『第27回ベートーヴェン「第九」交響曲演奏会』(於・鳴門市文化会館)のこと・・・私も聴きに行きました
久しぶりに徳島は鳴門に行ってきました。
ベートーヴェンの「第九」こと『交響曲第9番ニ短調作品125”合唱付”』日本初演の地、徳島県鳴門市・・・
毎年6月1日を「第九の日」と独自に制定している鳴門市ではこの「第九の日」に最も早く到来する日曜日(わかりやすく言えば”6月の第1日曜日”)に鳴門市文化会館に於いて”ベートーヴェン「第九」交響曲演奏会”を開いてきていますが、27回目となる今年は”「第九の日」即’「第九」交響曲演奏会’”という年にあたり、その上、今年は「第九」日本初演いやアジア初演90周年にもあたるという節目の年にもあたるためなのか、主催者サイドでも例年にも増して力を入れているみたいで、今回の公演では初めて公演期間を2日間〔6月1日(日)・2日(月)〕としている他、指揮者として今や”旬の人”としてしばしばテレビ等で紹介されている西本智実を迎え入れ、管弦楽についても、私が聴きに行った6月1日公演分に於いては、従前から管弦楽を務めてきている地元アマオケ・徳島交響楽団をメインとして、そこに在京プロオーケストラの一つで神奈川県川崎市にあるミューザ川崎シンフォニーホールをホームグラウンドとしている東京交響楽団の楽団員10人を加える形で、行われていました《ちなみに6月2日公演分については東京交響楽団が単独で管弦楽を務めた他、ソリスト陣も6月1日公演分とは総入れ替えとなっていました》。
それで、最初のところで”久しぶりに”と記したのは、実は私自身も、4~5年くらい前まで(もう少し遡るかも知れないが…恥ずかしながら記憶があやふやになってしまってます)、この鳴門の”ベートーヴェン「第九」交響曲演奏会”に都合5~6回ほど一個人として合唱参加させて貰ったことがあるためで、地元で少なくとも半年程度練習を積み重ねてきているか既に各地で何度も「第九」合唱を経験されている方々ばかりの集団の中に入る格好だったので、参加していた当時、合唱に加わりながら聞こえてくる歌声を聴いていた私はそこで合唱団全体のレヴェルの高さというものを実感していたものでした。
ところが、主催者サイドの組織変更等に伴う参加資格の変更が行われたために徳島県外から一個人として参加することが事実上不可能となってしまってからは鳴門行きを取りやめていたのですが、先月下旬くらいに今年の演奏会の陣容を見た私は急に行く気が起こり、既にチケットが完売になっていたところにヤフオクで運良く1枚出品されているのを発見、往復の交通費等で躊躇しながらも結局落札(購入)し、久しぶりの鳴門行きとなった次第。
公演当日、会場である鳴門市文化会館に着いた私は、そこで会場入口から既に伸びていた長蛇の列に遭遇・・・一時は長さにして100m近くまで伸びていたようでした。
そして中に入ってみてまたビックリ・・・既設の客席だけでは到底足りずに急遽折りたたみイスが運び込まれていたみたいでしたが、それでも全然足りず、ついには客席間通路(ステージから直角に伸びている通路)の後ろ半分が立ち見客で埋まってしまうという有様でした《開演後も演奏の合間で聴衆が次々と入ってきていました》。
さしずめ列車に例えると、この日の聴衆の入りは「乗車率120~130%」といった感じかな・・・
ちなみに、この日の鳴門市”ベートーヴェン「第九」交響曲演奏会”の入場者数について、公演を後援した読売新聞による報道では「立ち見客も含め約1600人」と伝えている他、地元紙・徳島新聞による報道では「1630人の聴衆から惜しみない拍手が贈られた」と伝えています《→『「第九」90年、徳島の誇り』・『心打つ歓喜の歌声 鳴門「第九」90年記念演奏会初日』》。
合唱団員をステージ上にスタンバイさせた状態で開演となり、最初に現・鳴門市長による挨拶が約5分間続き(その間に客席前方にいた徳島県知事を紹介する一幕もありました)、そのあと管弦楽を務める徳島交響楽団と東京交響楽団の各楽団員たちがステージ上に姿を現し、次いでチューニングに移ったわけですが、この日のコンサートマスター〔つまりオーケストラ内に於ける”現場監督”或いは”主将(キャプテン)”といった位置づけでしょうか…〕は、私自身の過去の記憶から、どうやら徳島交響楽団のコンサートマスターが務めていたみたいでした。
やがてこの日の指揮を務める西本智実が颯爽と姿を現し、客席に一礼等した後、「第九」演奏の前座に据えられたワーグナーの『「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲』の演奏へ・・・
この『「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲』に於いては、最初のうちこそ弦楽器セクションの鳴らし方に少し物足りなさが感じられたものの(立ち上がりが少し鈍かったかな…)、次第にヴォリュームを増していき、管楽器セクションとほぼ対等に掛け合えるところにまで鳴らせるようになっていたみたいで、本来ならば実質4時間以上に及ぶ全3幕分のいわば”あらすじ”ともいうべきこの前奏曲の性格というものをしっかり捉えていた様子でした。
ダイナミックでビシッとした感じのする西本の指揮っぷりは、この後メインで演奏された「第九」でもそうでしたが、全てのパートから発する音に気を配り、全体としてダイナミックに歌わせているかのような印象を受けると共に、楽団員たちは彼女の棒振りの下で、大した技術的破綻も見せず、また各パート間の連携も見事でした。
特に『「マイスタージンガー」前奏曲』の中の再現部に於けるチューバによるライトモティーフ演奏は秀逸でした。
『「マイスタージンガー」前奏曲』演奏の後は、休憩を挟まず、そのままメインディッシュである「第九」演奏へと移ったわけでありますが、今回は新ベーレンライター版による楽譜を使っていた模様で、中庸程度のテンポで推移していた様子でした。
ここでも随分厚みを感じさせるような響きを繰り出していた西本指揮だったわけでありますが、第2楽章の中間部(ニ長調部分)に於けるホルン・ソロの箇所ではちょっと苦闘気味だったかな・・・
4人のソリスト陣を迎え入れての第3楽章の演奏が終わった後、棒が振り下ろされずに5秒間ほどじっとしていたところからそのまま入った終楽章に於いて演奏に加わった合唱陣もパワーを感じさせる響きを出してくれていて、特に後半の”二重フーガ”箇所の締めの部分にあるソプラノによる高い「A」音〔2点A(イ)音〕が連続するところの歌唱は秀逸でした。
あと、同じ男として・・・というわけではありませんが、合唱団全体の約3分の1の人数である男声合唱のパワーというものも十分堪能出来たように感じています。
ダイナミックでいて端正な西本のタクトの下、「第九」日本初演(且つアジア初演)の地に於いて、今年も見事に一つの芸術として昇華させていたような印象を受けました。
それにしても、ステージから直角に伸びる客席間通路の半分ほどを立ち見客が埋め尽くすほど大量の聴衆が押しかけた鳴門市に於ける”ベートーヴェン「第九」交響曲演奏会”は、正直なところ、初めての経験でしたが、久しぶりに「第九」日本(アジア)初演の地・鳴門で聴けたこと自体はいい思い出となりそうです。
P.S.
今回、地元アマオケである徳島交響楽団と在京プロオーケストラの一つ・東京交響楽団とのジョイントという格好で実現した”ベートーヴェン「第九」交響曲演奏会”でありましたが、実はこの両者の間には、2005年以来、パートナーシップ協定が結ばれていて、東響が徳響に対して技術指導を行ったり、或いはジョイントコンサートを行ったり等してきている模様。
これに加えて、昨年秋に徳島市内で行われた国民文化祭オープニング・フェスティバルでは東響の楽団長が総合プロディーサーを務める等もしていたそうで、これらのことが徳島県内に於ける音楽文化の発展に貢献したと評価され、今年3月下旬、徳島県はその東響の楽団長に対して「県イメージアップ大賞」を授与したとか《→『山下氏(東京交響楽団長)に贈呈へ 県イメージアップ大賞』》。
両楽団の3年来のお付き合い・・・そして今回私自身が耳にした演奏はまさしく東響による”教育(トレーニング)の成果”とも捉えられますね。
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