モーツァルト『交響曲第38番ハ長調K.504「プラハ」』をムーティ=ウィーン・フィルの演奏で──1999年来日公演から
朝から雨降りの中、今日はここのところ繰り返し耳にしている作品の一つを書いてみようと思います《今はすっかり雨も止み、青空が広がってきていますが…》。
モーツァルトが作曲した『交響曲第38番ニ長調K.504「プラハ」』───リッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による、1999年に開催された来日公演ライヴに於ける演奏です。
モーツァルトの歌劇『フィガロの結婚』(K.492)が、初演地であるウィーンに於いてではなく、当時オーストリア領に組み入れられていたボヘミア(現在のチェコ)の首都プラハに於いて大成功を収めたことはあまりに有名な話なのですが、そのプラハに於ける初演(1786年12月)の成功を受けて初演の翌年(1787年1月)に作曲者であるモーツァルトが招かれ、自身の指揮により再演されたわけですが、その再演に先駆けてこの『交響曲第38番』が初演されたとの話です《初演日は1787年1月19日→モーツァルトが31歳になる直前です》。
プラハに於ける『フィガロの結婚』の大成功に気をよくして書き上げたことを示しているかのように、全3楽章構成となっているこの第38番シンフォニーの第1楽章と第3楽章の一部箇所に於いて、その『フィガロの結婚』の中に登場する有名なアリアのモチーフが一部顔を出してきています。
例えば第1楽章の序奏が終わってから出てくる第1主題の対旋律には有名なアリアの一つである「もう飛ぶまいぞこの蝶々(NON PIU ANDRAI FARFALLONE AMOROSO)」からとられ、第2主題の短調部分を経たあとにスザンナのアリア「さあ、膝をついて(VENITE, INGINOCCHIATEVI)」の一部が顔を出すといいますし、第3楽章の第1主題はスザンナとケルビーノの二重唱「開けて、さ、早く開けて(APRITE, PRESTO, APRITE)」と旋律的によく似ているとのこと。
あと、第1楽章の序奏に続くシンコペーションの次には『魔笛』序曲の主題の一部も顔を出します。
と、ここまで書いてみた私なのですが───実際に『YouTube』を利用して確認してみたところ、特に『フィガロの結婚』第2幕で登場するスザンナのアリア「さあ、膝をついて」からとられたという第2主題短調部分のあとに登場する箇所について、どう引用されているのか正直わかりにくい感じです《何度か聴き込むうち、何となくわかってきたような気分にはなりますが…》。
そんな、プラハでの『フィガロの結婚』のヒットに気をよくしたモーツァルトが書き上げたこの第38番シンフォニーなのですが、ここのところはムーティ=ウィーン・フィルの組み合わせにて何度か繰り返し耳にしてきています。
私自身、この作品を最初に耳にしたのはオトマール・スウィトナー指揮ドレスデン国立管弦楽団(シュターツカペレ・ドレスデン)による演奏であり〔ちなみに廉価なEMIセラフィムCDからです…〕、この演奏では天真爛漫な気質も見られたモーツァルトならではの軽快なリズムで、しかも素直に音楽を進めてきているような感を抱くところなのですが、今回のムーティ=ウィーン・フィルの組み合わせによる演奏では、比較的素直な音楽運びをしているあたりはスウィトナー指揮の場合と類似するような印象を抱くところなのですが、テンポを少し落とし気味にした上で音に厚みを持たせるような演奏の仕方をさせ、所々に心のひだのようなものを感じさせてくれるような音楽の作り方をしている感じですね。
レガート基調で進行するムーティ指揮のこの音楽、第1楽章の第2主題に入るあたりで少しテンポを落とし、その後は少しずつテンポ・アップさせていく感じなのですが、その過程で自らの内面に何やら問いかけているかのような(というか自らを省みているかのような)演奏の仕方をしているような気がしました。
その後もレガートを効かせつつ、所々で心象を映し出すかのような音楽作りをしていったような印象を受けるところなのですが、こうしたあたり、モーツァルトが生きていた時代の演奏解釈について研究を重ね、それに忠実な演奏を日々実践しているアーティストの目にはどう映るのか、ちょっと気がかりなところですが───もしかすると「邪道」とばかりに斬り捨てるアーティストもいるかも…
とはいえ、私としては、勿論初めて接したスウィトナー指揮による天真爛漫に駆け抜けるような演奏も好きなのですが、今回のムーティ指揮のような、心理的要素も加味された、レガート基調の演奏もまた好みになってます。
正直言えば、この記事を書くことを通じて、モーツァルトの『交響曲第38番K.504』が『フィガロの結婚』と密接に関連していることを初めて知りました。
改めて、私の世間知らずなところを露見させてしまっています(あぁぁ…)
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ベートーベン
歓喜の歌ドイツ語版(ショパン)
歓喜の歌~ベートーヴェン(混声)

今日はプラハでっか(笑)
確かに、第一楽章の第一主題、確かに「魔笛」の第一主題が出てきますな、もっとも「元ネタ」はクレメンティの変ロ長調のピアノソナタですけど(笑)
それを言うたら序奏は「ジュピター」の出だしですな(笑)
歌劇の方はよう知らんのでどうとも言えまへんけど(汗)あ、「もう飛ぶまいぞ〜」はコントルダンスにも流用されてましたな。
この曲のこの部分とあの曲のあの部分は同じなんて事例、探せばいくらでもありそう。それを探すのもまた楽し(^_^)
投稿: ポケット保持 | 2010年5月 7日 (金) 23時23分
ポケット保持さん、こんばんは。
序奏は「ジュピター」の出だし───あ、確かにそうですね(笑)
尤も最初の音は本家と比べて思いっきり伸ばしていますが・・・
それはさておき、ある曲を作っている過程で以前作曲した別の作品の中の一部分を引用するということは、作曲家からすれば過去の「想い出」として作曲中の作品の中に織り込むような感じなのだろうか───そう思ってみたりもするのですが、実際のところは・・・う~ん、何とも言えないです(ぉぃ)
投稿: 南八尾電車区 | 2010年5月10日 (月) 01時54分