近鉄と阪神「東記念賞」受賞…阪神なんば線開業に伴う相互直通乗り入れに対して。近鉄特急乗り入れ等の課題は?
約2年前の2009年(平成21年)3月20日に阪神西九条から大阪難波(旧・近鉄難波)まで延伸し、路線名称をそれまでの西大阪線から既存区間も含めて改称すると共に近鉄線と1本のレールで相互に繋げた阪神なんば線───そして、同線延伸開業と同時に始まった近鉄と阪神による相互直通乗り入れ。
これは、今日(1月29日)たまたま目の当たりにした、とあるブログ内記事を通じて知るところとなった話でありますが、その阪神なんば線開業と同時に実現となった相互直通乗り入れが高く評価され、去る1月28日、近畿日本鉄道と阪神電気鉄道の2社に対して日本鉄道運転協会から「東記念賞」が贈られたのだそうです。
そして、この表彰話だけでなく、「日本鉄道運転協会」という団体自体の存在も前記某ブログ内記事を通じて初めて知るところとなりました(爆)
ところで、今回初めてその存在を知るところとなった「日本鉄道運転協会」という団体について・・・
当該団体は鉄道運転業務全般に関わる調査・研究・知識普及などを目的として東海道新幹線開業の5年半以上前にあたる1959年(昭和34年)1月29日に設立された社団法人であり、前記の目的を達成させるべく、現在は各鉄道事業者の運転業務従事者(社員)を対象とした運転業務に関わる各種講習会を毎年定期的に開く等の取り組みを進めてきている模様。
その初代会長(のちに名誉会長;当該団体創立者?)で営団地下鉄(現在の東京メトロ)理事や新幹線基準調査委員会委員なども歴任してきた東義胤(ひがしよしたね)の遺贈金を基金として鉄道の運転業務分野に於いて画期的な功績を挙げた者(鉄道事業者?)を表彰するために設けられているのが「東記念賞」であります《余談ながら、東京メトロ(東京地下鉄)東西線の現行ラインカラー「スカイブルー」(水色)について、これはかつて営団地下鉄理事を務めていた東義胤の指示によるものであり、当時市中に出回っていたタバコ「ハイライト」の色から採られたものだそうです》。
その「東記念賞」の今年の授賞式が、昨日(1月28日)、東京・飯田橋に所在するJR系列ホテル「ホテルメトロポリタンエドモンド」にて開かれた日本鉄道運転協会創立52周年記念式典の中で執り行われた模様です。
ここで今回の「東記念賞」受賞事由となりました約2年前の阪神なんば線(旧阪神西大阪線延伸区間…「西九条~大阪難波」間)開業に伴う近鉄・阪神両者による相互直通乗り入れに関連して、その開始に至る道のりを簡単に振り返ってみますと・・・
まず近鉄・阪神相互の直通乗り入れに際して、両者間相互の信号・通信システムの相違は勿論のこと、車両規格の相違も課題となっていましたね。
つまり、20m・4つドアが標準となっている近鉄一般型車両に対し、阪神車両は19m・3つドアが標準───このため、一時、相互直通乗り入れ用に別途車両新製が為されるとの噂も聞かれましたが、結局は既存の車両のまま相互に直通乗り入れさせるということで合意〔珍例だそうで…〕、駅ホーム上に於ける案内放送などによりフォローすることとなりました。
また、近鉄側(難波線・奈良線)に於いてはラッシュ時に10両編成による運転が実施されているのに対して阪神側では本線(阪神梅田~阪神三宮)であっても、乗り入れ開始前に於いて、終日6両編成(普通電車は4両編成)による運転となっていたことから、こちらも検討の結果、本線との分岐駅である阪神尼崎までの阪神なんば線内を10両編成対応(但し普通電車のみ停車とされた「大物~千鳥橋」間を除く)とし、阪神尼崎に於いて車両増解結を行うことで合意───これを受けて、同駅ホームの改修工事着手と共に、阪神にとって未経験の領域であった営業運転途上の駅に於ける車両増解結作業の訓練に追われることになったことも記憶に新しいところですね。
そうそう、車両増解結作業訓練以前に、延伸工事自体が完成して工事区間における試運転が始まる(2009年1月中旬)以前から、近鉄・阪神双方が互いの車両を陸送し合って相手方線路上に於いて習熟運転を重ねてきたことも忘れてはなりませんね───当ブログでもネットを通じて追いかけていました(笑)
以上駆け足で紹介してきました近鉄・阪神両者の相互直通乗り入れ開始に至るまでの道のり───その過程で立ちはばかった様々な壁を乗り越え、晴れて阪神なんば線延伸開業と同時に相互直通乗り入れを実現させたこと、そしてそれによって神戸(姫路)方面から大阪ミナミ地区を通って奈良(伊勢志摩)方面に至る直接的鉄路網が形成されて利便性が格段に向上したこと等が高く評価されたということのようですね。
なお、阪神なんば線を巡っては開業初年の10月にも「第8回日本鉄道賞」を受賞しており、今回2つ目の賞を授与されたことで改めて同線のことが評価され、同線の開業に立ち会った一人として素直に喜ぶところです。
折しも、この阪神なんば線の建設に於いて陣頭指揮を執っていた阪神電鉄の藤原崇起常務が、昨年12月末、なんと神戸市内の居酒屋に於ける慰労の席上で坂井信也・現社長から直々に社長就任を要請され、これを受けて4月1日付で新たに阪神電鉄社長に昇格する運びとなったとのニュースが飛び込んできています。
恐らく、開業初年の「第8回日本鉄道賞」受賞に続き、今度の「東記念賞」受賞によって改めて阪神なんば線を高く評価されたことが、藤原常務の社長昇格への大きなファクターになったことでしょう。
で、阪神なんば線といえば、さしあたっての話題の一つとして、近鉄特急の阪神線内そして神戸高速・山陽電鉄線への直通乗り入れが実現するか否か・・・というのがありますが、ここのところは沈静化しているような印象を抱くところ。
現在は阪神側も近鉄特急のことを念頭に置いているのか、阪神三宮駅に於いて近鉄特急に係る特急券発売業務なども行ってきているわけでありますが、肝心の近鉄特急直通乗り入れ自体の議論については今のところ目立った進捗は見られない様子《というか関連する情報が一つも入ってきていない…》。
近鉄特急といえば、ここ最近の動きとして、30000系「ビスタカー」のリニューアル施工(アコモ改造?)の進捗や、「アーバンライナー」及び「伊勢志摩ライナー」に連結されている「デラックスシート」車(JRのグリーン車に相当)に係る”特別車両料金”改定(一律料金→乗車距離別料金体系)が見られるところ。
その一方、将来に目を向ければ、2年後(2013年)に控えている「第62回伊勢神宮式年遷宮」に照準を合わせての伊勢志摩方面向け新型特急用車両の開発・製造が計画されています───これについては、当ブログに於いて、阪神なんば線を経て神戸方面への乗り入れに対応させるのでは、などと勝手に予測しているところなのですが、「2ちゃんねる」筋からの情報によると、この新型特急用車両については約15億円をかけて6両編成1本を新製し「大阪難波~賢島」間で運行させると一部メディアで報じられていたのだとか。
う~ん、せっかくだから大阪難波までとはいわずに三宮そして姫路まで是非、と思ってしまうところなのですが・・・まぁ2年後のことなので、この先どう動くのか、注視するのみですね。
あと近鉄特急を直通乗り入れさせるに際して立ちはだかっていると考えられる課題としては、阪神なんば線内に於いて待避設備を一切備えていないため線路容量面で不安要素を抱えていること〔これについては特急以外の優等種別に於いても然りですが…〕、阪神線内に於ける特急料金の扱いの是非、そして阪神線内及び神戸高速・山陽電鉄線に於ける建築限界の問題───これらの課題に対して議論を重ね対策を提示するといった動きを未だ見せていないあたり、果たして将来に近鉄特急の神戸・姫路方面への直通乗り入れは本当に実現するのか否か・・・需要面での不安もさることながら、気になるところです。
何はともあれ、いまは関西在住の鉄道好きの一人として、阪神なんば線開業に絡んでの近鉄・阪神に対する「東記念賞」授与につき、改めて心から祝します。
近鉄特急の阪神線そして神戸高速・山陽電鉄線への直通乗り入れが実現するその時を密かに期待しつつ、これからも見守っていこうと思います
◎ 参照記事(本文中紹介分を除く)
『阪神電鉄、新社長に藤原氏が昇格』
『阪神電気鉄道 藤原次期社長 就任要請は居酒屋 「断ったらあかんで」と言われ…』
《→『阪神電気鉄道の次期社長 就任要請は居酒屋』》
『阪神電鉄社長に藤原常務 坂井社長は会長に』
『第52回通常総会(総会資料)』
『関西の私鉄特急、快適さ急げ 近鉄、2階建て内装工夫』
『伊勢志摩観光向け新型特急車投入へ-式年遷宮にあわせて』
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