「第九」は2国間の和解の証!?・・・2008年12月、ホンジュラス=テグシガルパ市。エルサルバドルの合唱団も迎えて
今、北海道の石勝線などを通るJRの特急「スーパーおおぞら」の前面展望動画を視聴しながらこの記事を書いているわけですが、まぁこの動画に限ったことではないわけですが、自宅などにいながらにして列車に乗っている気分になるのと同時に、車内でパソコンを開けて作業をしている気分にもなったり出来るわけで、鉄道好きの私にとってのお気に入りアイテムの一つとなっています。
ちなみにこの「スーパーおおぞら」前面展望動画は勿論インターネット上からダウンロードして得たものですが、残念ながら、現在ではこの動画の掲載元サイトに於いては当該動画の公開は既に終わっているみたいです・・・
さて、今回は鉄道ネタではなく音楽ネタ、それもベートーヴェン「第九」に纏わるネタとなります。
『YouTube』を初めとする各種動画共有サイトに最近寄せられたベートーヴェン「第九(交響曲第9番ニ短調作品125”合唱付”)」演奏動画の紹介です。
ここのところ中南米地域に於いて演奏された「第九」演奏を収めた動画の紹介が続いていますが、今回ご紹介するのも中南米地域に於ける「第九」演奏動画となります。
これからご紹介するのは、中米地域に属する諸国の一つ、ホンジュラスの首都テグシガルパにあるマヌエル・ボニージャ国立劇場(Teatro Nacional Manuel Bonilla)に於いて行われたベートーヴェン「第九」演奏を収録した動画。
収録されている範囲は「第九」終楽章のみで、3本の動画に分割される格好で『YouTube』に投稿・公開されています。
投稿動画に添付されているテキスト・データ(スペイン語)に演奏年月日の記載が見られませんが、動画ファイルが映し出す映像(テロップ)から、昨年(2008年)の12月17日に行われたものと判明しています《ちなみに公演会場も映像から判明したものです》。
公演会場となったマヌエル・ボニージャ国立劇場は1915年9月に開館、日本の外務省Webサイトに掲載の『ホンジュラスのマヌエル・ボニージャ国立劇場に対する文化無償協力について』によると、1998年(平成10年)開催の日本箏の演奏会を初めとして、1999年(平成11年)と2000年(平成12年)には日本人指揮者を迎えてのホンジュラス国立交響楽団演奏会を開催するなど、日本・ホンジュラス両国間の文化交流活動の場にもなっていて、2002年(平成14年→日韓共同サッカーW杯開催年)にはホンジュラス政府からの要請に応じて同劇場への照明・音響機材導入のための文化無償協力を行っています。
なお、劇場名に冠された「マヌエル・ボニージャ(Manuel Bonilla)」とは1903年~1907年及び1912年・1913年にホンジュラスの大統領を務めていた人物《1913年に死去》。
そしてこのマヌエル・ボニージャ国立劇場でありますが、1905年に旧宗主国スペインに於ける文学界の巨匠ミゲル・デ・セルバンテスの代表的作品の一つ『ドン・キホーテ』が出版されてからちょうど300年となることを記念して当時のホンジュラスの知識人らが発起人となって劇場建設をマヌエル・ボニージャ大統領に陳情したところから建設へとつながったわけですが、発起人たちは当初「セルバンテス劇場」として建設されることを要望していたそうです《このマヌエル・ボニージャ国立劇場についてはスペイン語版ウィキペディア解説にて一項目として挙がっていますので、スペイン語に自信のある方は是非ご一読されてみては・・・》。
ところで、このホンジュラス=テグシガルパ市にあるマヌエル・ボニージャ国立劇場に於いて行われたベートーヴェン「第九」演奏では、以下に列挙する出演者たちにより行われていました。
ソプラノ:チトセ・シライシ (Chitose Shiraishi →日系人歌手?) メゾ・ソプラノ:メリナ・ピネダ (Melina Pineda) テノール:カルロス・ロメロ (Carlos Romero) バリトン:《不明》 合唱:エルサルバドル国立芸術センター合唱団 (Coro del CENAR de El Salvador) エルサルバドル国立合唱団のメンバー (Miembros del Coro Nacional de El Salvador) 合唱&管弦楽:ホンジュラス・コーラル楽友協会 (Asociación Filarmonica Coral de Honduras) 指揮:ホルヘ・グスターボ・メヒア (Jorge Gustavo Mejía) |
ちなみに指揮を務めたホルヘ・グスターボ・メヒアは、合唱と管弦楽を務めていたホンジュラス・コーラル楽友協会の設立者兼音楽監督とみられます《→『Empleos en Asociación Filarmónica Coral de Honduras』から》。
そしてこの「第九」演奏では、ソプラノには日系人歌手を起用しているあたりが一つの特徴といえるところでしょう《バリトン歌手の名前の記載が無いのは動画投稿者が単に記載を忘れていたためなのでしょうけれども、他の可能性もあったりして…》。
なお、合唱団の中に隣国エルサルバドルからのメンバーも加わっていますが、実はホンジュラスとエルサルバドルとの間では過去に「サッカー戦争」〔1969年に行われた、サッカーW杯メキシコ大会(1970年)に向けての予選準決勝プレーオフに於ける両国間の試合結果に端を発した100時間に及ぶ戦争〕が勃発するなど長らく緊張関係にありましたが、2006年に両国間の国境問題が完全に終結、そしてこの「第九」演奏はその約2年後に開かれたわけですから、両国間がすっかり和解したことを印象づけるものにもなっていると言ってよいところでしょう。
ちょっと長くなりましたが〔いつもスミマセン!〕、それでは以下の3つの動画を順次再生させてお楽しみあれ・・・
ところで、先日、新進気鋭の若手指揮者グスターボ・ドゥダメルの故郷であるベネズエラ=ララ州バルキシメトに於いて行われた「第九」演奏動画を紹介していて〔→『ドゥダメル、自らの故郷で”聖母”に捧ぐ「第九」を若者たちと共に・・・ベネズエラ=ララ州バルキシメトの教会にて』〕、その中で混声4部合唱が「… vor Gott.」と歌い終わってから男声合唱のみによる”マーチ”への導入部分へと移る間のところ(日本ならばここは「静粛に」と教えられるところですが…)で徴収の間から拍手が起こっていたことを書きましたが、今回紹介しているこのホンジュラスの首都テグシガルパに於ける「第九」演奏でも同じところで拍手がパラパラと起こっているのが聞こえてます。
人によってはここを”曲の区切り(終わり)”と思ってしまうものだろうか・・・ひょっとしたら現地の人たちは「第九」という楽曲についてあまり深く考えていない(というか気楽にとらえている)のかも《定かではないが》。
そしてもう一つ、2つ目の動画の終わりのところ、いわゆる”二重フーガ”に移る直前の弱音合唱「Über Sternen muß er wohnen.」のところで、アルト・パートがちょっとしゃしゃり出ているような印象を受けるところですが・・・他の箇所はそれほどではない感じですが、ここのところだけ音のバランス面でちょっと難ありといった感じでした。
以上を除けば、演奏自体はまずまずといった感じですね。
音楽構成自体はまぁしっかりしているほうなのですが、合唱団とソリスト陣共々音程にちょっとついていけてない感じでしたし、オーケストラもちょっと粗めに演奏しているような感じ・・・
とはいえ、「聞き苦しい」ほどでは無いと思います・・・まぁ”和解の響き”にはなっていたように感じていますけどね。
【おことわり】
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