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「南米のパリ」ブエノスアイレス(アルゼンチン)に響く「第九」・・・トルカチール指揮。会場は過去に「NHKのど自慢」も

 大阪「サントリー1万人の第九」公式サイトから連絡している『10000人の交換絵日記2009』に先日掲載された『歌をプレゼントしたい人は?』という記事に於いて、指揮者(総監督・指揮)の佐渡裕にまつわる4コマ漫画が登場・・・

 尤もこれは合唱参加者から寄せられたものなのですが、師匠のレナード・バーンスタイン譲りとでもいいますか、全身全霊をかけて指揮をする佐渡の特徴が見事なまでに反映しているように見ていて感じました。

 

 それにしても、『10000人の交換絵日記』に於いて佐渡裕にまつわる4コマ漫画が載るなんて、私が記憶している限りでは、これが初めてかも───今年の「万九」もまた何らかのドラマが生まれるのでしょうか《と書いてはみるものの、私自身は凄い引っ込み思案でもあるから、ドラマには遭遇しにくいかなぁ…》。

 

 

 さて今回は各種動画共有サイトに寄せられてきているベートーヴェン第九(交響曲第9番ニ短調作品125”合唱付”)」演奏動画ひとつを当ブログに加えたいと思います。

 

 今回は久しぶりに中南米地域に於ける「第九」演奏の紹介となります。

 

 

 ご紹介しますのは、南アメリカ大陸の南部に位置し、ブラジルチリなどに接すると共に、同大陸に於いてブラジルに次ぐ広さの領土を有する国、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスに於いて行われたベートーヴェン「第九」演奏を収めた動画・・・今回はコンサートの模様をライヴ収録した本物の動画です(笑)

 

 これは『YouTube』に寄せられているもので、収録範囲は全4楽章、9本の動画にわたって投稿・公開されています《内訳は、第1~3楽章は2本ずつ、第4楽章(終楽章)のみ3本》。

 

 生憎投稿動画に添付されたテキストデータに演奏(収録)年月日の記載はありませんが、投稿時期が今年の5月終わり近くから6月初めにかけてとなっていることから、昨年か今年に収録されたものと思われます。

 

 演奏会場となったのは首都ブエノスアイレスに所在する「グラン・レックス劇場(Teatro Gran Rex)」で、1937年に開館した文化施設《ちなみにブエノスアイレス市内中心部に近い、コリエンテス通りCorrientes Avenue)沿いに所在します・・・サンニコラス地区か?》。

 

 現在は3,300席のキャパシティを誇る大ホールとなっていますが、ここからちょっと余談っぽくなってしまいますが、実はこのグラン・レックス劇場、8年前(2001年)に「NHKのど自慢」アルゼンチン大会(NHKのど自慢 in アルゼンチン)が行われた際の公演会場となっていたとのこと。

 

 その「NHKのど自慢 in アルゼンチン」に実際に参加したという当時ブエノスアイレス日本人学校の教員だった人による体験記が『「NHKのど自慢」に参加して 2001年10月7日 アルゼンチン ブエノスアイレス市大会』に写真入りでまとめられているのですが、なんでもこの人は予選を通過して放送出演(というか当該大会の本選出場)を果たしたのだそうで、観客席に集まった多くのアルゼンチン在住の日系人たちの姿などに感動した様子でした。

 

 

 それはさておき、そのブエノスアイレスのグラン・レックス劇場で行われたベートーヴェン「第九」演奏でありますが、1952年に設立したアルゼンチンの音楽関連団体「アルゼンチン・モーツァルテウム(Mozarteum Argentino)」が企画した「午後のコンサート(conciertos del mediodia;直訳すると”正午のコンサート”)」の一つとして開催されたもので、以下のアーティストの出演により行われました。

 

ソプラノ:ソリダット・デ・ラ・ロサ
     《Soledad de la Rosa》
メゾ・ソプラノ:モニカ・サルディ
        《Mónica Sardi》
テノール:サンティアゴ・バーギ
      《Santiago Burgi》
バリトン:エルナン・イトゥラルデ
     《Hernán Iturralde》

合唱:ラグン・オナク合唱協会
   《Asociacion Coral Lagun Onak》
管弦楽:ネウケン交響楽団
    《La Orquesta Sinfónica del Neuquén》
指揮:アンドレ・トルカチール
   《Andrés Tolcachir》

 

 首都ブエノスアイレスで行われた公演ですが、出演したのは地元の(つまりブエノスアイレス首都圏で活動している)オケではなく、ブエノスアイレスから南西に1,000km以上離れたところに位置する地方都市で、パタゴニア地域の北の玄関口かつ同地域最大の都市でもあるネウケン(Neuquén)を活動本拠としているネウケン交響楽団───日本でいえば大阪、広島、仙台などの地方都市で活動するオーケストラによる東京公演といったところでしょうか。

 

 このネウケン交響楽団は同楽団の本拠地を営業活動範囲としているアルゼンチンの州立銀行の一つ、ネウケン州立銀行(Banco Provincia del Neuquén、BPN)が設立した「ネウケン州立銀行財団(Fundación Banco Provincia del Neuquén)」の助成を受けながら活動している模様《というふうに解釈しているのですが…;→『Orquesta Sinfónica del Neuquén - neuquén.com』より》。

 

 そして指揮を務めたアンドレ・トルカチールはブエノスアイレス生まれの若手指揮者で〔30代後半とみられる〕、2003年開催の第2回マゼール/ヴィラー指揮者コンクールでセミファイナル進出、ドレスデン・フィル客演指揮などを経て、現在はネウケン交響楽団の音楽助監督(アシスタントコンダクター?)を務めています。

 

 余談になりますが、このマゼール/ヴィラー指揮者コンクールは名指揮者ロリン・マゼールと芸術に対する造詣の深い篤志家アルベルト・ヴィラーにより2002年から開催されている国際指揮者コンクールで、その2002年に開かれた第1回大会では、1969年東京生まれの指揮者兼ヴァイオリニストで現在ドイツ=エアフルト歌劇場の第1カペルマイスターなどを務めている服部譲二が「リンカーン・マゼール・フェローシップ賞」を受賞しているほか、受賞には至らなかったものの、1968年北海道生まれで現在ローマ在住の指揮者で、来年年明けからイタリア=ロンバルディア州にあるマントヴァ歌劇場の音楽監督に就任することになっている吉田裕史も前年(2001年)に行われた同コンクールのアジア予選で代表に選ばれたりしています《しかし肝心のコンクールでは最初の予選で敗退したのだろうか・・・何もいわないからそう考えてしまう》。

 

 

 ところで、本題である「第九」演奏についてですが、比較的ノン・レガート調に、そして欧州風の洗練とした感じで構築していっているような印象で、オーケストラはそれなりに歌い上げていたように感じます。

 

 声楽のほうもまずまずの歌いっぷりだったのですが、惜しむらくは、コーラスが、所々で不協和音を発してしまったり、或いはバス・パートなどで他のパートの音にかき消されてしまったりして、ちょっと苦しい出来だったような印象ですね《3千人を超える収容人員を誇るグラン・レックス劇場の場内規模に比して合唱団員数はちょっと少なめな印象・・・同様の規模を誇るNHKホールで年末に行われる「N響ベートーヴェン『第9』演奏会」に於ける合唱団規模はこれの2倍程度ありそうな感じです》。

 

 ことに一番最後の”Prestissimo”箇所に続く”Maestoso”のところ(916小節目以降;歌詞では「Tochter aus Elysium …」)では、テノール・パートの”音程(ピッチ)下がり”がちょっと著しく、結果としてここの部分に於いて混声4部合唱全体が聴き苦しいものになってしまっています。

 

 と、特にコーラスに関して辛口調の書き方となってしまいましたが、同時に、これは合唱参加者にとっては永遠の課題ともいえるわけで、こちら大阪では「1万人の第九」公演本番まで残り1ヶ月半ほどに迫ってきていますが、折しも昨年に引き続いてテノールにて合唱参加しようとしている私自身、今回のケースを反面教師として残りのレッスン(3回しかありませんが…)に取り組まねば聴衆に対して申し訳が立ちませんね───「1万分の1」の存在として。

 

 今回の「第九」演奏自体の、総体的な質でいうならば、「中のちょっと上」くらいのクオリティかな・・・ま、何だかんだといいましたが、プロとしての最低水準は保たれていたように考えています。

 

 

 それでは、以下の計9本の演奏動画、順次再生してお聴き下さい。

 

◎ 第1楽章

◎ 第2楽章

◎ 第3楽章

◎ 第4楽章

 

 なお音響面では、客席数3千を超える大ホール(NHKホール並み!?)だけあって、とことんデッドな感じの音響になってしまっているような印象を受けます。

 

 尤もこのことはホール内に於ける音響機器類の設定方にもよるのかもしれませんが・・・とはいえ東京の歌舞伎座に負けず劣らずの音響環境だったりして《う~ん》

 

 

【おことわり】
 動画共有サイト(『Google Video』、『YouTube』等)に投稿・公開されている動画については、今後、投稿者或いは運営サイドの判断等により削除される可能性がありますことを予めご承知おき下さい。

 

 

P.S.
 今回紹介したアルゼンチンに於けるベートーヴェン「第九」演奏を企画した「アルゼンチン・モーツァルテウム(Mozarteum Argentino)」という団体ですが、公式サイトを眺める限り、アルゼンチン国内に於ける音楽マネジメント業務や、若手有望音楽家の育成事業などを手がけている感じですが、実は過去に来日している海外の音楽家のうち、1969年アルゼンチン生まれのピアニスト、ネルソン・ゲルナーが1986年に首都ブエノスアイレスで開催されたフランツ・リストコンクールで第1位入賞を果たしたことを受けてスイスのジュネーヴ音楽院に留学することになった際にこのアルゼンチン・モーツァルテウム(ともう1カ所)からの奨学金を得ています。

 なお、このアルゼンチン生まれのピアニストの名前、現在では「ネルソン・ゲルナー」と表記されていますが、だいぶ前(10年以上前だったか…)に私が新聞紙上に掲載されたザ・シンフォニーホールの公演案内の中で初めて彼の名前を目にしたときには「ネルソン・ゲルネール」という表記方となっていました。

 

 

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