厳寒のJR千歳線でのレール破断事故・・・昨年暮れのJR北海道管内のトラブル。ついでにJR東日本のトラブル話も
前回、前々回と北海道の鉄道に纏わる話をしてきていますが、もう1回、北海道の鉄道話をさせて頂きますね。
ただ、今回は鉄道の根幹(というか基礎)に関わる話となりますが・・・
各種メディアで昨年暮れのうちに報じられていますので、ご存じの方もおられると思いますが、どんなに立派な鉄道車両を造ったところで、これがないことには鉄道として成立しないモノ・・・・・・鉄道線路、その線路を構成する一つであるレール(軌条)が相次いで破断していたという話です。
レールの破断が発生したのは北海道のJR千歳線の北広島~島松間に於けるレールで、先に上り線のレールでそれは起きました。
「朝のJR2時間不通…千歳線レール亀裂」 《読売新聞Web版(YOMIURI ONLINE)・2007年12月21日付け掲載記事》 |
21日午前7時ごろ、北海道北広島市南の里のJR千歳線北広島―島松駅間で、レール上のトラブルを機械が検知したため、同区間の信号が自動的に赤になった。このため、千歳線、室蘭線の上下線が約2時間にわたって不通になり、他の路線も含め、札幌駅発着の快速エアポートなど37本が運休、通勤客など約1万5000人に影響が出た。 JR北海道によると、上り線のレールに幅約1・5センチの亀裂があったことが原因。レール内部に出来た小さな亀裂が、列車が通るたびに広がったものとみられる。JRでレールをつなぎ直して補強する応急処置をした。 札幌駅では当時、改札口付近に、通勤客や旅行カバンを持った人たちがたまり、午前9時過ぎに運転が再開されると、足早にホームに駆け上がっていった。 14日にもダイヤが大幅に乱れただけに、小樽市の主婦(56)は「正直、またかという感じがする」と話し、うんざりした表情で小樽行きの普通列車に駆け込んだ。 一方、新千歳空港では、札幌方面にバスやタクシーで向かう観光客、ビジネス客も目立った。 島根県の実家に帰省する江別市の酪農学園大生(18)は、当初の予定より約1時間遅れで新千歳空港に到着。「空港でゆっくりお土産物店をのぞく時間がなくなった」と嘆いていた。 JR札幌駅近郊では14日にも、事故などの発生を伝える防護無線が誤作動を起こし、約250本の列車が運休、約11万人に影響が出るトラブルがあった。 |
同じく昨年の12月14日に発生した列車防護無線のトラブルでウンザリしていた札幌市とその周辺の人たちにとって、その1週間後に起こったレール破断事故はまさに”泣きっ面に蜂”という心情にあったんじゃないかな、と思いますね。
しかもそのレール破断が見つかったのが朝7時という、まさに通勤時間帯にかかろうとしている時だから、何ともタイミングの悪い話・・・
『何が冬こそJRだバカヤロー by安佐達肇』に見られるような利用客からの怒りの声も聞こえていたことでしょうネ。
こんな状況下では、私だって、心の中でウンザリしてしまいそう《尤もそれが外見に出るか否かは別の話だけれども…》。
で、この12月21日の千歳線上り線路のレール破断の模様については『◇■◇レールに幅1・5㌢の亀裂◇■◇』というブログ内記事でもレール破断箇所の大判写真付きで伝えている他、『レール破断』では気温とレールの収縮の関係について解説されているのですが(過去に発生した北海道内でのレール破断の話もあり)、どうやら50t近い力が長さ5.6kmものロングレールの中に生じていた亀裂にかかったみたいで、北海道という地の自然の厳しさというものを実感させられる思いがするところです。
ところで、少し道草してしまいますが、去る21日のレール破断事故の1週間前に発生したという、その12月14日に発生した列車防護無線トラブルというのがどういうものだったのか、同じく読売新聞掲載記事は語ります・・・
「JR北海道で防護無線誤作動、214本運休・10万人影響」 《読売新聞Web版(YOMIURI ONLINE)・2007年12月15日付け掲載記事》 |
14日午後3時50分ごろ、JR札幌駅近郊を走行中の列車で事故などの発生を知らせる防護無線が誤作動し、同駅周辺のすべての列車が緊急停止するトラブルがあった。 JR北海道で誤作動を起こした列車の特定に手間取り、函館、千歳、学園都市の各線が札幌―小樽、岩見沢、新千歳空港、石狩当別間でそれぞれ運転を見合わせ、5時間半後の午後9時25分すぎに運転を再開した。 このトラブルで、札幌―旭川間の特急列車など計214本が運休、帰宅中の通勤・通学客などを中心に10万5000人に影響が出た。 JRによると、誤作動したのは、札幌駅に向かっていた列車搭載の防護無線とみられ、内部の電気機器類で不具合が発生したのが原因とみられる。 今回のトラブルでは影響人員が多く、JRではバスなどの手配が間に合わないとして、不通区間での代替輸送は見合わせた。同社では「バスを用意しても利用客が殺到する恐れがあり危険なため」としている。 |
ここで「列車の特定に手間取り」との記述が見えますが、ウィキペディア解説「列車防護無線装置」によると・・・
防護無線は、ただ装置を作動させるための信号であり、防護無線装置固有の識別番号から車両を特定する事は可能であっても、どの列車が発報したのか、何が危険なのかなどといった情報は含まれていない |
つまりどの列車が列車防護無線を発報したのかを、受信した段階では、特定出来ないわけで、『JR北海道札幌圏全列車ストップ』によると、JR北海道がそれぞれの列車の運転士に直接無線で交信して直接安全を確認すると共に車両点検等も行っていた模様で、北海道内では運行本数の最も多い札幌都市圏に於いて発生しているだけに相当の時間を要するだろう、と語っています。
実際、『続報』というブログ内記事がこの防護無線誤発報当日夜の札幌都市圏に於ける列車運行状況を記録しているのですが、この記事本文を見ていて、遭遇してしまった一般の利用者がかわいそうに思いましたよ《記事本文に記載の列車運行状況のうち、列車別の運行状況のみを以下にて引用》。
▲札幌17時30分発 特急「オホーツク7号」網走行 →22時30分頃出発の見込み 《通常…札幌17:30発→網走22:58終着》 ▲札幌17時48分発 特急「S宗谷3号」稚内行 →22時50分頃出発の見込み 《通常…札幌17:48発→稚内22:47終着》 ▲札幌17時57分発 特急「Sおおぞら11号」釧路行 →22時30分頃出発の見込み 《通常…札幌17:57発→釧路21:43終着》 ▲札幌18時00分発 特急「Sカムイ41号」旭川行 →22時30分頃出発の見込み 《通常…札幌18:00発→旭川19:20終着》 ▲札幌18時12分発 特急「北斗20号」函館行 →23時00分頃出発の見込み 《通常…札幌18:12発→函館21:48終着》 ▲札幌17時12分発 寝台特急「北斗星2号」上野行 →約5時間遅れて運転中 《通常…札幌17:12発→上野09:41(翌日)終着》 ▲札幌19時27分発 寝台特急「北斗星4号」上野行 →23時00分頃出発の見込み 《通常…札幌19:27発→上野11:19(翌日)終着》 ▲札幌22時00分発 急行「はまなす」青森行 →(12月15日)0時00分頃出発の見込み 《通常…札幌22:00発→青森05:35(翌日)終着》 |
◆ 「S」=スーパー ◆ スペースの都合上、書式のみ編集を行いました |
旭川行「スーパーカムイ41号」や元々夜行列車である「北斗星」と「はまなす」を除き、上記列挙の優等列車は、予期せぬ形で、全て事実上の”夜行列車”となってしまったようですね。
そして上野行寝台特急「北斗星2号」と「同4号」については、そのまま運転していたとすれば昼過ぎから夕方にかけての時間帯に上野に着いたことになるわけですね《折り返し、大丈夫だったのかな…》。
で、『☆★緊急無線トラブルでJRN「対策プロジェクト」★☆』によると、この防護無線誤発報という事態を受け、発生の5日後に開いた記者会見の席上、JR北海道は防護無線のアナログ方式からディジタル方式への置き換えを前倒しで実施すると発表しました。
先のウィキペディア解説「列車防護無線装置」によると、1996年にJR東日本管内にて列車防護無線装置が盗難に遭って悪用されたことを受けてJR各社がアナログ方式からディジタル方式への変更を進めていったとのことですが、JR3島会社の一つであるJR北海道は、経営環境の厳しさから、防護無線のディジタル化は思うように進んでいなかった、ということのようでしょうネ《皆目わかりませんが…》。
で、話を千歳線内のレール破断事故に戻しますと、JR北海道では、この後紹介する記事の中でも出てきますが、去る12月21日にレール破断が起きたことを受けて、レール内部に亀裂が生じているとしてマークしている箇所の緊急点検に乗り出したわけですが、発生から6日後の12月27日・・・
「JR千歳線レール破断:社内基準で補修せず」 《毎日新聞Web版(毎日jp)・2007年12月27日付け掲載記事》 |
27日午前0時15分ごろ、JR千歳線島松-北広島間の下り線で信号が赤になり、列車が進入できなくなった。JR北海道が調べたところ、2・2センチ幅の破断が線路に1カ所見つかった。同社は同じ場所に亀裂があることを以前に把握しながら社内基準に照らして「補修の必要なし」と判断していた。この亀裂が破断につながったらしい。 継ぎ目板で補修し、同2時36分に復旧した。貨物列車と回送列車の計6本が遅れた。 線路破断が原因で列車の運行が2時間止まった21日のトラブルを受け23日にあった緊急点検で、JRは千歳線で補修が必要な個所は15カ所と発表していた。今回破断が起きた個所はこれに含まれておらず、補修が必要な社内基準を満たさない亀裂と判断していた。【内藤陽】 |
「千歳線の線路破断:JR北の検査ミスが原因」 《毎日新聞Web版(毎日jp)・2007年12月27日付け掲載記事》 |
JR千歳線島松-北広島駅間で27日未明、下り線のレールが破断して信号が乱れ不通になったトラブルで、JR北海道は22日から行ったレールの一斉点検で検査ミスがあり、内部の亀裂を見逃していたと発表した。同社は同線の13カ所で再点検を急ぐとともに、レール点検態勢の見直しを検討する。 破断したのは下り線右側のレールで幅2・2センチ。同線では21日にもレール破断があり、同社は既にレール内部の亀裂を確認していた3233個所の点検に着手。同線では14個所を検査したが、超音波式の検査機器の扱い方にミスがあり、レールに直角に入る縦方向の亀裂を見逃していた。 この個所では9月の検査で横方向に32ミリの亀裂が見つかっていた。破断の状態から、補修が必要な状態まで内部の亀裂が広がっていたとみられる。【斎藤誠】 |
「JR、またレール破断 千歳線」 《朝日新聞Web版(asahi.com)・2007年12月28日付け掲載記事》 |
■点検に不備、補強せず トラブル続きのJR北海道で27日、また千歳線のレールが破断した。23日に点検済みの部分だが、測定器の使い方に不備があり、適切に補強されていなかった。列車は2時間半ストップしたが、未明だったため回送列車1本と貨物列車5本の遅れにとどまった。 JR北海道によると、27日午前零時15分ごろ、北広島―島松駅間で運行管理システムが異常を検知、赤信号となった。線路点検の結果、午前1時47分に破断を発見、継ぎ目板を補強して午前2時36分に運転を再開した。 千歳線では21日にレールが破断し、同社が亀裂のある個所を緊急点検。27日の破断部は23日の点検では補強は必要ないとされたが、実際は補強が必要な15ミリ以上の横の亀裂があったと推定される。検査員が測定器を使う時に初期設定を省いたため、検知できなかったという。検査に不備があった14カ所を27日深夜から再び点検する。 同社は道内3233カ所でレールの亀裂を確認。27日早朝の段階で1740カ所を緊急点検し、84カ所を補強した。来年2月20日までには点検を終える予定だ。また、現在は年1回、道内の全レールを点検しているが、今後は気温が下がってレール破断の可能性が高まる冬季前に集中して取り組むという。 |
「またレール破断 JR千歳線 緊急点検個所 補強工事せず」 《北海道新聞Web版・2007/12/27付け掲載記事》 |
【恵庭】二十七日午前零時十五分ごろ、恵庭市下島松のJR千歳線島松駅-北広島駅間で、運行管理システムが異常を感知し、線路の一部が破断しているのが見つかった。JR北海道は、継ぎ目板によるレールの復旧作業を行い、約二時間二十分後に列車の運転を再開した。破断した部分は、二十三日に緊急点検を実施したばかりだったが、基準値以下だったとして、補強工事は行われていなかった。 JR北海道によると、破断部分はレールに二二ミリのすき間が開いていた。このため運行管理システムが実際には走行していない列車を感知する「軌道短絡」が発生、信号が赤のままの状態になった。この影響で、帯広貨物駅発札幌貨物ターミナル駅行きの貨物列車(十七両編成)一本が島松駅で約二時間停車したが、旅客への影響はなかった。 千歳線では二十一日にも線路の破断が見つかり、列車三十七本が運休、約一万五千人に影響が出た。JR北海道は、道内で同様の破断が起きる可能性のある亀裂三千二百四十六カ所の緊急点検を進めており、二十四日には千歳線と函館線で基準値を超える亀裂十七カ所の補強工事を行った。 今回破断した亀裂も緊急点検の対象の一つで、二十三日に超音波で亀裂の長さや深さを調べたが、基準値以下だったため補強工事は実施していなかった。前回の破断個所からは千歳側に二・七キロ離れた地点だった。 JR北海道は超音波検査で基準値以下だった亀裂が三日後に破断したことを重視。破断原因や点検方法にミスがなかったか詳しく調べている。 |
最初に破断が見つかってから僅か6日後に同じ区間内(北広島~島松)の、今度は下り線のレールに亀裂、しかもその破断箇所は4日前に緊急点検を行った箇所でもあるとのこと・・・この後の記事の中で出てくることですが、亀裂の走った方向の違いから、従来の検知法だけでは大したことのないひび割れ程度にしかとられていなかったみたいですね。
尤も、この27日の破断事故では深夜帯に発生したものであるため、貨物列車への影響はあったものの、旅客関係への影響が無かったことが不幸中の幸いですネ。
更に新聞記事たちは続きます。
「レール亀裂、9月定期検査でも見落としか」 《読売新聞Web版(YOMIURI ONLINE)・2007年12月28日付け掲載記事》 |
北海道恵庭市のJR千歳線で、JR北海道が緊急点検の作業ミスでレール内部の垂直方向の亀裂を発見できず、レールが破断したトラブルを巡り、同社が3か月前に同じ場所で行った定期検査でも、破断の兆候を見落としていた可能性が高いことがわかった。国土交通省は、同社が社内で点検作業を急がせた結果、作業ミスを誘発させた上、二度にわたる点検で破断の兆候を把握できなかった点を重視し、同社のレールの保守管理体制が適切だったか調査する方針。 JRではレール内部の亀裂を4段階に分類。このうち、レール破断につながる垂直方向の亀裂が15ミリ未満の場合は「要監視」、15ミリ以上は補修作業、30ミリ以上は交換が必要としている。 JRによると、27日に破断した場所は、レール内部の状態を調べる専用車両が今年7月に亀裂を確認。保守作業員が9月12日に精密検査を行ったところ、垂直方向の亀裂は検知できなかったため、補修は必要ないと判断した。しかし、水平方向に約32ミリと比較的大きな亀裂が見つかったため、「要監視」に分類していた。 鉄道関係者によると、レール内部の亀裂は、走行する列車の振動や気温の変化によってレールが伸縮することで、ゆっくりと広がるのが一般的。JRでは「破断に至るまで亀裂が急激に広がることは想定しておらず、9月の定期検査の時点で亀裂がまったくなかったとは言い切れない」としている。 レール内部の亀裂は目視できないため、超音波でレール内部の傷を測定する専用機器を使って精密検査を行う。しかし、専用機器でも実際には10ミリ以上の亀裂しか検知できない上、設定ミスや不適切な操作によって、測定誤差も大きくなるため、亀裂が検知できなくなることも少なくない。 今回、破断したレールについてJRは、今月23日の緊急点検で専用機器を使って検査したが、作業員が機器の設定を誤ったため、垂直方向の亀裂が検知できないまま作業を行い、亀裂はないと診断していた。 JR北海道は28日未明、破断で補修工事を済ませた問題のレールの交換作業を行った。作業は午前3時前から始まり、同4時40分に完了したため、ダイヤへの影響はなかった。 |
「15ミリの亀裂見逃す JR千歳線またレール破断 過密路線の検査増検討」 《北海道新聞Web版・2007/12/28付け掲載記事》 |
恵庭市のJR千歳線で二十七日未明に見つかったレールの破断について、JR北海道は同日、二十一日の破断を受けて行った緊急点検で保線社員の測定ミスにより亀裂を見逃し、補強の必要がありながら基準以下としたことが原因と発表し、陳謝した。今回の破断は人為的ミスだったことが分かったが、同社は道内で最も過密な路線で冬季に破断が続いたことを重視。過密路線の検査回数を増やすなど、新たな破断防止策の検討に入った。 JR北海道によると、二十七日の破断は恵庭市下島松のJR千歳線島松-北広島間で発生し、二十二ミリのすき間が開いた。二十一日に北広島市の同線のレールで起きた破断地点から二・七キロしか離れていなかった。 二十七日のトラブル発覚は未明だったため、貨物や回送列車計六本の遅れにとどまったが、日中なら二十一日のように一万人以上に影響する可能性もあった。 JR北海道は二十七日の記者会見で、今回の破断について、二十三日未明からレール内に破断の危険がある道内の亀裂約三千二百カ所を緊急点検した際に、保線社員が亀裂の測定器の使い方を誤って、判定基準では補強が必要としている下方向への十五ミリ程度の亀裂を見逃したことを明らかにした。ほかの地点での測定ミスはなかったという。 ただ、今回の破断地点は九月の定期検査で下方向には亀裂なしと判定されており、三カ月で一気に広がった形だ。同社は二○○三年以降、検査の精度が上がったとして危険個所の超音波検査を年二回から一回に減らしたが、このペースでは亀裂の発生を把握しきれないという検査の盲点が浮かんだ。 また破断したレールはいずれも一本約五キロのロングレール。二十五メートルの通常のレールと比べ乗り心地が良く、同社の全路線のうち約三割で導入されているが、寒さによる縮みには弱く、過去十回の破断のうち七回がロングレールだった。 一方で、レールの補強や交換を行う亀裂の判定基準は二十年以上前の国鉄時代と変わらず、全国ほぼ同じで、道内の寒暖の差も反映していない。 このため、同社は亀裂拡大の速さやロングレール利用増の実態に合わせ、JR千歳線のような通過列車の多い過密路線では「検査の頻度を増やすことも選択肢」と検査回数を増やす考えを示した。また、道内各地でまちまちだった年一回の検査の時期も、レール収縮を想定して冬季の前に統一することを決めた。 北海学園大工学部の上浦正樹教授(鉄道工学)は「列車の性能などでレールの傷み方も時代ごとに変わり、これに合わせた検査方法が重要になる」と話し、保線社員の目視などの技術向上も訴えている。 |

亀裂に伴うレール補修並びに交換の判定基準が国鉄時代から変わっておらず、しかもその基準は北海道も含めてほぼ全国一律・・・6日前に発生した破断事故を受けて23日未明から急遽始めた亀裂発生箇所の緊急点検の中で点検の際に使用する検査器具の扱いでミスを犯したからだ、との報道がなされている中で、この国鉄時代から続くレール補修並びに交換の判定基準も曲者のような印象ですね。
で、今回のレール破断の背景にあるものとレール破断と信号検知の関係等については『☆★列車を止める「幽霊」~軌道短絡の実際★☆』にて解説されているのですが、レール破断時にもレール上に列車が走行している時と同様に検知して赤信号を現示するのだそうで(このことを当該ブログ内記事では”『列車の幽霊』現る”と表現しています)、この点については安全確保の観点からやむを得ない(というか必要な!?)ことなのですが、緊急点検の際に使用されたと見られる超音波を使った検査装置のモニター部分の初期設定が寒さのためにうまくいかなかったのが実際のところのようだ、と語っています。
とすれば、その検査装置も厳しい冬の間は懐炉(ホカロン等)である程度温めてやらないと「起きて」くれないというのだろうか・・・
温めるといえば、冬季に於けるレール交換の際には新しいレールを一定の温度まで温めてから一気に行うとの話がネット上で紹介されているようですが(→『現場レポート ~ロングレール更換工事』)、極寒の地・北海道に於いて冬季にレール交換を行おうとするならば相当量の火種をかき集めてこなければならないんでしょうネ・・・
それはともかくとして、北海道特有の厳しい寒さと検査器具取扱上の不手際、そして国鉄時代から続く全国一律のレール交換&補修基準が今回の一連の連続レール破断事故を招いた、と言えそうなところでしょう。
鉄道の根幹に関わることであるだけに、今後は地域ごとにフィットしたレール交換&補修基準の策定が求められると共に、レールに生ずる亀裂とレール破断の関係についての最新のデータ等を反映した、検査器具の扱いも含めた新しい検査態勢の確立も必要となってくるのでは、と考えています。
その一方で、『JR東日本の長時間運休トラブルが多過ぎないか?』によると、JR東日本管内でも、一昨年(2006年)、首都圏を中心にレール破断やレール変形、線路脇陥没等のトラブルが相次いで発生している他〔当該ブログ内記事は、掲載日の関係から、9月までの発生分についてのみ列記→『JR東日本が行なったきしみ割れ再現試験』によると去る2006年11月19日にも総武快速線・馬喰町駅構内でレール破断事故発生〕、『JR 東日本、安全問題告発の労働者を処分』及び『JR東日本が、安全問題を告発した社員を処分』によると、2005年制作のドキュメンタリー映画『「レールは警告する」~ 尼崎事故とJR東日本』に出演し、JR内に於ける「レール破断」等の実態を語った当時のJR東日本社員(国労組合員)に対してJR東日本千葉支社が「厳重注意」処分を下す等の不祥事が起きています。
技術面での確立も重要ですが、保線・検査態勢の確立等と共に現場の鉄道労働者(鉄道員)たちの真に安心して働ける環境作りも、一般の人に真に安心して利用してもらえる鉄道づくりを実践する上で、これまた欠かせないことであるように感じますね。
ああ、せっかくのJR東日本技術陣による渾身の技術レポートが泣いている・・・
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