70年ぶりの歌舞伎座「第九」公演こぼれ話・・・(1)音響環境と「第九」演奏の関係について
5月に入り、世間では明日から「大型連休(GW)後半に突入」と叫ばれている今日この頃ですが・・・
私自身はというと、自宅にあるデスクトップ自作機でディスク読み取り等が出来なくなってしまっているドライブ(デバイス)類の交換〔既にブツは揃えているのですが…〕等、このGW後半期間中にしておきたいことは幾つかあるのですが、果たしてやりきれるか否か・・・
まぁ本人次第ですけれどもね《←当たり前》。
さて、去る4月27日(日)に行われた約70年ぶりの歌舞伎座に於けるベートーヴェン「第九」(交響曲第9番”合唱付”)公演でしたが、翌日の日付で掲載した『歌舞伎座「第九」公演、終演…』という記事(以下「記事★」とします)では書ききれなかったことを記していきたいと思っています。
今回は歌舞伎座という箱物の音響環境に纏わることについて書いていきます。
「記事★」でも記していることですが、歌舞伎座という箱物はとことんデッドな(殆ど響かない)音響環境にあり、このあたりが日本古来の芝居に適したつくりであることを、私自身、実感させられたものです。
でも、このデッドな音響環境が、実は演奏する側にも微妙に影響しているみたいですね。
公演の翌日の夜に公演指揮者の石毛保彦氏から直々に頂戴したメールの中で語られているところによると、管弦楽を務めた歌舞伎町の地元・東京都中央区に於いて活動しているアマチュア・オーケストラ、中央区交響楽団は、通常は同じ中央区内にある「晴海アイランドトリトンスクエア」敷地内に建つコンサートホールで、残響が少ないとの声がある一方で、響きが美しい、中低音の響きがクリア等との評判も聞かれる「第一生命ホール」に於いて定期演奏会等を行ってきているのですが〔ちなみに「第一生命ホール」の残響時間は満席時で1.6秒→『第一生命ホール(東京都・中央区)』より〕、今回は普段慣れている音響環境下とは全く異なる(というか正反対の)、残響が皆無と言ってもいいくらいデッドな歌舞伎座という箱物に於ける演奏会とあって、テンポのコントロールやリズム取りからして勝手の違うものとなっていたようで、「間」の保持が出来ず、イレギュラーにテンポが速くなってしまう等の事象が起きていたのだそうです。
そのことが、「記事★」本文中の「3箇所ほどヒヤッとさせられたところがあった」という”フライング”へと繋がってしまった、と言えそうなところですね。
で、この事象は前半の2楽章分(第1・2楽章)の演奏時に見られたもののようで、緩徐楽章である第3楽章に入ると、この楽章の持つ穏やかさに助けられる格好で、徐々に落ち着きを取り戻し、そして混声合唱が入ってくる終楽章では、暗譜で臨んできた合唱団員たちがのびのびと、かつホールの音響環境に左右されず意図したテンポで音楽を進めていったことにも助けられて、最終的に音が鳴るようになって無事演奏を終えることが出来たそうで、普段の何倍ものエネルギーを費やしたが、日本の伝統芸能の殿堂である歌舞伎座で古典洋楽(クラシック音楽)の演奏が出来て新鮮な感動を覚えた、と石毛氏は語っています。
私自身、この歌舞伎座という箱物で拍手の音やオーケストラの音等を聴かせて貰った時、そのデッドな音響環境から、これなら芝居に適しているだろう、なんて思ったりもしましたが、その一方で、演奏家にとっては、普段から肌(というか耳)に馴染んできている音響環境とは全く違う場に放たれ、そこで演奏しなければならない場合に体感するであろう困難さというものがあるということを、今回の指揮者・石毛氏からメールを通じて直々に伺ったお話から、知るところとなったことで、改めてこの歌舞伎座に於ける「第九」公演が有意義なものであったように感じている次第です。
それでも石毛氏をして「非常に響きの無い、無いと言うより皆無といった方が良い程のデッドな会場」と言わせしめた歌舞伎座の舞台に集った中央区交響楽団の楽団員、そして中央区第九の会合唱団の団員は、そういった困難を乗り越えて公演を成功させた・・・歌舞伎座に於ける「第九」公演は、変な話、まさしくベートーヴェン自身が「第九」等を通じて説いている”苦悩を乗り越えて歓喜へ”という言葉を地で行くような演奏会となった、とも言えるかも知れませんね。
そのことに、今夜になってようやく気付いた私の頭・・・う~ん、やはり回転が悪いなぁ。
<(_ _)> お読み下さってありがとうございます <(_ _)>
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