イギリス(英国)の鉄道駅に於ける空港並みの荷物検査、実施へ・・・
イギリス(英国)といえば、本ブログの「日本の新幹線技術、次は鉄道発祥の地へ・・・・・・英国の高速新線CTRL向け「新幹線ベース」車両の陸揚げ」という記事でも紹介していますが、英仏海峡(ドーバー海峡)高速列車「ユーロスター(Eurostar)」が走行するイギリス側高速新線「チャネルトンネル・レールリンク(CTRL)」〔英仏海峡トンネル(Channel Tunnel)・イギリス側出口~セント・パンクラス間〕の線内のみで運行される新型車両として、日本の日立製作所が製造した新幹線ベースの高速車両が納入されたことが報じられています。
一方でイギリスといえば、首都ロンドンに於いて、2年前(2005年)の7月7日、地下鉄駅や2階建てバスを狙った「ロンドン同時爆弾テロ事件」が発生、これ以後ロンドン地下鉄構内では訓練を受けた数十匹の犬による爆発物の探知が行われ始めた他、『主要国における公共交通機関のテロ対策 ~ロンドン同時爆破テロ以降の動向』によると、ロンドン市内を走る地下鉄12路線に於いて警察官の警乗が行われ、併せて2005年からの7年間にわたって監視カメラの数を倍増させる計画を打ち出している他、同年11月にはイギリス国内の鉄道とロンドン地下鉄を対象とした、金属探知機を使った人体検査やX線装置を使った手荷物検査を導入すると発表、翌年(2006年)にはロンドン・ヒースロー空港とを結ぶ「ヒースロー・エクスプレス」等のターミナル駅となっている、ロンドン市内ウェストミンスターの南西部の街パティントン地区にあるパティントン駅にて4週間の試行(トライアル) を実施予定と表明していました。
にもかかわらず、今年の6月終わりから7月初めにかけて、ロンドン市内で爆弾テロ未遂事件が相次いで発生、イギリス中、いや世界中を再び震撼させたことは記憶に新しいところでしょう。
「ロンドン中心部で爆弾積んだ2台の車、警察が未然に処理」 《ロイター通信Web版・2007年06月30日付け掲載記事》 |
[ロンドン 29日 ロイター] ロンドン警視庁は29日、劇場などが集中する市内の繁華街で大量のガソリンやクギなどが積まれた自動車2台を発見、爆発を未然に防いだ。 最初に発見された車は緑色のベンツで、午前1時(日本時間午前9時)頃、ナイトクラブの前に止められていた。ナイトクラブ「タイガー・タイガー」は市内有数の規模を誇り、当時数百人の客で賑わっていた。車から煙が出ているのを救急関係者が発見し警察に通報。爆弾は無事処理された。 その後、近くに止めてあった青色のベンツからも同様の不審物が発見された。2つの車には明確な類似性が認められるという。 当局は車を止めた人物などの特定には至っていないものの、テロの疑いがあるとみて捜査を開始した。 警視庁テロ対策部のピーター・クラーク部長は、最初に発見された車について「もし爆発していたら多数の死傷者が出ていたかもしれない」と指摘。今回の事件は、2004年に発覚した、リムジンに爆弾を仕掛けて爆発させようとしたアルカイダの計画と類似していると語った。 |
「英国の空港に車が突入炎上、テロ警戒レベル最高に」 《ロイター通信Web版・2007年07月01日付け掲載記事》 |
[ロンドン 30日 ロイター] 英北部スコットランドのグラスゴー空港で30日、空港ビルのガラス扉に四輪駆動車が突入して炎上した。現地警察当局では、前日のロンドンでの自動車爆弾発見と関係があると見ている。 警察は激しい火傷を負った1人を含む男2人をグラスゴーで逮捕。その後、英北部の道路でさらに2人の身柄を拘束した。 現地の警察幹部は記者団に対し「グラスゴー空港での事件は前日のロンドンでの事件と関係していると考えられる。明らかな類似点があり、テロ事件として扱われていることを確認する」と述べた。 ブラウン英首相はこの日、閣僚らによる緊急治安会議を開いた。英内務省は、国内のテロ警戒レベルを最高の「クリティカル」に引き上げた。 |
「英警察、グラスゴー空港の車両突入事件で5人逮捕」 《ロイター通信Web版・2007年07月02日付け掲載記事》 |
[グラスゴー(英スコットランド) 1日 ロイター] 英警察は1日、6月30日にスコットランドのグラスゴー空港で起きた車両突入事件に関連して新たに男1人を逮捕した。事件に関連した逮捕者は、現場で取り押さえた2人を含め5人となった。警察では、スコットランドの突入事件が、29日のロンドンでの自動車爆弾未遂事件と関連性がある、とみている。 ロンドンでの2件の爆破未遂、グラスゴー空港の車両突入の3件について、治安筋は、手口やタイミング、市民を無差別に狙ったものという特徴から、ブラウン新政権の発足と関係がある、と指摘。ブラウン首相は、イスラム急進派が事件に直接関与しているとの見方を示した。 警察は30日にイングランド北部で男女2人を逮捕したのに続き、1日にリバプールで男1人を逮捕した。 1日は、ロンドン郊外のヒースロー空港で不審物が見つかり、空港職員や利用客に一時退避命令が出された。またグラスゴー郊外の病院に停めてあった不審な車両を警察が爆破処理した。 |
上記3本のロイター配信記事たちの1本目で報じられている、ロンドン市内で起きた自動車爆破未遂事件の前に、ネット上で爆破予告が流れていたことも明らかになっています。
「インターネットにロンドン爆破を示唆する書き込み」 《『AFPBB News』2007年06月30日付け掲載記事》 |
【6月30日 AFP】ロンドン中心部で29日未明、車両爆弾とみられる乗用車が発見された事件で、米テレビ局CBSは30日、英警察当局が爆弾を発見する数時間前に、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)が使用するインターネット上のチャットルームに「ロンドンは爆破されるだろう」と警告するメッセージが書き込まれていたと伝えた。 CBSは同社のホームページで、ウェブサイトAl-HesbahのチャットルームにAbu Osama al-Hazeenというハンドルネームで300字程の書き込みがあったと報じた。 CBSが引用した書き込みには「最も哀れみ深く、最も慈悲深い神の名によって。英国はアルカイダの爆弾攻撃を待ちわびているだろうか。今日わたしは、アラーによってロンドンが爆破されるのを喜びなさいと言おう」と書かれ、また小説『悪魔の詩(The Satanic Verses)』の作者サルマン・ラシュディ(Salman Rushdie)氏への英爵位授与およびイラクにおける英国の役割について非難するものとなっていた。 ただしCBSは、その書き込みと車両爆弾発見との関連性は確認できなかったとする。 Al-Hesbahはイスラム聖戦士に最も広く利用されているインターネットフォーラムの1つで、過去にはアルカイダやイスラム原理主義勢力タリバン(Taliban)の思想が発表されたとして注目を集めたこともある。 ロンドン警視庁テロ対策本部のピーター・クラーク(Peter Clarke)長官は先刻、今回の事件の犯人について言及を控えた。 爆弾はピカデリーサーカス(Piccadilly Circus)近くのナイトクラブ前で発見され、ガスシリンダーやガソリン、釘などが使用されていたという。 |
『産経イザ!』ではこの今年6月終わりから7月初めにかけて相次いで発生した爆弾テロ未遂事件について、先に触れた、2年前に発生した「ロンドン同時爆弾テロ事件」と性格を異にしていると報じ、外的から守るための取り組みの必要に迫られていることを伝えています。
「内憂一転も外患…英テロ「アルカーイダが戦術輸出」」 《『産経イザ!』2007/07/03付け掲載記事》 |
英国の連続テロ・テロ未遂事件で、英捜査当局は3日(現地時間)までに、8容疑者を拘束、さらなる発生の阻止に向け必死の捜査をしている。間もなく2周年を迎えるロンドン地下鉄・バス同時爆弾テロ事件がイスラム教徒移民子弟らの仕業だったのに対し、今回の事件は、イラクなどで多用される手口を用い外国人らが計画・実行したとみられる点で性格を異にする。前回、“内なる敵”に無防備だった英当局は、今度の事件の背後とみる国際テロ組織、アルカーイダや関連組織など、“外敵”への防衛も迫られそうだ。 ■医師や医学生 ロンドン警視庁など捜査当局は、ロンドンの2件の自動車爆弾テロ未遂事件と英北部グラスゴー空港への車両突入事件に関与した疑いで、すでに7人の身柄を拘束。やけどで重体の1人を除く4人の本格的な取り調べを始めているもようだ。 BBC放送は英中部チェシャーで女(27)とともに拘束された男(26)をイラン人医師「モハメッド・アシャ」と報道。さらに多くの英メディアが容疑者の多くが医師や医学生だと伝えている。 2005年7月7日に起きた前回のテロは、ロンドンの地下鉄3カ所とバスを狙い、リュックサックに高性能爆薬を入れたテロリストたちが自爆テロを実行、52人が死亡し約700人が負傷した。 遺体で見つかった実行犯4人とも英国人で、3人がパキスタン系、1人がジャマイカ系だった。しかし、今回の容疑者たちの多くは、外国人。容疑者の一部がインテリ層で、命を救うべき医師やその卵だったことも英社会に衝撃を与えている。 ■爆弾“二段構え” 6月30日にロンドン市内で起きた2件の自動車爆弾テロ未遂事件で、捜査当局が注目したのは、国内ではまれな自動車爆弾という手口と、数百メートルの間隔に停車された2台の位置関係だったという。 2002年、インドネシア・バリ島で死者202人を出した爆弾テロ事件では、アルカーイダと連携したイスラム過激派組織、ジェマ・イスラミアのテロリストが隣接するディスコで小規模の爆発を起こし、逃げ出した人々に対し、より大きな自動車爆弾を爆発させて被害を拡大させている。今回も標的はロンドンのナイトクラブで、2台目の自動車爆弾は避難先になり得たトラファルガー広場近くに止めてあった。 爆弾には、イラクでアルカーイダ系組織が使うものと同様、殺傷力を高める燃料やくぎ、ガスボンベが仕込んであった。 ブラウン首相の国際治安対策顧問に就任予定のロンドン警視庁のスティーブンス前警視総監も事件発覚直後から、「アルカーイダは(イラクの首都)バグダッドやバリでの戦術を輸出し始めた」と指摘していた。 ■全容解明に自信 今後の焦点は、さらなる容疑者の関与はあるのか、そして新たなテロの可能性があるのか、だ。2日付英紙ガーディアン(電子版)は、警察当局が実行グループは8人との見方を強めて、アルカーイダに関係する人物3人を追っているとし、「ミスタービッグ」と呼ばれる人物が組織をつないでいると報じている。 グラスゴーで2日、記者会見したロンドン警視庁のクラーク・テロ対策部長は「ここ数日から数週間で、全容を解明することに絶対の自信を持っている」と胸を張った。(ロンドン 蔭山実) |
イスラム系移住者による2年前のテロ事件に対し、今度の爆弾テロ未遂事件は外国人による犯行・・・アルカイダ等の国際テロ組織への対策を、イギリスもとらざるを得ないところまでいよいよ来ているわけですね。
ところで、初めのところで、2005年11月にイギリス国内の鉄道とロンドン地下鉄を対象とした金属探知機を使った人体検査やX線装置を使った手荷物検査を導入すると発表した、とお話ししましたが、以上紹介してきている新聞記事等が報じているところの、今年6月終わりから7月初めにかけて発生した一連の爆弾テロ事件(未遂分含む)を受けて、今月中旬、イギリスのブラウン首相は更にもう一段踏み込んだ包括的警備強化策を表明しました《以下の記事》。
「鉄道の荷物検査導入も ただし英国の話」 《『産経イザ!』2007年10月20日付け掲載記事》 |
ブラウン英首相は14日、下院で演説し、国内のテロ防止に向けた包括的な警備強化策を明らかにした。主要な鉄道駅で乗客に対する空港並みの荷物検査を導入するほか、新たに160人の「対テロ・アドバイザー」を組織し、商店街や映画館などの警備指導に当たらせるなどとしている。 英国では6月に、ロンドンでの車両爆破未遂事件に続き、同国北部のグラスゴー空港に車両が突入するテロが発生。政府が警戒態勢の見直しを進めていた。 首相は演説で、2011年までの4年間で2億4000万ポンド(約550億円)のテロ防止関連予算を追加計上すると表明。空港や駅の輸送機関や公共施設で、不審な車の進入を防ぐ「防護ゲート」の設置などを進める考えを示した。また、テロ情報の収集、捜査に当たる情報局保安部(MI5)の要員を、現在の3300人から4000人態勢に拡充するとした。 テロ犯罪の容疑者を起訴しないまま警察が拘束できる期間は現在28日間だが、首相はさらに長期間の拘束を可能にする法改正にも意欲を示した。(共同) |
このイギリス首相の発言通りに実現すれば、先行実施されているパディントン駅を初め、英仏間高速列車「ユーロスター」等が乗り入れているセント・パンクラス駅、イギリス北東部への路線のターミナルとなっているキングズクロス駅、ケント、サリー、イースト・サセックス、ウェスト・サセックス各州とを結ぶ列車のターミナルとなっているヴィクトリア(ロンドン・ヴィクトリア)駅等のイギリス国内主要駅に於いて手荷物のX線検査等が行われることになると予想されます。
このイギリスが始めようとしているX線検査等の空港並みのセキュリティ・チェックを鉄道駅に於いて行うという取り組み、人口約13億を抱える中国では既に主要駅を中心に広く行われている他(→「乗車から降りるまで」・「乗車から降車まで」・「中国で列車に乗るには」)、スペイン国内を走る高速列車「AVE」の駅構内(→「アトーチャ駅からAVEでコルドバへ」・「バルセロナ-マドリード の鉄道に関して」・「手荷物検査~。」)・・・等でも行われている模様。
また、陸続きになっている国々(英仏海峡トンネルを通じてユーラシア大陸と連結されているイギリスも含む)では、複数の国に跨って運転される国際列車の発着するターミナル駅等に於いては、やはりX線による荷物検査等のセキュリティ・チェックが行われている模様ですネ《→「ユーロスター(Eurostar)」・「テヘラン発ダマスカス行き中東横断特急列車 01/06」・「臨津江駅(韓国)」(特殊な例ですが…)・「5月4日 国際列車」》。
日本でも、アメリカとの結びつきが強いこと等もあって、テロの標的にされている等の話は聞かれますが、これまでのところ、現職の法務大臣による「私の友人の友人がアルカイダ」との失言があった他は、鉄道駅等に於けるテロ事件の発生はありませんし、警備の強化は叫ばれてはいるものの、空港施設以外に於ける荷物に対するX線検査実施等の動きは見られませんが、例えばスペインで過去に起きたような、通勤電車を狙っての爆弾テロが、特に首都圏を初めとする大都市圏に於いて、発生するようなことになれば・・・わかりませんね、これは。
島国・日本に住む一人として、現時点では、今回報じられているイギリスの動きに対して、正直言ってあまりピンと来ないところなのですが、引き続き注視する必要はありそうですネ。
P.S.
本文中、中国では既に主要駅を中心にX線による荷物検査が広く行われている、と紹介しましたが、ネット上を眺めていると、駅によっては漫然とやっていたりとか、X線荷物検査装置はあっても使われている様子はない等といった話も聞かれますね《→「中国 北京北駅から普通列車で万里の長城へ」・「万里の長城に向かう列車 ~中国鉄路に乗ってみよう!第17話」》。
まあ、人(駅)によりけりといったところなのか・・・・・・
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