大阪厚生年金会館、存廃の危機(2)・・・他地域のホール併設型厚生年金会館も危機に~愛知厚生年金会館編
先日、ひょんなことからネット上にて大阪厚生年金会館が売却・廃止されるとの話に接し、私自身も驚きました。
ここのところコンサートの類に行くことが殆ど無くなってきている私自身なのですが、大阪厚生年金会館へは過去に一度だけ足を運んだことがあります《ちなみに、ご存じの方も多いと思いますが、クラシック音楽系統のコンサートについては、大阪厚生年金会館では、現在では殆ど(いや全く!?)しなくなりました(少なくとも一流と目されている演奏団体&個人に関しては)》。
だいぶ前の話になりますが、新聞の懸賞に応募して当選したことで聴きに出かけた、確か”コンチェルトの夕べ”というタイトルのコンサートだったように覚えています。中ホール(現「芸術ホール」)で行われた催しでした。
当日は2階席から聴いていまして、3人くらいのソリストが、入れ替わりで、バックに控えるオーケストラと共演していたわけでありますが、音楽教室の先生・生徒と思われる聴衆等で場内はほぼ埋まっていたように記憶しています。
音の響きは、まぁこんなものかな、という感じでした。
そんなわけで、音楽といえば殆どクラシック音楽オンリーという私自身でありますが、それでも、いかなるジャンルをも受容してきた大阪厚生年金会館がなくなるとのニュースに接したときには心の中で大いに驚いたものでした《冗談抜きで》。
そこで急遽起こしたのが、前回掲載分である「大阪厚生年金会館、存廃の危機(1)~文化発信拠点の売却、その背景とは、そしてそこに集う人々の想いは・・・」という記事でありました。
ところが、この厚生年金会館の存廃(廃止・売却)問題、なにも大阪に限ったことではなく、年金制度改革の一環として全国に点在する年金福祉施設の一律廃止・売却が推し進められている中、全国的な問題となってきています。
ウィキペディア解説「厚生年金会館」によると、現在、全国21カ所ある厚生年金会館のうち、コンサート等の各種催しに供される多目的ホールが併設されているのは以下の7カ所。
北海道厚生年金会館(ウェルシティ札幌)
東京厚生年金会館(ウェルシティ東京)
石川厚生年金会館(ウェルシティ金沢)
愛知厚生年金会館(ウェルシティなごや)
大阪厚生年金会館(ウェルシティ大阪)
広島厚生年金会館(ウェルシティ広島)
九州厚生年金会館(ウェルシティ小倉)
それで、ネット上で眺めている限りに於いては、上記7カ所の厚生年金会館に併設されているホールは何処もそこそこの稼働率を上げている模様(最低でも5割見当)で、中には愛知・大阪両厚生年金会館のように8割(80%)前後にまで達しているところも見受けられます。
そして、その7カ所あるホール併設の厚生年金会館のうち、北海道・愛知・大阪・広島・九州の5カ所の厚生年金会館では市民等をも巻き込んだ存続を求める運動が起きています。
そこで今回から、前回掲載分でお伝えした大阪厚生年金会館を除いて、存続運動の起きている全国4カ所の厚生年金会館について順次お伝えすることにいたしました。
1回目となる今回は愛知厚生年金会館についてお伝えしていきます《本来ならば一番北に所在する北海道厚生年金会館から順番にお伝えするのが常道かも知れませんが、北海道については最終回(4回目)にてお伝えする予定とさせて頂きます》。
愛知厚生年金会館(ウェルシティなごや)に併設されているホールのキャパシティ(客席数)は1666名と、大阪厚生年金会館大ホールより一回り小さい印象でありますが、「愛知厚生年金会館ホールの魅力」は、客席とステージが異様に近いこと(立ち上がってみれば最前列とステージの間は1mくらい、との話です)、そして駅のそばにありアクセスが非常に便利なことが愛知厚生年金会館が他のコンサート会場に勝っている点だ、としています。
その愛知厚生年金会館の廃止・売却問題について、名古屋(愛知県)の地元紙である中日新聞が以下の記事に於いて報じています。
「愛知厚生年金会館、来年9月営業停止 「存続願う会」―署名17万人」 《中日新聞Web版・2007年10月6日付け掲載記事》 |
国の年金福祉施設売却計画に伴い、廃館の危機にある愛知厚生年金会館(名古屋市千種区池下町)が、二〇〇八年九月末をめどに営業を停止する方針と分かった。同会館ホールは年間三十万人を超す入場者があり、地域文化にも貢献してきた。名古屋市などは「取得は難しい」としており、市民団体などは存続を求めて活動を続けている。 売却を担当する年金・健康保険福祉施設整理機構が、〇八年九月末での運営委託解除を計画したため、会館側は同十月以降の使用予約受け付けを見合わせた。国の計画によると、整理機構は一〇年九月末までに全国の同様の施設を売却する予定で、期限までは約三年。 今回のように規模の大きな施設は「売り込みや売却手続きなど、営業停止後に要する時間を考えると、整理のテンポを急がねばならない状況。残り二年はぎりぎり」(土方功同機構企画部長)という。 愛知厚生年金会館のホールは年80%前後の稼働率で、〇六年度は利用三百十六件、入場者は約三十八万人。同規模のホールを持つ愛知県勤労会館(同市昭和区)も一〇年三月末での廃止が決まっており、コンサートや演劇はもちろん、学校単位の公演や発表会も開催の場が少なくなる。 このため、音楽関係者らが〇六年一月に「存続を願う会」(現在七十八団体参加)を設立。存続を求める署名は十七万三千人分に達し、厚生労働省や愛知県、名古屋市へ要望。同市議会は存続意見書を決議し、国に要望している。 「願う会」事務局代表のサンデーフォークプロモーション取締役桑原宏司さん(56)は「営業停止が売却・廃館に直結するとは思わないが、厳しい状況に違いはない。名古屋唯一の中規模ホールとなるので、ホール機能だけは存続するよう受け皿を求め、活動していく」と話している。 ▽愛知厚生年金会館 1980年の開館。ホールは1666席。宿泊施設もあり、全体で年間約60万人が利用する。「年金の無駄遣い」との批判が強まったのを受け、国は2005年10月、「年金・健康保険福祉施設整理機構」を設立。全国302施設を機構が保有し、入札で5年以内に売却する計画。これまで約100施設が計460億円余で落札された。 |
また、全国紙の読売新聞でも、地域版(中部発)のページを使って、上記記事から更に踏み込む形で報じています。
「(愛知)愛知厚生年金会館」 《読売新聞Web版(YOMIURI ONLINE)「中部発」・2006年4月12日付け掲載記事》 |
幕下ろす? ホール 5年内に一般競争入札 年金福祉施設の合理化計画で存廃問題で揺れる愛知厚生年金会館(千種区で) 四半世紀にわたり、東海地方の芸能文化の拠点として、親しまれてきた愛知厚生年金会館(千種区)が岐路に立たされている。黒字にもかかわらず、政府の年金福祉施設の合理化計画に伴い、原則5年以内に一般競争入札にかけられる見通しだからだ。地元住民や芸術団体、学校関係者らが集い、「愛知厚生年金会館の存続を願う会」を旗揚げして2か月余。全国一律の処分の進め方に対する疑問の声が高まっている。 年金福祉施設の政府合理化計画 愛知厚生年金会館でライブコンサートを行った歌手の布施明さん(58)は、聴衆に語りかけた。「歌いやすい、とても良いホール。何とか存続できるように僕も願っています」 国が「年金保険料の無駄遣い」と批判された約300に及ぶ年金福祉施設の閉鎖、売却方針を打ち出したのは昨年春。同10月には独立行政法人「年金・健康保険福祉施設整理機構」が発足した。布施さんが聴衆にメッセージを送ったのは、ちょうどそのころだった。 多目的ホールを持つ「厚生年金会館」は愛知(1666席)、東京(2062席)など全国に7館ある。地域文化の発展に寄与してきた稼働率の高い施設とあって「存続を願う会」が相次ぎ発足している=別表=。 活発な運動を繰り広げているのが北海道だ。代替施設がないことから文化・経済団体が結束。昨秋には「ホール機能の存続を売却の条件とする」との判断を厚労省から引き出した。 これに対し、愛知は大きく出遅れた。県芸術劇場、名古屋市民会館、同公会堂に加え、厚生年金会館とほぼ同じ規模の県勤労会館を擁していたためだ。だが、県勤労会館の09年度閉鎖が明らかになり、危機感に火がついた。 存続願う会発足 県と市に陳情 愛知厚生年金会館は、プロだけではなく、学校や企業の利用も多い。1月末に旗揚げした「存続を願う会」の78団体の一つ、愛知淑徳高校では長年、文化祭を同会館で行ってきただけに、「規模が適当なうえ、賃貸料も手ごろ。なくなったら困りますよ」(坂東進副校長)という。 「願う会」では発足の翌日、県と市に「年に31万人もの人が来場するホールの存続を」と陳情した。これを受け、3月下旬にはそれぞれ、国への意見書提出を全会一致で決めている。 今までに集まった署名は、7館の中では最多の17万人余。だが、人々の思いが果たして通じるのか、予測がつかないのが実情だ。 競争入札なら市場原理が働く。地下鉄池下駅からすぐの好立地だけに、マンション建設業者などが放っておかないだろう。「状況は厳しい。でも何とかホール機能を残さなければ、新たな名古屋飛ばしを招きかねませんから」。桑原宏司・事務局代表が力をこめる。 地域の劇場事情に詳しい演劇評論家の衛紀生(えいきせい)さんは、「全国の7会館は、立地も歴史も利用状況も異なる。一律に処分を決めたのは拙速だった」と国の判断に疑問を投げかけたうえで、「今となっては行政の協力なくしてホール機能の存続は事実上不可能」とみる。 一般的に劇場を黒字経営に導くのは至難の業。だが、金銭だけで計れないのが文化。使う側、見る側、そして行政の意識が改めて問われている。(中村桂子) |
愛知厚生年金会館がたたき出している”稼働率8割”は全国7カ所あるホール併設型の厚生年金会館の中でも優秀の部類に入り、通常の文化ホールとして見た場合は「極めて優秀」となりそうなものなのですが・・・
それで、愛知厚生年金会館の所在する名古屋市内に於ける、これと同等かそれ以上の規模(座席数)を持つ多目的文化ホールは、愛知県Webサイトによると、愛知厚生年金会館以外にも・・・
愛知県勤労会館(講堂1,488)
愛知県芸術劇場(大ホール2,500他)
名古屋国際会議場(センチュリーH3,012他)
名古屋市公会堂(大ホール1,986他)
名古屋市民会館(大ホール2,291他;※)
《※=現在は「中京大学文化市民会館」に変更済》
がありますが(上記のうちの愛知芸術劇場を除く施設に関しては「名古屋の主要イベント会場」にて当該サイト管理人による簡単なコメントが記載されています)、上記のうちの愛知県勤労会館も2010年3月で廃止されることが決定されており、最終的に4カ所に絞られる格好となります。
また、上記には記されていませんが、地下鉄名港線名古屋港駅近くに所在する中規模ホール「名古屋港湾会館ホール」も閉館となる話も出てきています《→「10月3日(火)ミッドランドスクエア 名古屋港湾会館閉館の動き」》。
「名古屋の主要イベント会場」によると、この名古屋港湾会館ホールについて、コンサートで使われることは殆ど無いがアニメ関係のイベントのうち上映会を伴うもので800人程度の観客を見込んでいるものはここで行なわれることが多い、とのことです。
ところで、廃止される予定の2施設は何れも良好な稼働率をたたき出していますが(愛知県勤労会館も約8割見当)、ネット上を眺めていますと、どうやら先に愛知県勤労会館の廃止が決定され、その後に愛知厚生年金会館の廃止・売却が決まった格好となったみたいで、地元名古屋の音楽・演劇ファンの人たち等の間から両館の廃止を惜しむ声が挙がってきている他、名古屋市でも、市議会に於いて、国に対し愛知厚生年金会館の存続を求める意見書を採択する等の動きが見られます(→「2006年2月議会 意見書」・「2007年2月議会 意見書・決議」)。
またネット上でも・・・
「愛知厚生年金会館、閉館の危機orz」
「愛知厚生年金会館売却へ反対します(・ε・)/」
「愛知厚生年金会館 売却方針で存続危機/愛知県勤労会館は10年3月に廃止決定」
「名古屋のコンサートホールの危機」
「厚生年金会館存続問題」
以上列挙したブログ内記事たちに於いて愛知厚生年金会館の存続を望む声を上げている他、実際に存続を求める署名活動に参加(署名)してきたという人(→「愛知厚生年金会館、愛しているわ、ずっと」)、更に税金の無駄遣いや天下りを批判する声や(→「もう響かないあの音」)年金保険料の運用の仕方に対する批判の声(→「愛知厚生年金会館の存続は?」)等も上がってきています。
尤も愛知厚生年金会館側の態度(お役所仕事)に対して憤慨する声も聞かれますが《→「愛知厚生年金会館に抵抗しろ!」》・・・
最後に、愛知厚生年金会館の盛況ぶりを如実に示してくれているブログ内記事を以下に列挙しておきます《ジャンル不問で列挙致しましたが、超満員だったり空席が出たりと様々ですが、それなりに盛況だったことが窺えると思います》。
「上原ひろみASIA TOUR 2006/愛知厚生年金会館」
「SOUL電波2K7 in 愛知厚生年金会館 レポ(1・2・3)」
「AKB48コンサートin愛知厚生年金会館(超長文)」
「Berryz工房 続・桜満開ゴールデンウィーク編@愛知厚生年金会館」
次回は広島市内にある広島厚生年金会館についてとり上げます。
【関連記事(大阪厚生年金会館、存廃の危機)】
「(1)文化発信拠点の売却、その背景とは、そしてそこに集う人々の想いは・・・」
「(3)他地域のホール併設型厚生年金会館も危機に~広島厚生年金会館編」
「(4)他地域のホール併設型厚生年金会館も危機に~九州厚生年金会館編 」
「(5)他地域のホール併設型厚生年金会館も危機に~北海道厚生年金会館編」
「(6)総括として〔ホール存続のための私なりの意見(!?)も添えて〕」
「〔余録〕フェスティバルホールと大阪国際会議場(グランキューブ大阪)のこと」
【関連記事(その他”厚生年金会館”のこと)】
「全国の厚生年金会館(ホール併設型)のいま・・・ひとまず安泰の石川・大阪・九州と、風前の灯火の愛知」
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