岐阜県内、東は高山線運転再開で沸き、西は存廃の危機に直面・・・・・・樽見鉄道(大垣~樽見間)
ブログサイト『汽車旅のしおり』の中に『廃止危惧路線一覧表』という記事を見つけました。
変な話、”鉄道版レッドデータブック”といった感じですネ。
ここには、今後廃止される可能性のある、或いは廃止予定の鉄道路線がリストアップされているのですが、その中で一番ショッキングに感じたのはJR大垣駅から伸びている第3セクター鉄道、「樽見鉄道」(旧国鉄樽見線)もリストの中に入っていること。
かつて「ムーンライトながら」の前身の”大垣夜行”がまだ健在だった頃、上り東京行に乗り込むべく大垣駅5番ホームに幾度か並んで待ったことがありますが、その度に同じホームの名古屋方先端部の反対側6番のりば(樽見鉄道のりば)から出ていく樽見鉄道のディーゼルカーの姿を眺めていたものです。
ですので、生憎乗ったことはないものの、それなりに愛着を覚えている次第です《尤も本当に樽見鉄道(或いはその前身の”国鉄樽見線”)に乗ったことのある人には及びませんが…》。
その樽見鉄道がまさか、いわば”絶滅危惧種”扱いとなっているとは・・・
先のブログ内記事が案内してくれている、”絶滅危惧種”となる根拠となっている新聞記事・・・
「樽見鉄道支援、条件付きで3年延長へ 大垣市」
《岐阜新聞Web版・2007年09月14日付け掲載記事》
経営難から沿線市町が財政支援を行っている第3セクター・樽見鉄道(本社本巣市)について、大垣市は13日、増収や経費節減などの条件をクリアできる体制が整えば、来年度から3年間、支援を続ける方向で他市町との協議を進める方針を明らかにした。 同市が提示した条件は▽国や県の支援制度が継続▽現状支援の範囲内での補助▽増収▽経費節減▽資金が不足しない▽安全運行―の6項目。市によると、沿線3市2町で構成して支援内容などを決める樽見鉄道連絡協議会(会長・小川敏大垣市長)の幹事会で、今後の支援条件として検討している内容。 この日、大垣市議会建設環境委員会で、市側は今年12月までに六つの条件をクリアできる体制が整えば、市としては支援を継続する方向で協議会に臨む、との姿勢を示した。市担当課は「運賃改定や改善策が一定の成果を得ている。条件項目は今後も変化しうるが、現時点では存続を目指して協議を進めたい」とした。 樽見鉄道をめぐっては、同協議会などが2005(平成17)年度から3年間、財政支援と改善計画を実施しているが、大幅な経営改善には至っておらず、経営状況は依然として厳しい。本年度は支援の最終年度で、来年度以降の対応について、各市町の動向が注目されている。 |
そして全国紙でも(といっても地方ニュースの扱いのようですが)・・・
「樽見鉄道:さらに3年程度支援へ--大垣市方針 /岐阜」
《毎日新聞(MSN毎日インタラクティブ)・2007年9月14日付け掲載記事》
大垣市は13日の市議会委員会で、沿線自治体による赤字補てんの最終年度が今年度となる第三セクターの樽見鉄道(本社・本巣市、大垣-樽見34・5キロ)について、「12月末までに条件が整えば、来年度から引き続き3年程度支援していく」との方針を示した。沿線5市町でつくる同鉄道連絡協議会(会長・小川敏大垣市長)で話し合い、正式決定するとしている。 同鉄道は、経営悪化から存続問題が浮上。05年度から沿線5市町が3年をめどに赤字を補てん。再び支援をしていくか、見直すのかの論議が同協議会でされている。 市がこの日示した条件は(1)国・県の支援態勢の継続(2)市の支援は現状の年間約1500万円以内(3)増収が図られる--など6項目。 市によると、同鉄道の乗降客は04年度は66万8000人だったが、05年度68万人、06年度70万9000人と年々増加するなど改善が見られるという。【子林光和】 |
う~ん、2005年度から3年間、沿線自治体からの支援を受けていたとの話ですが、地方ローカル線の現実というものをここでも突きつけられている、という印象ですネ。
岐阜県内でも、去る9月8日にJR高山本線が約3年ぶりに全線運転が再開され、最後まで不通だった区間(角川~猪谷間)の沿線住民や飛騨古川駅を擁する飛騨市古川町地区は大変な盛り上がりを見せた一方で、高山線運転再開を待たずに昨年11月に飛騨市神岡町地区を走っていた神岡鉄道が廃止されてしまい、また県内の反対側(つまり西側)を走っている樽見鉄道も危機的状態・・・まさに「あっちが立てばこっちが立たず」状態と言えますネ《岐阜県内を走る他の第3セクター鉄道(長良川鉄道、明智鉄道)も危機的状態にあると聞きます》。
で、このブログでも、新聞記事などを交えつつ、何度かお話しさせてもらっているのですが、厳しい現実に直面している地方ローカル鉄道の生き残りのためには、運営を事業者に任せっきりにするのではなく、沿線自治体、そして沿線住民も何らかの形で運営に参画するという”マイレール”意識の涵養が欠かせなくなりつつあります。
この樽見鉄道でもNPO「樽見鉄道を守る会」を平成15年(2003年)に立ち上げ、地元住民有志が車内の座席のモケットやカーテンの交換、更には枕木交換、駅待合所改修等の活動を行い、その活動の一端が地元及び全国の各種メディアを通じて報じられるところとなり、その結果地元住民の樽見鉄道に対する”マイレール意識”の高まりへと繋がったことが、国土交通省鉄道局Webサイト内に掲載の『ベストプラクティス集~地域による鉄道の振興(樽見鉄道)』というレポートにて紹介されています。
その一方で、このレポートでは、現時点での当該団体の活動は高橋代表によるところが大きい、等の課題も指摘されています。
そんな中、今月に入って、樽見鉄道沿線地域にショッキングな話が舞い込んできました。
「樽見鉄道存続活動の中心 高橋順子さん死去」
《朝日新聞Web版・2007年09月06日付け掲載記事》
厳しい経営状況から、廃線も取りざたされる樽見鉄道(大垣―樽見)の存続運動の中心的存在だったNPO法人「樽見鉄道を守る会」の高橋順子理事長が4日、心不全で死去した。56歳だった。葬儀・告別式は6日午後1時から本巣市根尾宇津志54の自宅で。喪主は長男由樹さん。 樽見鉄道の終着駅がある旧・根尾村(現・本巣市)で生まれ育った。沿線の工場からの貨物輸送が途絶え、経営が傾いた樽見鉄道を、何とか存続させたいと03年に守る会を立ち上げた。住民主導で支援を始め、地道な活動が、少しずつ実を結び始めた矢先の早すぎる死だった。 老朽化した車両を、子どもたちが描いた「夢」の絵で埋め尽くす。廃車となった客車を利用した博物館構想。枕木を買い取って線路を守る「枕木オーナー制度」……。資金や人材の不足を補う高橋さんのアイデアには、いつもどこかに遊び心があった。 寝ても覚めても樽見鉄道の日々。赤字ローカル線再生の成功例があると聞けば、見学に出かけ、署名が有効だと聞けば、列車に乗り込んで、4万人近い利用客の署名を集めた。 7月、守る会が呼びかけたボランティアの工事で、二つの駅に障害者用のスロープができた。そこには、賛同する建設業者に混じって、額に汗して働く大勢の沿線住民や、通学で鉄道を利用する高校生らの姿があった。 鉄道について何も知らない一人の女性が始めた小さな活動。地道にまき続けた種は、今、沿線のあちこちで芽吹き、少しずつ育ち始めている。 「どうせなら楽しく。つまらない列車には、乗りたくないでしょ」。それが口癖だった。 |
いわば樽見鉄道存続活動の司令塔的存在の突然の死・・・地元住民にとってはまさに冷や水を浴びせられる思いだったことでしょう。
この9日後に、最初に紹介した新聞記事にもありますが、大垣市等が更に向こう3年間の条件付き支援延長を決めることになるわけですが、存続活動の中心的存在の死で今後のNPO活動にどのような影響を及ぼすのか、或いはこの先樽見鉄道は無事でいられるのか・・・気にかかるところです。
ただ救いといえるのは、樽見鉄道は桜と縁が深い鉄道路線ともいわれており(→「桜列車の旅樽見鉄道」)、特に終点の樽見駅近くにある淡墨(うすずみ)桜は”山高神代桜”(山梨県北杜市武川町)・”三春滝桜”(福島県田村郡三春町)と並ぶ「日本三大桜」の一つに数えられ、桜のシーズンを迎えると樽見鉄道では「桜ダイヤ」を編成して多くの観光客を運んだりしている他(2005年限りで終了)、途中の谷汲口駅は西国三十三ヶ所観音巡礼の最後の札所として知られる第三十三番札所・谷汲山華厳寺の最寄り駅にもなっており(駅前からバスで約10分)、更に最近では沿線(本巣市内)に2(3)つの大型ショッピングセンター(モレラ岐阜と「真正リオワールドショッピングセンター&リバーサイドモール」)がオープンする等、明るい材料も沿線には存在します。
実際、昨年春に開業した大型ショッピングセンター「モレラ岐阜」の最寄り駅として昨年4月に営業を開始したモレラ岐阜駅が約9ヶ月後の昨年12月13日には10万人目の利用者を迎え入れ、旅客輸送人員の増加に大きく貢献しています《→「4月開設のモレラ岐阜駅 利用者10万人突破/樽見鉄道、赤字解消の支えに(岐阜新聞)」》。
尤もこの「モレラ岐阜」等の大型ショッピングセンターについてはライヴァルとなる輸送手段(路線バス)も出現しており《→「郊外大型店に乗り換え拠点/岐阜駅へ直行バス 年内にも運行(中日新聞)」》、油断できないところですが・・・
今後とも樽見鉄道を長きにわたって存続させられるのかどうか、樽見鉄道とその沿線自治体、そして沿線住民をも巻き込んでの一体化した取り組みに注目が集まりそうですネ。
P.S.
『YouTube』等の動画投稿サイトにも樽見鉄道に纏わる動画が寄せられていますので、その中から以下の計8本をピックアップしました。
なお後の5本については、投稿者の意向により、リンク先ページに於ける視聴となります。
以上計8本の動画(『YouTube』等への投稿動画)につき、今後、動画投稿・公開サイト運営者サイド並びに動画投稿者の都合等により、動画自体が削除されてご覧頂けなくなる可能性もありますことを何卒ご承知おき下さい。
【関連記事〔若桜鉄道と蒸気機関車(SL)〕】
「(1)約60年ぶりに里帰りした蒸気機関車「C10 167」」
「(2)蒸気機関車「C12 167」里帰りの話の続き《落ち穂拾い風に》」
「(3)蒸気機関車「C12 167」誘致の背景にある厳しい現実」
「(4)SL「C12 167」誘致以外の利用促進への取り組み」
「(5)将来に向けての存続の道を探ってみました」
「(6)特産品、乗車(旅行)記、最新情報等々《余録として》」
【関連記事(その他)】
「規制緩和等で苦しむ地方ローカル線への救いの手となるか・・・・・・地域公共交通活性化再生法」
「約2年11ヶ月の時を経て甦った飛騨山脈を行き交う鉄路(1)・・・JR高山本線、全線運転再開までの道」
「約2年11ヶ月の時を経て甦った飛騨山脈を行き交う鉄路(2)・・・高山本線全線運転再開!それぞれの思い」
「約2年11ヶ月の時を経て甦った飛騨山脈を行き交う鉄路(3)・・・全線運転再開その後、一方あの鉄路は?」
「約2年11ヶ月の時を経て甦った飛騨山脈を行き交う鉄路(4)・・・”別添資料”(?)として《高山線・神岡鉄道》」
「一昨日投稿分の”残り物”(神岡鉄道)、ついでに岐阜県内を走る残り2つの”3セク”鉄道(長良川・明知)の話も…」
「ひとりの元機関士が支えてきた小さな第3セクター鉄道の終焉・・・・・・2008年春廃止予定の三木鉄道」
「三陸鉄道、一転して経営危機か・・・・・・世界規模の原油高が直撃」
「井原鉄道、乗客数累計1,000万人突破・・・岡山県と広島県を跨る第3セクター鉄道《”+α”的な話題も》」
「伊賀鉄道と養老鉄道の最近の話題・・・近鉄ローカル線から転換の第3セクター鉄道の今」
「スイーツ列車、こたつ列車、「のだ塩かりんとう」・・・・・・第3セクターの三陸鉄道、巻き返しなるか」
« 約2年11ヶ月の時を経て甦った飛騨山脈を行き交う鉄路(3)・・・全線運転再開その後、一方あの鉄路は? | トップページ | 約2年11ヶ月の時を経て甦った飛騨山脈を行き交う鉄路(4)・・・”別添資料”(?)として《高山線・神岡鉄道》 »
この記事へのコメントは終了しました。
« 約2年11ヶ月の時を経て甦った飛騨山脈を行き交う鉄路(3)・・・全線運転再開その後、一方あの鉄路は? | トップページ | 約2年11ヶ月の時を経て甦った飛騨山脈を行き交う鉄路(4)・・・”別添資料”(?)として《高山線・神岡鉄道》 »
コメント