マリス・ヤンソンス指揮オスロ・フィルによるドヴォルザーク『交響曲第8番ト長調作品88』(1997年10月、ウィーン)
歴代の作曲家の中で際だって「鉄分」の濃い作曲家としても知られているチェコの作曲家、アントニン・ドヴォルザーク(1841 - 1904)。
彼はその生涯に9曲の交響曲を残しているのですが、今回は『交響曲第9番ホ短調』と並んでよく知られている『交響曲第8番ト短調作品88』を聴いてみました。
チェコ国民楽派を代表する作曲家ドヴォルザークがこの『交響曲第8番ト長調』の作曲に着手したのは1889年8月26日のこと。
実はこの5年前(1884年)に、これまでにもしばしば避暑のため訪れていた南ボヘミアのヴィソカ村に土地を購入し、翌年(1885年)にはそこに別荘を建てることになるわけですが、当時の立地条件としては、その別荘の北側には森が広がり、また南側へは池のある谷間へと視界が開けていて、その池の向こう側には教会のある丘が見えていたとか。
そのような環境の中で『交響曲第8番』の作曲に着手したドヴォルザークでしたが、実際に曲のスケッチを本格的に書き始めたのが1889年9月6日、とはいえ同月の13日に第1楽章、16日に第2楽章、17日に第3楽章、23日に第4楽章の各スケッチを相次いで書き上げていて、その後プラハに持って行き、11月中に総譜が完成、翌年(1890年)の2月2日にプラハ・ルドルフ劇場(ルドルフィヌム、つまり「芸術家の家」)に於いて行われた音楽家のための基金募集を目的とした演奏会の中でドヴォルザーク自身の指揮により初演され、大成功を収めました。
で、この『交響曲第8番』、それまで作曲した作品を出版してきた、ブラームスも懇意にしていたともいわれているジムロックではなくイギリスの出版会社であるノヴェロ社から出版させたため、「イギリス」という標題がついたりもしますが、一方でボヘミアの自然を感じさせるということで「自然」(自然交響曲)の愛称で親しまれたりもします《日本フィルハーモニー交響楽団が自ら主催する公演でこのドヴォルザークの第8交響曲をとり上げる際には「自然交響曲」の愛称付きで公演告知等をしている模様》。
全体は以下の4楽章からなっています。
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第1楽章 Allegro con brio 《ト長調・4/4拍子・ソナタ形式》 第2楽章 Adagio 《ト短調・2/4拍子・3部形式》 第3楽章 Allegretto grazioso 《ト短調・3/8拍子・3部形式》 第4楽章 Allegro, ma non troppo 《ト長調・2/4拍子・自由な変奏形式》 |
スラヴ的な主題を用いたコラール風の序章から始まってフルートによる陽気な第1主題と木管楽器(クラリネットとフルート?)による愁いを帯びた第2主題との掛け合い等が聴かれる第1楽章、哀愁を帯びた弦楽セレナードと思わせるような主題で始まって森の中に響く静かな情景が伝わってくるような感じで展開していく第2楽章、スラヴ舞曲風な主部と木管楽器が奏でる歌謡的な主題が特徴的な中間部(歌劇『がんこな連中』の旋律からとられたともいわれる)で構成されている第3楽章、そして全体としてソナタ形式風に構成しながらも主題と18の変奏からなる第4楽章・・・曲の構成としては大凡こんなところですね。
で、このドヴォルザーク『交響曲第8番ト長調』でありますが、約10年前の1998年12月にNHK-FMで放送された「ベストオブクラシック」の中でとりあげられた、放送の前の年(1997年)の10月27日にウィーン楽友協会(ムジークフェライン)大ホール行われたマリス・ヤンソンス指揮オスロ・フィルハーモニー管弦楽団による公演の中で演奏されているもので聴いてみました。
ちなみにこの当時、ヤンソンスは55歳で、オスロ・フィルの主席指揮者を務めていたのですが、現在は65歳となり、バイエルン放送交響楽団首席指揮者、及びロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団常任指揮者を務めています。
この演奏、出だしからまるでヴェルヴェットのようなきめの細かなさで展開し、第1主題にさしかかって以降は、リズムの取り方のマジックなのでしょうか、前へ前へとどんどん進んでいくような感じであり、それでいて緊密な連携もとれていて緊張感溢れるアンサンブルも出来上がっていたような印象をも受けました。
第2楽章でも適度な音密度(というか音のヴォリューム)ながら緊密なアンサンブルを展開、自然の営みを中心に描いているこの楽章を、熱くなりすぎず適度なヴォリュームと程よいアゴーギクで綺麗にボヘミアの自然を再現していているかのようでした。
第3楽章も程よいアゴーギクの中でメロディーラインをしっかりと歌い上げていて、主題を上手に生かしているような印象なのですが、楽章終わりのところで出てくる「G→C→D→G」(もし間違っていたら遠慮無くご指摘を!)の右肩上がりに上がる音列の奏法がちょっと独特でしたね《えらくあっさりと処理していました》。
そして終楽章、全体をソナタ形式で覆う中で主題と幾つかの変奏で成り立つこの楽章でもヤンソンスは1音1音をしっかりと鳴らし、アンサンブルも緻密に作り上げ、かつ第1楽章に見られるようなただひたすら前に向かって進む勢いというものを感じさせてくれました。
ボヘミアの森の情景を描ききり、スラヴ情緒を連想させるようなメロディーラインをもきちんと綺麗に歌い上げる一方で、ひたすら前に向かって突き進むような(スポーティーな!?)印象をも受け、同じく鉄道好きの一人である私の心を躍らせたものでした。
鉄道マニアだったドヴォルザークが、もし、このヤンソンス=オスロ・フィルの演奏を耳にしていたら・・・そう考えると想像するのが楽しくなりそうですね《私の勝手な思いこみか…》。
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