ベーゼンドルファー・ジャパン、ヤマハに事業譲渡・・・F.リストらも愛用した名器の日本総代理店。ヤマハの一部署へ
音楽の都、オーストリア=ウィーンが生んだピアノの名ブランド、ベーゼンドルファー。
181年もの長きにわたる伝統を誇るこの名ピアノ・ブランドが経営難に陥り、ヤマハへの身売りが決まったのが今から2年前の2007年のことでした。
このブログでもその時のことを当時の新聞記事も交えながらお伝えしていたものでしたが〔う~ん…〕、その後、2008年にヤマハの子会社としてベーゼンドルファー本家は再出発、そしてそのベーゼンドルファーの日本輸入総代理店として新たに「株式会社ベーゼンドルファー・ジャパン」を同年4月1日に設立し〔ヤマハの連結子会社として〕、日本国内に於けるベーゼンドルファー・ピアノの販売などを手がけてきました。
その後、つい最近になって、その日本輸入総代理店ベーゼンドルファー・ジャパンのWebサイトに於いてヤマハに事業譲渡したとの先月(9月)1日付リリースが挙がっているのが見えました《→『ベーゼンドルファー・ジャパンの事業譲渡についてのお知らせ』》。
実はベーゼンドルファーの親会社となっているヤマハの本体が去る7月31日付けで発出されたニュース・リリース『子会社からの事業譲受け及び当該子会社の解散に関するお知らせ』の中で、その7月31日付けで開いた取締役会に於いて連結子会社ベーゼンドルファー・ジャパンの事業一切の譲受と同社の解散を決議しており、今度のヤマハへの事業譲渡はこの決議に基づくものです。
経営の効率化、を理由に掲げているヤマハなのですが、ネット上で調べてみると、今年3月期の連結決算で売上高が前期比16.3%減の4,592億円、経常利益は119億円で同63.2%減となるなど、7年ぶりの赤字に転落したことが報じられている他〔→『2009年3月期業績資料』〕、業績悪化の流れを受けて台湾とイギリスのピアノ生産現地子会社の解散を決めるなど〔→『連結子会社の解散に関するお知らせ』〕、経営資源の集中による経営効率化に取り組んできている模様。
そんな中で、今回のベーゼンドルファー・ジャパンのヤマハへの事業譲渡もまた、これと同じ流れを汲むものといえるでしょう。
「ピアノの魔術師」フランツ・リストの激しい演奏にも耐え抜き、歴代の名ピアニストたちをも唸らせたオーストリア=ウィーン生まれのピアノ名ブランドの日本総代理店は、11月30日に予定されているヤマハの臨時取締役会による清算結了決議を経て、ヤマハの一部署(現時点での部署名「ヤマハ株式会社国内営業本部ベーゼンドルファー・ジャパン グループ」)として完全に組み込まれることになります。
そういえば、現在「boesendorfer.jp」という独自ドメインを取得して開設しているベーゼンドルファー・ジャパンWebサイト───実際にはヤマハのサーバ配下に置かれていますが(ページ最下部に「Copyright © 2009 Yamaha Corporation」の表示有り)───なのですが、会社清算が完了する11月末を以て全て削除され、ヤマハのWebサイトの中に一コンテンツとして組み込まれる(移管される)ことになるんでしょうね《現在ヤマハWebサイト内には、『会社情報 ~グループ会社情報(海外)』の中に「ベーゼンドルファー(BOES)」の名称と事業概要が簡単に記されていることを除き、ベーゼンドルファー製品の情報は掲載されていません(というか掲載の有無を確認出来ませんでした)》。
実は私自身も、現在一応籍を置かせてもらっている関西の某ピアノ・サークルのずっと前に開かれた例会の類のため新大阪駅北側に建つビルの1階に入居していたベーゼンドルファーのショールーム(現在は無い)を訪れたことがあり、その際にショールーム内に備え付けられていた特別限定デザインによるグランドピアノ等を少し触った記憶がある他、別の場所に於いて「インペリアル」と呼ばれる機種のフルコンサート・グランドピアノに少し触ったりもしました《生憎その時の印象までは記憶に残っていませんが…》。
一方で私自身は小学2年生くらいの時から中学生の頃にかけてヤマハのピアノ教室に通っていて、尤も進歩が無くて先生を困らせてばかりしていたものでしたが〔自慢にもなりませんが…〕、自宅にもヤマハのアップライトを入れたりして触っていたものでした《でも触っただけで上達しなかったし(自爆)》。
こんな私自身であっても、この度のヤマハによるベーゼンドルファーの買収、そしてベーゼン日本法人(ベーゼンドルファー・ジャパン)のヤマハへの事業譲渡といった一連の動きに対しては、ちょっと複雑な心境を抱いているところです。
ウィーンが生んだピアノ名ブランドの持つ伝統ある手工技術を絶やさぬよう、ヤマハには一楽器製造メーカーとしての芸術全般に理解のある経営を望むところです。
P.S.
ベーゼンドルファー・ジャパンのヤマハ全面譲受を発表したリリースと同じ日付(7月31日)でリリースされたヤマハ本体の平成22年3月期・第1四半期〔平成21年(2009年)4月1日~6月30日〕の決算短信(→『平成22年3月期 第1四半期決算短信』・『2010年3月期第1四半期連結業績の概要について』)で、主力の楽器事業の国内とアメリカに於ける販売回復が後れを取ったり、景気後退のあおりを受けて欧州に於いても4月以降販売が落ち込んだことなどが災いして、売上高は前年同期比19.3%減の994億2800万円と1,000億円の大台を割り込むなど苦戦を強いられている模様。
そんな中、明るい材料も出てきていて、7月7日付の日経報道によると、生産集約先の一つとなった中国に於いて現地生産子会社である杭州ヤマハ楽器の生産能力を昨年度比7割弱増の年間5万台に増強することを決定、今月から新たに建設された生産設備の稼働が始まっている模様《報道4日前にあたる7月3日には上海に4000人規模の音楽教室を開業したとのヤマハ側の発表あり》。
このヤマハの取り組みに対して日本のマーケットも評価してくれていたみたいですが〔報道当日(7月7日)の12:45時点に於ける株価は14円高の1,129円〕、中国に於けるヤマハ・ピアノのシェア拡大がヤマハ本体の業績回復の牽引役となるのか否か、冷静に見守っていきたいです。
◎ 参照記事
『ヤマハ<7951>、子会社ベーゼンドルファー・ジャパンから全事業を譲受け』
『ヤマハ、台湾と英国のピアノ生産子会社を解散』
『ヤマハ4~6月は営業赤字八億円』
『ヤマハ営業赤字8億円、4~6月、楽器・住宅設備が不振。』
『ヤマハ、ピアノ生産を中国で拡大 能力7割増強』
《→『ヤマハ(7951)は4日ぶりに反発 「中国でピアノ生産能力7割増強」報道が手掛かり材料に』》
《←『ヤマハ、上海に4000人規模の音楽教室 中国で認知度向上図る』》
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「ベーゼンドルファー社、日本の楽器製造大手ヤマハに身売りへ・・・名門ピアノ、ベーゼンドルファーの話(1)」
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「ベーゼンドルファーの経営権を取得したヤマハの今の姿・・・名門ピアノ、ベーゼンドルファーの話(3)」
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