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ベーゼンドルファー社、日本の楽器製造大手ヤマハに身売りへ・・・名門ピアノ、ベーゼンドルファーの話(1)

 私自身、標題の話に初めて接したのは、現在「幽霊」ながらも籍だけ置かせて貰っている関西圏を活動拠点としているピアノサークルから配信された1通のメールからでした。

 去る11月30日付で配信されたそのメールには毎月の例会の会場に関することが書かれていたのでありますが、その文面の中に「ベーゼンが倒産しまして, 現在ヤマハが買収交渉をしています。その結論が出るまでホールを使用することが出来ません」と記載されているのが見えました。

 心中驚いた私は早速その「ベーゼンドルファー」をキーワードとして検索エンジンにかけてみましたが、出てくるわ出てくるわ、ベーゼンドルファーがヤマハに売却されるとのニュース記事やそのことに関連するブログ内記事の数々・・・・・・

 

 で、ベーゼンドルファー(Bösendorfer)といえば、ご存じの方もおられると思いますが、世界的にその名が知られているオーストリアの歴史あるピアノメーカーの一つであり、昔、私自身もそのピアノサークルの例会に参加していた時分には新大阪駅北側にあるベーゼンドルファーのショールームにてそのベーゼンのグランドピアノを目の当たりにしたものでした。

 そういえば、標準的なピアノの鍵盤数88から更に幾つか追加された機種(「インペリアル」とか)も目の当たりにした記憶があるような気が(頼りない記憶だが)・・・

 

 

 ま、それはともかくとして、ピアノの魔術師、フランツ・リストの激しいタッチにも耐え抜いたピアノの製造元としても知られているベーゼンドルファーの経営権を握っていた金融機関が経営難に陥った結果、これを身売りすることとなり、売却先を探していたら・・・というのがどうやら事の真相のようです《ベーゼンドルファーのピアノに関しては『ベーゼンドルファーの歴史』でも歴史解説がなされています》。

 

 

 ベーゼンドルファーの本拠地・オーストリアに於ける地元の通信社がベーゼンドルファーの売却について最初に報じたのは11月の中旬頃とみられています。

 

ピアノ名門ベーゼンドルファー売却へ=ヤマハも有力候補-オーストリア
《時事通信社Web版(時事ドットコム)・2007/11/18付け掲載記事》
ベーゼンドルファー売却へ ピアノ名門 ヤマハも有力候補
《『FujiSankei Business i.』2007/11/19付け掲載記事》
 【ベルリン18日時事】スタインウェイやベヒシュタインと並ぶ世界屈指のピアノ製造会社、オーストリアのベーゼンドルファーが売却されることになり、数日内にも買収先が決まる見通しとなった。有力候補の中にはヤマハも含まれており、音楽ファンを魅了する音色の行方に注目が集まっている。
 
 地元メディアが18日までに伝えたところによると、今回の売却は、ベーゼンドルファーを現在保有する同国銀行が進める非中核事業の株式放出の一環。売却先としては、国内ピアノメーカー、ブロッドマンが1100万ユーロ(約18億円)を提示し、一歩リードとも伝えられるが、銀行側は「最終決定はまだ」としている。
 ベーゼンドルファーは1828年に創業され、そのピアノはフランツ・リスト(1811~86)など数々の名演奏家に愛されてきた。だが、2006年に約200万ユーロの赤字を計上するなど、最近は苦しい経営が続いていた。(ベルリン 時事)
青字は11月18日付時事通信社掲載記事のみに見られる記述
赤紫字は11月19日付『FujiSankei Business i.』掲載記事のみに見られる記述

ヤマハが老舗・ベーゼンドルファー買収か
《日刊スポーツWeb板・2007年11月20日付け掲載記事》
 オーストリア通信などは20日までに、世界的に有名なオーストリアの老舗ピアノ製造会社「ベーゼンドルファー」が経営難などで売却されることになり、有力な買い手候補としてヤマハなどの名前が挙がっていると報じた。地元には外国企業への売却に反発もあるとされ、身売り話の行方に関心が集まっている。
 
 同社は過去に米企業が所有したこともあるが、報道によると今回の売却で生産拠点が国外に移る懸念があるという。
 小沢征爾氏の後任として、ウィーン国立歌劇場の次期音楽監督に決定しているオーストリア人指揮者、フランツ・ウェルザーメスト氏は「べーゼンドルファーはオーストリア文化の代表的存在の1つ。国内に残すべきだ」と地元誌に語った。
 ベーゼンドルファーは1828年に創業、作曲家のリストなどに愛された。ウィーン郊外の工場で約130人の丹念な手作業で作られ、製造台数は年間350台程度。

 

 ウィキペディア解説「ベーゼンドルファー」によると、1828年の創業以来今日に至るまでの累計生産台数は48,000台とされていますが、これは同じく世界規模で知られているピアノメーカー・スタインウェイの10分の1程度、そして日本の大手楽器メーカー・ヤマハの100分の1程度だそうです。

 上記新聞記事にて報じられている「製造台数は年間350台程度」というのは1日あたりにすると1台も造れていない計算になるわけですが、この台数の数字については、記事によってどうやらまちまちのようです。

 

 その後、11月下旬になって、そのベーゼンドルファーの買収先が報じられ、有力視されてきた日本のヤマハが買収に向けての優先交渉権を得ることとなります。

 

ヤマハ、オーストリアのピアノメーカー買収で合意
《『NIKKEI NET』2007年11月28日付け掲載記事》
ヤマハ、3大ピアノの一角を買収へ
《『NIKKEI NET』(bizplus)・2007年11月28日付け掲載記事》
ヤマハ、オーストリアのピアノメーカー買収で合意
《『NIKKEI NET』(マネー&マーケット)・2007年11月28日付け掲載記事》
 【ウィーン=桜庭薫】ヤマハが著名な高級ピアノメーカーであるオーストリアのベーゼンドルファーを買収することで27日合意した。複数の交渉関係者が日本経済新聞記者に明らかにした。買収額は推定で1500万ユーロ前後(約25億円)で、28日にベーゼンドルファー側がウィーンで発表する。ヤマハはグループのブランド力を高め、課題だった超高級市場の攻略に乗り出す。
 ベーゼンドルファーは現在、米系ファンドのサーベラスの傘下にある。ヤマハはベーゼンドルファーの全株式を取得する方向で最終調整する。
青字は『NIKKEI NET』通常版掲載記事『ヤマハ、オーストリアのピアノメーカー買収で合意』のみに見られる記述

ヤマハ、ピアノ名門ベーゼンドルファー買収へ
《朝日新聞Web版(asahi.com)・2007年11月28日付け掲載記事》
 ヤマハは28日、オーストリアの世界的ピアノメーカー、ベーゼンドルファー(本社・ウィーン)の買収に向け、優先交渉権を得たことを明らかにした。ヤマハが全株式を取得する方向で最終調整している。
 
 ベーゼンドルファーは1828年創業で、米スタインウェイ、独ベヒシュタインとともにピアノメーカーの「世界御三家」と呼ばれる。年間生産量はわずか数百台で、創業からの累計も5万台に満たない。現在は米投資会社サーベラス傘下のオーストリアの銀行が同社の株式を所有しているが、経営難から売却先を探していた。
 ヤマハは、ピアノの販売金額シェアでは世界一。販売力を生かしてベーゼンドルファーの経営を立て直し、高級ピアノ市場を開拓する考えだ。

 

 そして、優先交渉権に基づいて行われたヤマハとベーゼンドルファーの経営権を保有するアメリカの投資会社サーベラス傘下のオーストリアの銀行・BAWAG(バーバック、オーストリア労働経済郵便銀行、”BAWAG P.S.K.”)との2者による売買交渉の結果・・・

 

欧州高級ピアノ買収、ヤマハが基本合意・オーストリア大手銀発表
《『NIKKEI NET』(マネー&マーケット)・2007年11月30日付け掲載記事》
 【ウィーン支局】オーストリアの大手銀行BAWAGは29日、同行が保有するピアノメーカー、ベーゼンドルファーの株式を100%、ヤマハに売却することで基本合意したと正式発表した。ヤマハは高級ピアノメーカーの御三家と呼ばれるベーゼンドルファーを傘下に収め、超高級市場の攻略に乗り出す。
 
 BAWAGは「全株式の売却に向けたヤマハとの交渉が29日、最終段階に入った」との声明を出した。「ベーゼンドルファーとヤマハの強みをうまく組み合わせられる」とし、「ウィーン音楽界の宝」として超高級市場で地位を築いているベーゼンドルファー側と世界最大のメーカーであるヤマハのマーケティング力の相乗効果を狙う。

ヤマハ:ピアノ名門「ベーゼンドルファー」を買収へ
《毎日新聞Web版(毎日jp)・2007年11月30日付け掲載記事》
 【ウィーン中尾卓司】世界最大の楽器メーカー、ヤマハ(浜松市)がオーストリアの有名ピアノ製造会社、ベーゼンドルファーを買収することで、同社株を保有する現地銀行BAWAGと基本合意した。同行が29日、発表した。
 
 ベーゼンドルファーは1828年創業で、米スタインウェイ、独ベヒシュタインとともに「3大ピアノ」と称されている。著名な音楽家フランツ・リストが愛用したことでも知られ、職人による伝統的な製法により、年間に数百台しか生産していない。
 関係者によると、買収額は1500万ユーロ(約24億円)で詰めの交渉が進んでいるという。
 ウィーンでは「音楽の都のシンボル」として外国企業による買収に反発する声もあり、ヤマハはブランド名の継続とオーストリア内での生産体制維持で同意した模様だ。
 ベーゼンドルファーの経営権は60年代に米企業に移った後、BAWAGが02年に買い取り、オーストリアに戻った。しかし、BAWAGが経営難に陥り、売却先を探していた。ヤマハは「名器の中の名器」とたたえられるベーゼンドルファーの技術を取り入れることでブランド力を高める狙いがあると見られる。

 

 2002年の経営権を取得から5年・・・BAWAGの保有していた経営権はベーゼンドルファーと同じくピアノ等を製造している日本の楽器製造大手に渡ることとなったわけですね。

 ヤマハにしても、世界中の主要な国際音楽コンクールに、このベーゼンドルファーやライヴァルのスタインウェイ等の各ピアノと共に、フルコンサートグランドピアノを出品(提供)したりする一方で、ヤマハが送り込んだ調律師がもたらした調律技術は今は亡きイタリアのピアニストで「完璧主義者」とか「キャンセル魔」としても知られているアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリや旧ソ連のピアニストで「20世紀最大のピアニスト」としても知られているスヴャトスラフ・リヒテル等をも唸らせる程だったとの話がある等、楽器製造元としてのヤマハの名も世界中に知れ渡っていることもあり、オーストリアの歴史深きピアノ・メーカーであるベーゼンドルファーとそれを取り巻くオーストリア音楽界の抱える事情を理解出来たことは想像に難くないところでしょう《まあ言葉にする程のことでもないですけれどもね…》。

 

 そして今月に入り、去る20日になって、ヤマハとベーゼンドルファーの経営権保有者BAWAGとの間で正式に契約を交わすことになるわけですが・・・

 

ベーゼンドルファー買収 あすにもヤマハ契約
《静岡新聞Web版(ShizuokaOnline)・2007/12/20付け掲載記事》
 オーストリアの名門ピアノメーカー「ベーゼンドルファー」の買収に向け、同国の大手銀行バーバックから株式を買い取ることで基本合意をしていたヤマハは21日にもウイーンで、正式契約をする予定であることが20日分かった。ヤマハは同社関係者を社長として派遣する見込み。  ヤマハ幹部は買収後の最初の課題として販売の立て直しを挙げ、「(ヤマハは)国際的な販売網を持つので、シナジー(相乗効果)を発揮できるようにしたい」と強調した。社員の派遣は経営陣のみで、技術者の派遣は当面ないと見られる。  ヤマハは11月の基本合意後、ベーゼンドルファーの工場の環境調査など買収に向けた作業をしてきた。ヤマハは買収でブランドの高級化を推進する。

 

 そしてついに、歴史的な瞬間を迎えました。

 

ヤマハ、世界的ピアノ会社買収 ベーゼンドルファー
《朝日新聞Web版(asahi.com)「ビジネス」・2007年12月20日=23時46分付け掲載記事》
ヤマハ、世界的ピアノ会社買収 ベーゼンドルファー
《朝日新聞Web版(asahi.com)「文化・芸能 ~音楽」・2007年12月20日=23時46分付け掲載記事》
 世界的な高級ピアノメーカー、オーストリアのベーゼンドルファー社の全株をヤマハ(浜松市)に売却する契約が20日結ばれた。株を保有する地元銀行が発表した。売却金額は公表していないが、地元紙によると1400万ユーロ(約23億円)という。ヤマハは名門ブランド買収で、高級ピアノ市場への浸透を図る考え。
 
 ベーゼンドルファー社は1828年創業。米スタインウェイ、独ベヒシュタインとともに世界3大ピアノメーカーに数えられ、作曲家リストらに愛された。製造台数は年300台余。平均価格は1台6万ユーロ(約1000万円)だが、日本でも根強い人気がある。
 一時、米企業の手にあったが、02年にオーストリアの銀行グループに買い戻され、現在は米大手投資ファンドのサーベラス・キャピタル・マネジメントの傘下にある。近年は販売台数が低下、累積赤字が800万ユーロ(約13億円)近くにのぼり、経営難が続いていた。
 買収はベーゼンドルファーの営業部長らが独立して約3年前に設立した地元ピアノメーカー、ブロドマン社との争いになったが、ヤマハはオーストリア国内の工場を存続させ、ブランドを維持することを約束するなど、好条件を示した。

ヤマハ、ベーゼンドルファー買収を発表
《静岡新聞Web版(ShizuokaOnline)・2007/12/21付け掲載記事》
 ヤマハは20日、オーストリアの名門ピアノメーカー「ベーゼンドルファー」買収の契約をした、と発表した。同国の大手銀行バーバックから全株式を買い取る。買収額は非公表。ヤマハは買収効果の具体例として1年半―2年後、消音、自動演奏の機能を付けたベーゼンドルファーのピアノ発売を目指す。
 
 同社の代表者は現在、バーバック出身者だが、来年1月中旬以降にヤマハ・ミュージック・U・K・(英国)で共同経営を担う坂井佳史氏(54)が就任する。ベーゼンドルファー社の従業員は180人で年間売り上げは約22億円、年間生産台数は約340台。今後、年間5%の成長を目指す。ロシアや中国などの富裕層などをターゲットにして成長を図る。従業員のリストラは原則として行わない。
 ヤマハから買収を申し出て、昨年夏から交渉を始めた。株式の実際の譲渡時期は法的手続きを終えた来年早期を予定している。今後、ヤマハ幹部がベーゼンドルファー社に出向き、技術者の派遣などについて検討する。ヤマハの連結決算への影響はほとんどないという。

ヤマハ、オーストリアピアノメーカー・ベーゼンドルファー社の全株式取得へ
《『IBTimes』2007年12月21日=15:26付け掲載記事》
 ヤマハ<7951>は20日、プレミアムピアノ製造販売を行うベーゼンドルファー社(オーストリア、ウイーン市)の全株式を、同株式を保有するオーストリアの銀行 BAWAG社より取得することで基本合意し、オーストリアウイーン現地にてヤマハ及びBAWAG社間で契約を締結したと発表した。
 
 ベーゼンドルファー社は、1828年に設立されたコンサート用グランドピアノを始めとするプレミアムピアノメーカーである。ウイーンの音楽文化を象徴する存在として、高品位なものづくりを継承している。1966年に米国ピアノメーカー キンボール社の所有となった後、2002年にオーストリアの銀行 BAWAG P.S.K.グループに譲渡され現在に至る。
 ヤマハは、1900年からピアノ製造を開始しており、コンサートグランドピアノCFIIISを頂点とした幅広い商品構成を持つフルラインサプライヤーとして事業展開をしている。また、ウイーンにヨーロッパ現地法人の支店を配置している。これまで、ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団からの要請によりメーカーの減少で存続も危ぶまれたウイーンの音・音楽を継承するためにウイーン専用楽器を開発し、現在も製作を継続している。
 ベーゼンドルファー社のピアノも伝統的な製造が継承されていることから、ヤマハが経営を受け持ち、ベーゼンドルファー社を成長させることで今後の文化の継承も可能となるものと考えていたという。
 ヤマハは今後、来年早期に、法的な手続きを終えた後、実際の株式譲渡を行い、ベーゼンドルファー社の製造拠点は、基本的にオーストリアに残すという。

ヤマハ:世界3大ピアノ・ベーゼンドルファーの全株式取得
《毎日新聞Web版(毎日jp)・2007年12月21日付け掲載記事》
 【ウィーン中尾卓司】世界最大の楽器メーカー、ヤマハ(浜松市)がオーストリアの有名ピアノ製造会社ベーゼンドルファーの全株式を現地銀行BAWAGから取得することで最終合意した。ヤマハとBAWAG、ベーゼンドルファーの3社が21日、ウィーンで会見し公表した。
 
 「音楽の都の象徴」が外国企業に売却されることに対する地元の反発に配慮し、ヤマハは現地の生産体制の維持を明言し、「ヤマハのブランドイメージ向上とともに、音楽家のために伝統あるウィーンの音を守りたい」と説明した。
 世界3大ピアノの一つと称されるベーゼンドルファーは、職人の手作業による伝統的な製法を守り、年間数百台を生産。音楽家に「名器の中の名器」と愛されている。BAWAGの経営難もあり、売却先を探していた。

伝統の良さ残して ベーゼンドルファー買収 ~演奏家ら寂しさと期待 ヤマハ,ブランドすみ分け強調
《読売新聞Web版(YOMIURI ONLINE)・2007年12月21日付け掲載記事》
 ヤマハ(浜松市)が20日、オーストリアの世界的ピアノメーカー「ベーゼンドルファー」(本社・ウィーン)を買収することが決まったことについて、べーゼンドルファーを愛用する演奏家からは、寂しさと期待が入り交じった感想が聞かれた。
 
 岡部町出身で、アニメ「のだめカンタービレ」の挿入曲「のだめラプソディ」などで知られるピアニスト・作曲家の松谷卓さん(28)は「とにかく響きが豊かで、弾いていて気持ちいい」と素晴らしさを語り、「高価な楽器なので多くの人が触れる機会は少ないが、ヤマハの力で、広く浸透してもらえたらいい」と話した。
 30年以上弾き続け、自宅に3台あるというピアニスト遠山慶子さん(73)は「大変ショック。多くのアーティストも同じ思いではないか。でも、今の時代では仕方ないかも」と少し寂しげ。
 「技術はしっかりしているので、伝統的な響き、良い持ち味をそのまま残し、保っていってくれることを祈ります」と話していた。
 
 浜松市内で20日に記者会見したヤマハの小野田孝ピアノ事業部長は、べーゼンドルファーの全株式を保有するオーストリアの銀行との間で譲渡契約を結んだと発表した。小野田部長は両方のブランドのすみ分けを強調し、「設計や思想が違い、そのまま生かせるものはないが、参考にはなる」と述べた。
 今後、技術者を出張させ、技術的な交流を始めた段階で「具体的に出てくるのではないか」とした。その一方、ヤマハが持つサイレントピアノや自動演奏技術を投入し、1年半から2年後には発売するとの考えも示した。
 べーゼンドルファーの年間生産台数は、昨年がグランドピアノ約300台、アップライトピアノ約40台。その前年は計約400台あったといい、「年5%程度の成長」を目指すとした。

 

 ベーゼンドルファーとの技術交流を推し進めていくというヤマハですが、今後の業績見通しについては・・・

 

ベーゼンドルファー買収「4年で単年度黒字」・ヤマハ社長見通し
《『NIKKEI NET』2007年12月22日付け掲載記事》
 ヤマハの梅村充社長は21日、日本経済新聞社とのインタビューで、オーストリアの名門ピアノメーカー、ベーゼンドルファーの買収について「4年で単年度黒字、10年以上かけて累積損失を回収したい」との見通しを明らかにした。米国市場を特に有望視しており、「ベーゼンドルファーのピアノにヤマハの自動演奏機能を組み合わせて2年後の発売を目指す」と今後の戦略を語った。

 

 中長期的なスパンで建て直しを図ると共に、その過程でヤマハの培ったノウハウを投入していく考えを明らかにした格好となっていますネ《言うほどのことでもないか・・・》。

 ちなみにヤマハ自身が出している今回のベーゼン買収に係るニュースリリースはこちらになります

 

 ところで、オーストリア地元紙による報道から、最終的な買収額は1,400万ユーロ(約23億円)と、11月下旬に報じられた推定買収額より日本円にして約2億円下がる格好となったわけですが、『ベーゼンドルファー倒産』というブログ内記事は、今回報じられた買収額は”安い買い物”との見解を示した上で、ヤマハがかつて「生き物」であるピアノ製造の徹底的なオートメーション化を図ることでベーゼン等のピアノの5分の1の価格を実現させたこと等を踏まえて、ベーゼンドルファー倒産の一原因を担った日本のピアノメーカーがベーゼンドルファー買収という皮肉な形となった。ベーゼンドルファー買収の理由が「ほんまもん」を作る為であることを切に願う、と述べ、手作りに拘ってきたオーストリアの名門ピアノメーカーの伝統を壊さないでほしいという願いを露わにしていました。

 また、今回のベーゼンドルファーの買収に係る交渉権を巡り、ヤマハと争っていたブロドマン社については、朝日新聞が、ベーゼンドルファーの営業部長らが独立して約3年前に設立した地元ピアノメーカー、と報じていますが、『ベーゼンドルファー買収 うわさを信じちゃいけないよ♪』によると、そのブロドマン社を立ち上げたベーゼンドルファー元営業部長らが、まだベーゼンに籍を置いていた1999年、ベーゼン本社からの命を受けて低価格帯ピアノ生産の可能性を探るべく中国のピアノ工場を訪ね回る中で有望なピアノ工場を見つけ、本社に上申するも却下され、その後2002年にベーゼンの経営権がオーストリアの銀行BAWAGの手中に移ってからもそのBAWAGも彼らの上申に興味を示さず、結局はリストラで職を追われることとなったその元営業部長らが自らの手で立ち上げたのが今回ヤマハと争ったブロドマン社なのだそうです。

 ちなみに、『コトノハ』によるベーゼンドルファーに対する意識調査(今回の買収報道とは関係無しに)では、回答した登録ユーザ24人のうち9人が支持(というか”知っている”?)を表明、その理由としては「弾いてみたい」や「ドイツっぽい」、「スタンウエイ(スタインウェイ)の次に好き」等を挙げています。
 尤も不支持を表明した残り15人の中にも「一度弾いてみたい」や「好きなミュジシャンはベーゼン弾いてる。いつか自分の家に…と考えてる」といった意見も存在しますが…

 

 それにしても、日本のヤマハがオーストリアに根付く伝統的ピアノメーカーであるところのベーゼンドルファーの経営そしてブランドを引き継ぐことになったということは、音楽好きであり、まかりなりにも日本人の一人でもある私としても喜ばしいことであり、誇りとすべきところでしょうネ。

 

 ここで一つ余談になりますが、今回ヤマハが取得したベーゼンドルファーの経営権の売却元であるオーストリアの銀行大手BAWAGはアメリカの投資ファンド会社サーベラス傘下の銀行なのですが、このBAWAGは5年前(2002年)に同じくアメリカの楽器製造メーカーであるキンボール社からベーゼンの経営権を取得しています。
 この2002年までベーゼン経営権を保有していたキンボール社がベーゼンの経営権を取得したのは1966年、実に36年間の長きにわたって保有し続けていたことになるわけですね。

 それで、そのアメリカのキンボール社が製造したピアノについては『キンボールというピアノメーカー』及び『キンボールピアノ』にて紹介されているのですが、これらの記事に掲載の本体写真を一瞬見た感じ、つい電子ピアノかと錯覚してしまいましたが、どうやら「スピネット型ピアノ」のようでした。
 この「スピネット型ピアノ」のことについては『(カテゴリ)☆スピネット』にて作り方等も含めて解説されているのですが〔『スピネット Making Spinet No.5』にてスピネット型ピアノについての説明有り〕、う~ん、恥ずかしながら、私自身キンボール社製のピアノを見ること自体が生まれて初めてなものですから見たままの印象しか今は言えないところですが、ずっしりとした感じでワンポイントの装飾が華やかを演出させているかのようなスピネットピアノ、といったところでしょうか・・・

 

 

 さて、今回ヤマハに経営権が移ったベーゼンドルファーのピアノですが、公立の文化ホールはもとより、意外なところにも入っていたりもしているみたいですが、そのあたりの話については次回記事にて触れてみたいと思います。

 

 ゴメンナサイ、今回はこのあたりで!

【次回記事へ→】

 

 

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【関連記事(ベーゼンドルファーとヤマハ)
地方都市に散らばるベーゼンドルファーの手作りピアノ・・・名門ピアノ、ベーゼンドルファーの話(2)
ベーゼンドルファーの経営権を取得したヤマハの今の姿・・・名門ピアノ、ベーゼンドルファーの話(3)
ベーゼンドルファー・ジャパン、ヤマハに事業譲渡・・・F.リストらも愛用した名器の日本総代理店。ヤマハの一部署へ

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