中国鉄道部トップ、収賄容疑で摘発か。党組書記解任──日本等の技術入れての高速鉄道網整備を巡る汚職の疑い
いま、中国の鉄道界に激震が走っている様子ですね。
前回掲載したアメリカ高速鉄道プロジェクトに纏わる記事を起こしている途上で知るところとなった話なのですが・・・
中国に於ける鉄道分野の監督官署であり、自らも鉄道路線の運営にあたっている鉄道部〔日本でいえば戦前期に存在していた鉄道省が最も近いような感じ──今の国土交通省、鉄道に関しては行政管轄だけだし…〕のトップに汚職の嫌疑がかけられているとのこと。
日本でも各種メディアがこぞって報じていますので、既にご存じの方も多いことでしょう。
現在、中国共産党の中央規律検査委員会による取り調べを受けている中国鉄道部・劉志軍部長に浮上している「規律違反」の詳細については現在明らかにされていませんが、近年中国国内に於いて急速に伸ばしてきている高速鉄道網を巡って様々な便宜を図り賄賂を受け取ったことが直接の容疑になっている模様。
中国鉄道部に関しては、以前から、路線敷設や駅設置に於いて権限を握る一方で、複雑な縁故関係が絡んでいて汚職の温床になっているとの指摘もあります。
劉部長は19歳の時に線路補修員(日本でいうところの保線員)として中国鉄道部に入って以来、たたき上げで2003年に鉄道部長上り詰めたといわれていますが、2006年に同じく鉄道部で漢口駅長などを務めていた実弟がやはり汚職などの罪で執行猶予付き死刑判決を受けると劉部長の関与などが囁かれるようになり、2008年に山東省内で70人以上が犠牲になった列車事故が発生した際にも解任すべきとの声が挙がったものの、胡錦濤国家主席の影響力などに助けられて生き延びてきたそうな。
最近では、高速鉄道網の拡充といった鉄道事業拡大と共に、劉部長の態度が尊大になってきていたとの声が聞かれ、綱紀粛正の一環として急遽劉部長の処分に乗り出したのでは、という見方もある一方で、例年3月頃に開かれる中国の全人代(全国人民代表大会→日本の国会に相当)等を前にした劉部長に対する処分の動きは、鉄道部を初めとする中国当局全体で汚職や腐敗が深刻化しているといわれる中で、中国人民の不満が爆発して中東でいま拡大の兆しを見せている民主化運動と同様の動きが中国国内でも起きることに対する当局側による恐れからきているのでは、という見方も存在します。
また一部のメディアは、劉部長は私生活に於いて3度結婚を経験している上に「18人の愛人をつくっていた」との話も聞かれる、と報じると共に、鉄道部トップとしてこれまでに多くの企業から受け取った賄賂の総額は合わせて10億元(現在の為替レートで約126億円)に上る、とも伝えています。
既に中国共産党に於ける重要ポスト・鉄道部党組書記を解任されており、まもなく鉄道部部長の職も失うことになるだろうといわれているところですが、これまでの報道内容から考えると、最終的には2006年に実弟が受けたのと同様の判決を受けそうな気配が感じられるところです。
関連する様々な記事に目を通しているうち、正直、頭の中が混乱してまとまりがつかなくなってしまっている私自身なのですが〔あぁ恥ずかしや…〕、ただ、日本の新幹線技術を初めとする海外の高速鉄道技術を採り入れてはアレンジを加えて「中国独自の技術」として高速鉄道網を急速に広げ、更には海外にも猛烈な勢いで売り込みをかけてきている中で、その中国の高速鉄道そのものを巡っての一連の収賄事例が事件化されたことにはある種深刻な印象を抱いてしまうところも正直あります。
引き続き、この成り行きを眺めていようと思います。
◎ 参照記事(本文中紹介分を除く)
『中国:鉄道相を収賄疑いで近く解任』
『中国鉄道相「重大な規律違反」解任へ』
『中国鉄道相解任へ 入札で汚職の疑い』
《↑ 日本経済新聞Web版・2011/2/14=20:44付け掲載記事;現在リンク切れ》
『中国で閣僚の解任…鉄道部・劉志軍部長、高速鉄道絡みで不正か』
《→『中国鉄道部トップ解任に高速鉄道企業が関連か、事件拡大の可能性』》
『汚職容疑で失脚の中国閣僚に「愛人18人、収賄127億円」の見方』
『中国鉄道部トップ、「重大な規律違反容疑」で取り調べ=鉄道建設関連の収賄か―中国』
『中国鉄道部トップ解任 汚職にメス入れる当局、民主革命を警戒か』
『中国:劉志軍鉄道相を規律違反で解任(2011.02.12)』
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