「電池電車」開発へ。2020年目処に実用化目指す・・・JR西日本。駅停車時に於ける給電方法で課題?
某ネット証券会社Webサイトを通じて知るところとなった話ですが・・・
JR西日本がリチウムイオン電池のみで走行するという「電池電車」を2020年を目処に実用化させるべく開発をスタートさせた、とのこと。
尤も現時点では日本経済新聞のみがこのことを報じている模様ですが・・・
この「電池電車」の大まかなイメージとしては、駅に停車している間に付近に設けられた給電設備から架線などを通じて車体に装備された蓄電池に充電、加速時に於いてその蓄電池に貯まった電気を使い、減速時に於いては「回生ブレーキ」の仕組みを利用して蓄電池に電気を戻す───こんなところかな。
「回生ブレーキ」自体は、今や電車車両に広く普及しているブレーキシステムの一つなのですが、通常ならば動力源であるモーターを逆回転させて発電機として作用させ、発生した電気を架線へと戻すところを、今回JR西日本が打ち出した「電池電車」では発生した電気を蓄電池に振り向けて溜めておく・・・というわけですね。
JR西日本に於いては、まず非電化区間に於ける運転を想定して開発を進め、その後は電化区間へと導入範囲を広げる、としているみたいですが、駅停車中に架線を通じて給電し蓄電させ、そして加速時に於いてその蓄電池に貯まった電気を消費する等といった仕組みは、むしろ電化区間に於いて本領を発揮しそうな気がします。
変な話、トヨタのプリウスや、JR東日本が2007年に小海線に於いて新規投入したハイブリット方式気動車「キハE200形」に於いて採り入れられている加減速の仕組みを電車の世界に持ち込んだような印象を受けるところですね。
つまり、電化区間に於ける運転を考えた場合、当該日経報道の内容から、発車時に於いては蓄電池に貯まった電気を使って車両を動かし、一定の速度に達したあたりから通常の電車車両と同様に架線から採り入れた電気を使って更に加速、逆に減速させる際には、先にも記しているように、電動機を発電機として作用させることで運動エネルギーを電気に変換させて蓄電池にため込む───つまりプリウスやE200形に於ける”ディーゼルエンジン駆動”の部分を”(架線から取り込んだ電気による)電動機駆動”に置き換えるような感じかな。
ただ、当初は非電化区間に於ける運転を念頭に置いて開発するとJR側では語っていることから、当たり前の話ですが、装備されることになる蓄電池だけで走らせることになるわけですが、報道されている「駅近くからの給電設備から」の給電のため、非電化区間内に所在する駅に於いては新たに駅構内に給電用の架線を張り巡らせる必要が出てきてしまう───それも費用の関係から無人駅を含めた全ての駅に架線を張り巡らせることはちょっと考えにくく、主要駅に絞って実施することになるでしょう《架線からの給電にこだわらなければ、費用の許す範囲で主要駅以外に於いても給電の機会を与えることは可能でしょうけれども…》。
このあたりで、ふと頭の中にて、山陰本線の非電化区間のうち鳥取県の代表駅である鳥取駅と兵庫県西部に位置する浜坂駅とを行き来する普通列車のことが思い浮かんできました。
両駅を結ぶ区間は、現状、両端の駅も含めて電化されておらず、仮にいまこの区間に「電池電車」を走らせようとするならば、鳥取駅か浜坂駅の何れかの駅構内に給電用の架線を新たに張り巡らせなければならなくなるわけで、給電設備込みで設置に要する費用もばかにならないところでしょう。
架線を張り巡らせる代わりに、例えば駅構内に設備された給電設備からコードを引っ張ってきて、車体に装備されている蓄電池にプラグ接続して充電させるという方法も考えられるところ───電気自動車に対する充電(給電)スタンド的なイメージですね。
尤もこのやり方とて、編成両数によって接続コード数が変わるなど効率面などに於いて問題が残るところなのですが───となると架線から給電させる方式が効率面に於いて理にかなっているのかな・・・
装備されることになっている蓄電池たるリチウムイオン電池について、JR西日本は「複数のメーカーで試す」としていますが、現状、リチウムイオン電池の製造原価は1編成あたり3千万円超と見込まれているのだそうな───尤もJR西日本は、リチウムイオン電池の量産の進捗により実用化の目標時期にあたる2020年前後には現状の7分の1程度にまで下がる、と睨んでいますが、一方で世界規模ではその時期が到来するまでの間にリチウム不足が生じるとの試算がなされているとの話もあることから、果たしてJR西日本が睨んだとおりのコストダウンが実現出来るのか、ちょっと不透明な臭いがしてきます。
当たり前の話ですが、鉱物資源の一つであるリチウムは、石油などと同様、限りあるものですから・・・
何だか問題点ばかり書き並べてしまっているような感がありますが〔私の悪いクセです…〕、今回発表された「電池電車」では、既存の鉄道車両と比べてエネルギー消費量が1割(10%)以上少なくて済むこと、地球温暖化ガスの一つである二酸化炭素の排出そして騒音を抑制出来ることなどがメリットとして挙げられていて、このあたりは今の社会情勢にあってはとても魅力的に映りそうなところですね。
JR東日本に於いても実用化に向けての研究が進められているとのことですが、果たしていち早く実用化を果たすのはどちらなのか───数々の課題を乗り越えて誕生するであろう「電池電車」の姿に期待していようと思います。
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はじめまして!いつも拝見させていただいてます。
今回の記事の「電池電車」ですが、私は、中国上海の「架線レストローリーバス」こと「キャパシタバス」の様なシステムを踏襲するのではないかと思います。ハイブリッドシステムより単純で、自動車で言うと、トヨタのプリウスより日産のリーフに近いです。
このシステムでは、車両は電車を少し改良するだけで済み、地上設備も駅に架線を張るだけで済むので、非電化区間でも問題なく導入できます。ただし、駅間距離やそもそも駅に電気が来ているかなどの検討課題があるので、簡単にはいかないでしょう。
投稿: のまど | 2011年5月22日 (日) 02時43分
のまどさん、こんばんは。
上海の「キャパシタバス」───正直、今まで知りませんでした。
早速検索エンジンを通じて探し出しましたが、一目見て”なるほど”と感じました。
勿論、電気容量と走行距離の関係など課題は少なくないと思いますが、この上海「キャパシタバス」の仕組みは大いに参考になるもののように思えました。
JR西日本も、今回表明した「電池電車」開発に際して、この上海に於ける実例を参考にしているのか否かは定かでありませんが、今後の開発具合に注目していようと思っています。
投稿: 南八尾電車区 | 2011年5月25日 (水) 00時48分