アマチュアには痛いオリックス劇場──旧大阪厚生年金会館、使用料大幅アップ。クラシック公演への活用に道は?
去る4月8日に開館した「オリックス劇場」───既に10日以上経過していますが(自沈)
正確には、かつての大阪厚生年金会館をオリックス不動産が譲受、同ホールが擁していた2つのホール〔大ホール・中ホール(のちの”芸術ホール”)〕のうち「大ホール」のみを改修した上で「オリックス劇場」として再出発させた、ということになります。
前回は、そのオリックス劇場に於いて開館当日にこけら落としとして催された、新日本フィルハーモニー交響楽団を招いての特別公演の模様を中心にお届けしました。
オリックス劇場は、今回の開館に際し、クラシック音楽系統も含めた如何なるジャンルにも対応すべく音響設備などの改修を行ったことを明らかにしており、実際に同劇場のこけら落としとなった新日本フィル公演に立ち会った人たちの間から「このホールは使える」といった評判も聞かれました。
けれども、それとは裏腹に、現時点でオリックス劇場に於いて組まれている公演予定の大半はポピュラー系統の公演で占められています。
旧大阪厚生年金会館時代、ここはポピュラー音楽の世界では、大阪城ホール、フェスティバルホール(現在建て替え中)等と共に関西圏に於ける”聖地”の一つとしてみられていた様子で、実際、国内外の有名ロック・バンドなどがここで商業公演としてのライヴを行っていました。
その流れは「オリックス劇場」として生まれ変わってからも引き継がれている様子ですね。
その一方で、そんなポピュラー系統を中心とした商業公演に混じって、当時開設されていた同会館Webサイト上に掲載されていたイヴェントカレンダーには、アマチュア音楽団体や舞踊団体による公演も少なからず組まれていたのを記憶しています。
背景として考えられるのは、ホール使用料金の「安さ」。
残念ながら、旧会館時代の公式Webサイトは既に「オリックス劇場」のそれに取って代わられているため〔当たり前ですが…〕、当時のホール使用料金の具体的金額を知ることは出来ませんが、一部のWebサイトに於いて当時のホール使用料金体系のうち全日使用に係る料金額のみ掲載されているのが見えました。
それによると、旧会館時代、2400席収容の「大ホール」に於ける全日使用ですら80万円に満たない金額設定(付帯設備使用料等含まず;以下同じ)で、「芸術ホール」に至ってはその半額程度。
大阪市内中心部に所在するホールとしては比較的低廉な料金設定ということが出来、それが奏功してか、上々の稼働率を叩き出しているような印象を受けたものです。
尤もこの傾向は、大阪以外のホールを擁する厚生年金会館(北海道・東京・愛知・石川・広島・九州)に於いても同様にみられましたが・・・
それはさておき、その旧大阪厚生年金会館が年金・健康保険福祉施設整理機構(RFO)を経てオリックス不動産の手に渡り、2つ存在していたホールのうち「大ホール」のみ改修の手が施され、結果的に「オリックス劇場」と呼称される民間の文化施設として生まれ変わったわけでありますが、民間企業(大阪シティドーム・・・オリックス不動産の子会社)の運営に変わったことでホール使用料が大幅アップしています。
「オリックス劇場」として再出発した現在では、催し種別にかかわらず、使用時間帯・曜日による単一の使用料体系が採られていますが、例えば全日使用(9時~22時)の場合をみますと・・・
◎ 平日・・・・「1,100,000円+消費税」 ◎ 土休日・・・「1,300,000円+消費税」 |
また、平日の夜に公演を行うのに、舞台仕込みやリハーサルも含めて、最低限必要とみられる「13時~22時」(昼+夜)区分の平日料金は「900,000円+消費税」となっています《尤も、本当にこの時間区分で間に合うか否かについては何とも言えませんが…》。
ホール本体の使用料だけで100万を超すあたり、ふと日本初の音楽専用ホールとして建設された「ザ・シンフォニーホール」を想起してしまいました。
昔、『ぴあホールガイド』という冊子で、ザ・シンフォニーホールの本体使用料金を目の当たりにしたことがあり、その際、百万単位の金額が記載されていたのが目に入ったことを覚えています。
尤もザ・シンフォニーホールの本体使用料金等については、現在、一般向けに開設されている同ホールWebサイト上では公開されていませんが、一部のWebサイトに於いて同ホール全日使用の場合の本体使用料金の記載が見え、それによれば、百数十万円程度とみられます。
オリックス劇場とさほど変わりませんね(驚)
尤もザ・シンフォニーホールの座席数は「1704」となっていますので、1席あたりの使用料金換算ではザ・シンフォニーホールのほうが高くなりますが・・・
何れにせよ、旧大阪厚生年金会館時代と比べて使用料金が格段にアップしていることから、もはやアマチュア音楽団体や舞踊団体にとって、オリックス劇場は敷居の高い存在となってしまっているといえるでしょう。
ただ、ザ・シンフォニーホールを公演会場として使用しているアマチュアの音楽団体も一部存在しており〔大阪市民管弦楽団など〕、そういった団体からすれば、キャパシティ面でザ・シンフォニーホールを上回るこの新しい文化施設に目を向ける余地はあるのかも知れませんが、仮にそうだとしても音響面で渋る可能性も考えられるところ。
何はともあれ、大半のアマチュアの音楽団体や舞踊団体は、今後、より低廉な使用料金を設定している、近郊や郊外に所在する公立の文化ホールに活動の場を求めざるを得なくなるのでは、と思ってしまうところです。
初めにも記していますように、オリックス劇場側ではクラシック音楽系統の公演にも対応するよう改修したと胸を張っている様子。
しかし、現実問題として、クラシック音楽系統の公演を主として取り扱うプロモーターたちは、楽器が発する音そのものを楽しめることで評判を取ってきている施設───例えば日本初の音楽専用ホールであり「残響2秒」を売り物としているザ・シンフォニーホールや、その半分足らずの客席数規模を有しザ・シンフォニーホールと同等程度の音響性能を擁する「いずみホール(大阪)」などに今後も靡いてしまうことでしょう。
室内楽やリサイタルだと、こじんまりとして且つ小規模アンサンブルに適した音響特性を有する「ザ・フェニックスホール」や「イシハラホール」あたりにも・・・
あ、2013年4月10日以降だったら、大阪・中之島のフェスティバルホールもありますね───かつて大阪フィルハーモニー交響楽団がホームグラウンド(というか定期演奏会の会場)としていた、座席数2700の大空間。
何れにせよ、劇場側の思惑通りにいくか否かは不透明といえそうです───とはいえ私としては、せめて年に数回程度、地元・大阪のプロオーケストラあたりが特別演奏会とかで使ってほしいと願うばかりです。
例えば、梅田・茶屋町に所在する梅田芸術劇場メインホール(元「劇場・飛天」)で関西フィルハーモニー管弦楽団やNHK交響楽団などが不定期に「UMEDA演奏会」と銘打って開催するノリで・・・
かつて日本国内に7つ存在していたホール附設型厚生年金会館───その中の一つだった大阪厚生年金会館の大ホールから生まれ変わった「オリックス劇場」が、あらゆる音楽ジャンルにわたって活用され、そのことにより関西圏に於いて健康で文化的な生活の実現に寄与出来ることを願ってやまないです。
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