世界初のハイブリット鉄道車両「E200系気動車」デビューから・・・・・初トラブルも
去る7月31日、高原の鉄路に、トヨタの「プリウス」の鉄道版というべきところの新しいタイプの”ハイブリット”ディーゼルカーの記念すべき第一歩が刻まれました。
JR東日本の新型ディーゼルカー、「E200系」。
与えられた愛称は”こうみ”。
この「E200系」ディーゼルカーの開発者へのインタビュー記事が、去る8月11日付で、『産経イザ!』に掲載されたのですが、一番苦労したのは、”ハイブリット車両”の真骨頂といわれるべきところの「動力切り替え」(蓄電池~ディーゼル機関)のタイミングだったそうです。
■世界初、「こうみ」を完成させた大村哲朗(おおむら・てつろう)さん 列車も“エコ”の時代へ-。ディーゼルエンジンに蓄電池を組み合わせたハイブリッド列車「こうみ」が、7月31日から長野県と山梨県を結ぶJR小海(こうみ)線で世界初の営業運転を始めた。電力を利用してエンジンの負担を軽減し、大気汚染物質の排出量を約60%減らしたクリーンな列車だ。 社内で唯一「こうみ」専属の開発担当者として、動力部から内装まですべてにかかわった。「こだわり」は、動力源をリアルタイムで表示する車内のモニター。蓄電池とエンジンが目まぐるしく交代し「ハイブリッドシステムを実感できます」 入社10年目で整備部門から念願の開発部門に移り、初めて手掛けたのが「世界初」の列車。試験車までは前任者が造っていたが、「それだけに重圧を感じた。ここまで来て、できないとは言えませんから」と振り返る。 マニュアルに従う整備とは違い、開発は「やってみてナンボ」の世界。試験車にトイレなど営業用の設備を乗せたら動力部が収まらず、機器の配置は1からやり直し。動力源の切り替えは「急こう配の小海線を効率よく走らせる鍵」だ。蓄電池とエンジンを切り替えるタイミングの微調整に、3カ月近くを費やした。 現在も整備などのため「ハイブリッド担当科長」として長野県佐久市の営業所に常駐、列車の運行を支える。足掛け4年、いよいよ人々を乗せて走り始めた列車を前に「1つの区切りとして感慨深い」と目を細めるが、すぐに「本番はこれから」と表情を引き締める。東京都出身、38歳。 |
大村氏の話す「試験車両」とは昨年(2006年)4月に発表された「NEトレイン(New Energy Train)」のことを指すと思われますが、この試験車両では東北地方を走る701系電車と外観が似ていたことから、非電化区間にも701系電車のような車両が走るのか、と思ったものですが、最終的に出来上がったのはこれまでに無い独特の形状をした車両となっていましたネ。
そのハイブリット試験車両を完成させた前任者から引き継いだこともあって重圧を感じたという大村氏、動力面の他、トイレ等の営業用設備と動力機構の位置関係等に苦しみながらも、「とにかく色々やってみる」という心意気で開発を進め、その甲斐もあって去る7月31日のデビューに至ったわけです。
それで、デビュー当日の模様は本ブログの「小海線に「こうみ」デビュー・・・・・・世界初ハイブリット気動車「E200系」、営業運転開始」という記事でも伝えていますが、山梨県の地方紙・山梨日日新聞Web版にデビュー翌日の日付(8月1日)で掲載された「世界初のハイブリッド列車「こうみ」運行開始 JR小海線 清里、小淵沢駅でセレモニー」という記事によると、山梨県内に所在する清里・小淵沢両駅で行われた記念セレモニーでは、武者に扮(ふん)した駅長らによるくす玉割りやテープカット、「甲斐の国 小粋」によるよさこいソーランの披露等が行われたそうです。
更に、「E200系」営業運転開始を記念して販売を始めた記念駅弁について、「ハイブリッド列車記念駅弁」というブログ内記事が伝えているところによると、この記念駅弁の正式名称は「JR20周年記念 世界初ハイブリッド車両小海線運行記念 高原野菜と牛焼きむすび」(JR東日本長野支社のリリースでは「高原野菜と牛焼きむすび」と記載されています)、1個1,100円で1日30食限定販売だそうです(この駅弁の製造元のWebサイトにも限定数に関する記載有り)。またこのブログ内記事では記念駅弁の中身に関する詳細なレポートも行っています。
なお、そのブログ内記事の指摘によると、弁当パッケージには「期間限定販売」と刷り込まれているものの、具体的にいつまでの販売なのかはサイト上でも確認出来ないとしていますが、先のJR東日本長野支社のリリースによると、販売期間は「平成19年7月31日(火)~11月頃」とのこと。
”11月頃”というのがちょっと曲者ですが、11月までの間に一定数に達したところで販売終了とするのか、それとも11月中の適当な日に突然打ち切るのか・・・
で、そのようなお祝いムードの一方で、世界初ならでは(!?)の出来事も既に発生しているようで・・・
初めに紹介した『産経イザ!』記事の掲載日付と同一日付(8月11日)で信濃毎日新聞Web版『信毎Web』に掲載された記事によると、去る8月10日、小海線甲斐小泉駅にて電気系統のトラブルが発生したそうですネ。
10日午後零時50分ごろ、山梨県北杜市のJR小海線甲斐小泉駅で、小淵沢発野辺山行きハイブリッド列車(2両編成)に不具合が発生、運転を取りやめた。同列車を使う上下5本が運休・部分運休し、約500人に影響が出た。JR東日本長野支社によると、同列車のトラブルは7月31日の営業運転開始以来、初めて。原因は調査中としている。 同社広報の説明では、甲斐小泉駅に停車中、電気系のトラブルがあり、車内灯が消え、冷房が止まった。動力に影響はなく、発車できたが、「暑い時期に冷房が効かない車両での輸送はサービス低下になる」として、運転を取りやめたという。乗客約120人は、同社が手配したバスやタクシーに乗り換えた。 ハイブリッド列車は動力にディーゼルエンジンと蓄電池を併用。電気モーターだけで発車し、途中からエンジンも使って走る。8月は主に小淵沢-野辺山間を往復している。 |
先の『イザ!』掲載記事の中でインタビューに応じていた大村氏、どんな心境になっていたのやら・・・
とはいえ、こうした失敗(トラブル)を次の車両開発に生かすことで、よりよい車両を造っていってもらいたいものですネ。
世界初のハイブリット鉄道車両、「E200系」ディーゼルカーはまだ走り出したばかり。
今後どのように成長していくのか、楽しみです。
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