サントリーホール大改修工事完了、9月1日リニューアルオープン!《バリアフリー強化》
昨日9月1日は、海外のオーケストラ・オペラ等の音楽団体にとって、まさしく新しい「年度」(シーズン、楽季)の始まりの日でもあったようですネ。
と同時に、昨日はまた日本を代表するコンサートホールの”生まれ変わりの日”でもあったわけです。
まあ、外観は変わっていないでしょうが・・・
昨年開館20周年を迎え、今年の4月から約5ヶ月にわたって大改修工事を行ってきた東京・赤坂のサントリーホールが、昨日、リニューアルオープンを果たしました。
まずは先月上旬に毎日新聞Web版に掲載された、サントリーホール”新装開店”に合わせて同館長に就任することになったチェリストの堤剛に対するインタビュー記事・・・
「サントリーホール:来月新装開館 調整重ね“最高の音響”維持--堤剛新館長に聞く
」
《毎日新聞(MSN毎日インタラクティブ)・2007年8月8日付け掲載記事》
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チェリストの堤剛桐朋学園大学学長が、東京・サントリーホールの新館長に就任する。開館20周年を機に半年ほどかけて行った整備、改修を終え、9月1日にリニューアルオープンするのに合わせて佐治信忠現館長と交代する。創設者の佐治敬三を初代にこれまで3代にわたって経営者が館長についてきた。音楽家としては初めての館長に思いを聞いた。【梅津時比古】 ◇小ホールも充実させ新名称に 歴史をシェアする企画も 「開館前からホール創設にかかわってきた」だけに思いは深く、「これまでの蓄積を大事にしたい」と開口一番。まず「成功したウィーン・フィル・シリーズやジルベスター(大みそか)コンサート、ガラコンサートなどはこれまで通り続けたい」。 ハード面も見えないところで努力を積み重ねてきた。 「ある外来のオーケストラ団員から、ホールの響きは良いが、オーケストラ内部で端と端の奏者が互いに音を聴きとりにくいと意見があった。少しずつ微妙に調整してその問題に対応してきました。周りの多くの意見が大切で、それによって、世界のオーケストラが称賛してくれるあの音響が保持できるのだと思います」 その蓄積の上に「佐治敬三の『やってみなはれ』精神を引き継いで新しい取り組みを」。とりわけ音楽家の館長としての思いは今回のリニューアルで小ホールの改修にも大きく表れている。舞台をこれまでより広げ、照明にも手を入れて音響やパフォーマンス面のさらなる要求に応えるようにした。 「小ホールで新人がデビューすることを誇りにするような、音楽的に価値の高いホールにしたいのです。これまでは『サントリー(小)ホール』などと表記されるに過ぎなかったので、内容を充実させたうえで、新しく名称もつけたい。ウィーン・ムジークフェラインの小ホールがブラームスザールというように。今、考え中です」 さらに新しい「21世紀のホールの在り方」を夢見ている。 「決まり切ったコンサートに限定せず、ホールで行われたことが聴く人の歩む道と重なるような、土地の人々と一緒に歩んで歴史をシェアするような企画をしていきたい。まだ具体的には決まっていないけれども、原武総支配人をはじめ優れたスタッフがいるので考え抜いていろいろな方の意見を聞いて打ち出したいと思っています」 |
一音楽家の視点からホールを良くしたい、そしてそれだけに止まらず地域に密着し、かつ誇りと思ってもらえるようなホール作りを目指したい・・・そんな心意気が感じられますネ。
ところで上記記事本文中に出てきた佐治敬三の『やってみなはれ』精神でありますが、やはりサントリーが”協賛”の形で関わってきている大阪の「サントリー1万人の第九」の企画にも生かされていて、「1万人の第九」がまだ企画構想段階にあった1983年(昭和58年)当時、毎日放送を中心とした実行委員会事務局から提示された、当時それまで考えられなかった巨大な規模による「第九」コンサートの企画案に対し、佐治は「文化の薫り高い、優れた企画」と直感、企画構想中の「1万人の第九」のスポンサーを快く引き受けた、との話は、「1万人の第九」が10年目を迎えた1992年に出版された『ドキュメンタリー「1万人の第九」~響け!歓喜の歌声』(大谷幸三著;TBSブリタニカ)の中で語られるところとなっています。
そして、昨日のリニューアルオープン当日・・・
「「音の宝石箱」サントリーホール25億円かけ一新」
《『産経イザ!』2007年9月1日付け掲載記事》
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東京・赤坂のサントリーホールが9月1日、改修オープン。「世界一美しい響き」という理念はそのままに、設備面を充実させた。 ホールは舞台を客席が囲む形で、響きの質の良さとホール全体を包む音が特徴。名指揮者の故ヘルベルト・フォン・カラヤンが「音の宝石箱」と評したことで知られる。 今回初めて全館改修を実施。大ホールの舞台迫(せり)を増設し、大編成のオーケストラに対応。車イスから乗り換えやすい客席を導入するなどバリアフリー設備を充実、幅広い観客が快適に過ごせるようにした。総改修費は約25億円。 関係者に公開された31日はミニコンサートも開かれた。館長に就任するチェリストの堤剛氏は「お客さまと歴史を共有し、共に歩んでいきたい」と語った。 |
舞台せり(舞台迫り)の増設については、上記記事で報じられている大ホールのステージの他、小ホールのステージについても行われており、サントリーホールの公式発表によると、小ホールに於いては舞台せりの増設によって間口全面を舞台として使用出来るようにしているとのことです。
もう一つ注目されるのはバリアフリー化。
上記記事でも報じていることですが、サントリーホールの公式発表によると、大ホールに車椅子客対応の客席を増設、既存席を取り外して車椅子席として使用できる客席と車椅子から乗り移りが容易にできる客席の2種類の車椅子対応席を用意、更に正面エントランスから1階席に直接車椅子のまま入場できるよう、ホワイエにスロープと段差解消機(リフト)を新設しています。
そしてトイレのバリアフリー化にも着手し、新たにオストメイト対応トイレも設置したとのこと。
以前、本ブログの「バリアフリーで進化「789系1000番台」、スピード・アップ「261系1000番台」・・・JR北海道10月1日ダイヤ改正」という記事で鉄道に於けるオストメイト対応トイレの話を少ししましたが、コンサートホール等の文化施設関連では、ネット上で見聞きする限りでは、設置例はまだ少なそうで、他には名古屋市の愛知芸術文化センター、金沢市の石川県立音楽堂、鳥取市の鳥取県民文化会館があるくらいで、民間の文化施設では今のところ他に例が見あたりません。
まあ「車椅子対応トイレ」ということでしたらかなりの文化施設で整備が進んでいるようですが、そこから更にオストメイト対応とするには更なる専用設備の追加等が必要で(→「オストメイト対応トイレの概要」)、悲しいかな、コスト的な理由等で設置が進まない現状があるんでしょうね・・・
最後にサントリーホール大改修工事中の出来事を一つ。
サントリーホールの前には広場が造成されているのですが、この広場は同ホール建設に際して助言を与えたといわれる往年の名指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンを記念して「アーク・カラヤン広場」という名称が与えられていることはご存じの方も少なくないかと思います。
この「アーク・カラヤン広場」がホール大改修工事中にホールの代役を果たした実例がネット上で紹介されていますので、それをひとつ・・・
それは毎年「こどもの日」(5月5日)に開かれる『こどもの日コンサート』の代替として開かれた『こども音楽ひろば』で、普段は閉じられた空間内で行われる子供向けコンサートもこの日だけはホール前の「アーク・カラヤン広場」という開放的な空間の中で行われたとあって、この”公演”の模様を伝えている「こども音楽ひろば」・「5/5サントリーホールこども音楽広場」の両ブログ内記事からは、広場内の至る所で、動物の着ぐるみ(頭だけ!?)による小アンサンブルの演奏やパントマイム、ハンドベル演奏、手作りの楽器による演奏・・・等、ホール内で行う時とはまた違った開放的な雰囲気がそこに漂っているような気にさせられる思いがしました。
肝心のホールが工事のため使えないことを逆手にとってこうした開放的な企画を打つあたり、機転を利かしている点に於いて思わず唸ってしまった私デス。
ホール自体の質的向上と共にバリアフリー化に向けても本格的に着手、そしてリニューアルオープンした日本を代表するコンサートホールは、地域密着等も唱えている新館長に就任した日本を代表するチェリストの下で、その真価が問われようとしています。
P.S.
政策研究大学院大学Webサイト内に設置されている『政策研究大学院大学文化政策プログラム』に『GRIPS 文化政策ケース・シリーズ ~サントリーホール』という論文(PDF形式文書)が掲載されているのですが、ここにはサントリーホール自体のこととその建設の背景に関する解説は勿論のこと、初めのところには公立ホール(公共ホール)と民間ホールの比較について触れていたりする等、サントリーホールを知る上でなかなか興味深い内容になっていると感じました。
分量的にやや多めですので、お時間の空いた時にゆっくり読まれることをおすすめしたいと思います。
あと、サントリーホールでは、同じくサントリーが”協賛”の形で関わっている「1万人の第九」が今年で25回目を迎えるのを記念して、本家と同じく一般公募で結成の合唱団による「第九」コンサートを「1万人の第九」と同一日程〔12月2日(日)・15時開演〕で開くことになっています。
過去に「1万人の第九」と同類の「第九」イヴェントである「第九ひろしま」で千数百人規模の一般公募による合唱団相手に「第九」を指揮した経験をも持つ渡邊一正がかつて佐渡裕も指揮者として所属していたことのある新日本フィル他を指揮して、果たしてどのような「第九」演奏を繰り広げてくれるのか、また「『サントリー1万人の第九』第25回記念」というレッテルに見合った成果を残してくれるのか、期待したいと思います《過去に本ブログで酷いことを書いてしまいましたが…》。
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