”初代「のぞみ」”として活躍の300系、東海道新幹線から引退か・・・・・・新型「N700系」、前倒し投入へ
10月になりました。
こちら大阪でも、朝晩はさすがに少々肌寒く感じるようになってきました。
でも昼間は暑め・・・とはいっても真夏の”猛暑”とまではいかない感じですけれどもネ。
ところで、東海道・山陽新幹線の変革のきっかけを作った300系新幹線電車が、去る7月1日にデビューしたN700系新幹線電車の前倒し増備に伴い、押し出される格好で東海道新幹線区間からの引退を迫られることとなりました。
1964年の東海道新幹線開業以来、「ひかり」と「こだま」の2種別体制で維持してきたところに、運賃の値下げ等により攻勢を強めていた航空機に対抗する必要性から、1992年春(3月14日)のJRダイヤ改正で新たに設定された「のぞみ」向けに新規投入されたのが300系新幹線電車で、0系新幹線電車以来のフルモデルチェンジ車両でもありました。
当初、それまでの新幹線車両には無かった「フラグドア」が採用されて話題となったものの、機構の複雑さ等が祟って不具合が多発したこと等もあり、結局は従来からの”引き戸式”に戻した他、高速化に対応すべく車体軽量化等が図られたものの、高速化に伴って逆に揺れがひどくなる等による乗り心地の悪化が指摘されるようになる等、まあある意味では今後の新型車両開発に向けてのひとつの布石(というか指針)をこの300系新幹線電車はつくってくれた、ということが出来るのかも知れませんネ。
ちなみに”乗り心地の悪化”については私自身も過去に経験していて、当時全車指定席だった300系「のぞみ」に乗っていて、スピードが上がる毎に小刻みな振動や揺れがひどくなり、ちょっと怖さを感じていたことを、記事を書きながら思い出しました。
そんな300系新幹線電車なのですが、去る7月1日に新規投入された「N700系」の増備計画の前倒しにより、東海道新幹線区間から半ば追い出される格好となってしまうわけです。
以下はそのことを伝えている『産経イザ!』の記事・・・
「初代のぞみ“鉄仮面”300系、東海道から引退」
《『産経イザ!』2007年09月30日付け掲載記事》
東海道新幹線に1992年3月デビューした「300系」車両が4年後の2011年度内に東京-新大阪間から“引退”する方向になった。最高時速270キロ。東海道新幹線開業以来の初のフルモデルチェンジで、同区間の所要時間を現在と同じ2時間半で走行する「高速新幹線」の先駆けとなったが、JR東海が今年7月に登場した新型「N700系」の追加投入を決めたため、リタイアを余儀なくされる。 「300系」はアルミニウム合金を初めて車体に使用し、従来の100系に比べ約25%の軽量化に成功。今では主流のVVVF(可変電圧可変周波数)制御方式と交流誘導電動機の導入などで飛躍的に性能が向上したことで、東京-新大阪間の所要時間を19分短縮した。飛行機との競争に勝てるとされた「2時間半」を実現、「ひかり」「こだま」に次ぐ「のぞみ」の名称が「300系」についた。 「極めて革新的な車両だった。高速化に加えて環境に配慮した第2世代の幕開けといわれ、今のN700系もすべてここから始まった」と、300系開発に携わったJR東海車両課の鳥居昭彦担当課長は語る。 東海道新幹線は、カーブが多く、最高時速が270キロに設定されているため、1997年11月にJR西日本が開発した最高時速300キロの「500系」が投入されても所要時間は同じ。曲線区間を減速せずに走行できる車体傾斜システムを導入したN700系の登場で2時間25分となり、15年ぶりに5分短縮した。 東海、西日本両社はN700系を東海道・山陽新幹線で2009~11年度に42編成を追加し、計96編成とするなど、本格投入することを決めた。東京-新大阪間を走る最速の「のぞみ」は臨時便を除きすべて同系となる予定だ。「乗り心地を向上させたり、完全分煙化など乗客の評判が良い」(JR東海)というのが理由だが、所有車種を同系と700系に絞り、維持管理費用を抑える狙いもあるようだ。 このあおりで300系は「淘汰(とうた)される」(東海の松本正之社長)ことになった。 一方、山陽新幹線(新大阪-博多間)では「300系、500系については全体の車両計画の中で検討している段階」(西日本)だ。山陽区間では今も岡山-広島間などで初代の0系や後継の100系が内装や外板を取り換えて運行。だが、少なくとも現在わずか6編成の0系はN700系に押し出される形で“完全引退”となりそうだ。 |
・・・・・《以下省略》・・・・・ |
東海道新幹線区間から追い出されるとなれば、新大阪以西の山陽新幹線区間に行き着くしか術はないわけですが、その山陽新幹線区間、JR西日本らしくといいますか、今でも1964年開業以来の車両である0系新幹線電車やそれに次ぐ100系新幹線電車が「こだま」で大切に使われているものだから、行き場がないということになりそうなところですが、さすがに時代の流れには勝てないといいますか、上記記事で報じられているように、初代の0系についてはやはり「N700系」の増備を受けて”完全引退”ということになるといいますし、100系についても先は長くないでしょう。
ちなみに読売新聞の報道によると(→「新幹線「のぞみ」に2千億投入、快適なN700系大幅増へ」)、今回発表されている「N700系」の前倒し増備に際してJR東海・JR西日本の両社で新たに約2000億円を投資すると表明、一方300系新幹線電車の引退は2011年度中を予定しているとのことです。
余談ですが、300系新幹線電車が登場した1992年は、7月1日に新在直通運転の初めてのケースとなる「山形新幹線」(奥羽本線・福島~山形間の標準軌化)の開業、及び北海道の千歳空港新ターミナル稼働開始に伴う「新千歳空港」駅の開業、更に7月15日には九州の鹿児島本線を走る特急「有明」のうちの西鹿児島発着分を対象に、車両を当時新製された787系電車に置き換える等した上で列車名称の変更を決定、ここに”特急「つばめ」”誕生となりました。
スピードアップと乗り心地向上を見事両立させたN700系新幹線電車の追加投入に対して「のぞみ」の基礎を形作った300系新幹線電車の東海道新幹線区間からの引退・・・・・・サービス向上につながるのはとてもいいことなのですが、一方で一抹の寂しさというものも感じてしまいますネ。
● おわりに・・・
今回の記事を書くにあたり、ネット上で300系新幹線電車に纏わるものを探していたところ、「JR東海 300系試作車」というページと出会いました。
300系新幹線電車の試作車のことが綴られているのですが、同時にJR発足直後から飛行機とのシェア争いを強く意識、ビジネスマンをターゲットにした列車の開発に取り組み始めてから300系試作車の完成に至るまでの道のり、更にN700系新幹線電車のデビューの陰で消えゆく300系試作車に対する想い等が綴られています。
300系、そして「のぞみ」デビュー当時の光景が思い浮かびそうな、秀逸な内容のWebページであるように感じました。
もう一つ、N700系新幹線電車の増備と共にそれに伴う300系新幹線電車の”捻出”により、山陽新幹線からの引退、つまりは”完全引退”をすることになるであろう0系新幹線電車のデビュー当時、つまり”夢の超特急”ともてはやされた1964年の東海道新幹線の開業当時の貴重な写真を公開しているサイトを見つけました。
Webサイト『むーさんの鉄道風景』に掲載されている「東海道新幹線開業前後 1964年9月~10月」というWebページがそれで、開業直前に撮影した在来線を走る列車たちの写真も含め、全てカラー写真で撮影・掲載されているところが貴重といえます。
また、同じWebサイト内に設置されているブログサイト『お出かけ通信:blog版』では、新幹線開業当時の写真のみならず、以下のブログ内記事たちにより、新幹線の試作車登場から開通に至るまでが写真入りで綴られている他、その頃の在来線を走る列車の写真までもが掲載されています。
「新幹線1962年(1)」、「新幹線1962年(2)」、
「新幹線1962年(3)」、「新幹線1962年(4終)」、
「新幹線1964年:開業前後」
新幹線が開業した1964年といえばご存じ東京オリンピック開催の年であり、私自身まだ生まれていなかったので、新幹線開業の模様は市販の雑誌などで目にする東京駅を出発しようとする新幹線列車(「ひかり」と思いますが…)の写真等を見るしか術がなかっただけに、新幹線試運転や開業当日の舞台裏をとらえた写真も掲載されているこれらのサイトの存在はとても貴重な存在と感じました。
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先頭車は東海道新幹線沿線の会社や自治体から引き取り打診があるでしょうが、中間車はほとんど解体でしょうが、倉庫やホームレス支援施設になるものも少しはあるかな。
投稿: じろっち | 2008年1月 1日 (火) 06時28分
じろっちさん、コメントをありがとうございます!
う~ん、今のところは廃車となる車両の引取先に関する情報が見あたらないため何とも言えないところですが、ホームレス支援施設という活用法も興味深いですね。
まあ、改造費用という壁はあると思いますが、一から新築することを思えば安上がりなのかも知れませんね。
尤も、既存の空き家(建物)を活用する場合と比べると割高になりそうですが・・・
とりあえずは今後の報道等を待ってみましょう。
投稿: 南八尾電車区 | 2008年1月 1日 (火) 19時36分