屋外、そして芝居小屋に於けるベートーヴェン「第九」公演・・・水戸芸術館(茨城・水戸市)と嘉穂劇場(福岡・飯塚市)
こちら大阪は、今日1日、鬱陶しい空模様で推移しました。
それで、ネット上から週間天気予報を確認してみたところ、こちら大阪の週末は2日間とも「曇時々晴」となっていますが、来る12月16日に「第九ひろしま」が行われることになっている広島では、リハーサルが行われる土曜日(15日)は「晴時々曇」、ゲネプロ&本番が行われる日曜日(16日)は「曇時々晴」・・・今のところは雨の心配は無さそうなところですね。
てるてる坊主でも吊そうか・・・あ、作り方忘れたかな(あ~ぁ)。
というわけで、実は先日、北海道夕張市に於けるベートーヴェン「第九」のレコードコンサートの話等を記事にしてアップしたわけですが、その記事を起こしている過程で、実は別の地域に於ける「第九」の話にぶつかりました。
それを読んでいるうちに、かつて「1万人の第九」合唱参加者有志が京都駅前広場(確か室町小路広場でしたっけ…)に集ってクリスマスか大晦日くらいにベートーヴェン「第九」合唱をしていたという話を耳にしていたことを思い出しました《尤も私自身はその京都駅前広場に於ける「第九」には足を運んだことは一度も無かったのですが・・・》。
その地域とは茨城県の県庁所在地・水戸市に於けるベートーヴェン「第九」公演です。
そしてその「第九」公演が行われる場所、そして演奏スタイル等が、かつて京都駅前広場に於いて行われていたベートーヴェン「第九」公演を彷彿とさせるものとなっているわけです。
◎ 屋外に於ける”300人の<第九>”《水戸市》
この水戸市に於けるベートーヴェン「第九」公演、水戸市内に所在し、音楽評論家でNHK-FMの『名曲のたのしみ』の番組構成・司会を長年務めている吉田秀和が館長を務めている水戸芸術館の企画で行われている『水戸の街に響け! 300人の<第九>』と称するものなのですが、その場所というのが水戸芸術館の屋外広場となっていて(但し雨天時は水戸芸術館コンサートホールATMにて開催)、ピアノと電子オルガン(ヤマハのエレクトーン)各2台とティンパニを従えての演奏で、演奏範囲も第4楽章(終楽章)のみとなっています。
屋外で、ピアノ或いは電子オルガンを従えて、第4楽章のみを演奏・・・このあたりが、かつて行われていた京都駅前広場に於ける「第九」コンサートを彷彿とさせるところですね《ただ水戸の「第九」の場合はきちんと演奏会用の標準服装を身にまとって臨んでいる模様ですが…》。
で、今年は広島の「第九ひろしま」の公演日と同一日、つまり12月16日(日)に行われることになっていますが〔どうやら「第九ひろしま」と毎年ほぼ同じタイミングで行われているみたいですね〕・・・
1回目…12:00開演
2回目…13:30開演
というふうに、2回公演となっています《時間的にも日曜日のコンサートにしては少し早めとなっていますが、恐らく野外で行うため比較的気温の高そうな時間帯を選んで行われているものと思われます》。
この今年開催分の『水戸の街に響け! 300人の<第九>』に寄せる形で、朝日新聞に以下の記事が掲載されています。
「藝に遊ぶ 水戸芸術館 ~【音楽】響く第九 師走の風物詩」 《朝日新聞Web版(asahi.com)・2007年12月06日付け掲載記事》 |
先日、街を歩いていたら、突然、年配の男性に声をかけられた。11月10、11日にあった水戸室内管弦楽団第70回定期演奏会にいらっしゃったお客様だ。ドイツの巨匠ヘルムート・ヴィンシャーマンが指揮したバッハにどんなに感動したか、熱心に語り「これからも楽しみにしていますよ」と告げ去っていった。演奏会当日にお客様をご案内していた私の姿を、覚えておられたのだろう。 またある日、近所のパン屋さんで店の方に「今年も〈第九〉の合唱に○○さんは出るの?」と聞かれた。16日に水戸芸術館広場で行われる「水戸の街に響け! 300人の《第九》」の公演が、師走の水戸を彩る風物詩となりつつあることを実感する。 水戸芸術館の催しが東京で話題になったり、世界で評価されたりすることは無論うれしく、意義深いことだが、街の人々から直接反響がかえってくる喜びには、また格別なものがある。 企画制作が仕事の主体なのは言うまでもないが、地域の媒体を通じて企画側の生の声を届け、演奏会ではお客様をご案内するなど、来館される方々といつも心でつながっていたいと思う。 最近は、水戸芸術館のホームページ上に、スタッフのブログが登場した。制作や企画関連の話題を書いていると、驚くほどの反響がある。これからも企画側の心を、水戸や茨城をはじめ、幅広い地域の人々と通わせるようにしたい。(主任学芸員 矢澤孝樹) |
地域密着を目指している水戸芸術館の姿というものを窺い知ることが出来ますし、すっかり水戸の街の年末の風物詩として水戸芸術館の屋外広場に於けるベートーヴェン「第九」公演が溶け込んでいることを示しているかのような印象をも受けました。
なお、昨年までの『水戸の街に響け! 300人の<第九>』については、例えば昨年(2006年)に開かれた『水戸の街に響け! 300人の<第九>』の模様を伝える茨城の地元紙・常陽新聞の掲載記事・・・
「300人が師走の空に大合唱 ~水戸の街並みに響く「第九」」 《常陽新聞Web版・2006年12月18日付け掲載記事》 |
○…師走の水戸の風物詩となった「水戸の街に響け!三百人の《第九》」が十七日、水戸市五軒町一丁目の水戸芸術館広場で開かれた。一九九九年に第一回目を開催、今回で六回目となり、市民の間にもすっかり定着、多くの来場者でにぎわった。 ○…「交響曲第九」は一八二二―二四年に作曲されたベートーベンの最後の交響曲。参加者は一般公募や県合唱連盟、水戸市合唱連盟の会員。九歳から八十歳と幅広い世代から集った参加者が九月から七回の練習を重ねて心を一つにし、本番に臨んだ。 ○…参加者は鈴木良朝氏の指揮で、結城滋子さん(ソプラノ)、山本彩子さん(アルト)、布施雅也さん(テノール)、清水良一さん(バリトン)の独唱も加え、第四楽章を高らかに歌い上げた。来場者も一部を唱和して感激を共有、最後には惜しみない拍手を送っていた。 |
「9月から7回の練習」とあるので、一見すると大阪「1万人の第九」より少ないように思えそうなところですが(初心者向け「12回クラス」と比較して)、今年の『水戸の街に響け!三百人の《第九》』の募集要項によると、その代わり1回あたりの練習時間が3時間と「1万人の第九」向けレッスンより1時間長くとられています《ちなみに、その募集要項によると、今年開催分の『水戸の街に響け! 300人の<第九>』向けレッスンは8回設定されています(但し、うち2回はレッスン時間が通常より15分間短縮されています)》。
また『水戸の街に響け! 300人の「第九」(2005/12/18)』(『2005年 茨城の風景』)では一昨年(2005年)開催分に於ける大判の公演写真が掲載されている他、『水戸の第九』というブログ内記事では2004年・2005年各公演分に合唱参加している記者自身の体験等が綴られています《ちなみにそのブログ内記事をアップさせているブログサイトでは今日(12月12日)付で『水戸の「第九」演奏会のお知らせ』という予告記事をも載せています》。
なお、水戸市に於ける今度の週末の天気予報は2日間とも「晴時々曇」で、公演当日(12月16日)に於ける予想降水確率は10%・・・・・・今年もベートーヴェン「第九」の歓喜のメロディーが水戸の上空に響き渡ることになりそうですネ。
◎ 嘉穂劇場第九 其ノ肆(四)《福岡県飯塚市》
もう一つ、以前本ブログに掲載の『福岡県飯塚市の芝居小屋”嘉穂劇場”に於ける「第九」の話と大阪・広島の「第九」情報・・・「第九」3題』で紹介した、福岡県飯塚市にある芝居小屋『嘉穂劇場』に於けるベートーヴェン「第九」公演が先頃行われていましたので、続報も兼ねて、お伝えしようと思います。
『嘉穂劇場第九 其ノ肆(四)』と銘打つ形で、また第15回ふくおか県民文化祭2007への参加公演としても開かれた今年の嘉穂劇場の「第九」について、全国紙の毎日新聞と福岡の地元紙・西日本新聞が以下のように報じています。
ちなみに今年の嘉穂劇場「第九」公演は、大阪「一万人の第九」第25回公演(つまり今年開催分)の前日リハーサルが行われていた去る12月1日に開かれました。
「「嘉穂劇場第九」 今年も熱く指導 12月1日公演 指揮のレニッケ氏練習参加
」 《西日本新聞Web版・2007/11/19付け掲載記事》 |
12月1日に公演が迫る市民合唱団「嘉穂劇場第9の会」(塚原昭一会長)の指揮者フォルカー・レニッケ氏が16日夜、飯塚市飯塚のコミュニティセンターで開かれた練習に今年初めて加わった。会員約200人を相手に熱心に指導し、練習会場に熱のこもった「歓喜の歌」が響いた。 レニッケ氏はドイツ出身で、九州交響楽団(九響)の元常任指揮者。九響や同会での取り組みが評価され、本年度の県文化賞を受賞した。 この日、レニッケ氏は2時間かけてみっちりと指導。日本語で「柔らかく」「ちょっと短く」と指示し、問題点を修正していた。昨年に続き参加する本田由美子さん(59)=同市宮町=は「引き込まれるような指導で、緊張感が違った」と満足顔。塚原会長も「会員の気持ちの入り方が違った。いよいよ仕上げの時期に入った」と喜んでいた。 公演は、2003年の水害から嘉穂劇場(同市飯塚)が復興したことへの感謝を込め、翌04年に開始。九響の演奏に合わせ、ベートーベンの「第九」を合唱する。今年は4回目で、冬の風物詩として定着している。 当日の公演は同劇場で午後6時から。入場料は指定席前売り4000円(当日4500円)、自由席同2000円(同2500円)。同劇場などで販売している。問い合わせは同劇場運営支援事務局=0948(25)2226。 |
「ちくほう撮っておき:レニッケさん第九指導 天から降る声で /福岡」 《毎日新聞Web版(毎日jp)・2007年11月20日付け掲載記事》 |
師走ももうすぐ。飯塚市の木造芝居小屋「嘉穂劇場」でベートーベンの「交響曲第九番・合唱付き」に挑戦する市民合唱団のメンバーたちは、来月1日の本番に向け練習を重ねている。16日には指揮をする元九響常任指揮者のフォルカー・レニッケさんが初指導。歌声にも一層熱がこもった。 レニッケさんは「嘉穂劇場第九」が04年に始まって以来、ずっと指揮を続けてきた。16日はイイヅカコミュニティセンターであった練習で合唱団約200人と対面。声は終始温和だが、指導は厳しい。「ワンダフル」とほめる一方、「歌おうと意識せずに、天から声が降ってくるように自然と歌ってください」と繰り返す場面もあった。 今年の合唱団は総勢約250人。福岡市で練習する“福岡支部”も誕生し、北九州市や大分県など筑豊以外からも多くのメンバーが集う。初めて第九を歌うという人もおり、全員が一生懸命だ。16日の練習の最後、レニッケさんは「ハーモニーがわかったら、もっとよくなる」と呼びかけた。 嘉穂劇場第九は12月1日午後6時開演。チケットは1階指定席4000円、2階特別自由席2000円(いずれも前売り、当日は各500円増し)。2階席は前方に合唱団が立つため、ステージが見えにくくなるという。問い合わせは嘉穂劇場運営支援事務局(0948・25・2226)。【井上元宏】 |
「話題:嘉穂劇場に「第九」響く 福岡・飯塚市」 《毎日新聞Web版(毎日jp)・2007年12月2日付け掲載記事》 |
福岡県飯塚市の木造芝居小屋「嘉穂劇場」で1日夜、九州交響楽団と市民合唱団によるベートーベンの「第九」の演奏会があった。老松を描いた「松羽目(まつばめ)」の幕を張るなど和の趣を漂わせる舞台で、市民ら約280人が「歓喜の歌」を響かせた。 03年7月の豪雨災害から復興した劇場が、翌04年から市民参加型イベントとして始め、今年で4回目。合唱団は小学生から80代のお年寄りまで、公募により結成された。市民らは舞台と2階桟敷席にも並んで四方から高らかに歌い、升席の観客約600人を魅了した。 松羽目の幕は、4回続けてタクトをふるう元九響常任指揮者のフォルカー・レニッケさんが県文化賞を受賞したお祝いとして初めて設けられた。 第九の後は「きよしこの夜」を合唱、最後は紙吹雪が舞い、芝居小屋は一足早いクリスマスの雰囲気に包まれた。【井上元宏】 |
「第九:歌うほど深まる魅力、毎日新聞記者が挑戦--飯塚・嘉穂劇場 /福岡」 《毎日新聞Web版(毎日jp)・2007年12月5日付け掲載記事》 |
師走になると日本各地に響くベートーベンの「交響曲第九番・合唱付き」。1日、飯塚市の木造芝居小屋「嘉穂劇場」で第九を歌う市民合唱団に参加した。合唱は10年以上前の高校のクラス対抗コンクール以来。生まれて初めて公のステージに立ち「嘉穂劇場第九」の魅力に触れた。【井上元宏】 ◇思い切り声出し、拍手響く舞台 午後6時すぎ、嘉穂劇場の舞台。私は九州交響楽団のオーケストラ後方に入場した合唱団の中央最前列にいた。指揮者のフォルカー・レニッケさんが拍手の中、登場する。コンサートマスター(指揮者の傍らのバイオリンの首席奏者)の合図で腰を下ろした。 レニッケさんがタクトを振り始めた。すぐ前のクラリネット奏者は頭や肩を懸命に揺らし、コントラバスを弾く弓は流れるようで、私はしばし見とれてしまった。 ベートーベンが1823年に完成させた「第九」。合唱が難しい曲として知られるが、最終楽章の「歓喜の歌」は自由と平和への賛歌として欧州連合(EU)の歌になっている。ただ、師走の風物詩のように歌われるのは日本だけだという。 カラオケで流行曲を歌う程度だった私は昨秋、嘉穂劇場に誘われて軽い気持ちで練習に参加。でも、難しくていつしか足が遠のいた。「今年こそは」と8月の合唱団募集に応募。ソプラノ、アルト、テノール、バリトンの4パートのうち1番低音のバリトンに入った。 練習は8月から毎週1回。ドイツ語の発音、音の高低や強弱、声の出し方などとにかく学ぶことが多い。「ちょっと音が違う人がいますね」と指導者が首をかしげると、自分のことかと思い、歌声がしぼむことも。CDも買って車中で聞いた。 第2楽章が終わるとソリスト(独唱者)が入場。第3、最終楽章と演奏が進み、もうすぐ合唱だ。本番前に初老の男性団員がつぶやいた「歌い出したら(自分の歌が)どこにいくかわからん」という言葉が頭をよぎった。 ソリストが立つのと同時に、舞台と2階席の合唱団280人全員が起立。芝居小屋は声がよく通り、少しずれても目立つ。先に歌い出さないよう、ソリストの歌声を楽譜でなぞり、周りの様子に耳をそばだてた。 「フロイデ!」。バリトンの合唱部分が始まった。緊張で声が震える。だが、だんだん気分も高揚。さびの部分は顔を上げ、思い切り声を出す。あとは無我夢中。テンポが速い部分はきちんと発音できたか自信がない。歌い終えた時、劇場に響く拍手が心地良かった。 終了後、劇場でケーキカットして打ち上げ。レニッケさんは「去年よりよかった。雰囲気も、それから……」とほほ笑んだ。参加した小・中学生が次々とケーキを取りに集まり、升席では中高年の団員が輪を作り、笑顔で話し込んでいる。 素人が初めて挑戦した第九。なんとか本番までたどりつけた支えの一つが第九を始めて4年目の合唱団会長、塚原昭一さん(62)だ。「あなたはすごい、私は最初、ここまでできなかった」と何度となくおだてられ、励まされた。 歌えば歌うほど課題が見え、もっとうまくなりたいと欲も出る。「ね、嘉穂劇場第九って素晴らしいでしょう」と塚原さんはにっこり。久しぶりに芸術の魅力に触れた。 |
2004年の第1回公演以来ずっと指揮を務めてきている、福岡県の糸島(糸島郡志摩町)に在住の指揮者で九州交響楽団の元常任指揮者でもあるフォルカー・レニッケが去る11月16日に飯塚市内で開かれたレッスンで合唱団員を直接指導していたこと(「1万人の第九」でいうところの”佐渡裕特別レッスン”ですネ)とか、今年から福岡市内にもレッスン会場が設定され、北九州市内在住者や大分県からの参加者も集っていたこと、更にレニッケが今年度の福岡県文化賞を受賞したことを祝って松羽目の幕が張られていたこと等が順次報じられています。
ところで、この嘉穂劇場に於ける「第九」コンサートについて、今年の嘉穂劇場の『第九』の翌日(「1万人の第九」公演当日)の日付でアップされた『嘉穂劇場 「第九・其の肆(四)」 公演 12月1日』及び『福岡県豪雨災害調査報告(2003.7)』によると、2003年7月中旬から下旬にかけて、活発化した梅雨前線の影響で九州を中心に各地で大雨に見舞われ、飯塚市にある嘉穂劇場も一時は再起不能とまで言われる程の大きな被害に見舞われたものの、その後地元有力者や企業、更に一流の芸能人たちからの支援等により1年程で復興を遂げたわけですが、その際、支援してくれた人に対する感謝の気持ちを表すため、地域の人たちが誰でも参加出来る出し物としてベートーヴェン「第九」を思いつき、そこから「嘉穂劇場 第九 其の壱」と銘打つ形で嘉穂劇場に於ける「第九」演奏会がスタートしたとのこと。
また、福岡県男女共同参画センターあすばるが開設しているWebサイト『あすばるチャレンジナビ福岡』に掲載されている『事例紹介-まちづくり 伊藤真奈美さん』では、嘉穂劇場のベートーヴェン「第九」演奏会について、次のように記されています。
…
より多くの人々に、劇場での経験を 子どもたちの劇場キャンプに並ぶ嘉穂劇場の一大イベントとして、クリスマスに恒例の第九の公演会があります。それまでの劇場は、大衆演劇が主な催しものだったため、お客さんは高齢の方達が大半を占めていました。「今までのお客様も大切にし、そして今の劇場に欠けている部分も補わなければならない。より多くの人が、劇場で幅広い文化に触れあえる企画はないだろうか」と考えていた時に、ABC交響楽団のチラシが目に入りました。劇場でクラッシックを聴いてみたいと思ったことをきっかけに、様々な人に働きかけ、第九公演を行なうための準備にとりかかります。そして、平成16年、嘉穂劇場で初めて第九が演奏されました。 嘉穂劇場の第九公演は、公募で参加者を募ります。地元の小中学生から、市民コーラスに参加している70代の男性まで、幅広い年代の参加者が、一流の指揮者や楽団と一緒に共演するのです。この公演会には、「地域の季節の風物詩になってほしい」という伊藤さんの願いも込められています。 伊藤さんの取り組みには、劇場の活性化を、飯塚市の地域おこしにもつなげたいという思いがあります。座長大会の時にまちを練り歩くと、商店街は人であふれ、まち全体が賑わいます。しかし、伊藤さんはこれだけに満足しません。「同じものを見せ続けるだけでは飽きてしまいます。新しいものを常に提供し、頭と体を使い積極的に飯塚のPRをしていきたい」と語る伊藤さんは、更に先を考えています。 |
「ABC交響楽団のチラシ」・・・『福岡県飯塚市の芝居小屋”嘉穂劇場”に於ける「第九」の話と大阪・広島の「第九」情報・・・「第九」3題』の終わり近くで記しましたが、地元生まれのアマチュア・オーケストラ、筑豊交響楽団の代表・村上英輔がNHKのラジオ番組の中で語った、少年時代に嘉穂劇場で体験したというABC交響楽団の演奏と重なるところがありますね《ちなみに村上氏は同じくNHKのラジオ番組の中で、彼自身が音大に進もうとした際に上京して当時のABC交響楽団所属トランペット奏者等からレッスンを受けたことも語っています》。
参考までに嘉穂劇場の、2003年7月中旬から下旬にかけての大雨で大きな被害を受けてから復興を遂げるまでとその後を伝えた中国新聞記事を以下にて紹介しておきます。
「『続・幕間の夢 芝居小屋物語』 ~その弐・嘉穂劇場(福岡県飯塚市)」 《中国新聞Web版・2005年11月14日付け掲載記事》 |
水害乗り越え公共的試みも 次第に雨脚が強くなった。九月。桟敷は身じろぎするすき間もなく、客は舞台に集中している。一昨年の豪雨被害から奇跡的によみがえった福岡県飯塚市の嘉穂劇場は、全国座長大会の熱気にあふれていた。 水害直後の惨状を知るだけに、復興前との違いは何か、気になった。桟敷をのぞいてみると、たたずまいや雰囲気は意外なほど変わっていない。 幕間。楽屋で汗をぬぐう九州演劇協会の玄海竜二会長(49)に聞いた。「客席は涼しかったでしょ。空調やトイレなど観劇設備が良くなったね」と、歯切れがよい。「大きな違いは、回り舞台が修復された。演出が広がり、ありがたいです」 客席を行き交う新しい顔ぶれにも気づく。スタッフカードを下げた大学院生小谷知也さん(24)ら、十数人のアルバイト学生だ。客を案内したり、靴袋を配ったりしている。 「劇場はホテルと同じで、人材育成に最適。『臨機応変』を学んでほしいの」。法被が似合う小屋のおかみ、伊藤真奈美さん(48)が見守る。 夫の近畿大九州短大助教授、英昭さん(56)は「この際バリアフリーにという声もあった。でも、それに代わるサービスをすればいい。車いすスペースまで、彼らが抱えていくよ」と笑った。 生まれ変わった劇場を実感したのは、直径十六メートル、重さ六トンの回り舞台だ。奈落で学生スタッフ十人が力を入れると、ギシギシと動いた。水害までは老朽化して固定するしかなかった舞台。小屋の華、ともいうべき場面転換に拍手がわいた。 建築が専門の英昭さんは「文化財だから、使える部材はほとんど残した。詳しい調査のおかげで花道のせりなど痕跡から復元できた個所もある」と満足そうだ。 座長大会の翌日。事務所で真奈美さんが「結局、今後を本気で考えなきゃいかん時期にきとったとよ」と、復興までの道のりを話し始めた。 民営の劇場として、嘉穂劇場は七十年以上の歴史を持つ。劇場主の英子さん(86)が高齢となり、施設は老朽化。最近は公演数が減少していた。 一方、全国では小屋が町の顔として復権しつつあった。公共財としての役割に気付き英昭さん夫妻は「小屋の将来を家族だけで決めてよいのか」と、全国芝居小屋会議の開催を引き受け、地域に問うことにした。 市や商店街に協力を求め、準備を進めていた二〇〇三年七月、水害が襲った。いっそ廃業して楽に―と思った夫妻の元に、役者やファンが次々と激励に訪れた。津川雅彦さんの呼びかけで開かれた支援イベントには、六千人もの人が集まった。 二人は覚悟を決めた。「ここは飯塚の宝。廃業なんかできん」。修復費は約三億円。支援を受けやすくするため、特定非営利活動法人(NPO法人)への移行を決断した。「市の人が夜に来て、書類作成を手伝ってくれた」と感謝する。 昨年一月、英子さんが理事長、英昭さんが顧問、真奈美さんが事務局長となり、NPO法人嘉穂劇場がスタート。日本宝くじ協会、日本小型自動車振興会から計三億五千万円の助成を受け、一周年の昨年七月、復興式典にこぎ着けた。 小学生百二十人が寝泊まりした劇場キャンプや九州交響楽団と市民による「嘉穂劇場第九」、DVD「筑豊の歴史と文化」の制作など、さまざまな試みに挑んだ。一億三千万円に達した募金。英昭さんは「公共的な役割を持った劇場に脱皮しなくては」と今後の企画を練る。 「商店街のお練りなど、地元とのきずなが深まったのがうれしい」と真奈美さん。民営の誇りを継ぎ、二人は小屋の「二枚看板」になりつつある。 女劇場主として役者や客に慕われる英子さん。「時代に合ったやり方ばせんと。あの子らがやってくれるでしょう」。穏やかな横顔だった。 |
芝居小屋「嘉穂劇場」は、水害を機に結成されたNPO法人の下、今日に至るまで、福岡・飯塚地区に於ける公共の文化施設へと脱皮・発展していっているところかも知れませんネ《ちなみに飯塚市には別に飯塚市文化会館「イイヅカコスモスコモン」も存在しますが、互いに競い合う等することで、飯塚市に於ける文化発展に繋いでいってほしいところですね》。
P.S.
水害からの復興を遂げてから3年経過した今年9月初旬頃に嘉穂劇場を訪れた際のレポートが『元気になった劇場』というブログ内記事となってアップされています《記事では「あの水害から三年」となっていますが、失礼承知で申し上げるならば、恐らく”あの水害からの復興を遂げてから3年”と読み替えるべきところかも知れませんね(間違っていたらスミマセン!)…》。
劇場正面から楽屋、客席、舞台等と劇場内外のあらゆる箇所をとらえた写真が掲載されているのですが、拝見していて、掲載写真の3枚目に写っている柳家金五郎の似顔絵にかかっている茶色の線状シミが2003年の水害の爪痕として残っていることを除けば、すっかり元気を取り戻した嘉穂劇場の姿がそこにあるといった印象を受けました。
これからも元気で頑張ってほしいですネ!
P.S.(2)
今回の記事本文中で記されている週末の天気予報データについては天気予報サイトの一つ「ウェザーニュース」が今日(12月12日)現在で発表している週間天気予報のデータを使用しました。
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