「びわこ」号車両(60形電車)復活プロジェクト始動…寝屋川市と京阪。来年3月めどに枠組み提示、5年以内に復活か
1934年(昭和9年)に自社路線網にて「大阪(天満橋)~大津(浜大津)」間直通運転を実現させるべく設計・製造された京阪電気鉄道の「びわこ」号車両(60形電車)───製造当時、完全な路面電車(というか軌道)規格である京津線・石山坂本線と鉄道規格でつくられていた京阪本線の両方に対応すべく2種類(電車用と軌道用)の乗降口ドアが造られると共に、日本初の連接構造が採られたこと、そしていち早く流線型を採り入れたことで日本鉄道史に足跡を残したこの車両は、現在京阪の寝屋川車庫構内にて静態保存されています。
この「びわこ」号車両、前記で触れた鉄道線区間と軌道線区間とを直通するという使命を帯びていた関係からパンタグラフと二重のトロリーポールを併設しているという異色の存在───ただ、そうした異色の存在が故に車両全体の重量はかなりのものだったみたいで、「大阪(天満橋)~大津(浜大津)」間をほぼノンストップ(鉄道線と軌道線との接点にあたる三条のみに停車していたとの話)としなければ速力が確保出来ず、後続の京阪本線急行に追いつかれそうになったとの証言もあるほどだったとか。
とはいえ、京阪が、大正期から昭和初期にかけて買収した京津線・石山坂本線と京阪本線とをつなぐターミナルである三条駅及び京都市から借り受けていた鴨川沿いの「三条~五条」間の維持のため、その京都市からの借用契約が切れるのを目前にして、契約更新の根拠とするための、実体としての大阪と大津の間を直通運転する列車の運行に迫られていたところから製造された、この鉄道線と軌道線を直通出来る「びわこ」号車両つまり60形は、現在の大阪から京都そして滋賀の浜大津に至る京阪の路線網(厳密には三条と御陵の間のところで、京都市営地下鉄東西線のレールのため、京阪の路線網としては途切れてしまっている格好となっていますが…)を形作った立役者的存在といっても過言では無いところでしょう。
そんな60形「びわこ」号車両───2009年に経済産業省から「近代化産業遺産」の一つに認定され、現在では動力機構が抜かれた(というか廃棄された)状態で寝屋川車庫の片隅で静かな眠りについているわけでありますが、昨今の鉄道ブームの煽りからなのでしょうか、同車庫を市内に擁している大阪府寝屋川市が、来年(2011年)で市政施行60年を迎えるのを前に始動させた同市のブランド戦略「ワガヤネヤガワ・プロジェクト」の一環として、この「びわこ」号車両を市民の力で再び甦らせ、これを地域資源として「ねやがわブランド」の確立に生かしていこうと思い立ちました。
そして、寝屋川車庫を管轄する京阪に「びわこ」号復活運転の話を持ち込んだ、ということになるわけですが、京阪側も、今年で開業100周年を迎えるにあたって「環境の保全」・「地域との共生」・「社会への貢献」などを旗印に沿線価値の向上に取り組んでいることもあり、この話に賛同、去る3月25日に寝屋川市と京阪が共同で”『びわこ号』復活プロジェクト”を始動させることを正式に発表するに至りました《→『寝屋川市と京阪電鉄による連携企画~「びわこ号」復活プロジェクトをスタートします』》。
この復活プロジェクトでは、来年(2011年)の3月〔九州新幹線・鹿児島ルート全線開業予定時期〕を目処に、復元に向けた課題や役割分担などについて京阪と寝屋川市の間で協議を重ねた上で枠組みを決めていくとしています。
プロジェクトでは、まず寝屋川車庫内での走行を目指した取り組みを進めていき、その後イヴェント列車として京阪本線で走行出来るところまで持っていくとしていて、京阪本線上の走行は5年以内を目標に実現させるとしていますが、実際の運転に入るために必要な動力部の製造や車体の補強などに振り向ける費用は数千万円に上るとのことで、市ではこれを市民らからの募金で賄うとしています。
京阪によると、このうち動力部の製造については、現在造られていない部品の確保(というか当時の設計書を基にしての自作?)や、バッテリーで電気を取り入れる等の工夫も必要になってくるとのこと《尤も「バッテリーを使って電気を取り入れる」のは車両自体の動力をつくるためなのか、それとも車内照明のためなのか、そのあたりは現時点では正直はっきりしませんが…》。
また、この「びわこ」号復活運転を巡っては、今では京阪本線とは直接レールが繋がっていないはずの大津市側に於いても市民団体を中心に「ぜひ里帰りさせて」とラブコールを送っているとの話もあり、このあたり寝屋川市側との”綱引き合戦”の様相を呈しそうな感を抱いてしまうところです。
けれども石山坂本線と京津線(車庫設備などの関係から恐らく「四宮~浜大津」間?)に於いても「びわこ」号の復活運行をさせようとした場合、現状ではトレーラーによる「びわこ」号車両の陸送が必要となると予想されることから実現は困難といわざるを得ないところでしょうけれども、戦前期には三条駅を介して鉄道線規格の京阪本線と軌道線規格の滋賀県内2路線(正確には京津線)が繋がっていたからこそ、あのような特異な形の車両を生み出したともいえるわけで、費用面などでクリア出来れば、一度走らせてもいいのではないか、という気持ちはあります。
京阪の大阪・京都・滋賀の2府1県にまたがる路線網形成とその維持にある意味貢献した60形「びわこ」号車両、勿論私もその走る姿を目の当たりにしたことが無いわけで〔というか私が生まれる前に全車廃車処分にされているので走る姿を見たことが無くて当然ですが…〕、その勇姿を一度でもいいから見てみたい気持ちがあります。
半ば”抜け殻”状態にされている60形車両の鉄道車両としての復活を楽しみにしています。
◎ 参照記事(本文中紹介分を除く)
『びわこ号復活で「鉄ちゃんの聖地」に 大阪府寝屋川市』
《→『びわこ号復活「鉄ちゃんの聖地」に名乗り 大阪・寝屋川』》
《→『びわこ号復活で「鉄ちゃんの聖地」に 大阪府寝屋川市』》
『【滋賀、大阪】40年ぶり復活!!』
《←『びわこ号:伝説の特急、大津へ呼ぼう 市民ら活動開始 パルコでビデオ上映 /滋賀』》
『「びわこ号」40年ぶり復活…国内初の連節車』
《→『特急・びわこ号 復活』》
《→『特急・びわこ号 復活…京阪電鉄』》
『「びわこ号」を復活走行へ 大阪・寝屋川市と京阪電鉄』
《→『「びわこ号」を復活走行へ 大阪・寝屋川市と京阪電鉄』》
『憧れの特急ふたたび--京阪電鉄と寝屋川市が往年の名車「びわこ号」を復活へ』
P.S.(100401追記)
記事掲載の翌日(3月29日)、時々お世話になっている『鉄道コム』にも『京阪 びわこ号を40年ぶり復活へ』というタイトルで掲載されているのが見えました。
<(_ _)> ありがとうございます。応援よろしくお願いします <(_ _)>
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かつて(といっても私がまだ生まれていない頃の話ですが)、京阪電鉄の京阪線と京津線を直通する「びわこ号」という列車がありました。
京阪線の七条以北が地下化され、京津線の御陵以西が廃止されて京都市営地下鉄東西線への乗り入れとなった今となっては、そういう列車が....... [続きを読む]
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