新幹線700系車両、加速度向上。最大「2.0km/h/s」・・・N700系導入進展に伴う全体的時間短縮なども背景に!?
今や東海道・山陽新幹線に於ける新幹線車両のスタンダード的存在と目されているであろう「700系車両」。
この700系車両がデビューしたのはJR西日本が新幹線車両で史上初めて300km/hの速度の出せる500系車両をデビューさせてからそう時が経っていなかった頃のように覚えていますが〔実際には500系車両デビューの3年後にあたる1999年にデビュー〕、乗り心地を重視した設計のため、最高時速が285km/hと500系車両より若干抑えられる格好で世に送り出されたことから、私も一度だけ体験したことですが、500系車両で運用予定の下り「のぞみ」(だったように記憶…)に乗ろうとしたところ、車両不具合か何かの理由で700系車両が代走することになり、入線時に到着時刻が少々遅れる旨のアナウンスが流れていたことを覚えています《ちなみにその時私は広島に向おうとしていたような…》。
その後、700系並みの乗り心地を実現させながら300km/h走行を実現し、加えて鉄道車両用トイレとしては史上初となるオストメイト対応の多目的トイレを導入するなどバリアフリー面で大きく進化させた「N700系」がデビューし、前例のない奇抜な外観で注目を集めた「500系車両」が東海道新幹線区間から徐々に姿を消すこととなったことは記憶に新しいところですね。
ところで、その東海道・山陽新幹線車両の現行スタンダード「700系車両」の加速度については、正直なところ、殆ど(全く?)意識していませんでした。
恥ずかしながら・・・
この「700系車両」の加速度に関する新たな動きが最近見られました。
JR東海が去る6月26日付けで発出したニュースリリース『700系の加速度向上について』に於いて明らかにしたところによると、2006年3月の新ATC導入(デジタルATCの一種「ATC-NS」。東海道新幹線区間のみ)に伴って、これまで、”元祖のぞみ”300系車両と同じ「1.6km/h/s」だった700系新幹線車両の加速度を最大「2.0km/h/s」にするための改良工事を昨年(2008年)10月から順次着手、このほど完了しました。
改良工事の対象となった車両の中には700系新幹線車両をベースにした試験・検測車両923形(通称「ドクターイエロー」)も含まれています。
前記のデジタルATC「ATC-NS」の導入では終端駅部等とそれ以外の箇所を車上側で判別することが出来るようになっていて、これに伴う今回の改良工事により、終端駅部等以外の箇所に於いては加速度を「2.0km/h/s」に向上させ〔終端駅部等に於いては従前からの加速度「1.6km/h/s」のまま〕、これによって発車してから東海道新幹線区間に於ける最高速度270km/hに到達するまでの時間がそれまでの300秒(5分)から285秒(4分45秒)に縮まることになり、列車遅延時に於ける回復力の向上や、安定輸送の確保などにつながるとしています。
ところで、ここでいうところの「加速度」とは、ご存じの方もおられると思いますが、発車時に於ける加速度(もう少し詳しく言えば「発車時などの低速域での加速度」)のことを指し、正しくは「起動加速度」という言い方をしますが、この「1.6km/h/s」という起動加速度がどの程度のものなのか、現在営業運転に入っている他の新幹線車両の例をとってみると・・・
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東北・上越・長野新幹線系統(JR東日本) E4系 … 1.65km/h/s 200系・400系・E1系・E2系・E3系 … 1.6km/h/s 東海道・山陽新幹線系統(JR東海・JR西日本) N700系 … 2.6km/h/s 100系・300系・500系 … 1.6km/h/s 九州新幹線系統(JR九州) 800系 … 2.5km/h/s |
そして、新幹線以外の特急型車両(勿論現役車両)では、抜粋になりますが・・・
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【JR】 281系・285系・681系・683系 … 1.8km/h/s 371系・E653系・E751系 … 2.0km/h/s 373系・383系 … 2.1km/h/s 883系・885系 … 2.2km/h/s 253系 … 2.5km/h/s 【私鉄】 東武100系「スペーシア」 … 2.0km/h/s 京成AE100形 … 3.5km/h/s 京成AE形(2代目) … 2.0km/h/s 小田急20000形「RSE」 … 2.0km/h/s 小田急60000形「MSE」 (2009年ブルーリボン賞受賞車両) 小田急線内2.0km/h/s・それ以外2.4km/h/s 名鉄2000系・2200系・2300系 … 2.3km/h/s 近鉄21000系・21020系・22600系・23000系 … 2.5km/h/s |
上表から、今回JR東海が発表した加速度向上のための改良工事の実施によって700系新幹線車両はほぼJR在来線特急車両並みの加速度性能を手に入れたことになり、私鉄車両でいうところの東武100系「スペーシア」と京成「2代目AE形車両」と肩を並べる格好となります。
しかし、こうしてみていると、N700系と共に九州新幹線の800系車両もまた加速度性能で優れていることを改めて認識させられるところですね。
そして、これは余談で新幹線から離れてしまいますが、私鉄の特急型車両のほうがJRのそれと比べて加速度性能が優れているような印象をも受けます(笑)
ところで、700系新幹線車両の加速度向上のための工事が行われたその陰で、N700系の追加投入に伴って、加速度性能で100系車両と変わりない”元祖のぞみ”300系車両の廃車が進行中とのことで、JR東海・JR西日本双方で合わせて16両編成70本製造された300系車両のうち、今年4月現在で、JR東海所属編成(J編成)で量産先行試作車(J1号編成)を含む20本編成が姿を消していて、JR西日本所属編成(F編成)については今のところ動静不明の状態。
その上、2011年度末までに定期運転の「のぞみ」をより加速度性能の高いN700系車両に全て置き換えるとの計画があり、これに伴って現在のスタンダード的存在である700系は「ひかり」や「こだま」に順次回されることになる他、西に目を向ければ、2011年春予定の九州新幹線・鹿児島ルート(博多~鹿児島中央)全線開業に合わせて開始となる山陽新幹線と九州新幹線との相互直通乗り入れでN700系ベースの新型車両(列車名「さくら」)が直通乗り入れ用に新規投入されることに伴って、既に山陽新幹線区間の「こだま」運用に回され始めている500系車両に続き、現在「ひかりレールスター」として運用されている700系7000番台もまた山陽新幹線区間の「こだま」に回されることが既に発表済みで、これにより、押し出されるかの如く300系車両の廃車が更に進む(そして最後には”全て無くなる”!?)ことが予想される他、山陽新幹線で残留している最古参100系車両も近い将来姿を消すことになるでしょう。
思うに、700系新幹線車両の加速度(起動加速度)工場のための改良工事の実施は、勿論デジタルATC導入に伴ってのこともあるかもしれませんが、2011年度末までに完了予定の定期「のぞみ」のN700系車両への総入れ替え計画の進展に伴っての、全体的な速度嵩上げ並びに所要時間短縮の必要性に迫られているところから実施したものと解釈出来なくもないところですね。
とはいえ、進化を続ける東海道・山陽新幹線、そして九州新幹線の今後に引き続き注目していきたいと思います。
◎ 参照記事
『700系の加速度を向上 東海道新幹線』
『JR東海 700系新幹線、加速度向上で最速度到達時間を短縮』
『時速270kmまでの到達時間が約15秒短縮 - 700系新幹線車両の加速度改良完了』
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700系の加速度向上について|ニュースリリース - JR東海 Central Japan Railway Company
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