九州新幹線・鹿児島ルートの最長トンネル「筑紫トンネル」貫通・・・・・・進捗率6割超える
2011年春の完成を目指して目下建設中の九州新幹線・博多~新八代間ですが、今月に入り、新たな動きが見られました。
工事区間内では最長、いや九州新幹線鹿児島ルート(博多~鹿児島中央間)全体でも最長と言われる筑紫トンネルが、大阪で「1万人の第九」総合リハーサルが行われていた去る12月1日、無事貫通しました。
苦悩を乗り越えて歓喜へ・・・まさにその典型をこの筑紫トンネルに見ることが出来ました。
◎ 筑紫トンネルについて簡単に…
貫通の話に入る前に、ここで筑紫トンネルについて簡単に話してみたいと思います。
(社)日本鉄道建設業協会の会報『鉄道の礎No.242』(2007年10月発行)Web版に掲載の『九州新幹線(博多・新八代間)工事の概要』では、全長11,935mの筑紫トンネルが以下のように紹介されています《以下にて引用》。
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九州新幹線で最長の筑紫トンネルは、福岡県筑紫郡那珂川町から佐賀県鳥栖市に連なる背振山地(標高600m~1,000m)の東側地域を貫く延長約12kmの山岳トンネルである。周辺地域には福岡都市圏の水源となっている河川やダムがあるため、S字カーブを描いてダムとの離隔をとった。また、トンネル施工による地下水の影響範囲をできるだけ小さくするために、前後に新幹線最急勾配の35%を採用して施工基面位置をあげた線形とした。 筑紫トンネルの地質は、早良型、糸島型および深江型と呼ばれる花崗岩が主体となっており、断層や亀裂が多く、また岩盤が風化して地質が劣化している箇所もあることから、先受けボルトや鏡ボルトなどの補助工法を行いながら掘削している。 |
勿論高速で走る新幹線のこと、S字カーブとはいっても極緩いものになっていると思われますが(まさか上越新幹線の中山トンネルに見られるような急なカーブではないでしょうね…)、これに中央部に向かって新幹線では最急勾配となる35パーミルの傾斜が加えられているわけですので、ちょっと過酷な感じがしますね、
ところで、上記引用文では「新幹線最急勾配の35%」との記述が見られますが、ご存じのように、通常鉄道線路の勾配は「パーミル」(千分率)単位で表されていて、上記引用文通り(額面通り)に受け散ってしまうとトンネル中央部へ向かう傾斜は「350パーミル」となってしまいます《まるでケーブルカーやね・・・》。
で、この全長11,935mに及ぶ筑紫トンネルの掘削工事にあたっては、平均して約3,000m毎に、以下に示す4つの工区に分けられています。
| ↑ 博多方 ↑ | ||
| 福岡県 | 梶原工区 | 大成・徳倉・大本・松本JV |
| 南畑工区 | 鹿島・地崎・さとう・松山JV | |
| 佐賀県 | 河内工区(◆) | 前田・大日本・松尾・中野JV |
| 山浦工区 | ハザマ・大本・梅林・深町JV | |
| ↓ 新鳥栖方 ↓ | ||
このうち、一番北端にあたる梶原工区については昨年(2006年)の9月25日に、一番南端にあたる山浦工区については今年の1月30日に、それぞれ掘削を既に終えている他、『九州新幹線(博多・新八代間)工事の概要』レポートによると、中程に位置する2つの工区のうちの福岡県側にあたる南畑工区についても当該レポートがリリースされた今年10月の時点では既に掘削を終えていますので、最後まで残っていた佐賀県側の河内工区の完了によって筑紫トンネル全区間貫通と相成ったわけですね。
なお、「九州新幹線のJR新鳥栖駅が建設中(2007.11.04)」及び「九州新幹線(鹿児島ルート)の筑紫トンネル(全長約11・9キロ)貫通」の両記事(何れも同一ブログサイトに掲載のもの)では今回全区間貫通した筑紫トンネルの新鳥栖方坑口とその周辺の現場写真が公開されています《これらの記事に掲載の写真には何れも何処のトンネルであるかの記述はありませんが、先に紹介した『九州新幹線(博多・新八代間)工事の概要』というレポート及びWebサイト『鉄路ノ景』内設置の『工事中の景』に掲載の『九州新幹線』にそれぞれ掲載されているデータ等から、当該記事2本に掲載されている写真は筑紫トンネルを写したものと推定出来ます》。
◎ 筑紫トンネル貫通(12月1日)
さて、九州新幹線・鹿児島ルート(博多~鹿児島中央間)の中で最長となる全長12km近くに及ぶ筑紫トンネルが去る12月1日に無事貫通しましたが、これについては各種マスコミでさんざん報じられているみたいですね。
まずは全国紙による報道から・・・
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「12キロの最長トンネル完成 九州新幹線鹿児島ルート」 《『産経イザ!』2007/12/01付け掲載記事》 |
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平成23年春の全線開業を目指し建設が進む九州新幹線鹿児島ルートでは最も長い筑紫トンネル(全長約11・9キロ)が福岡と佐賀の県境に完成し、1日、坑内で貫通式が行われた。 トンネル中央付近を頂点に、最大で1000メートル進むと35メートル上下する急こう配があるのも特徴。強力モーターを全車両に搭載する九州新幹線ならではのアップダウンが激しいトンネルとなった。 工事は14年7月に開始。全体を4つの工区に分け、福岡と佐賀の両側から掘削した。 九州新幹線鹿児島ルートは16年3月、新八代-鹿児島中央間が部分開業。建設中の博多-新八代間も用地取得はほぼ終わっており、23年の全線開業後は博多と鹿児島中央が約1時間20分で結ばれる。 |
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「九州新幹線:鹿児島ルートで最長、「筑紫トンネル」貫通」 《毎日新聞Web版(毎日jp)・2007年12月1日付け掲載記事》 |
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「話題:「筑紫トンネル」が貫通/九州新幹線で最長の約12キロ」 《毎日新聞Web版(毎日jp)・2007年12月1日付け掲載記事》 |
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2011年開業予定の九州新幹線鹿児島ルートで最長となる「筑紫トンネル」の開通式が1日、福岡県那珂川町~佐賀県鳥栖市間のトンネル内で開かれた。麻生渡福岡県知事、古川康佐賀県知事ら約150人が出席し、貫通を祝った。 九州新幹線の新八代~博多駅間は約129キロメートル(工事区間121キロメートル)で、計15のトンネルがある。筑紫トンネルは長さ11・935キロで、脊振山系の九千部山(標高848メートル)の東側を通って、鳥栖市に向かう。02年度から、4工区に分けて工事が始まった。 式では、麻生、古川両知事が発破に点火。それぞれ、佐賀、福岡方面に向かって通り初めをした。続いてあった祝賀会で鉄道・運輸機構の土谷幸彦副理事長は「土木工事の最盛期を越え、軌道(敷設)、駅舎(建設)に入ろうという時。完成を目指して全力で取り組みたい」とあいさつ。福岡県の麻生渡知事は「九州が、一体となって発展するための大きな前進」と祝辞を述べた。 新八代~博多駅間では、今年10月末に福岡県大牟田市からレール敷設が始まった。最後のトンネルとなる熊本県玉名市の「新田原坂トンネル」(約3キロメートル)も来年3月までに貫通する。【川上敏文、遠藤雅彦】 |
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「九州新幹線で、福岡―佐賀貫く九州最長のトンネル貫通」 《朝日新聞Web版(asahi.com)・2007年12月01日付け掲載記事》 |
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九州新幹線鹿児島ルートの筑紫トンネル(福岡県那珂川町―佐賀県鳥栖市)が1日貫通し、つながったばかりの中央部でその式典があった。全長約11.9キロ。完成すれば、鉄道のトンネルとしては九州最長という。 式にはJR九州や福岡、佐賀両県知事、工事関係者ら約150人が参加した。発破の爆発音で貫通が報告された。それぞれ参加者たちが反対側から中央部を通り抜け、万歳三唱。たる酒が振る舞われた。鉄道・運輸機構の元木洋・九州新幹線建設局長は「大きな事故がなく順調に貫通し、感無量です」。 同トンネルは総事業費約330億円をかけて02年度から着工した。高さ7.7メートルで幅が9.5メートル。鹿児島ルート(256.8キロ)が完成するのは11年3月末の予定だ。 |
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「九州新幹線鹿児島ルート「筑紫トンネル」で貫通式」 《読売新聞Web版(YOMIURI ONLINE)「地域=佐賀」・2007年12月2日付け掲載記事》 【注/記事掲載元サイト、掲載期間終了・削除済】 |
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「全長12キロ、九州新幹線最長の筑紫トンネルが貫通」 《読売新聞Web版(YOMIURI ONLINE)「九州発」・2007年12月1日付け掲載記事》 |
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2011年春の開通を目指して建設中の九州新幹線鹿児島ルート・博多―新八代間(121キロ)のトンネルのうち最長となる「筑紫トンネル」(福岡県那珂川町―鳥栖市、11・9キロ)の貫通式が1日、福岡、佐賀両県境の同トンネル坑内で行われた。 福岡側で麻生渡福岡県知事、石原進JR九州社長、佐賀側で古川知事、大黒伊勢夫九州運輸局長らが発破ボタンを押し、トンネルを貫通。関係者とともに徒歩で通り初めをして祝った。 鉄道・運輸機構によると同トンネルは2002年7月に着工。脊振山地に位置し、同区間にある15トンネルのうち最も距離が長く、4工区に分けて掘削工事をしていた。 鳥栖市の橋本康志市長は式後、「九州新幹線(鹿児島ルート)が完成に向けて着々と進んでいることを実感した。新幹線が九州全体の活性化の起爆剤になることを期待している。新駅ができる鳥栖市としては、いかに活用していくか考えていきたい」と述べた。 |
| 赤紫字は読売新聞「地域=佐賀」版掲載記事にのみ見られる記述部分 |
次はスポーツ紙による報道。
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「12キロ新幹線トンネル貫通/福岡-佐賀」 《日刊スポーツWeb版・2007年12月1日付け掲載記事》 |
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2011年春の全線開業を目指し建設が進む九州新幹線鹿児島ルートでは最も長い筑紫トンネル(全長約11・9キロ)が福岡と佐賀の県境に完成し、1日、坑内で貫通式が行われた。 トンネル中央付近を頂点に、最大で1000メートル進むと35メートル上下する急こう配があるのも特徴。強力モーターを全車両に搭載する九州新幹線ならではのアップダウンが激しいトンネルとなった。 工事は02年7月に開始。全体を四つの工区に分け、福岡と佐賀の両側から掘削した。 式では福岡、佐賀の両県知事らが最後の発破作業を実施。「バーン」という甲高い音が数回響き渡り、「ただ今、トンネルが無事貫通しました」とのアナウンスが流れると、集まった関係者約150人が拍手で完成を祝った。 九州新幹線鹿児島ルートは04年3月、新八代-鹿児島中央間が部分開業。建設中の博多-新八代間も用地取得はほぼ終わっており、11年の全線開業後は博多と鹿児島中央が約1時間20分で結ばれる。 |
そして福岡の地元紙・西日本新聞でも報じられていました。
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「筑紫トンネルが貫通 九州新幹線鹿児島ルート最長の12キロ 佐賀、福岡の県境で式典」 《西日本新聞Web版・2007年12月01日付け掲載記事》 |
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九州新幹線鹿児島ルートで最長となる筑紫トンネル(福岡県那珂川町―佐賀県鳥栖市、全長11.935キロ)が貫通し、1日、同トンネル内で貫通式が行われた。同ルートは、2011年春の全線開業を目指し工事が進んでおり、筑紫トンネルの貫通で全体の工事進ちょく率は約63%(予算ベース)となった。 脊振山地を貫く筑紫トンネルは02年から掘削工事がスタート。この日は「南畑工区」(那珂川町)と「河内工区」(鳥栖市)がつながった。 式典は県境付近で行われ、両県知事をはじめ関係者ら約150人が見守る中、発破がかけられ貫通。酒や塩で貫通点を清めた後、双方が顔を会わせ万歳三唱で貫通を祝った。 筑紫トンネルは総事業費約330億円。のべ31万6000人の工事関係者が携わった。 |
最後に紹介した西日本新聞掲載記事にもありますように、今回の筑紫トンネルの全区間貫通によって九州新幹線・鹿児島ルートの工事進捗率は予算ベースで6割を超えることになり、更に毎日新聞掲載記事にもありますが、最後に残された熊本県内にある全長約3kmの新田原坂トンネルも来年3月まで(つまり今年度中)には貫通する見込みだそうで、今後はレールの敷設等の諸施設の工事が本格化しそうですネ。
引き続き九州新幹線の建設動向等を見守っていきたいと思っています。
P.S.
飛行機との乗客獲得競争の中で新幹線はその技術をドンドン進化させてきている今日この頃なのですが、そんな中『新幹線の旅が鉄道の旅でなくなる日』というブログ内記事は、鉄道が追求することの一つにスピードが挙げられるのだが、スピードだけが鉄道の使命ではない、楽しい鉄道の旅、車窓に流れる景色の変化も鉄道の良さの一つだ、と主張しています。
このブログ内記事ではトンネルそのものに意義を感じ旅を演出するトンネルの存在も指摘していて、そういうものも含めた車窓の景色の変化を楽しむのも勿論なのですが、私自身、これは新幹線から離れてしまいますが、普通列車に乗り継いでいて、途中まとまった時間停車したりとか列車乗り継ぎで長時間の待ち合わせが発生した際に駅で食事をしたり一旦駅を出て周辺を散策してみたりするのも旅の楽しみの一つのようにも思ったりします。
もし、まとまった時間が取れるようであれば、一度、目的地に移動して終わりというのではなく、目的地に到達するまでの道中に於いても色々楽しんでみるというのも有りかもしれませんネ。
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トラックバックありがとうございます。
博多と鹿児島中央が1時間20分で結ばれるというのは驚異的なことと思います。
新幹線には新幹線ならではの良さがありますね。
新幹線の移動もよし、在来線の旅もよし、どちらも経験できる日本の鉄道文化。日本人に生まれて良かった!!
投稿: サラリーマンレポート | 2007年12月 5日 (水) 00時40分
サラリーマンレポートさん、お世話になっております。
TB失礼致しました!
そうですね、最近の報道では新大阪~鹿児島中央間で4時間を切るようにしたいとのJR西日本の談話も伝えられていますので、今後の最新ニュースが気になるところですね。
私も鉄道網が発達した日本で生まれ育ってよかったかな、なんて思ったりします(尤も最近は殆どの地方のローカル鉄道が厳しい現実に直面しているみたいですが…)。
ただ、鉄道網といえば中国が、日本とは反対に、現在でも地方へと鉄道網を広げているようなので(かつ主要都市間の高速鉄道網も!)、中国が羨ましいと思うこともありますね《尤もあちらは人口が日本の10倍以上なので、中国人(特に漢民族)の特性と併せて、とてもノスタルジックというわけにはいか無さそうな雰囲気ですが…》。
投稿: 南八尾電車区 | 2007年12月 5日 (水) 10時45分