「ふるさと行きの乗車券」年末年始に向けて発売──JR東日本、旧国鉄制定「特定都区市内」制度の仕組みを応用?
旧国鉄時代から続く、全国規模で鉄道網を張り巡らせてきている旧国鉄そしてJRならではの乗車券に纏わる制度の一つに「特定都区市内」制度があります。
東京23区、及び横浜・名古屋・大阪など10の政令指定都市について旧国鉄が設定しJRに引き継がれているもので〔現在の形態は1972年9月1日に成立されたもの〕、詳しい内容については『ウィキペディア解説「特定都区市内」』・『特定都区市内制度 - 通信用語の基礎知識』・『特定の都区市内駅を発着する場合の特例』などに譲るとして、要は旧国鉄が指定した10の政令指定都市並びに東京23区について、それぞれの区域内に所在する駅及び区域を代表する”中心駅”から片道の営業キロにして201km以上の普通乗車券について、その”中心駅”から(まで)の運賃計算キロ或いは営業キロにより普通運賃及び有効期間を算出するというものです。
そして、「特定都区市内」に定められた各都区市内に於いてはどの駅からでも乗車(或いは降車)出来る代わりに、その域内に於いては途中下車が出来ない決まりとなっています。
旧国鉄時代にこの「特定都区市内」制度の存在を初めて知ったときには、父から聞かされて知るところとなったわけですが、子供心にいたく感心していたことを思い出します《歳がバレそうな書き方になってしまいましたが・・・》。
そして学生時代になって全国を乗り歩き(乗り鉄)するようになってからは、時に実行していた「一筆書き」による長大な片道きっぷを駅(正確には駅の旅行センターの類)の窓口で所望した際にこの制度の知られざる部分をも見たものでした。
その旧国鉄時代から引き継がれている「特定都区市内」制度の仕組みを応用したともいえる特別企画乗車券(トクトクきっぷ)が、今度の年末年始期に向けて、JR東日本から発売されることとなりました。
上場している本州JR旅客3社が、景気低迷に加えて新型インフルエンザ流行と「高速道路通行料金上限千円(休日特別割引)」による影響も重なって、今年9月の中間連結決算で軒並み減収減益となるという厳しい状況の中で〔→『JRの本州3社、減収減益に 「1000円高速」「新型インフル」響く』〕、首都圏などを管轄エリアにしているJR東日本が、この状況から少しでも抜け出すべく、今年から来年にかけての年末年始期を対象とした「帰省応援キャンペーン ~お正月は列車でふるさとへ~」を展開することを去る11月4日付けで発表、その一環として往復タイプの「ふるさと行きの乗車券」を新たに発売すると表明しました《→『年末年始向け割引きっぷ設定 JR東』》。
そして、この「ふるさと行きの乗車券」こそが、前記の「特定都区市内」制度の仕組みを応用したであろうトクトクきっぷなわけです《この手のトクトクきっぷ、JRグループ旅客6社に於いては今まで無かったかも・・・》。
この「ふるさと行きの乗車券」の発売・通用(利用)期間などは以下に示すとおりとなっています。
【発売期間】 11月26日(木)~12月20日(日) 【通用(利用)期間】 12月26日(土)~2010年1月8日(金) 【有効期間(使用開始後)】 7日間 |
発駅・着駅として以下の各エリアが用意されています《”駅”というか”エリア”になっていますね》。
【発駅】 ◎ 東京都区内(区) ◎ 大宮~川口・戸田公園 【着駅】 ◎ 秋田・青森エリア ◎ 岩手・三陸エリア ◎ 宮城・山形エリア ◎ 郡山・磐越エリア ◎ 新潟・庄内エリア ● 十日町・浦佐エリア ● 長野エリア |
●=「東京都区内」発のみ着駅として設定可能なエリア |
そして、この「ふるさと行きの乗車券」の主な特徴(長所と短所を引っくるめた形で)はというと・・・
◎ 普通列車の普通車自由席に乗車可 ◎ 別途特急券等の購入により特急列車への乗車も可能 ◎ 途中下車不可(着地エリア内は下車前途無効) ◎ 着地エリア毎に途中経路が指定されている |
【備考】 ▲ 普通列車には快速も、特急列車には新幹線も、各々含む ▲ 指定外経路を乗車する場合は分岐する指定経路上の駅から着地エリアへの入口駅までの運賃を別途徴収 ▲ 一部の着地エリアについては複数経路が用意されている |
といったところです。
別途特急券等を購入することで優等列車の類にも乗れるあたりは普通乗車券そのものといえそうなところですね。
そして、着駅として設定した”着地エリア”内に於いては下車前途無効となっていますが、言い換えればエリア内の任意の駅で旅行を終える(下車する)ことが可能なわけであり、このあたりは、エリア内に”中心駅”を明確に定めていないことを除けば、前記の「特定都区市内」制度の仕組みそのものといえるところであり、このトクトクきっぷのキモといえるところでしょう。
「特定都区市内」制度が適用された普通乗車券と異なる点としては、往復のみの発売であること、”着駅エリア”に至るまでの途中経路について一定の枠がはめられていること、途中下車が一切不可であること、そして発売期間と利用出来る期間が予め限定されていること・・・こんなあたりなのですが、これらの条件下で普通乗車券を往復分購入した場合と比較して最大49%引きとなっているわけです《発売額など詳細については『JR 東日本帰省応援キャンペーン お正月は列車でふるさとへ』又は『ふるさと行きの乗車券』を参照》。
ところで、「大宮~川口・戸田公園」を発駅としたタイプでは「十日町・浦佐」・「長野」両エリアを着駅とするものが用意されていませんが、これについて、発駅と着駅との距離の関係があるのでは、と思って『Yahoo!路線情報』を使って調べてみたところ、案の定、大宮からの距離で見た場合に両エリアとも最短距離で200kmに満たないことが判明しました《「十日町・浦佐」エリアはこちらを〔六日町までの距離〕、「長野」エリアはこちらを〔長野までの距離〕、それぞれ参照》。
やはりこのあたりも片道200km超で適用される「特定都区市内」制度に倣ってるんだな、と思いつつも、距離的に「十日町・浦佐」・「長野」両エリアと似た感じでありながら「大宮~川口・戸田公園」発の設定もなされている「郡山・磐越」エリアも気になったついでに調べてみたところ、これもまた大宮からの距離で200kmに満たない(郡山まで)ことがわかり、私の頭の中はプチ・パニック状態に…
東北本線方面は上信越方面と比べて需要が見込めると踏んだためなのだろうか───まぁ何というか、例外的存在といえそうな感じですね《定かではないけれども…》。
あと「東京都区内」発のみに設定されている「十日町・浦佐」エリアについて、エリア内に所在する六日町・浦佐両駅と同じ上越線の駅であり、川端康成の小説『雪国』の舞台となっている温泉街(越後湯沢温泉)を擁し、上越新幹線に接続している特急「はくたか」の始発駅ともなっている越後湯沢がエリアに含まれていないところから〔当該エリアに含まれている区間は何れもほくほく線(北越急行線)が分岐する六日町以北区間となっている〕、2ちゃんねる筋からは「トラブルの連続になるだろうな」等といった懸念の声が聞こえてきています。
とはいえ、この「ふるさと行きの乗車券」、旧国鉄時代から引き継がれた「特定都区市内」制度のDNAを採り入れたシンプルかつよく出来たものという印象を私自身受けているところであり、「休日特別割引」に対抗する観点からも、年末年始に限らず行楽シーズン(GWとか)を中心に、今後とも改良を加えながら継続して発売していって欲しいと願うところです。
そして、出来ることならばJR他社に於いても、「特定都区市内」制度の導入されていない主要都市・地域向けに、これと同様のトクトクきっぷを導入して欲しいところでもありますが・・・まずは実際に発売を開始してからの利用者の反応(評判)が気になるところですね。
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