ホノルル交響楽団、事実上倒産へ──109年の歴史に幕、過去には朝比奈隆らも客演。来年前半を目標に再建か?
アメリカのオーケストラといえば、小澤征爾とのつながりで有名なボストン交響楽団や伝統あるニューヨーク・フィル、そしてショルティらによって黄金時代を築き上げてきたシカゴ交響楽団あたりがまず思い出されるところでしょう。
あ、ジョージ・セルによって徹底的に鍛え上げられたクリーヴランド管弦楽団もあったっけ・・・
それらアメリカのメジャー・オーケストラに対し、地味な存在でありながらも、日本からも名だたるアーティストたちが客演するなど、実力面では高く評価され、創立以来百年以上の長き伝統を誇るアメリカのオーケストラが事実上倒産というショッキングな情報が飛び込んできました。
この情報は私自身も時々立ち寄らせてもらっているブログサイト『やくぺん先生うわの空』に掲載された『倒産』という記事から知るところとなったものですが・・・
1964年に日本人の海外渡航が自由化されて以来、日本人にとってなじみ深い観光渡航先の一つとされてきているハワイ───アメリカ50州の中で一番最後に成立した州で、唯一”島嶼の州”となっているそのハワイ州の州都ホノルルをホームグランドとし、創立以来実に109年もの長きにわたる歴史を有する、ロッキー山脈以西の地域に於いては最古参のオーケストラ、ホノルル交響楽団(ホノルル・シンフォニー)が、去る10月30日、日本の民事再生法に相当する「連邦倒産法第11章(Chapter 11)」の適用を申請することに決したことがAP通信により報じられました。
翌週にも裁判所(恐らく「ハワイ地区連邦地方裁判所」のこと?)に申請すると共に〔恐らく今頃は済ませているでしょう〕、11月以降予定されていた同楽団主催の公演を全て取り止めにしたことも明らかにしています。
ホノルル響では毎年410万ドル(現在のレートで約3億6,500万円)を予算として計上し、その大部分を楽団員を含む従業員に係る人件費が占めているわけですが、収入の要の一つである定期会員などからの会費(寄付金)関連収入が長引く景気低迷の影響で落ち込んでいることなどから、この2年間は楽団財務が危機的状態にあり、従業員(恐らく楽団員も含む)への給与も満足に支払われない状態が続いていた模様。
昨年(2008年)5月頃にも経営が立ちゆかなくなる事態に陥るも、その時には総額117万5千ドル(現在のレートで約1億459万円)もの匿名のファンからの寄付によって何とか乗り切れていますが、今年初めにも、資金繰りの悪化から、従業員への給与支払いのため楽団の基本財産から総額210万ドル(現在のレートで約1億8,700万円)を取り崩すという有様でした。
そして先月になってついに資金が底をつき、今回の「Chapter 11」適用申請に至ったとのことで、負債総額は100万ドル(現在のレートで約8,900万円)とのこと。
私自身も、ニューヨーク・フィルやボストン響、シカゴ響、フィラデルフィア管などといったアメリカのメジャー・オケが海外でも活躍するという話に度々接する中で、日本人にもなじみ深いハワイにもオーケストラはあるのだろうか、と思ってネット上で探していた時期があり、そうしたところからこのホノルル交響楽団の存在を知るところとなりました。
正直に言うと、このホノルル交響楽団、知名度の面では前記のニューヨーク・フィルやボストン響などの米国国内に於けるメジャー・オケには遠く及ばないという印象があるわけですが、実力面ではその低い知名度に反して上位にあるとの話もあります。
実際、過去には日本からも朝比奈隆(故人)や大友直人、飯森範親、五嶋みどりら名だたるアーティストが客演してきており〔小澤征爾が客演指揮したとの話もあり〕、実際に聴きに行ったという人からは、日本のプロ・オーケストラよりもいい演奏をする、といった声も聞かれます。
その一方で、知名度の低さ故とでもいいますか、現時点でもホノルル響公式Webサイト自体は稼働しているわけですが、そのWebサイトに掲載されている演奏会の一つ一つを見てみると、現在首席指揮者を務めているアンドレアス・デルフス(Andreas Delfs)と作編曲家でもあるポップス担当指揮者のマット・キャッティンガブ(Matt Catingub)以外の名前が殆ど見受けられず〔公演回数自体も、ポップス系公演を含めても少なめ〕、今回中止となってしまった今月以降の公演予定を見ても、12月27日予定「Beethoven’s Ninth(「第九」演奏会)」のジョアン・ファレッタ(JoAnn Falletta;バッファロー・フィル及びヴァージニア響の両音楽監督)と年明けの1月16・17両日予定「Anne Akiko Meyers」の大友直人の名前が見受けられる程度でした。
正直なところ、精彩を欠いているような印象を禁じ得ないです。
また、ホノルル響の活動本拠地であるホノルル市そしてハワイ州に於ける文化施設事情(というか州の文化行政の現状?)も楽団倒産に至った要因の一つと思われます。
先にも記しましたが、昨年(2008年)にもホノルル響は経営に行き詰まっていたものの、その時にはファンからの匿名寄付のおかげで急場をしのぐことが出来ました。
この原因としては、同楽団がホームグラウンドとしているとみられる、ホノルルに所在するブレイズダールコンサートホールが、一昨年(2007年)から昨年にかけてのシーズンの最初の3ヶ月間、同ホールに於いてミュージカル(ライオン・キング)公演が行われていたがために公演会場として使えず、代わりの施設を探さざるを得なかったものの、州内に所在する他のコンサートホールの類はどこもキャパシティが小さく、結果として費用が嵩んでしまったことがあるのだとか。
更に、その同楽団のホームグラウンドとされるブレイズダールコンサートホールについて、少し古い話になりますが、約5年前にあたる2004年10月下旬に行われたホノルル響の公演中に雨漏りがしているのが見つかり、急遽バルコニー席にバケツが持ち込まれるというハプニングも起きたのだそうです。
ホノルル響のホームグラウンドともいえるこの文化施設自体が現在どういう状況にあるのか、恐らく前記の雨漏りについては修復は完全に終わっていることと思いますが、このあたりも間接的な要因として気になるところですね《この文化施設がどういう運営形態になっているのか知る由もありませんが、仮に公営の文化施設である場合、ハワイ州(或いは施設が所在するホノルル市)自体の財政状況が思わしくないということの証左にもなりうる話ですので…》。
尤も日本とアメリカとでは、当然のことながら、芸術・文化に対する支援事情も異なっていることと思いますが、恐らくハワイ州そしてホノルル市の財政が、景気低迷の影響に加えて、新型インフルエンザ流行などの影響による観光客数の減少に伴う観光収入の落ち込み等もあって、厳しい情勢にあることも、今度のホノルル響の倒産の遠因になっている可能性も皆無とは言えないところでしょう。
楽団主催公演がいつ再開出来るかわからないが、大幅な人員削減を行う等することで、とりあえず来年前半を目処に再建を目指す、とホノルル響側は表明していますが、百年以上の歴史を誇る楽団が今後どのようにして再建を図っていくのか、冷静に見守ろうと思います。
◎ 参照記事(本文中紹介分を除く)
『Honolulu Symphony broke, ends season』
『Honolulu Symphony cancels remaining 2009 concerts』
『ホノルル交響楽団、2009年残りのコンサートをキャンセル』
『ホノルル交響楽団存続の危機?』
『ホノルルシンフォニー、破産』
『匿名の寄付がホノルル交響楽団を救った』
『日本のオーケストラ-存亡の危機に際して』
P.S.
1個のオーケストラの年間予算規模の例として、日本国内で活動しているプロ・オーケストラの年間予算などのことが『日本のオーケストラの組織課題』という論文の中で記載されているのが見えますが〔但し2000年時点の数字として〕、これを見る限りでは、ホノルル交響楽団の年間予算規模は日本でいえば山形交響楽団と東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の間ぐらいの規模となっているみたいですね。
また、アメリカに於ける文化芸術支援政策に関しては『CLAIR REPORT第172号:米国の公的芸術・文化支援政策』あたりが詳しいところですが、書かれている内容がちょっと古いですので、『オバマの文化芸術マニフェスト』・『バラク・オバマとジョー・バイデンは、芸術文化を支援します』と併せてご覧になるとよいのかも知れません。
要は教育に軸足を置くような格好で文化・芸術に対する支援を行っている感じですが、『オバマ大統領「クラシック音楽は、実際にはとても楽しい」~ホワイトハウス主催イベント:ホノルル交響楽団破産、109年の歴史に幕』という記事によると、最近アメリカ国内に於ける学校教育でクラシック音楽を教えなくなってきていると語り、クラシック音楽衰退につながっていることを嘆いている様子。
ここは「チェンジ!」を旗印にしているオバマ大統領の手腕に期待するしか無いですか・・・
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