東海道新幹線一部区間、330km/hにアップ検討か──JR東海、2011年後半目処、九州新幹線全線開業予定の年
今年の「1万人の第九」公演参加報告を続けるべきところなのですが、ここのところ鉄道方面で気になる話題が続けて入ってきていますので、今回も”鉄的”話題をお送りします・・・・・どうもスミマセン。
先月16日、JR東海では高速鉄道に関心を抱く(或いは高速鉄道プロジェクトを抱える)海外の国々の在日大使館員らを招いて、昼は名古屋で自社主催の「高速鉄道シンポジウム」を、そして夜遅く(営業運転終了後)には米原~京都間で最新型「N700系」車両を使った高速度試験を兼ねた試乗会を実施したわけですが、そのうち後者の試乗会に於いて現営業車両を使っての走行に於ける最高速度332km/hを達成、乗り心地の良さも相まってか、乗り合わせた出席者の間から賞賛の声などが挙がっていました。
これに気をよくしたのか、JR東海は自社主催シンポジウムの3日後にあたる11月19日に東京都内で開かれた外部シンポジウムに於ける招待講演の席上で、今後15年以内に東海道新幹線区間に於ける営業最高速度を300km/hに引き上げていくという構想をぶちまけていましたが、その営業最高速度について、更に一歩進めるかのような言い方を先日していることが明らかとなりました。
去る12月8日付の日本経済新聞による報道によると、JR東海は2011年後半を目処に同社管轄の東海道新幹線の一部区間に於いて営業最高速度を330km/hに引き上げることの検討に入りました《→『東海道新幹線、時速330キロ運転を検討 JR東海、11年後半にも』》。
このスピードアップは新幹線が備える性能が世界最高水準にあることを営業運転の中で見せつけ、現在最も売り込みに注力しているアメリカを初め高速鉄道プロジェクトを抱える国々への売り込みにつなげていくことを主たる目的にしているものであり、東海道新幹線区間全体のスピードアップを目指したものでは無いとみられます。
そのためなのでしょう、前方に待機列車が無く、対象となる列車に充当される最新型「N700系」車両の性能を存分に発揮出来る時間帯に於いて実施するとしていて、JR東海では、京都~米原間の直線の長い一部区間に於いて、「のぞみ」の初発と終発に限定して実施することを検討している模様。
ちなみに2011年といえば、この年の春に九州新幹線=鹿児島ルート(博多~鹿児島中央)の全線開通並びに山陽・九州両新幹線の相互直通乗り入れ開始を予定している等、鉄道界にとっては激動の年ともいえそうなところなのですが、また一つ大きな話題が加わる格好となりそうですね。
で、ふと感じたことですが、今回明らかとなりました、2011年後半を目標にした東海道新幹線の一部区間に於ける「営業最高速度330km/h」へのスピードアップ、先月19日に行った講演の席上で表明された、今後15年以内での東海道新幹線区間に於ける「営業最高速度300km/h」へのスピードアップ計画に先立つものという印象を受けています《言うまでもないことか…》。
今回の「営業最高速度330km/h」へのスピードアップを表明したとの報道内容をよく見てみると、「『のぞみ』の初発と終発に限定」し、更に「前方に待機列車がない」こと等を条件としているとあり、このことから考えると、恐らくは東海道新幹線区間完結の「のぞみ」のうち、新大阪始発の上り「のぞみ」1番列車と東京始発の下り新大阪行き「のぞみ」最終列車が今回表明した330km/h運転の対象に選ばれるものと思われます。
先月のうちに表明している「営業最高速度300km/h」へのアップについては、JR西日本管轄の山陽新幹線の一部区間に於いて既に実施されていることであり、実施に際して特段JR西日本との調整の必要はないものと思われますが、今回JR東海が検討すると表明している「営業最高速度330km/h」へのアップについては、山陽新幹線に於ける現在の営業最高速度を上回る格好となりますので、仮に新大阪以西直通「のぞみ」も含めて本格的に実施しようとする場合、JR西日本との調整が必要になってくるとみられる他、施設面で東海道新幹線区間と比べてより高速運転に対応した造りとなっている山陽新幹線区間に於いても、所によっては更なる施設改修の必要性が出てこないとも限らないところでしょう。
そうそう、自動列車制御装置(ATC)の更新も山陽新幹線区間に於いて必要となるかもしれませんね《ちなみに山陽新幹線区間に於いては、1972年に新大阪~岡山間、そして1975年に岡山~博多間、それぞれ開業した際に整備された、東海道新幹線開業時に整備されたものと同じアナログ式ATC「ATC-1」型が現在も使われています〔東海道新幹線区間に於いては2006年3月18日(同年のJRグループ定例ダイヤ改正施行日)にディジタル式ATC「ATC-NS」型に更新済〕》。
以上のことから、JR西日本との調整を要しないであろう、東海道新幹線区間内で完結する「のぞみ」、それも「前方に待機列車が無い」などの条件を満たすものとして”新大阪始発の上り「のぞみ」1番列車と東京始発の下り新大阪行き「のぞみ」最終列車”が浮かび上がった次第。
JR東海としては、先月に在日大使館員らを乗せた試験走行で現営業車両としての最高速度332km/hをマークしているだけに、今回検討することを表明している、東海道新幹線一部区間に於ける「営業最高速度330km/h」へのスピードアップにより、新幹線技術の海外への売り込みに一層の弾みをつけたい考えのようでありますが、順調に成果を上げた場合、先月19日に表明した、東海道新幹線区間全体での「営業最高速度300km/h」へのスピードアップに向けて大きな前進となることはほぼ間違いないところでしょう《時期前倒しということにもなるのかな…》。
尤も、沿線への騒音対策もさることながら、開業以来45年を経過している東海道新幹線区間のトンネルや橋梁などの地上設備の老朽化への対策も必須となるでしょうが・・・
海外に向けての新幹線技術の売り込みに奔走するJR東海の姿が、また一つ、垣間見えたような気がしました。
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