西洋音楽は日本人よりも韓国人の方が向いているとも言われるが、西洋音楽というものは、ただ強烈な表現をするだけではなく優美さや洗練も求められますので、最終的にどのようにまとめるかが本当に難しい、と締めくくっています。
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ここで少し道草しまして、昨日ネット上にて目にしました、最近の韓国音楽界で起きたとんでもない事件を紹介しておきます。
「20代女性講師が変装して中学生楽器コンクール出場」
《『朝鮮日報』日本語版Web・2007/06/01付け掲載記事》
京畿道・安城で開かれた楽器演奏コンクールで、最優秀賞を受賞した学校の部員に20-30代の女性講師2人が含まれていたことが発覚した。 今月18日に安城市民会館で開かれた「安城学生芸能コンテスト」で、安城女子中学校の弦楽合奏クラスが最優秀賞を受賞した。 しかしその後、弦楽合奏クラスの学生たちに特技適性教育を行っていた24歳と31歳の講師2人が、学生たちに制服を借りてステージに立ち、バイオリンとチェロを演奏していたという噂が学校内で広まった。 調査の結果、噂は事実であったと判明し、安城女子中学校は28日、安城教育庁に賞を返上した。学校関係者は「指導に当たった教師が合奏クラスを担当してから3カ月しか経っておらず、(良い成績を得るために講師を舞台に立たせるという)軽率な行動をした」と語った。 安城教育庁の関係者は「講師たちは制服を着れば遠くからは学生と全く同じように見え、審査の過程で発見することができなかった」と話した。 |
↓ ↓ ↓ (別件かも?)
「教師が女子中学生に成りすまし、音楽コンクールで優勝」
《『AFPBB News』2007年06月02日付け掲載記事》
【6月1日 AFP】音楽コンクールで優勝したソウル市内の女子中学校が前月28日、音楽教師が生徒に成りすまし出場するという不正があったと謝罪し、主催者側に優勝を辞退すると伝えた。 朝鮮日報によると、生徒に成りすましたのは24歳と36歳の音楽教師で、オーケストラのバイオリンとチェロを担当していた。コンクール後に立った噂をもとに調査が行われ、今回の不正が明らかになった。 教育委員会関係者は「教諭たちはずいぶん年は上だが、遠目には制服を着た生徒に見え、変装が見破れなかった」と話した。 韓国では、芸術やスポーツの分野で良い成績を上げた教師には通常、昇給や昇格が約束される。 似たようなケースでは先月、国内で最も権威のあるコンテストの入賞者が事前に決定されていた疑いがあるとして、アーティストや関係役員9人が訴えられた。過去には、現金で腕のいい芸術家を雇い、自分名義で作品を発表するという事件がいくつか摘発されている。(c)AFP |
ちなみに「京畿道・安城(京畿道安城市)」は、ウィキペディア解説によると、韓国北西部のソウルを取り巻く京畿道(但しソウルは「ソウル特別市」として独立)の南東端に位置する都市で、ソウル近郊の街の一つ、といったところでしょうネ《そういえば愛知県にも「安城市」というのがあったような・・・》。
で、ここで少しだけ体格の話をしますと、最近は、食の欧米化の影響もあって、日本人にしても年々体格が大型化してきていることはテレビ等の各種メディアでしばしば取り上げられているみたいで、この傾向は小中学生に於いても同様であることが弘前大学大学院教育学研究科による調査(→「児童・生徒の体格変化の移り変わりについて」)でも明らかになっています。そして、ネット上で色々調べていると、この体格大型化の傾向はどうやら韓国でも同様のようです。
ごまかした音楽教師の女性のほうがよほど若作りの顔をしていて身長がそれほど無かったか、それとも参加していた中学生が体格が良くてしかも老け顔だったのか、失礼な言い方となってしまいましたが、色々と憶測をしてしまうところですネ《なお「教師が女子中学生に、コンクールで優勝、韓国」というブログ内記事でも似たような印象が綴られています》。
それにしても、日本じゃちょっと考えられないですね、これは《尤も、これは音楽界の話ではありませんが、日本でも公務員や国会議員の「学歴詐称」が大きく報じられたことがありますが…》。
話を本題に戻しますが、ここで、ついでというのも変ですが、この2005年のショパコンで見事優勝した地元ポーランドのラファウ・ブレハッチ(Rafal BLECHACZ)による本選演奏の動画も『YouTube』に寄せられていましたので、最後に紹介しておきましょう。
このブレハッチの本選演奏については、先の「韓国のイム兄弟」の他、『ピアノカプリッチョ』というブログサイト内に掲載されている「ショパン国際ピアノコンクール最終日」と「ショパン国際ピアノコンクール総括・ラファウブレハッチの独壇場」の両記事にてレポートされているのですが、それらを総括してみると、一度聴いただけではごく普通の演奏と思われるかもしれないが、聴いているうちに、隅々にまで柔軟性というものを感じさせ、あたかも極上の羽布団のような暖かさとまろやかさを備えた演奏になっている、というふうな感じですネ。
それではご覧頂きますが、優勝者ブレハッチの本選演奏では「第1番」を選択していました。
◎ 第1楽章
Rafal Blechacz
Chopin Piano Concerto No.1 1st mov. [1of 2]
Rafal Blechacz
Chopin Piano Concerto No.1 1st mov. [2of 2]
◎ 第2楽章
Rafal Blechacz
Chopin Piano Concerto No.1 2nd mov.
◎ 第3楽章
Rafal Blechacz
Chopin Piano Concerto No.1 3rd mov.
なお、ラファウ・ブレハッチの近況については『 Twinkle berry♪』というブログサイトの「Rafal BLECHACZ」カテゴリー内にて確認出来ますが(このブログの管理人はWebサイト『Rafał Blechacz Fan Site』も運営している模様)、これによると、最近では6月に日本公演を行った他、先月(7月)にはドイツ・ハンブルクにあるドイツ・グラモフォン(DGG)のスタジオにてレコーディングを行う等、ショパコンから間もなく2年経とうとする中、ブレハッチ自身は益々快調のようですネ《そりゃ当たり前だと思われるかもしれませんが、歴代のショパコン優勝者の全員がその後すぐ演奏活動等に入っているわけでは限りません→ポリーニという”偉大な例外”も有り》。
2005年開催の第15回ショパン国際ピアノコンクールから間もなく2年になりますが、こうしてみていくと、ちょっと気が早い言い方なのかもしれませんが、懐かしさというものを感じると共に、どうであれ各々が自らの道を着実に歩んでいるんだなぁ、との感慨に耽ってしまいました。。
私自身も、感慨に耽ってばかりいるのではなく、一歩一歩踏み出していかなくっちゃ・・・
【おことわり】
『Google Video』や『YouTube』等の動画投稿サイトにて公開されている動画については、今後、投稿者或いは運営サイドの判断等により削除される可能性があります。その場合、お楽しみいただけなくなりますことを予めご承知おき下さい。
P.S.
優勝者ラファウ・ブレハッチの本選演奏を『YouTube』を通じて見たという「Rafal Blechacz&ちびっこピアニスト」によると、演奏自体は素晴しくて鳥肌モノだったが、動画自体はテレビの前にビデオか何か置いて録画しているものと思われ、音質はよくない、とのこと。動画自体の評価も綴っているあたりは珍しいですネ。
更にこのブログ内記事では、モーツァルトの『ピアノ協奏曲第26番K.537「戴冠式」』を演奏している小学生くらいの女の子の映像についても紹介しており、これこそ「神童」だ、と驚いている様子でした。
その「神童」と絶賛する女の子によるモーツァルトのコンチェルト演奏の動画を以下に示します《『YouTube』に寄せられた演奏動画です》。私の目で見た感じでもやはり小学生が弾いている印象でした。
Concerto for Piano and Orchestra No. 26
Coronation Mozart
既に22万回以上視聴されている模様ですが、残念ながらこの演奏動画で映し出されている演奏会が何時どこで行われたどんな演奏会なのかは、『YouTube』公表データ中に記載が無いため、わかりませんが、映し出されている背景(パイプオルガンの形態、オケの背後にある壁の形状等)から、東京オペラシティ・コンサートホールで行われたものと推測出来ます。
【関連記事(追記)】
「ロシア人優勝、日本人入賞ならず・・・エリザベート王妃国際音楽コンクール2007」
「唯一のアジア勢入賞者・・・・・・第13回チャイコフスキー国際コンクール・ピアノ部門の「話と動画」」
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通りすがりの者です。
先日、韓国ドラマのベートーベン・ウィルスというのを見ました。
2008年の作品で少し古いのですが、チョン・ミョンファンという微妙な名前の主人公の
ライバルが出てきます(さすがにマエストロの出演が難しかったため?)。
その高校生役の人が、木枯らしのエチュードをサラッと弾くシーンがありました。
ほんのさわりだけでしたがとても印象に残り、調べたらイム・ドンヒョクさんでした。
それでこちらへお邪魔したわけですが、まさしくすべての音がキラキラしていました。
そのほか、ソ・ヘギョンさんやビオラのヨンジェ・オニールも出演していて素敵でした。
マエストロをはじめ、スミ・ジョーさんとか韓国にも魅力的な音楽家がいらっしゃいますね。
既出の話題でしたらスミマセン。
投稿: | 2014年10月11日 (土) 20時05分