昨年放映「第九ひろしま2010」関連番組2本立てを視聴…終戦直後の広島の音楽喫茶から流れた「第九」旋律に焦点
先日、知り合いの「第九」仲間から1本のビデオテープが届きました《多謝!》。
そこに収められていたのは、昨年(2010年)の12月19日に広島市内で開催された「第九ひろしま2010」(「第九ひろしま」第26回公演)に係るテレビ番組2本〔主催者である中国放送(RCC)の制作〕───ちなみにこの「第九ひろしま」は大阪に於ける「サントリー1万人の第九(10000人の第9)」に類似する大規模「第九」イヴェントの一つであり、昨年は「1万人の第九」第28回公演の2週間後の開催となりました。
当ブログに於いて未だ昨年の「第九ひろしま2010」に係る体験記を記していませんが、とりあえず今回、その「第九ひろしま2010」関連のテレビ番組2本立てを視聴して自ら抱いた印象などを先に記すことにしました。
せっかく届けられたビデオテープについて、少しでもいい形で保存出来るよう、テープに収められている番組データをレコーダ内蔵HDDに落とすことを考えましたが、どうやら地上デジタル(地デジ)にて受信したものを一旦ビデオレコーダ(HDD又はDVDメディア)に録画し、そこからビデオテープにダビングしてくれたもののようで、正直言ってしまえば、すんなりと落とし込んでくれませんでした。
途方に暮れる中、ネット上を探索していたところ・・・
地上デジタル放送をビデオテープにアナログ録音した場合にもコピー制御信号が乗っかってしまうため、そこから別のビデオテープにダビングする分にはOKだがHDDやDVDに落とし込もうとすると「プロテクト信号を検出」等といったエラーメッセージを発して受け付けてくれないのだが、テープデッキ部とHDD・DVDレコーダ部の間に画像安定装置を噛ませることで落とし込むことが出来るようになるとの旨の情報をキャッチ。
幸いとでもいいますか、たまたま我が家にはだいぶ前に購入したHDD内蔵ビデオレコーダ2台〔うち1台はテープレコーダ(VHS)も内蔵〕と画像安定装置を備えていて、それらをフル活用することで、最終的にHDDに落とし込むことが出来ました《具体的な機種・方法などについては、残念ながら、この場では申し上げられません───どうもスミマセン(各自で検索エンジンを使って具体的な方法などを探ってみて下さい・・・勿論自己責任でね)》。
それにしても地デジというものは手強いですね(笑)───アナログ放送と比べて鮮明な映像・音声で視聴出来ること自体はありがたいけれども、それが故に録画する段に於いては、著作権保護を理由に、様々な規制がかけられているのだから。
さて、PCに於ける処理などを経て、早速「第九ひろしま」関連テレビ番組2本立てを一通り視聴してみました。
関連テレビ番組2本立てのうち、先に放映された所要時間1時間弱のドキュメンタリー版についての印象から先に書いてみますと───昨年放映されたドキュメンタリーに於いては、番組前半にて、広島駅の東方に軒を構える1軒の音楽喫茶にスポットを当てていました。
その音楽喫茶の名前は「純音楽茶房ムシカ」───”ムジカ”ではなく「ムシカ」。
濁った発音方になっていないあたりが、どことなくレトロな雰囲気を醸し出しているような気がします。
この音楽喫茶が店開きしたのは終戦からちょうど1年経過した1946年(昭和21年)8月15日のこと。
現在の「純音楽茶房ムシカ」の所在地は「広島市南区西蟹屋2丁目」、位置的にはJR広島駅と「MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島」(広島市民球場、マツダスタジアム)の間のマツダスタジアム寄り〔或いは”ビックカメラ・ベスト広島店の北方”〕、山陽本線等のJR線路からだと少し中に入ったぐらいかな・・・といったところです《以下の地図2枚を使って具体的な場所を示します〔地図データは『マピオン(Mapion)』を使用(拡大地図のみ『Google Map(ストリート・ビュー)』も併用)〕》。
しかし1946年8月に店開きした当時は、広島駅にほど近い猿猴橋町に所在していました《その後、現在地に店を構えるに至るまで、都合3度移転したのだそうです(何れも広島県西部地域内の移動となっていますが…)》。
番組では最初の約10分間を使って、「ひろしま第九伝説」というタイトルを付けて、当時広島駅にほど近い猿猴橋町内に店開きしたこの「ムシカ」という名の音楽喫茶に於いて、店開きした年の大晦日に流れた「第九」のメロディとそれを取り巻く人たちの姿にスポットを当てて話を進めていました。
その、大晦日に流れた「第九」のメロディ───現在の店主の父親が大阪の闇市で見つけ、米との物々交換にて入手したというベートーヴェン「第九」のレコードからのもので、自分もこのメロディから生きる力を得たんだ、と当時のマスターが長男(現在の店主)に言い聞かせていたのだとか。
それにしても、戦争を知らない世代の一人である私にとっては、当時の状況を頭の中で想像するしか術はないわけですが───終戦から1年少し経過しているとはいえ、物資はおろか食糧すら満足に手に入らず、そのうえ原爆投下の影響(残留放射能とか)が幾分残っていたであろう広島の中心部にあって、ベートーヴェン「第九」のレコードそしてそこから紡ぎ出されるメロディを取り囲むかの如く多くの人々が集い、そして共に耳にする・・・
娯楽の類が何もなかったから、と言われればそれまででしょうけれども、ようやくにして平和さを取り戻してから間もない時期、一軒の音楽喫茶から紡ぎ出されていたベートーヴェン晩年の不朽の名作のメロディに居合わせた人たちは、それぞれの思いを以て接し、そして心打たれたであろう───番組を視聴しつつ、そう思っていました。
それで、店開きした年の大晦日に実際にプレーヤー(というか蓄音機?)にかけたとされる、当時大阪の闇市で入手し、今も大切に保管されている「第九」レコード盤の現物も番組の中で、ジャケットと共に、披露されていましたが、その緑がかった灰色をしたレコード・ジャケット表面のほぼ中央に見えるベートーヴェンの顔面について、同じく番組の中で映っていた「ムシカ」のマッチ箱などに描かれているベートーヴェンの顔とどことなく似ているような感じがしました。
このあたり、今の店主の父親、つまり店開き当時のマスターのこの貴重な音盤そしてそこに収められているベートーヴェンに対する思い入れがいかに強かったか───それを物語っているように思うところです。
余談になりますが、この広島市内に軒を構える「純音楽茶房ムシカ」のことは、私自身、実は今回の視聴以前にネット上に流布されていた関連の新聞記事に行き当たったところからその存在について何となく記憶していましたが、今回、改めて「第九ひろしま」ドキュメンタリー番組の中でこの話に接し、改めてその存在を私自身の記憶として確認出来たことは嬉しかったです。
また、番組の中でも紹介されていた、店開きの年の大晦日に店内に於いてサウンドとして流していた「第九」レコードに関して、指揮者などの出演アーティスト名については正確にはわかりませんが、「第九ひろしま」ドキュメンタリー番組映像及びネット上に流布されている情報から、1871年生まれのドイツの作曲家兼指揮者オスカー・フリート(Oskar Fried)がベルリン国立歌劇場管弦楽団を指揮して1929年に演奏・録音したものと思われます〔勿論違う可能性もありますが…〕───初めはフルトヴェングラーの指揮かと一瞬思っていましたが、番組内で流れてきた、当該「第九」レコードからのものとみられるサウンドの中で聞こえてくるソリスト陣の歌いっぷりなどから「違うな…」と感じました。
さて、以上記しましたように、昨年放映された「第九ひろしま」ドキュメンタリー番組の前半は終戦直後の広島に於ける「第九」秘話が盛り込まれていて有意義に感じるところでしたが、それに続く、時間にして30分あまりに渡る公演当日の模様のダイジェスト放映部分に関しては、正直、ちょっと残念な印象を抱いています。
昨年開催分の「第九ひろしま2010」に於いては、前半の第1部に於いて、後半の第2部で演奏される「第九」に於けるソリスト陣4人が各自にオペラアリア1曲ずつを順次歌っていたわけでありますが、その4人の中で一番名の売れているであろう佐藤しのぶ(S)が独唱したアリアだけが丸々カットされていたのです《歌唱順としては一番最後、つまりトリを務めていました》。
実際には、3人目に歌唱した水口聡(T)の歌唱シーン終了のところで打ち切りとなり、そのあと「佐藤しのぶ第九を歌う」のテロップと共に次の場面───「第九」終楽章の混声合唱導入箇所───へと遷移させていました《勿論CM挟んで》。
このドキュメンタリー番組の放映後に「第九」全楽章ライヴの放映も別途控えていたわけですから、あと一歩やりくりして佐藤しのぶのアリア歌唱場面も放映して欲しかったかな・・・という気持ちも抱く一方で、佐藤しのぶという昨年のソリスト陣4人の中では最大のネーム・ヴァリューをちゃっかり利用することで、限られた放送枠の中で彼女のアリア歌唱場面をはしょって「第九」歌唱場面に持って行くことが出来たのでは───といったちょっと穿った見方も成り立ちそうなところ。
まぁドキュメンタリー番組全体の構成方としては、あと一歩・・・といった印象ですね。
なお、ドキュメンタリー番組放映後に別途用意された全4楽章ライヴ放映版に関してですが、こちらはイヴェントの核となるベートーヴェン「第九」全4楽章の演奏シーンだけをそのまま放映しているような感じ(但し第1・第2各楽章終了時にCM挿入有り)なので、ここでは特に何も記すべきことは無いです《「第九」演奏自体に対する評論を記すことになってしまうので…》。
何はともあれ、今回も、広島在住の「第九」仲間のおかげを以て、視聴の機会が与えられ、そしてこのようにして記事として起こすことが出来ました。
改めて感謝しています───そして今年は誰を指揮者として招請するのか早くも気になるところですが、他の「第九」イヴェントとの差別化を図るなりして、この「第九ひろしま」の更なる発展を願うばかりです。
◎ 参照記事(本文中紹介分を除く)
『焼け跡の「第九」 心に灯 <1>』
『<音楽茶房・ムシカ>』
『伝説の喫茶店!「純音楽茶房 ムシカ」』
『純音楽喫茶「ムシカ」』
『ベートーヴェン 交響曲第9番ニ長調Op.125| フリート指揮・ベルリン国立歌劇場管(1929)』
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ベートーベン
歓喜の歌ドイツ語版(ショパン)
歓喜の歌~ベートーヴェン(混声)


?!
一回ビデオにしたから大丈夫だと思ってたんですが、甘かったのか。。。
今年はうっかりしないようにしますからね~。
さて、佐藤しのぶさんまるっとカットの件ですが、残念でしたね。衣装もすごく素敵だったし、歌もすばらしかったんですが、放送ギャラが高かったのかな?
会場でライブで聴いた人だけの特典も無いと、お金払う人いなくなっちゃいますもんね。
そして、来年の指揮者についてですが・・・。
実は、円光寺先生は2年契約なんです。
9月時点で呉会場の佐伯先生がそう言ってました。
今年のできが75点、と言われてしまったので、来年はもうちょっといい点を付けてもらえるといいですねぇ。
投稿: とまこまゐ | 2011年1月18日 (火) 20時45分
とまこまゐさん、こんばんは。
お世話になっております。
私も初めはスンナリ落とし込めるだろうと思っていたのですが───考えが甘かったみたいです。
でも、おかげさまで今年も視聴が叶いました───感謝あるのみです!
それはさておき、円光寺雅彦氏、2年契約で客演指揮してくれるとの由───今年で客演3回目ということになりますね。
指揮者が決まっているとすれば、次は”誰をゲストとして招請するのか”が気になるところ。
私としては、昨年(2010年)開催されたジュネーヴ国際音楽コンクール・ピアノ部門で第1位に輝いた広島市出身の若手女性ピアニストを招いてほしい、と願うところなのですが───まぁこのあたりは主催者(中国放送)の腹(懐?)次第ということで。
投稿: 南八尾電車区 | 2011年1月19日 (水) 02時33分