韓国・仁川国際空港へのアクセス鉄道「空港鉄道A'REX」を考える【1ヶ月前掲載の記事の続編も兼ねて】
1ヶ月くらい前、このブログでも韓国・ソウル近郊にある仁川国際空港とソウル市内を結ぶ連絡鉄道、空港鉄道「A’REX」に纏わる話をしました《→「そこそこ乗る日本、悲惨なぐらいにガラガラな韓国・・・・・・空港連絡線(鉄道)の実態について」》。
その際、鳴り物入りでデビューしたものの、いざ開業してみると利用者数が伸びずに大赤字で苦しんでいることもお話ししました。
その状況は今も変わっていない模様です・・・
空港鉄道「A’REX」に実際に乗車された方々からのレポートもネット上で続々と公開されています。
仁川空港~金浦空港間の暫定開業(3月23日)の翌日に金浦空港からの往復で乗車した方のレポート「仁川空港鉄道A'REX開通!各駅で降りたら、人がいない!」では、金浦空港駅で乗車券を購入する場面からきめ細かに写真に収め、車内に入ってからはあらゆる角度の写真を残す等、たくさんの写真を掲載してくれているので、見ているだけであたかもその場にいる気にさせてくれる、立派な写真レポートに仕上がっているのですが、開業翌日にもかかわらずガラ空きだったことが伝わってきます。
また、開業1ヶ月後に仁川国際空港から終着の金浦空港まで乗車したという人のレポート「A'REX」でも、仁川空港から「A’REX」の駅に通ずるムービング・ウォークや列車内に殆ど人がいないようなことを報告しています。
そして、先月には以下列挙のレポート3本立てもリリースされています《リリース元(3本共)→『たかとう矯正歯科医院』》。
「普通の韓国を探して1124 空港鉄道に乗ってみた1」
「普通の韓国を探して1126 空港鉄道に乗ってみた2」
「普通の韓国を探して1130 空港鉄道に乗ってみた3」
こちらレポート3本立ても駅構内や車内などをきめ細かく写真に残しているのですが、やはり人は殆どおらず、ガラガラだったとのことです。
更に「A’REX」車内を撮影した動画が、1本だけですが、『YouTube』にも寄せられています。
A'REX , Incheon Int'l Airport Railroad
『YouTube』にはもう1本、「A’REX」に関連した動画が寄せられているのですが、こちらは外の風景を映しているのみとなっています(時間も15秒程度と短め)。
仁川空港鉄道ソウルへ 인천공항철도 서울에서
《車の方が早い!?》
ところで、前回掲載の「そこそこ乗る日本、悲惨なぐらいにガラガラな韓国・・・・・・空港連絡線(鉄道)の実態について」という記事の中でも書きましたが、ガラ空きの原因と思われるものとして、周囲を走るソウル・仁川の各地下鉄やKORAIL電鉄線(広域電鉄線)が形成している「首都圏電鉄」ネットワークに入っていないせいか、これら地下鉄と広域電鉄線とは別の独立した運賃体系をとっていることをお話ししました。
実際、「特別編 ~ 空港鉄道・A'REXに試乗」という空港鉄道「A’REX」の試乗会の模様を報告しているWebページの最初のところで、
A'REXは従来の広域電鉄・地下鉄網と独立した料金体系を持っているため、金浦空港などの接続駅では一度改札を出て切符を買い直す必要があります |
と説明されていますし、「がら空き空港鉄道・・・数百億の赤字」というブログ内記事(韓国MBCテレビ報道記事からの邦訳文)の中で、空港鉄道と地下鉄間に割引される乗り継ぎ料金が適用されないことが(ガラ空きの)大きな理由、とした上で、「乗り継ぎに対して割引を行えば、それだけ運営機関では赤字になります。その点は協約する際の考慮部分ではありません」との空港鉄道営業管理チームの担当者の発言を紹介しています。
でもその結果が、以上のレポートで紹介されているような、いわば「空気を運ぶ」状況をつくっているわけですネ。
それで、2009年に予定されている金浦空港~ソウル間の延伸開業、及び金浦空港駅で連絡(乗り換え)する地下鉄9号線の新規開業が実現されると(ソウルまでの延伸開業については「2010年の予定」という話もあり)、延伸区間である金浦空港~ソウル間では区間内の全ての駅で必ず何かの首都圏電鉄線(地下鉄・KORAIL広域電鉄線)との乗り換え(連絡)があること、また新規開業となる地下鉄9号線については空港鉄道との直通(相互?)乗り入れの予定もあることから、今のガラ空きの状況はある程度解消出来ると思いますが、ここはやはり独立した運賃体系をとるのではなく、素直に「首都圏電鉄」ネットワークの輪の中に入れてもらうことで他の地下鉄等と運賃の通し計算が出来るようにしたりとか(「直通列車」の扱いについては本ブログ内記事をご覧下さい)、最低でも今の独立した運賃体系を維持しながらも「首都圏電鉄」線への乗り継ぎに際して割引を認めるとかしなければシャトルバス等の利用客を空港鉄道に呼び込むことは難しいでしょう《まあ運営会社にその気があるのかどうかはわかりませんが;『2ちゃんねる』でも、地元民からすると近郊電車(首都圏電車)の一つにしか見えないであろう「A’REX」に乗り換えるのにまた運賃を1から払うという慣れない概念が出てくるために拒否反応が強く出るのでは、といった指摘も出ています》。
そして更に一歩進んで、今はソウルまで延伸することになっているそうですが《ただこのソウル延伸では江南地域には行きにくいとの『2ちゃんねる』ユーザの指摘有》、そこで終わりとせず、電源方式がKORAIL広域電鉄線と同一(交流25,000V、60Hz)でしかも同じ標準軌であることを利用して、ソウル乃至は何処か適切な地点で広域電鉄線と線路をつないでしまうことでそのまま広域電鉄線に直通乗り入れさせることも可能ですし(車両限界や建築限界の問題がクリア出来ていることが前提ですが…)、また直通運転を予定している地下鉄9号線を使って広域電鉄線と交差するあたりで広域電鉄線に線路をつなぐのも考えられるところですね。
尤も、この乗り入れの問題に関しては、現在、「A’REX」の1000系電車(直通列車用)と2000系電車(普通列車用)の詳細な各諸元(交流専用なのか交直両用なのか、車両外寸について・・・等)がネット上でも公表されていないため、これ以上のことは書けないところですが・・・
2年余り後にソウル延伸等を控えているとはいえ、それまでの間ずっとガラ空きの状況が続けば赤字額は更に膨らむわけで、「がら空き空港鉄道・・・数百億の赤字」によると、韓国国内では、建設に際して4兆ウォンのお金を投じた空港鉄道が、このまま金食い虫の鉄道に転落するのではないかとの悲観論も飛び出しているとのことです。
なお、この「A’REX」について、『2ちゃんねる』内では、もともとKTXを通すよう計画されていて路盤や線路が高規格で造られている、といった噂もあります《あくまで「噂」ですけれどもね…》。
空港連絡鉄道といえば、以前掲載の「そこそこ乗る日本、悲惨なぐらいにガラガラな韓国・・・・・・空港連絡線(鉄道)の実態について」でも書きましたが、日本では”日本の玄関”ともいわれる成田空港への空港アクセス鉄道としてJR線と京成線の2社線が機能していますが、2社線とも東京都心に直結している上に、JR線は全国へと伸びるJRネットワークに、京成線は都営地下鉄浅草線を経由して京急線・羽田空港に、それぞれ線路が繋がっていることもあり、1日あたり乗降人員合計がJR線22,154人と京成線37,239人(「空港第2ビル」・「成田空港」の2駅の合計で)を記録、また韓国国内の鉄道建設で縁の深いフランスの首都パリの郊外(ロワシー市)にある空港、シャルル・ド・ゴール国際空港でも空港アクセス鉄道として高速鉄道TGVやRER(近郊急行鉄道網)がパリ中心部にまで線路を延ばしており、TGVはご存知の通りフランス国内の高速鉄道(TGV)網へとレールが繋がっているし、またRERについてもパリ市内及び郊外とを結ぶ鉄道ネットワークへと繋がっています(→「パリの交通」のウィキペディア解説へ)が、「Paris ~ドゴール空港駅からRER、TGVに乗る」 というWebページを眺めていてもわかりますように、そこそこの利用がある一方で、パリ中心部への廉価な交通手段でもあるRERは治安面で不安を抱えているのも現状のようです《「Paris 空港から市内へのアクセス ~高速鉄道 RER 基本情報」(RER解説との併記で危険情報も)、「パリ旅行記 滞在編1」(豊富な写真付きで体験談等をリポート)とか》。
やはり利用者(とりわけ地元であるソウル首都圏在住者)にとって使いやすい運賃・運行体系等にすることでシャトルバスから乗客を奪えることを空港鉄道「A’REX」の運営会社は素直に認めるべきではないでしょうか。
変な意地を張らずに・・・・・・
以上、本当は韓国人の口から言われるべき内容であるところ、代わりに(というか勝手に!?)私のほうでぶちまけました《出しゃばりすぎ、ってか…》。
【おことわり】
『Google Video』や『YouTube』等の動画投稿サイトにて公開されている動画については、今後、投稿者或いは運営サイドの判断等により削除される可能性があります。その場合、お楽しみいただけなくなりますことを予めご承知おき下さい。
P.S.
この韓国・仁川国際空港の空港鉄道「A’REX」については、実は開業前の姿を写真付きでリポートしたものがあります。
「空港鉄道2000系甲種輸送」と「空港鉄道 開業前レポート」の2つのWebページがそれで、何れも『西船junctionどっと混む』に掲載されているものですが、この中で「空港鉄道2000系甲種輸送」では韓国南部の昌原市にある車両工場から大邱、大田を経由してソウル、仁川入りしていくKORAILのディーゼル機関車牽引による「A’REX」用2000系車両(普通列車向け)甲種輸送列車の姿をとらえた写真たちがレポートにしてまとめられているのですが、夜中の大田駅ホームに停車している甲種輸送列車のスクープ写真を眺める限りでは、KORAIL広域電鉄区間でもちゃんと走れそうな印象を受けました《まあ単細胞的発想なのかもしれませんが…》。
【関連記事(追記)】
「そこそこ乗る日本、悲惨なぐらいにガラガラな韓国・・・・・・空港連絡線(鉄道)の実態について」
「更なる競争激化か、仁川国際空港とその周辺国の空港・・・・・・あの関空も貨物で”参戦”!?【韓国SBS報道】」
「2号線に新車投入、7号線延伸、9号線の初乗り運賃決定・・・・・・ソウルの地下鉄の話題(7→8月)」
「駅構内の空気環境保護!?・・・・・韓国ソウルの地下鉄に於けるホームドア設置実態と本当の設置理由」
「韓国地下鉄”スクリーンドア”のある風景・・・・・・ロシアの”恐怖のホームドア”も」
「地下鉄駅構内が放射能(ラドン)に汚染!?・・・・・・韓国ソウルの地下鉄にて」
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