団臨「あすか」狙いの鉄道ファン、営業列車を抑止──大和路線、13,000人に影響《+鉄道趣味のあり方について》
前回まで、去る1月24日限りで当初運用先線区である京浜東北線・根岸線に於ける定期営業列車としての運用から引退した209系電車の、運転最終日当日に於ける一部の鉄道ファンによる蛮行が報じられたことをきっかけとして、鉄道趣味そして鉄道ファンのことについて書いてきました。
その過程で、実は私の住んでいる関西圏に於いても一部の鉄道ファンによる蛮行がありました。
前回の記事を書こうとした矢先のことです。
しかも今回の場合は通常の営業列車の運休という事態を招いてしまっているあたり、209系運転最終日に於ける出来事より更に悪質と言わざるを得ないところです。
既に各種メディアでさんざん報じられてきていますので多くの方がご存じのことかと思いますが、JR大和路線(関西本線)「河内堅上~三郷」間に於ける列車運行妨害事件です。
この事件のことが私の知るところとなったのは『緊急提言:私を含むすべての鉄道ファンよ、自分の行為を省みよ!!!』というブログ内記事で、その後、ネット上で探しているうち、この事件を報じる各種メディアのWebページを幾つか見つけ出したものでした。
その大まかな内容を記してみますと・・・
バレンタインデー当日にあたる去る2月14日の10:40(10:35)頃、団体専用臨時列車として運転されていたJR西日本のジョイフルトレイン「あすか」6両編成(牽引機「DD51 1109」。「あすか」ヘッドマーク掲出有)をカメラに収めようと約50人の鉄道ファン(マニア)が三脚を携えて線路脇に集結、それに気づいた回送電車の運転士がJR西日本大阪総合司令所に連絡、その後、そのうちの数人が線路内に侵入したところから、通りかかった加茂発大阪方面天王寺(大阪環状線)行き大和路快速〔新聞報道では「加茂発天王寺行き快速電車」と伝えているのみだが記事の中で伝えられている時間帯などから考えると王寺10:34発の当該列車である可能性が高い〕が緊急停止、約30分間にわたって立ち往生し、警察官も現場に駆けつけるという騒ぎにまで発展しました。
更にこの約40分後の11:20頃にも「高井田~河内堅上」間にてJR難波発奈良行き普通電車(6両編成)の運転士が、同じく「あすか」を収めようと線路敷地内に入ってカメラを構えるファンの姿を目撃、こちらも緊急停止して約10分間にわたって立ち往生。
この一連の騒ぎのため、大和路線は上下7本が運休し、12本が部分運休、更に26本が最大で約39~40分間の遅延となり、約13,000人の足に影響を及ぼすという結果となりました。
この大和路線「河内堅上~三郷」間───昔、関西本線が「大阪鉄道」の一路線だった頃に「亀ノ瀬トンネル(亀ノ瀬隧道)」を挟んでいた時期があったものの、その後この「亀ノ瀬トンネル」の一帯を襲った大規模な地滑りなどによりルート変更を余儀なくされ、現在見られるような、大和川を2度渡りながら山間部から県境を越えて奈良県側の平野部に抜けるという線形となっています《→『関西本線旧線「亀ノ瀬トンネル」約80年ぶりに発掘──飯田線”向皆外トンネル”を連想?《一般公開も検討中か》』》。
河内堅上を出てから最初に大和川を渡るところまでの区間は線路に沿って細い側道が通じていて、ことに河内堅上を出てから最初の踏切にさしかかるまでの間は駅舎の前を通る側道のほうが線路敷地より1m程度高いぐらいで、10年以上前に私自身初めてこの側道を実際に歩いたときには柵の類は無かったように記憶しています《今はどうか知りませんが…》。
線形面では河内堅上駅を出てから1度目の大和川横断を経て最初のトンネルに入るところまでは緩くカーブしているところから、あくまで推測に過ぎませんが、回送電車の運転士に目撃されたという約50人の鉄道ファンは、「天王寺から来る『あすか』の撮影に最適」ということで、この最初の大和川横断ポイントに至るまでの側道(もう少し範囲を狭めて、最初の踏切に至るまでの駅舎前に通ずる側道)から線路敷地内(線路脇)に入ったのかも知れませんね《もし実際と違っていたらスミマセン…》。
それにしても、209系電車の運転最終日に於ける、一部の鉄道ファンによる一般乗客の乗降妨害行動なども醜いものでしたが、この大和路線に於ける出来事はそれをも上回る悪質性があるように感じます。
とはいえ、肝心の団臨「あすか」のほうはどうだったんだろう───今度の一連の新聞報道ではその消息のことが触れられてないので皆目わからないところですが、この「あすか」を撮影したという幾つかのブログサイトなどから、遅れながらも、途中で運転が打ち切られることなく所定の運用を終えた様子で、そのことがせめてもの救いといえるところでしょう《勿論大和路線の一部の営業列車が全区間乃至は一部区間の運休などに追い込まれたあたりは到底看過出来ないところですが…》。
余談になりますが、このジョイフルトレイン「あすか」自体、実は約1週間前(2月6・7日)にも「広島~(新山口)~津和野」間で運転された団臨にも充当されていた模様です。
広島までの送り込み回送には「EF65-1130」が先頭に立ち〔→『JR西日本 EF65-1130号機+「あすか」』〕、続いて団臨運転区間のうち直通電化されている山陽本線「広島~新山口」間についてはかつて本州~九州間ブルトレ牽引機として活躍したこともある「EF66-49」が先頭に立つなど、鉄道ファンの注目を集めていたみたいですが、後記の山口線内区間も含めて牽引機にヘッドマーク(HM、或いは”カン”?)が掲出されていなかったためなのか定かでありませんが、この団臨運転の際には突発的な抑止などの騒ぎは起きていなかった模様。
なお、団臨としての全運転区間のうち、山口線区間にあたる「新山口~津和野」は非電化となっているため、場所により見通し良好なロケーションの下で撮影出来ていた様子ですね《ちなみに山口線内に於ける牽引機は「DD51-844」;→『長門峡で DD51-844と「あすか」』・『2月7日@山口線で「あすか」~往路編~』とか》。
ところで、209系運転最終日に於ける騒ぎと今度の「あすか」団臨を巡る大和路線に於ける騒ぎに話として接し、そしてネット上で調べていくうち、旧国鉄時代に起きていた一つの出来事の存在を知りました。
当ブログに掲載した『鉄道趣味、そして鉄道ファンのこと《一ブログ内記事から》──ただ吠え立てるのではなく、あくまで慎ましく愉しんで』という記事の中で少し触れた「SLブーム」の末期に発生した「京阪100年号事故」です。
初めてこの「京阪100年号事故」という語句に接した際には、”京阪”の文字がくっついているところから、てっきし関西の私鉄の一つである京阪線内で発生した事故と思い込んでしまっていました。
だが調べていくうち、これは京阪線内ではなく旧国鉄・東海道本線「千里丘~茨木」間に於いて発生した人身事故であることがわかってきました。
新幹線が博多まで延伸開業した翌年にあたる1976年(昭和51年)の9月4日、東海道本線「京都~大阪」間の開業100周年を祝して蒸気機関車「C57 1」牽引の12系客車による編成を組んで同区間に於いて運転された「京阪100年号」が、「千里丘~茨木」間に当時存在していた日本専売公社(現・JT)への引き込み線(専用線)との分岐点あたり(?)で当時小学校5年生の男の子と接触、その男の子は搬送先の病院で死亡したという痛ましい人身事故でした。
この事故のため牽引機「C57 1」は高槻駅にて電気機関車EF65に取って代わられ、「京阪100年号」自体は終着駅・京都まで運転されたものの、当初牽引していた「C57 1」は同日夜にそのまま梅小路(蒸気機関車館)に回送していったという何とも後味の悪い結末となったわけですが、当該人身事故に加えて、その4年前(1972年)に首都圏で運転された「鉄道100年記念号」でもトラブルが起きていたみたいで、これらを重く見た当時の国鉄は大都市圏に於ける蒸気機関車の保存運転を断念、その舞台を地方路線に求めるようになり、その過程で「C57 1」牽引による「SLやまぐち号」運転が1979年に実現したとのこと───「京阪100年号」と共に、今日に至るまで春から秋にかけての季節に山口線で運転されてきている「やまぐち」号の成り立ちについても知るところとなったわけですが、鉄道ファンの行き過ぎた行動が後々に影を落とした好例でもあるわけですね。
この度の大和路線に於ける「あすか」撮影を巡る運行トラブル───当ブログで以前おしゃべりしたことの繰り返しになりますが、このトラブルの当事者となった鉄道ファン(マニア)を指して非難したところで、世間一般には通用しません。
私だって、関西圏に在住する鉄道好きの一人として、とても悲しい気分に苛まれたりするところなのですが、彼らを罵ったところで、一般人の眼には彼らと同類項的に映ってしまうことでしょう。
こうしたトラブルが度重なってくると、JRをはじめとする各鉄道事業者その他による規制が一層強化されていき、前記の「京阪100年号事故」の如く、鉄道趣味活動の場が狭められてしまう等の悪影響が出てくるのは必定のことです。
そうならないために、また一握りの暴走する鉄道ファン(マニア)にならないために、心がけるのが望ましい(というか心がけるべき?)姿勢として、当ブログでも前回までの2度にわたって喋ったことでありますが、改めて挙げてみますと・・・
(1)ただひたすら慎ましく愉しむ (2)完璧主義思考を自分自身から切り離し、素直に |
加えて「リスクヘッジ」を講じることで、少しでも心の余裕が生まれてくるように思うところです。
「リスクヘッジ」───例示するならば、廃止となる列車・車両の撮影に際しては運転最終日は極力避ける、撮影ポイントを決めるに際しては鉄道趣味雑誌で紹介されているような有名撮影ポイント以外にも何カ所か設定しておく、撮影ポイントへは時間単位の余裕を持って向かう、現地に於いて同業者とのコミュニケーションを大切にする・・・
ここまで書いていくうち、何だか私自身の耳が次第に”痛みを増して”きている感がありますが〔つまりいえば私自身が一番気をつけなければならないってことか・・・納得です(爆)〕、鉄道趣味活動が世間一般にも正しく認知してもらえるために、大それたことが到底言えない身ではありますが、一人一人が趣味人として自覚し、行動することが求められているような気がします。
コツコツと積み上げていく───今できることといえば、これしか無いように思っています。
◎ 参照記事(本文中紹介分を除く)
『鉄道ファン50人、線路内に侵入 大阪、電車一時運休』
《→『鉄道ファン「脱線」、JR関西線止める──線路内に立ち入り』》
『レア車両に「撮り鉄」殺到、線路内で撮影 電車立ち往生』
『「撮り鉄」お座敷列車撮影で、快速止める』
《→『「撮り鉄」快速止める 線路侵入、説得30分…JR関西線』》
『鉄道トラブル:「鉄ちゃん」撮影で線路侵入…19本運休--JR関西線』
《→『迷惑鉄ちゃん:「あすか」目当てで線路侵入 1万人に影響』》
《→『鉄道トラブル:珍列車撮影しようと…「鉄ちゃん」侵入19本運休--大阪・JR関西線』》
《→『鉄道トラブル:線路入り撮影、列車ストップ 大阪のJR線「あすか」』》
『鉄道ファン暴走:線路脇に侵入電車を止め「DD51型」を激写』
『「撮り鉄」で電車立ち往生 JR西が被害届提出検討』
『「撮り鉄」の運行妨害でJR西日本が異例の被害届提出へ』
《→『「撮り鉄」の運行妨害でJR西日本が異例の被害届提出へ』》
『JR西、「撮り鉄」被害届を検討 運行妨害で提出も』
『鉄道ファン運行妨害で被害届=線路内で撮影、運休19本-JR西』
『JR西日本、被害届出さず 「撮り鉄」の運行妨害』
『DD51形(HM付)+「あすか」 団体臨時列車@大和路線→奈良線→JR京都線(2010.2.14)』
『【撮影日記】大和路線』
『専用カン付き「あすか」 名神クロスは大混雑』
『2.07 山口線 あすか 入線① 下り列車』
『山陽本線・山口線 『あすか』 』
『【JR西】"あすか" 山口線を行く』
『「あすか」が山口線に入線』
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【関連記事〔鉄道趣味(鉄道ファン)の倫理のこと〕】
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» 緊急提言:私を含むすべての鉄道ファンよ、自分の行為を省みよ!!! [由里りんのぷらいべ~となお時間]
非常識な撮り鉄の輩が、社会に大迷惑をかけるという大変残念な事件がありました!
鉄道ファンとして…というより、人間として許せん行為です!
お前ら、全員逮捕されて、JR西へ賠償金払え!!!
事件について、毎日新聞のサイトに載っていたので、引用します。
****************************
迷惑鉄ちゃん:「あすか」目当てで線路侵入 1万人に影響
2010年2月14日 18時40分 更新:2月14日 19時52分
14日午前10時40分ごろ、大阪府柏原市のJR関西線河内堅上駅... [続きを読む]
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こんばんは!
ほんとに情けないですね。
この迷惑行為でさらに鉄道ファンに対して悪いイメージをつけられてしまい、撮り鉄するにも周りからの眼が気になってしまいます。
結局、被害届は見送ったんですねぇ。
どっちが良かったのか。妨害した者は逃げ得じゃないですかぁ。
先日のこのブログに貼られていた線路内に侵入している写真を見るとほんまに「何しとんじゃ!」と言いたいです。
投稿: 急行丹後1号 | 2010年2月18日 (木) 00時36分
急行丹後1号さん、おはようございます。
いつもありがとうございます!
私も、今回のような一握りの鉄道ファンによる蛮行が度重なることによって、他の大多数の善良なファンにも世間一般からの非難のまなざしが向けられるようになることを懸念しています。
”懸念”を通り越して、私の場合、”恐怖”になってしまっているのかな・・・
そして、今回の大和路線のケースでは、変な話、立派に法律(鉄道営業法など)を犯しているわけであり、臆せず現行犯逮捕するなり取り締まればいいようなものなのですが───正直、ちょっと弱腰な印象を禁じ得ないところですね。
投稿: 南八尾電車区 | 2010年2月18日 (木) 07時46分
先日はご訪問&トラックバックありがとうございました♪
私の拙い記事への記事内リンクをしていただき、恐縮です。
歴史的な経緯も踏まえての本記事を読ませていただき、あらためて勉強になりました。
おっしゃるとおり、一人ひとりが反省を怠らず、常に自分の行動に気をつけることに尽きると思います。
当方からもトラックバック&記事内リンクさせていただきました♪
今後ともよろしくお願いいたします♪
投稿: 由里りん | 2010年2月18日 (木) 21時33分
由里りんさん、こんばんは。
先日はありがとうございました。
それにしても、この度の「あすか」を巡る列車抑止事件、私自身も正直呆れていたのですが、吠えまくったところで世間一般には通用しません───残念ながら、”犯罪者”である現場の当事者(数人のファン)と同類項に見られて終わり、というのが現実です。
でもJR西日本のこの度の対応、正直ちょっと弱腰なところが無きにしもあらず、という印象でした。
警察官が駆けつけたときにも線路内に入っていたのならば、容赦無く一度は逮捕して連行すべきところでしたね《彼らが増長しかねないので…》。
それはさておき、いまは一人一人が慎ましく鉄道趣味活動を愉しむ───これしか無いと考えています。
こちらこそ今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: 南八尾電車区 | 2010年2月20日 (土) 19時49分
去年運転された山陽本線の電化50周年号や美祢線の復旧記念号などのDLやEL牽引の珍しい列車は平日運転されました。休日にしなかったのはこういった無法マニアの対策でしょうか?だとしたら、悲しいです。せっかくのイベント列車も楽しめなくなるとは・・・・
投稿: | 2012年8月23日 (木) 20時06分
「2012/08/23=20:06」付けでコメント下さった名無しさま、おはようございます。
正直言えば、私も本当のところは知らないです。
ただ、仰るように、「無法マニアの対策」として採られた可能性はあります《勿論「たまたまそうなっただけ」という可能性も否定出来ませんが…》。
何はともあれ、趣味活動のために社会インフラとしての鉄道を混乱させるようなことが絶対あってはならない、と思うところです。
投稿: 南八尾電車区 | 2012年9月 2日 (日) 09時14分