南海特急「サザン」向け12000系、報道公開・・・9月1日登場、それ迄に試乗会計5回《報道公開当日高野線で大騒動》
前回、阪神本線の甲子園駅がリニューアルされる旨の記事を書きましたが、その過程で知るところとなった話です。
今年初めに新規投入が発表され、2月8日には計8両(4両編成×2本)の実車が製造元である東急車輌製造に於いて落成となって南海線内向けに甲種輸送された、南海本線に於ける座席指定特急列車「サザン」の次世代車両「12000系」のことについてです。
その12000系特急形車両の実車が、今月に入ってから、報道関係者に公開された模様。
幾つかのレポートを見る限りでは、今回の報道公開は少なくとも2回に分けて実施されていたみたいで、1回目は6月1日に住ノ江検車区羽倉崎検車支区に於いて、2回目は住ノ江検車区本区に於いて、それぞれ行われた様子。
このうち住ノ江検車区本区で実施された2回目の報道公開には、全国紙系メディアの関係者が集結していたみたいです《ちなみに1回目の報道公開では主に鉄道趣味誌関連の関係者が参集していた模様》。
車内外の様子に関しては、『鉄道ホビダス』内に設けられた、月刊『Rail Magazine』編集長・名取紀之の手による『編集長敬白』サイトに掲載された『南海 新型サザン12000系誕生。』という記事に於いて豊富な写真を交えた紹介が為されていますので、当該記事を見ての印象を中心に記していきます《なお名取氏は住ノ江検車区羽倉崎検車支区に於いて行われた1回目の報道公開の際に足を運んでいた模様》。
車外外観は南海の特急形車両としては初めてとなる、一部無塗装箇所(ステンレス剥き出し)も交えたパターンになっていますが、それでも窓下に見える真っ青な塗装に「SOUTHERN Premium」のロゴが目を惹いてしまうところ。
その真っ青な塗装は、先頭車両に於いては車体側面から前面下部に装着されている排障器に引き継がれているような印象を抱くところなのですが、同時に、先頭車両前面部のみを眺めた場合、”青”という色彩がプラレールの青とイメージ的に重なってしまうところがあってか、どうしてもチャチに見えてしまうところが正直あります。
とはいえ、排障器の青色塗装は車体側面下部に施された青色塗装の続き、と考えればイメージ的に納得がいきます《何しろJR阪和線より海側を走るわけですし…》。
車内のうち客室部分については、明るいクリーム調の内装に深い青色をした座席の取り合わせといった印象であり、床部分も含めた色の取り合わせとしては特に目新しさは無いのかも知れませんが、深い青色の座席に目が惹かれるところ。
その深い青色をした座席───ヘッドレスト(頭置き)部分の両側が結構隆起しているのが見え、そのためなのか、結構ヴォリューム感があります。
この隆起については、隣席の乗客からの視線が気にならず、また座席をリグライニングさせた際に後方からの視線が気にならないよう配慮した造りであることが一部メディアにより伝えられてきています《ヘッドレスト両側を隆起させた座席を導入している特急形車両は他にも幾つか見受けられるところですが、それが他人からの視線対策であることは私自身も知らなかったです(でも、これはいいのかも!)》。
で、座席直下に装備されているヒーターについては、近鉄の「スズメバチ」こと22600系特急形電車と同様、吊り下げ式が採られているみたいであり、これにより足を伸ばすことが可能となり、また荷物置きスペースとしても活用可能。
そして携帯電話の充電などに使える電源コンセントは1席あたり1つを設備───これは近鉄22600系に勝りますね《22600系の場合は、車端部座席を除き、2席につき1つの割合で設備(最前列と最後列の車端部座席については1席につき1つ設備)》。
天井に目を向ければ、この新型特急形電車の白眉ともいうべき、シャープ独自の「プラズマクラスター」技術によるイオン発生機能付き空気清浄機───その設置数は、写真画像を眺める限りでは、1両あたり8基程度だろうか。
デッキ(乗降口)部とその周辺については、客室部分と同様、明るいクリーム色基調で纏められ、スッキリと造り込まれているような印象を抱きます。
特に車椅子対応大型トイレを擁する和歌山市方先頭車両のデッキとその周辺は、トイレ自体も含めて貫通路が緩やかな曲線を描いていて、ある種のユニークさを醸し出しているような気がします。
それと、難波方先頭車両のデッキ付近に設けられた多目的室は南海の女性社員160人から集められた声の中から実現したものの一つとのことなのですが、このような多目的室の設置はJRに於いては最近登場してきている特急形車両(JR西日本287系、JR東日本E257系、同E259系など)に於いてしばしば見かけるようになってきているものの、私鉄の特急形車両ではどうやら現時点に於いても珍しいケースみたいですね。
というわけで、外観はどうであれ、中身に関しては結構造り込まれているような印象を抱くところの「サザンプレミアム」こと南海12000系電車なのでありました。
余談になりますが、住ノ江検車区本区に於いて2回目の報道公開が行われた6月9日、高野線では早朝から大騒ぎになっていました。
高野線「千代田~河内長野」間に所在し、高野線車両の過半数を収容すると共に南海の車両工場たる千代田工場を擁する千代田検車区に於いて、早朝4時25分頃、停電に見舞われ、同検車区に留置されていた車両が出庫出来ない事態に陥りました。
朝7時55分頃には復旧したものの、朝のラッシュ時間帯を直撃したこの停電騒ぎで「難波~橋本」間に於いて計208本の列車が影響を受け、うち96本が運休し、約14万人の足に影響が出ていました。
2回目の12000系電車報道公開が実施されたのは午後のこと───南海本線と高野線という場所の違いがあったとはいえ、報道公開に立ち会っていた南海の社員たちはさぞ落ち着かなかったことでしょう《ちなみに停電の原因が明らかにされたのは報道公開2回目が行われた翌日(6月10日)のこと───車両の電気回路(というか電装品)の不具合に車庫のブレーカーの不具合が重なったことが原因と発表》。
この「サザンプレミアム」こと12000系特急形電車、来る9月1日より営業運転が開始されることが既に発表されており、その際には原則として、同様の前面形状輪郭を持つ8000系一般型車両とペアを組んで運用に入ることになっているそうです。
また、この12000系特急形電車の営業運転開始に合わせて、南海の全ての特急列車について、他の一般列車と同じく、全面禁煙とすることも明らかにされています《空港特急「ラピート」については既に全面禁煙とされている》。
これにより、私鉄に於いて喫煙可能な車両が設定されているのは、近鉄特急を残すだけとなります。
更に南海は12000系電車のプロモーションにも力を入れている様子で、7月4日に実施される特別試乗会(泉佐野から難波までの片道;女性・小児対象)を皮切りに、営業運転開始までの間に都合5回もの試乗会(うち3回は試乗を兼ねた撮影会として実施)が予定されています。
南海にとって久しぶりの新型特急形電車の新規投入───並々ならぬ想いを感じずにいられないところです。
「サザン」の世代交代は、もうすぐです。
◎ 参照記事(本文中紹介分を除く)
『特急「サザン」新型車両12000系 導入記念イベントを開催します』
『南海電鉄、特急「サザン」新型車両公開 全席にAC電源』《→別頁》
『南海電鉄:防犯カメラ設置、新型サザン公開』
『南海の特急「サザン」に新型、多目的室も』
《←『女性の声生かした「快適」特急』》
『パソコン電源や防犯カメラ、授乳室 南海特急「サザン・プレミアム」』
《→『南海特急「サザン・プレミアム」公開』》
『南海電鉄、新型特急「サザン・プレミアム」を公開』
『南海特急の新型車両公開 快適性重視、9月から運転』
『特急「サザン」12000系に一足早く乗れる! 7月より記念イベント開催 - 南海』
『防犯カメラ、全車両に…「サザン」新型特急』《→別頁》
『南海電鉄「サザン・プレミアム」、9月1日デビュー』《→別頁》
『南海特急が全面禁煙へ 関西私鉄、残るは近鉄だけ』
『9月1日 南海電鉄が新型サザン投入』
『南海新型特急「サザン・プレミアム」、9月1日導入へ-各車両に防犯カメラも』
『南海・高野線、ダイヤ乱れる 車庫停電、13万人に影響』
『南海電鉄:高野線でダイヤ大幅乱れ 停電で車両出庫できず』
《→『鉄道トラブル:南海車庫停電、13万人影響 高野線、車両2/3出庫できず』》
『南海高野線の車庫停電でダイヤ乱れ』
『就活に遅刻!車庫停電で電車出ず、南海14万人影響』
『原因二重の不具合 南海電鉄の停電14万人トラブル』
『パンタグラフ上げたら作業中に突然停電 南海高野線12万人に影響』
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こんにちは。
サザンは営業運転開始までに5回のイベントが開催されますが
最初のやつは女性子供限定なのが残念ですね。
ただ先日関電が15%の節電を呼びかけたことにより各鉄道会社とも節電のため減便や減車を検討していることもあり
このようなイベントが開催できるのかどうかは未知数です。
むしろ新型サザンは現行の10000系よりも消費電力が少ないことから
営業運転開始を繰り上げるのも節電対策の1つだと思いますね。
投稿: えびちゃん | 2011年6月12日 (日) 12時38分
「えびちゃん」さん、こんにちは。
節電対策を理由にした12000系の営業運転開始日繰り上げですか───理にかなっていますね。
南海でも12000系導入によって「(現行の特急「サザン」10000系と比べて)年間約440tの二酸化炭素削減効果を見込んでいる」と公言しているぐらいですし・・・
でも、既に表明してしまっている試乗会スケジュールを全て潰してまで繰り上げを行うのか否か───現実問題としてちょっと難しいかも。
投稿: 南八尾電車区 | 2011年6月14日 (火) 18時24分