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新幹線シンポジウムと試乗会(兼330km/h走行試験)、好評博す──JR東海。最高速度アップも《+米国ウソ電!?》

 ここのところ、日本の新幹線技術の海外への売り込みが鉄道界に於けるホットな話題の一つに挙がっているところなのですが、そんな中、新幹線技術の海外への売り込みの一環として、名古屋に於いて国内外の政府関係者らを招いての、新幹線技術に関するシンポジウム等が開催されました。

 

 ちょうど1週間前、11月16日のことです。

 

 

 『高速鉄道シンポジウム』と題されたこのシンポジウム(そのまんまだわさ…)はJR東海Webサイト上でも去る9月30日付のリリースにて告知されていて〔→『高速鉄道シンポジウムの開催について』〕、東海道・山陽新幹線に於ける最新型新幹線車両「N700系」の国際仕様版である「N700-I Bullet」の紹介を含めた新幹線技術全般の説明や、2025年の東京~名古屋間開業を目指して計画進行中のリニア中央新幹線JRマグレブ)の技術の説明を主な内容としたもので、10月初旬に高速鉄道プロジェクトを抱える国々を中心とした計8カ国の政府関係者(大使館)や国内の政府関係者などに招待状を送付、このうち海外の政府関係者についてはシンガポールとベトナムを除く6カ国から出席の旨の返事が届いたものの、JR東海が一番売り込みに力を入れているアメリカからの返事が他の出席5カ国より遅かったとのこと。

 

 JR社内では、尤も力を入れている売り込み先なだけに、一様に気を揉んでいたらしいのですが、アメリカ政府内には新幹線技術に対して一抹の不安(というか何か引っかかるもの)を感じているのだろうか・・・

 

 そして11月16日のシンポ当日、会場となった、名古屋駅の真上にそびえる名古屋マリオットアソシアホテルに6カ国の大使・領事など政府関係者や国内の政府関係者らが参集し、『高速鉄道シンポジウム』が開かれました。

 

 「名古屋マリオットアソシアホテル」───JR東海系列のホテルでありながら、外資も絡んでいるためか、何故かJRホテルグループには加盟していないという、ちょっと不思議な感じのする、名古屋駅に直結した高層ホテル。

 

 そんな外資も絡んだ自社系列のホテル内で昼の14時半から開かれたシンポジウムの席上で、JR東海の葛西敬之会長は、予定されたメイン演題の他、自前の新幹線技術の売り込みに資するべく、去る8月にアメリカのコンサルティング会社「USジャパンハイスピードレール」と契約を結んだことを表明、そして12月を目処にUSジャパンハイスピードレールからJR東海に世界各国の市場性などを分析した報告書を提出してもらい、これを受けて来年1月(年明け以降)に新幹線を集中的に売り込む国を絞り込む計画であることも明らかにしました。

 

 JR東海幹部の話では、現時点では米・テキサス州(中南部。メキシコ国境沿い)とイリノイ州(中西部の北寄り。シカゴが州都)が有力候補に挙がっているとのこと。

 

 ちなみに、これら2つの地域、今年4月中旬にアメリカ運輸省から発表された高速鉄道計画図の中で示された計画ルートでいえば「South Central」と「hicago Hub Network」の2つのエリアに該当しています。

 

 

 シンポジウムを終えた出席者たちは、このあと米原京都間に於けるN700系車両による試乗会(330km/h走行試験体験乗車)へと案内されました。

 

 新幹線技術を実際に体感して貰うための試乗会ですが、同時に高速度(330km/h)試験も兼ねていたようですね。

 

 そして、この試乗会に充当されたN700系車両は、恐らくZ6編成(またはZ8編成)の模様。

 

 営業運転が終了した後の深夜23時40分に米原駅を発車、ぐんぐん加速していき、約8分後、近江八幡市内にて時速300km/hに到達。

 

 更に加速を続け、ついに東海道・山陽新幹線営業車両としては最速の332km/hを達成───その前後約2分間も330km/hというこれまでにない高速走行で乗り合わせた国内外の政府関係者らにアピールしていました。

 

 この米原~京都間は東海道新幹線の中で最も長い直線区間を抱えることで知られ、過去にも試験車両「300X」が1996年に同区間で鉄軌道上を走る列車としては国内最高となる443km/hをたたき出しているのだとか。

 

 JR東海はこの試乗会について「営業時速320キロをアピールするライバルのTGVやICEに対して新幹線が速度でもひけを取らないことを示すのが狙い」としていますが、乗り合わせたシンポジウム出席者の間からは「客室はゆったりし乗り心地が良かった」や「滑らかな加速だった」等といった声が聞かれたそうです。

 

 通常だったら社内技術者らが乗り込むようなものなのですが、国内外の政府関係者らを乗せるあたり、進化を遂げてきている東海道新幹線に対するJR東海の並々ならぬ意気込みと自信の強さを物語るものともいえるところでしょう。

 

 

 このシンポジウムと試乗会に於ける成功に気を良くしたのか、JR東海の葛西敬之会長はシンポ終了後開いた記者会見で「車両・軌道・運行管理」一式の販売により新幹線技術を売り込む決意を改めて表明すると共にリニア技術の販売も検討していることも明らかにした他、シンポジウムの2日後に開いた定例社長会見の中で松本正之社長が同様に新幹線の海外売り込みに意欲を示していました。

 

 そして、更にその定例社長会見の翌日にあたる11月19日、東京都内で開かれた(財)エンジニアリング振興協会主催の「エンジニアリングシンポジウム2009」に姿を見せた葛西会長は、同シンポジウムに於ける”招待講演”の中で、新幹線に関する新たな構想を明らかにしました。

 

 その構想とは、現在270km/hとなっている東海道新幹線区間に於ける営業最高速度を、今後15年間で300km/hに引き上げると共に、カーブ区間に於いても280km/hで走行できるようにするというもの。

 

 JR西日本が管轄している新大阪以西の山陽新幹線区間では既に300km/h走行が実現していますが、東海道新幹線区間に於いては、沿線の騒音問題などを理由に、最高速度を抑えているのが現状で、今回発表された構想で山陽新幹線と同様に最高速度300km/hの営業運転が実現すれば、所要時間短縮の実現はもちろんのこと、更なる「のぞみ」の増発が可能になるメリットがあるとされています。

 

 尤もこの東海道新幹線区間300km/h運転構想の表明は海外に向けてのアピールを兼ねる狙いもあったとの見方もありますが、2025年の東京~名古屋間開業を目標にリニア中央新幹線(中央リニアエクスプレス)計画が進捗する中、従前からの東海道新幹線そして山陽新幹線が果たして何処まで進歩するのか、興味あるところです。

 

 ここで、東海道新幹線といえば、曲率半径で最小2,500mという高速鉄道路線としてはきついカーブが点在することに加えて、昭和39年(1964年)の開業以来45年経過していることに伴う地上諸施設(トンネルなど)の老朽化もまた営業最高速度抑制の要因となっているはずで、その営業最高速度を引き上げる以上は施設の改修(リニューアル)は避けられないような気がしないでもないところですが、そのあたりのJR東海の対応にも注目が集まりそうなところですね。

 

 

 新幹線技術の海外への売り込み、リニア技術の売り込みも絡んで、益々ヒートアップしている様子ですね。

 

 

P.S.
 JR東海が新幹線技術の売り込み先として入れ込んでいるアメリカについては現在オバマ大統領の肝いりで全土で高速鉄道計画が策定されているところですが〔→『アメリカ高速鉄道網構想 オバマ大統領が発表』〕、アメリカ西海岸に位置するカリフォルニア州に於いてもまた州を挙げての高速鉄道プロジェクトが進行中で、2011年の着工を目指しているとの話ですが、その高速鉄道プロジェクトを遂行している「カリフォルニア州高速鉄道局(CHSRA: California High-Speed Rail Authority)公式Webサイトのトップ・ページを見て、思わず目を丸くしてしまいました。

 まだ計画段階にあるのにもかかわらず、なんとCHSRA塗装が施された日本の新幹線700系車両がフラッシュ画像の一つとして組み込まれているのが見えたのです。

カリフォルニア州高速鉄道局(CHSRA: California High-Speed Rail Authority)公式Webサイト内に映し出された、カリフォルニア高速鉄道塗装をされた700系車両《いわば”ウソ電”!?》

 計画段階にあるため、これはいわば700系の”ウソ電”ということになってしまいますね《700系車両がアメリカに渡ったとの話も今のところ聞きませんし…》

 ちなみにこの公式サイトのトップに埋め込まれているフラッシュ画像にはもう1種類の高速鉄道車両が映っていて、『カリフォルニア州の高速鉄道計画、前途多難か』という記事から、恐らくフランスTGVで運用されている一系列の”ウソ電”と思われます《断定出来ませんが…;「カリフォルニア高速鉄道」のことに関しては、他に『カリフォルニア超高速鉄道、実現へ向け一歩前進――資金集め、環境問題…全通までには曲折も』・『カリフォルニア高速鉄道建設計画の展望』あたりも詳しいです》。

 それにしても、ユーモアに溢れたアメリカの国民性がこんなところで発揮されるとは・・・

 

 

◎ 参照記事(本文中紹介分を除く)
JR東海が高速鉄道シンポ 名古屋で11月、大使館員ら招待
高速鉄道シンポに5カ国参加へ 本命・米の「イエス」まだ
時速330キロ新幹線 京都-米原間の試乗で海外にPR
《→『【鉄道特集】京都~米原間を時速330キロ走行 試乗で海外に新幹線PR』》
新幹線の海外進出に弾み 低環境負荷で評価高く
新幹線は「最高水準」 JR東海社長が海外販売向け意欲
新幹線時速300キロ構想 15年以内に営業運転
【経済人ナウ(口遊録)】駐日エジプト大使 ワリード・アブデルナーセルさん
最速332km!外国大使らに新幹線売り込み
JR東海:新幹線、海外に売り込め! 米コンサル会社と契約
東海道新幹線、332キロで試験運転 各国関係者にPR
米に輸出検討、新幹線330キロでPR JR東海
《→『米に輸出検討、新幹線330キロでPR JR東海』》
《→『米に輸出検討、新幹線330キロでPR JR東海』》
JR東海会長、高速鉄道の売り込み先「10年1月に絞り込み」
330キロで新幹線PR JR東海、海外向けに
新幹線、330キロで走行=N700系、各国にPR-JR東海

 

 

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