「ラン・ラン(郎朗;P)+小澤征爾」の合唱幻想曲…中国に於ける「北京新年音楽会(ニューイヤーコンサート)」にて
指揮者の小澤征爾が先月の16・17両日に東京で行われた新日本フィル主催公演に出演したものの、その東京に於ける公演の終了後に体調不良を訴えたため、この後に予定されていた同フィルによる大阪市(5月19日)と津市(5月20日)の2都市に於ける地方公演が中止となり、さらにその体調不良の原因は「椎間板ヘルニア」と判明してからは約1ヶ月間治療に専念することを発表、これに伴って自らが音楽顧問兼指揮者を務めている水戸室内管弦楽団の5月28日(水)から30日(金)にかけて開かれていた定期演奏会への出演をキャンセルした他、その後行われている同楽団のヨーロッパ公演への同行出演もキャンセル・・・
現在なされている報道によれば、7月21日から8月2日にかけて横浜を初めとする全国5カ所で開かれる予定の「小澤征爾音楽塾」には予定通り指導者として参加することにしているそうで、よってその後に開かれる長野県松本市に於ける「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」にも予定通り参加するものとみられますが、ここまで精力的に動いてきていることですし、加えて年齢に伴う体力の衰え等も出てきているみたいですので、しっかり治療を受け、1日も早く元気な姿をファンの前に見せてほしいところです。
その小澤征爾、実は昨年の大晦日から今年の正月にかけては中国の首都・北京に滞在していて、北京市内で開かれた「北京新年音楽会」(北京ニューイヤーコンサート)に出演していました。
その「北京新年音楽会」の会場となったのは、昨年(2007年)の9月25日に完成したばかりの中国の”国立劇場”とも言うべき「国家大劇院」で、北京の天安門広場近くにある人民大会堂の西側に所在するとか。
現地で「国家大劇院2008新年音楽会」と呼ばれることもあったというこの北京に於けるニューイヤーコンサートでは、小澤征爾の他、中国生まれのピアニスト、ラン・ラン(郎朗)、アメリカ=オハイオ州出身のソプラノ歌手キャスリーン・バトル、ロシア=ノヴォシビルスク出身のヴァイオリニスト、ヴァディム・レーピン等が出演していたそうですが、一番の呼び物とされていたのはラン・ランのピアノ独奏と小澤征爾が指揮する中国国家交響楽団及び合唱団他の演奏によるベートーヴェンの『合唱幻想曲作品80』だったとか。
実はこの『合唱幻想曲』の演奏の模様が、1月12日付けで、『YouTube』に投稿されていることが判明しました。
日本国内各地で年末期にウンザリさせられるほど演奏されるベートーヴェンの「第九」(交響曲第9番ニ短調作品125”合唱付”)のルーツ的作品の一つとして紹介されることもあるこの『合唱幻想曲』では6人のソリスト(ソプラノとテノール各2名とアルトとバス各1名)を要するわけですが、『YouTube』に寄せられたこの演奏動画を眺める限りでは、どうやら6人のソリスト陣は全員中国人声楽家で固めているみたいですね。
と、推測めいた書き方となってしまっていますが、というのも、一応寄せられた動画にはソリスト陣一人一人の名前が字幕となって一応表示されるのですが、その字幕が滲んで映ってしまっているため読み取りにくく、その上『YouTube』に寄せられた動画に添付されたデータには出演者に関するデータの記載が一切無く、よって6人の声楽ソリスト陣全員が中国人か否かの確認が困難なために推測でしか言えない次第。
でも、動画を眺めた感じでは、6人の声楽ソリスト陣の中にキャスリーン・バトルの姿は無かったような・・・
で、演奏動画自体は3分割となっていて、3本合わせた合計再生所要時間は約21分半となっていますが、見た感じでは、この演奏動画、どうやら中国のテレビ局である「中国中央電視台」(CCTV)で放映された一番組の中の映像のようです《動画3本目の最後のところで右上に時刻表示が現れますが、どうやら夜遅くに放映されたもののようですね》。
そして、3本目の動画のところで声楽陣(ソリスト陣と合唱陣)が加わります。
それでは、以下の動画3本を順次お楽しみ下さい。
一通り見聞きしてみた印象としては、私自身が従前から何となく抱いてきている小澤征爾に対する演奏面でのイメージ通りとでもいいますか、テンポ面では決して速すぎず、どのパートに対してもきめ細かく指揮をしているような印象で、地に足を踏ん張るような感じの指揮っぷり、という感じで終始演奏を展開させていましたね《このような演奏は私の好みの一つでもあるのです》。
オーケストラのほうもそんな小澤の指揮っぷりにしっかり応えていたかな・・・合唱陣は若干かすれ気味に聞こえていたような気がしたものの、6人の声楽ソリスト陣についてはまずまず歌い上げていた感じ。
ピアニストのラン・ランは・・・う~ん、何だかビロード(ヴェルヴェット)の如く、ふんわり繊細な感じの演奏でしたね。
まぁ一通りメロディーラインも歌い上げていたみたいだし・・・
大地を踏みしめるかのような、しっかりとした演奏に仕上がっている印象を抱いています。
改めて、小澤征爾の1日も早いご回復を祈念しています。
『小澤征爾氏、病気で公演キャンセル 「まったく残念」』
『小澤征爾氏が病気でキャンセル 水戸の定期演奏会』
『小澤征爾さん、腰の治療で休演』
『小澤征爾さん:病気治療のため水戸室内管弦楽団公演を降板』
《→同一内容による『小澤征爾さん:水戸室内管弦楽団公演、病気で降板』という記事も有り》
『小澤さん、北京でニューイヤーコンサート!』
『急告:国家大剧院2008新年音乐会に小澤征爾登場』
『北京からの手紙E-1〈宮城じろう〉』
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大変興味深い記事でした
第九を何年か歌い続けて、ひとつの頂点を見た気がしていましたが
そこに至る道は、やはりあったんですね、原型のフレーズが見えて、納得でした
投稿: | 2008年11月30日 (日) 00時54分
こんばんは。
そうなんですよ・・・ベートーヴェン自身、異なる作品であっても何度も旋律を使い回すところがあるといわれており、「第九」の場合も、このブログで「第九」のルーツ的存在として紹介させて貰っている『合唱幻想曲』の他、1795年頃に作曲されたと言われる歌曲『愛されない者のため息と愛の答え』(WoO.118)にも「第九」で使われている旋律の一部が登場することが、ずっと前に放映された民放テレビの音楽番組の中で紹介されたことがあります。
『合唱幻想曲』・・・起伏に富んだ、魅力的な作品なのです。
投稿: 南八尾電車区 | 2008年11月30日 (日) 21時14分