第3セクター「北条鉄道」(兵庫県)、BDF(バイオディーゼル燃料)100%で出発進行・・・「洞爺湖サミット」を意識!?
JR加古川線の粟生駅から分岐している第3セクター鉄道・北条鉄道(旧国鉄北条線)が、来る7月7日から始まる北海道・洞爺湖サミットを意識したとみられる行動に出ましたね・・・
去る6月28日夜の営業運転終了後から6月29日朝の営業運転開始までの時間帯で、旧国鉄北条線からの第3セクター化(北条鉄道開業)の際に登場したディーゼルカー・フラワ1985形気動車(フラワ1985-1)を使って廃食用油を精製したバイオディーゼル燃料(BDF)100%による走行実験を実施しました。
通常の軽油とBDF100%燃料を使って粟生~北条町間(片道約14km)を各1往復運行させ、それぞれの燃料を使った場合の加速性能や排気ガスに含まれる成分等を調査・比較、その結果として、数値的には両者間でさほど差は見られず、BDF100%燃料を使って走らせた場合では排気ガスはよりクリーンになっていたとか。
この実験走行に先立ち、去る6月14日から15日にかけて、この「フラワ1985-1」を保有・展示している自動車整備業「赤松自工」(兵庫県加西市殿原町)に於いて同車両のエンジンをBDF100%で丸1日近く稼働させるという実験が行われ、これと並行して行われたとみられるBDFと軽油を使ってそれぞれエンジンを稼働させた場合の排気ガスの成分測定では滋賀県立大学大学院の大学院生4人が測定に参加、その測定結果として、BDFで稼働させた場合のほうが軽油の場合と比べて一酸化炭素濃度が高かったそうで、「(軽油と比べて)BDFの粘性が高く、不完全燃焼したのが一因ではないか」と実験に参加した大学院生の一人が分析していたとのこと。
鉄道のディーゼルカーの燃料としてBDFを使う取組は3年前(2005年)に千葉県内を走る第3セクター鉄道・いすみ鉄道で既に行われているのですが、BDFのみで走らせるという取組は今度の北条鉄道が日本初の試みとのことで、走行実験の結果を受けて、北条鉄道の社長をも務める加西市長は、年内を目途に1両分の燃料をBDFに切り替えたい、とコメントしています。
この100%BDFを営業運転の場で導入するにあたっての課題について、北条鉄道では、継続的仕様に対する安全性の実証や廃食用油の安定的確保、軽油との価格差・・・等を挙げていて、これに対して加西市やBDF精製を手がけるマルタ産業(兵庫県姫路市)等の事業者は、燃料確保のため、今後、家庭や事業所等からの廃食用油の回収量を増やしていく、としています。
で、この「廃食用油」(”使用済み天ぷら油”という言い方もあったっけ…)から造り出されるバイオディーゼル燃料、勿論これでも農作物と干渉し合わないという点では有効と感じるところなのですが、安定的な確保という点ではちょっと懸念が残りそうな感じですね。
今は原油価格高騰やそれに連動するかのような穀物価格の高騰の煽りを受けて、あらゆる食料品の価格までもが上昇する事態に・・・勿論食用油の値段だって上昇しているわけで、この状態が続けば安定的な廃食用油の確保にも陰りが出かねないと感じています。
そこで思うのは、昨年(2007年)に発表された雑草や廃木材等からのバイオディーゼル燃料製造技術(→『雑草からバイオディーゼル燃料、地球環境産業技術研究機構が開発』)の有効活用であり、この製造技術を開発した財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)では、2010年を目標に工業生産を始める、としているのですが、雑草でしたら廃食用油以上に安定的確保は可能と思われ(よほどの異常気象がない限り)、それに廃木材等も原材料として加えることで資源リサイクルにも役立ちそうなところですね。
将来、この雑草や廃木材等から生み出されたバイオディーゼル燃料で鉄道のディーゼルカーや路線バス等が走れるようになれば、エネルギー問題、そして環境問題の解決に大いに寄与できること請け合いじゃないかな、と思うのは私だけでしょうか《勿論、実現までには様々な壁が立ちはだかっていることでしょうが…》。
何れにしても、この北条鉄道の環境問題(というか洞爺湖サミット)を意識した取り組みの今後を期待したいところですね。
『バイオディーゼル燃料100%で24時間試運転』
『北条鉄道、日本初の100%BDFによる車両走行試験を実施』
《同一内容による『日本初、バイオ燃料100%の電車 北条鉄道が走行試験』という記事もあり》
『北条鉄道、加西市とバイオ燃料100%列車を試験運行』
『【千葉】いすみ鉄道がBDF車の実験へ』
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初めまして。
BDFのことで検索してお邪魔しました。
検証結果など引用させていただきたく、「お願い」としてコメントを書き込んでいる次第です。
現在BDFの使用が検討されているひたちなか海浜鉄道・湊線は日本でも指折りの古い車両が現役で走っており、BDFを使うことで何らかの機関への影響があれば、取替えのきかない貴重なものだけに非常に気になります。
投稿: 舞 | 2008年11月18日 (火) 23時31分
舞さん、こんにちは、こちらこそ初めまして。
ブログ内の該当記載箇所、早速拝見しました。
どうやら茨城県の旧茨城交通湊線、現在のひたちなか海浜鉄道湊線に対しても、自治体レヴェルで、BDF(バイオディーゼル燃料)活用の道を探っているみたいで・・・
BDF開発とその活用については歴史的にまだまだ浅く、課題も少なくないのが現状のようですが、化石系燃料の枯渇や資源の有効活用などが叫ばれる中、その少なくない課題を克服すべく、様々な生産技術の開発が進んでいるみたいです。
鉄道車両への燃料としてのBDF活用ともなれば、まだまだデータに乏しいのが現状なので、今後、十分な検証を重ねていき、その過程でエンジンシステムの改良を加えるなどの対応が考えられますね。
北条鉄道などと共に、湊線の今後の動向にも注視したいと思っています。
今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: 南八尾電車区 | 2008年11月20日 (木) 10時06分