”愛”を基調とした日本語訳詞によるベートーヴェン「第九」──なかにし礼訳詞、現田茂夫指揮《2007年、鎌倉芸術館》
今週終わりくらいか、来週の初めくらいには発表されることでしょう───今冬開催分の「第28回サントリー1万人の第九(10000人の第9)」に係る合唱団員募集要項。
それにちなんで・・・というのでも無いのですが、久しぶりに『YouTube』で新たに見つけたベートーヴェン「第九(交響曲第9番”合唱付”)」演奏に、紹介も兼ねて、耳を傾けようと思います。
今回聴いてみたのは、日本語訳詞により演奏された「第九」で、作家・なかにし礼が翻訳した歌詞によっています。
いわば、原語(ドイツ語)以外の言語で歌われている「第九」演奏の一つ、ということになるわけですね。
実は当ブログでも、約3年前のことになりますが、原語(ドイツ語)以外の言語で歌われたベートーヴェン「第九」演奏について書いたことがあります《尤も演奏を聴いて書くだけというのであれば、昨年の夏にも書いていますが…;→『”チェコ語による「第九」”を聴いてみた・・・マタチッチ指揮チェコ・フィル他。1980年6月、プラハにて《廃盤CD!?》』》。
今は亡きカリスマ指揮者カルロス・クライバーの父親で、同じく往年の名指揮者の一人に列せられているエーリヒ・クライバーが1949年開催のプラハの春音楽祭に於ける「第九」演奏に先だって行った、出演者全員を揃えてのリハーサルの一部を収録した映像(『YouTube』投稿動画)を中心に綴った『チェコ語で歌う、日本語で歌う・・・・・・原語(ドイツ語)以外で演奏される「第九」』という記事がそれで、このリハーサルに於いて歌われたチェコ語訳詞による「第九」演奏の一部を出発点に書いていましたが、チェコ語を初めとして、英語、フランス語、中国語などの諸言語に訳された歌詞による「第九」演奏の存在というものを知るところとなり、我ながらビックリしていたことを覚えています。
それに続けて日本語訳詞による「第九」演奏の存在にも触れ、その一つとして、なかにし礼が訳した歌詞による「第九」演奏も挙げていました。
その、なかにし礼訳詞によるベートーヴェン「第九」演奏を収めた映像───正確には「演奏ライヴ音声+静止画スライド」の合成物ですが───を『YouTube』にて見つけることが出来、一聴してみた次第です。
この演奏に出演していたアーティストを一覧にして以下にて示します。
ソプラノ:亀田真由美 アルト:稲本まき子 テノール:小林彰英 バリトン:末吉利行 合唱:日本語で歌う第九2007合唱団 管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団 指揮:現田茂夫 |
『YouTube』投稿時に添付されたテキストデータに「第九」演奏に直接関係するものは見当たりませんでしたが、収録映像から上記の出演者の顔ぶれが判明し、公演期日・会場については収録映像と外部データ(→『日本語で歌う「第九」2007 歓喜の歌 合唱団員募集(HTML版・PDF版)』)から、3年前(2007年)の12月16日(日)の昼15時から神奈川県鎌倉市に所在する鎌倉芸術館にて開催されたものとみられます。
参考までに、この鎌倉芸術館に於ける『日本語で歌う「第九」歓喜の歌』演奏会は現在も継続されていて、昨年の暮れに開催された『日本語で歌う「第九」2009歓喜の歌』では、上記のアーティストのうち、ソプラノ、アルト、テノールの各独唱者が引き続きステージに立っていたみたいですね。
なかにし礼訳詞による「第九」の特徴としては”愛”を基調に訳していることが挙げられ、その一部については『おお友よこの調べではなく~《第九交響曲》の歴史と現在』という資料の22ページ目に掲載されていますが、眺めてみた印象として、訳として堅苦しくなく、実社会(というか実生活)に即した訳し方でありながら、「愛無き孤独の人は立ち去れ」という元々の歌詞に見られるある種の厳しさというものも盛り込まれるなど、無料公開されている範囲だけで判断するのは早計かもしれませんが、平易な言葉で実社会に即した形に訳しながらも原歌詞のニュアンスも尊重しているような印象を受けるところです。
「愛無き孤独の人は立ち去れ」・・・うわぁ私のことだぁ(自爆)
今回紹介している”映像”では、2007年に行われた鎌倉芸術館に於ける「第九」演奏のうち、終楽章(第4楽章)のバリトン・ソロが初めて登場する箇所から曲の終わりまでが演奏データとして収録されています。
その演奏自体はというと、堅苦しさを感じさせないなかにし礼の訳詞に合わせてのことなのか定かではありませんが、レガート基調の、変に角を立たせぬ滑らかな音楽運びにほぼ終始しているような感じで、決してオケが出しゃばることをさせず、声楽陣(コーラス&ソリスト)を引き立てているような印象かな。
一方、その声楽陣について───4人のソリスト陣については、日本語訳詞ということで、当然のことながら、ドイツ語による原歌詞で歌う場合とは響かせ方やアクセントの置き方が異なってくるでしょうけれども、それでもピッチ面も含めてよく歌い上げている印象ですし、コーラスにしてもまずまずな感じでした。
考えてみたら、原語であるドイツ語以外の言語で歌われ、そして演奏される「第九」に接する機会は滅多に無いわけですが、こうして私たちの自国語である日本語に訳された歌詞による「第九」を聴くにつけ、スッと楽曲の中に入り込むことが出来て、すぐ馴染むとでもいうか頭の中に焼き付けられるとでもいうか───そんな感想を持ちました。
やはり自国語で歌い、語りかけるというのは、ある意味、強力ですよ・・・
で、動画紹介に移りますが、今回綴りました、鎌倉芸術館に於ける日本語訳詞による「第九」演奏が収録されて『YouTube』に寄せられてきているのは以下に列挙する5本の動画たちで、先にも記していますが、収録範囲は5本合わせて「終楽章のバリトン・ソロが初めて登場する箇所から曲の終わりまで」、つまり声楽導入部分のみとなっています。
そして「第九」演奏は音声のみで、映像部分には『日本百名山』で登場する山々のうちの幾つかが、地図も交えつつ、スライドショー形式で次々と映し出されているのですが、富士山など一部の山岳については季節毎に見せる幾つかの姿を連続して見せたりもしています。
それでは、以下の動画5本につき、順次再生してお楽しみ下さい。
もし、日本語訳詞(特になかにし礼訳詞)にて「第九」を歌われる機会をお持ちの方は、是非とも今回の演奏を練習の参考になさるとよろしいかと思います。
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