三陸鉄道に女性アテンダント4人デビュー・・・地方鉄道に広まるアテンダント(接客乗務員)採用の動き
旧国鉄そしてJRの赤字ローカル線からの第3セクター鉄道への転換の先駆けとなりながらも、昨年(2008年)に2度東北地方を襲った地震被害の影響に加えて新型インフルエンザの世界的流行などもあって深刻な経営危機に瀕している宮城県の第3セクター鉄道・三陸鉄道でありますが、開業から25年目という節目を迎えた今、起死回生を図るべく、また一つ新たな手に打って出ました。
三陸鉄道は去る9月1日、列車内に於ける沿線観光案内や乗客の乗り降りに際してのアシストを主たる任務とする女性アテンダント(接客乗務員)を新たに導入することを発表、同時にアテンダントとして採用された沿線地域出身の20代女性4人(うち3人は宮古市出身、1人は下閉伊郡山田町出身)のお披露目式が、三陸鉄道のマスコットキャラクター「三鉄くん」も迎え入れる形で、開かれました。
この女性アテンダント採用は国の”ふるさと雇用再生特別基金活用事業”の一環として県から委託を受ける形で実現し、契約期間は3年(2012年3月まで)で、当面は北リアス線(宮古~久慈)に於いて主に乗客の多い日中時間帯の列車に乗務する他、宮古駅に於ける窓口案内も行うとしています。
27人の応募者の中から選抜されて7月に採用され、1ヶ月間の実地研修を経て晴れてデビューとなった4人の女性アテンダントは、お披露目式の後、早速乗務に就き、少し緊張した面持ちで車内放送をしたり乗客への声かけなどをしていました。
こうした鉄道事業者によるアテンダント(接客乗務員)の採用は、2002年に長野県内を走る第3セクター鉄道しなの鉄道(軽井沢~篠ノ井)で20歳代女性4人を「トレインアテンダント」として採用したのを皮切りに地方の中小私鉄や第3セクター鉄道を中心に導入の動きが広まっていて、特に昨年(2008年)秋に政府が地方の雇用創出を目的とする「ふるさと雇用再生特別交付金」(概念図はこちらから)を新設してからはアテンダント導入の動きはより活発化してきている模様。
東北地方だけでも、今回の三陸鉄道を初め、同じく第3セクター鉄道の由利高原鉄道(秋田県;2009年5月採用→同月デビュー)、冬季運行のストーブ列車でその名が知られている津軽鉄道(青森県;2009年5月採用→6月デビュー)でもアテンダントを導入していて、三陸鉄道を含めた3社とも前記の「ふるさと雇用再生特別交付金」認定に伴う”ふるさと雇用再生特別基金活用事業”の一環としてアテンダント導入を決めています。
尤もその3社それぞれのアテンダント陣容を見ると、20代女性のみを採用しているのは三陸鉄道だけで、由利高原鉄道の場合は採用した3人の中に男性アテンダント1人も含まれていますし、津軽鉄道の場合は24歳から53歳までの津軽地方出身の女性7人を採用しているなど、必ずしも一様にはなっていませんが・・・まぁ別に陣容のことはどうでもいい話で、それぞれの鉄道の発展のために頑張ってくれればそれでいいことなんですけどもね。
ただ、地方の中小私鉄や第3セクター鉄道を中心に次々とアテンダントが導入されてきている昨今、言うまでもないことなのですが、あの会社がアテンダントを入れているのだからウチの会社も・・・ということになれば悲劇を招くだけです。
変な話、あの町が立派な文化ホールを持っているのだから是非おらが町にも・・・というふうな「ハコモノ行政」と何ら変わりない状況が出かねないわけですね。
アテンダント導入によって、日常の営業運転に於けるサービス改善は勿論のこと、更にその先をも見据えて果敢に行動を起こすことで、少しでも赤字体質からの脱却に向けて鉄道事業者として目に見える形で前進できるようになっていなければならないでしょう。
そのいいお手本の一つとして挙げられるのが、福井県内を走るかつての京福電気鉄道(福井)、現在の「えちぜん鉄道」。
えちぜん鉄道で活躍している女性アテンダントのことについては既に各種メディアによって紹介されてきているほか、アテンダントのチーフが自ら著した『ローカル線ガールズ』(メディアファクトリー)の出版も相まって、彼女たちの活躍ぶりが全国に知られるところとなっているわけですが、ことにテレビ東京系列他で放映された『日経スペシャル ガイアの夜明け』で取り上げられた際には〔『ガイアの夜明け』では彼女たちのことを「鉄道ガールズ」と呼称していました〕、車内に於ける案内業務にとどまらず、乗客からの意見・苦情の聞き取りや、アテンダント自らの足による沿線観光スポットと駅とのアクセス具合の調査、観光スポットを訪れている利用客達に対するアクセスのことについて聞き取り等も行っていて、そこから様々な問題点を洗い出して解決策を探る姿なども紹介されていて〔この放送の中では更に勝山市役所にバス路線開設の申請を行うところまでが紹介されていました〕、表の顔だけではわからない、えちぜん鉄道と沿線地域の発展のため陰で行動するもう一つの面を窺い知ることができます。
文化ホールでいうならば、文化芸術に関する専門知識を持った専門職員らを長期間配置したり、指定管理者制度を活用して施設運営をイヴェント運営に長けた団体に委託したりする等して、ハード面だけでなくソフト面でも充実させることで稼働率を上げていくようなものですね。
今回起死回生を図るべくアテンダントを新たに導入した三陸鉄道、勿論三陸鉄道に限ったことではないのですが、ただサービス向上に務めるだけにとどまらず、常にその先を見据えながら行動することを心掛ける共に、事業者自体も彼ら・彼女らのアテンダントとしての活動を全面的にバックアップしてあげることも鉄道事業者としての発展には欠かせないことであるように思うところです。
リアス式の三陸海岸沿いを走る三陸鉄道の「鉄道ガールズ」として発進した4人の今後の活躍を期待します。
P.S.
三陸鉄道の女性アテンダント・デビューの約3ヶ月前、同じく国の”ふるさと雇用再生特別基金活用事業”の一環として客室乗務員「奥津軽トレインアテンダント」をデビューさせた、「ストーブ列車」などで知られている青森の津軽鉄道は、鉄道事業以外に運輸収入が無い上、沿線地域のモータリゼーション進展の影響などもあって、やはり深刻な赤字に苦しんできていますが、津軽鉄道沿線地域出身の作家・太宰治の生誕100年記念イヴェント開催などが奏功して今年4~6月期の乗客数は昨年同時期比で9%増と明るい兆しを見せ始め、「奥津軽トレインアテンダント」たちも自ら「七夕列車」や「ホタル列車」といったイヴェント列車運行を考案するなどの講堂に出ている他、五所川原(津軽五所川原)駅で接続しているJRとの連携も視野に入れている模様で、かつて旧国鉄の貨物列車が津軽鉄道線に直通していたように、JR列車が乗り入れてくることを今も夢として持ち続けている様子。
翻って三陸鉄道を見てみると、幸いにも北リアス線と南リアス線がJR線を介して一つのレールでつながっていて、その敷設状況を利用して毎年夏には仙台から三陸鉄道を経由して八戸に至る臨時快速「リアスシーライナー」が運行されている他〔今年も運行実績有り→『リアスシーライナー(上)』・『リアスシーライナー(下)』〕、今年新たに発売される東北6県内のJR線と11鉄道事業者共同のフリーきっぷ「東北ローカル線パス(普通列車限定)」のフリー・エリアに三陸鉄道の2路線が共に入っているなど、遠方からの旅行者にとっては条件的に恵まれていると言えるところですが、やはり利用者の大半を占める沿線地域に住む人たちの利用が減少傾向にあるのは三鉄にとって悩ましいところ。
最近、三陸鉄道では主要4駅(盛・釜石・宮古・久慈)の駅名命名権(ネーミングライツ)の販売に乗り出したり、沿線ゆかりの社会人ラグビーチーム(釜石シーウェイブス)のサポーター役を買って出るなど、利用促進に躍起になっていますが、加えて今回の女性アテンダントの新規導入で更なる活性化となるのか、鉄道事業者としての手腕が問われようとしています。
◎ 参照記事
『三陸鉄道で女性アテンダントお披露目』
『接客乗務員デビュー 三鉄で観光案内』
『釜石SWの応援列車発進 28日から三鉄』
『三陸の恵み、駅名でPR 釜石で三鉄が看板除幕』
『命名権ここまで 三陸鉄道に「アイフルホーム宮古駅」』
『「ローカル線ガールズ」津軽鉄道にも誕生』
『津軽鉄道 再生の芽』
『津軽鉄道の客室乗務員7人 入社式』
『アテンダントがお出迎え/津鉄』
『アテンダント、デビューに向け研修中 由利高原鉄道』
『しなの鉄道視察旅行リポート』
『お困りごと ありますか えちぜん鉄道』
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